読みにくいかもしれませんが、どうかお付き合いください!
レーティングゲームが始まり、作戦に沿った行動を始めるリアスチーム。
はっきりとした動きをしているのは、体育館に向かう兵藤、小猫、八神の三人であった。
なお、八神は相手のグロンギと思われる男が動き始めれば、そのグロンギの元に向かう事になっている。
体育館に着いた三人の前に、ライザー眷属のメンバーが立ち塞がった。
「やはりこのポイントを押さえに来たわね。」
「解体していい?」「腕と足と体をバラバラにしたい!」
「少しは戦えるようになったのかしら?」
冷静な言葉を放つ“戦車”の雪蘭。物騒な事を言っている“兵士”のネル、イル。もう一人はイッセーを一度倒した同じく“兵士”のミラであった。
「ヒュウ♪先ずは四人がかりってことか。」
「…相手の戦車は私がやります。兵士の三人は、お任せします。」
「ああ、任せろ!」
小猫が雪蘭に向かって走り出し、戦車同士の戦いが始まった。
「んじゃ、お前はあん時の仕返しがしてぇだろうから、あの棍を持ったやつ頼むわ。」
「じゃあシュウはあの少女二人だな。任せた!」
兵藤はミラと、八神はネルとイルと戦い始めた。
八神はネルとイルが持つチェーンソーを華麗に受け流している。
…少女がチェーンソーを振り回すなど、色々な意味で疑問なものではあるが、この場では何も言わないでおこう。
「「解体してやる〜!」」
「女の子がそんな事言うもんじゃありませんよ!」
その内一つのチェーンソーが八神の腕に当たり、凄まじい金属音を響かせた。
切れた!と少女二人は思ったであろう。
しかし、実際にはチェーンソーの歯がこぼれ落ちただけで、八神の腕はくっついたままであった。
「ウ、ウソ!」「何で切れないの〜⁉︎」
「さぁ何ででしょうね?それをしっかり調べてこい!連休の宿題だ!」
同時に二人の体に突っ張りして体育館の端に突き飛ばす。二人は壁に衝突して気絶した。
小猫と雪蘭の戦いも、小猫が流れを掴んでいた。
「くっ!当たれ!」
雪蘭は得意とする武術の蹴りで小猫を攻撃する。
小猫はそれを避けるためバックステップしたが、少し遅かったようで服の前部分が破けてしまった。
「…えい」
少し動揺してしまったが、すぐに落ち着きを取り戻した小猫は、雪蘭の腹をめがけて拳を放つ。
雪蘭は苦しそうにうずくまり、膝から崩れ落ちた。
小猫は止めをささず、すぐに他二人の状況を確認した。
八神が戦いを終わらせている事を確認して、兵藤の戦いを見る。
兵藤も他二人と同様に、優勢であった。
「まさか、ここまでとは…!」
「こんなもんじゃない!修行の成果を見せてやる!」
兵藤の手に魔力がかかり、ミラの肩の部分を軽く突く。
少し体制を崩したミラの肩に、ポワッと魔法陣がかかった。
「これが俺の新必殺技!」
兵藤の手にも同様の魔法陣がかかり、二つの魔法陣は激しく輝いた。
小猫と八神は、この男の新必殺技がどういう物な期待の視線を向けていた。
「“洋服崩壊”【ドレス ブレイク】!」
バァァァン……!
何と、ミラの服が弾け飛んだ。
つまり、ミラは一糸纏わぬ姿になってしまったのである。
「キャアァァァァ!」
「どうだ!相手の裸体を想像して、相手の服を弾き飛ばす。これが俺の新必殺技!“洋服崩壊”d「カッコつけんなバカ!」痛って!何で殴るんd「最低です。」小猫ちゃん⁉︎」
初めての技の披露は、誰一人として褒めてくれなかった兵藤である。
というか、この技は女性の全てを敵に回すと思われる。
「とりあえずさっさとここを出ようぜ?朱乃先輩も準備終わったみてぇだし。」
「そうですね。」
「二人共⁉︎何でさっきから冷たいんだよ!」
八神が呟き、それに賛同する小猫。その後ろを騒ぎながらついていく兵藤。
「待て!この場所を取りに来たのではないのか⁉︎」
「ああ違う違う。オレらの目的は」
唯一動けて正常な思考を保っていた雪蘭が疑問をぶつけ、八神はそれに笑いながら答えた。
「ここの、破壊だ。」
その言葉が放たれると同時に、突如大きな雷が体育館を破壊してしまった。
勿論、中にいる四人は…
〔ライザー様の“兵士”三名、“戦車”一名リタイア〕
脱落したようだ。
このゲームでは〝殺す〟事は禁止されており、脱落した者は自動的に冥界に送還され、医療スペースにて治療を受けるようになっている。
今の四人もそこに送られた筈だ。
「それにしても小猫ちゃん、服が…いいねぇ〜♡」
戦場でも相変わらずな男、兵藤 一誠は小猫の服が破けているのを見て鼻の下を伸ばしている。
今小猫の服は前半分が破れたために所々から可愛らしい下着が見えている。
小猫は頬を膨らます。これからの戦いもこの服でやるのは恥ずかしい限りであろう。
八神はため息をついて
「小猫、ちょっとこっち来い。」
と小猫を呼ぶ。
小猫が八神の元に来ると、八神は手を合わせて小猫の肩に手を置く。
青い稲妻が走ったと思えば、破れた服は徐々に元のように戻っていき、完全に敗れた箇所を直してしまった。
「…ありがとうございます。」
「いいえ〜、どういたしまして。」
すぐそこで兵藤が残念そうな顔を浮かべているが、そこは二人共スルーしている。
「さて、こっからは自由行動だな。お前らどうするよ?」
「とりあえず先に進もうかなと。」
「あっちの方で祐斗先輩が戦っているそうなので、そっちに行ってみます。」
「そうかい。んなら、気をつけて…!」
突如、八神は兵藤を突き飛ばし、小猫を抱えて飛び出した。
「うわっ!一体何を⁉︎」
「せ、先輩⁉︎いきなりどうしたんですか⁉︎」
「わり、こうした方が確実だと思ってな。」
そう言って、先程まで立っていた方を振り向く。
そこには、細くはあるが長さがかなりある針が数本突き刺さっていた。
「…このゲームの中でも、殺しは続けようってのか?ジャラジ!」
八神は近くにある茂みに向かって叫んだ。
そこから、少年のようなあどけなさが残った顔をしている青年が姿を現した。
「当然だろ?僕たちグロンギは、ゲゲルを遂行しないと“整理”されてしまうから。」
兵藤と小猫は、突然現れた青年に対し、疑問の視線を向けている。
「…おい、お前ら。早く行け。
コイツが例の、助っ人とか言うやつだ。」
「何だって⁉︎だってコイツ、明らかに俺たちを殺しにきたじゃねえか!」
「それがコイツのやり口だよ。ゲゲル以外のルールは守らねぇさ。まして、こんな《殺すのはダメ》なんてルールは尚更だ。」
「そんな…」
流石に驚きの声が出た。
グロンギという者は、ほとんどが非道であることは幾度となく聞いていた。
しかし、仮にもゲームに助っ人として参加しておきながら、堂々とルール無視をする程とは思っていなかったのである。
「心配すんな。言っただろ?お前らはライザー達を倒す。オレはこいつを倒す。それで終わらせようってな。
ずっと一緒にいたんだ。信用してくれ。」
二人はかなり心配していたが、いずれ決心したように深く頷く。
「頼むぜ、シュウ。」
「絶対、帰ってきてください。」
二人の言葉を受け、八神は微笑み
「分かってら。オレだってこんなとこで死ぬのは勘弁だからな。」
と、立ち上がった。
そして、二人の方に振り返る。
「気を付けてな。特に、空で相手の女王が魔力をためてやがる。
何してくるか分からねぇぞ。」
その言葉を聞き、二人はそれぞれの目的地に向かって走り出す。
その様子を青年は黙って見届けていた。
「悪りぃな。随分待たせちまった。」
「いや、気にしてないよ。君がそのリント達を気にかけているのを見るのは、そこら辺のお芝居より面白いから。」
「お芝居…ねぇ。言ってくれるじゃねぇか。」
「だって事実だろ?グロンギであるはずの君が、この世界でリントと仲良くやってるなんてねぇ。」
淡々と返した青年の言葉に軽く眉間にしわを寄せる八神。
そして、青年は再び口を開く。
「じゃあ始めようか。なんだかよく分からないけど、君はあのリント達の前であの姿になるのは嫌みたいだから、特殊な結界でも張ってあげるよ。」
そう言って青年はパチンと指を鳴らす。
すると、周りの空間が四角い何かで覆われ、気付いた時には外が全く見えなくなっていた。
「この結界の中なら、外からこちらを見ることもできないし聞くこともできない。勿論、逆もだけどね。
外の様子が気になる君にとっては嫌かな?」
「全然構わねぇさ。むしろ感謝してぇくらいだよ、こん中なら全力で戦える。」
八神は着ていた服を脱いで力を入れる。少しずつ人間の身体から、グロンギのそれへと変わり始める。
青年もそれに合わせて、姿を変えていく。
『色々と聞きたいこともあるのだ。早急に終わらさせてもらう。』
『早急…ねぇ…。そんな簡単にいくといいね。』
八神と青年は完全に姿を変え、それぞれのグロンギ態であるガドルとジャラジの姿になった。
この結界の中で、大きな戦いが始まった。
ーーーーーーーー
八神と別れた兵藤と小猫は、それぞれが向かう場所に走っていた。
「じゃあ俺はこっちに行くから。」
「はい、先輩気をつけて。」
ああ!と返事を返した兵藤は、別れ道を小猫とは違う方向へと走っていった。
小猫も木場の元に向かっている。
その時、小猫の足元に大きな魔法陣が現れた。
その魔法陣が強く輝いたと思えば、突然魔法陣から大きな爆発が起きた。
通常なら、この突然の事態には反応できず、この爆発をモロに喰らっていたであろう。
しかし、八神の忠告が頭にあった小猫は間一髪でその爆発を避けることに成功した。
「ちっ!逃してしまったか!」
空にはその爆発を起こした張本人と思われる“女王”ユーベルーナが羽を伸ばして飛んでいた。
その姿を確認した小猫は自分も羽を伸ばして応戦しようとした。
しかし、その必要は無かったようである。
大きな雷が凄まじい雷鳴と共に、ユーベルーナ目掛けて落ちてきたのだ。
ユーベルーナはそれを喰らうが、脱落するほどのダメージは無かったようで、すぐに体制を整える。
「あらあら、そちらの女王が私の最初のお相手でしょうか?」
ユーベルーナにかけられる声。
その声を発した人物は、冷徹な笑みを浮かべている我らがS姫、姫島 朱乃であった。
朱乃とユーベルーナが対峙するのを見た小猫は、そのまま目的の場所に向かって走る。
そして、木場が戦っている場所に到着した。
「祐斗先輩、助太刀します。」
「ありがたいな。三対一でやっていたから、少し疲れていたんだ。」
爽やかな顔で〝疲れた〟と言い放つ木場。実際はそれなりに押していたようだ。
相手は“兵士”のシュリヤー、マリオン、ビュレントの三人である。
子猫はビュレントに殴りかかり、木場はそのままシュリヤーとマリオンを相手にしていた。
体育館周辺で八神が、上空で朱乃が、旧校舎周辺で木場と小猫が戦いを始める。
後の二人は、相手の本陣がある本校舎に向かっていた。
ーーーーーーーー
ジャラジとガドル[剛力体]の戦いは、これまでのものより激しいものとなっていた。
ジャラジが投げた針をガドルは剣で弾き、時々横っ飛びで針を避けて距離を詰める。
ある程度近くなったところで体重を込めた一撃を放つが、ジャラジは重心を横にずらすことで剣を避ける。そして、ガドルの顔面に向かって上段蹴りを繰り出す。
頭を後ろにずらすことでその蹴りを躱したが、ジャラジは次に回し蹴りをガドルの脇腹に向かって繰り出した。
すかさず硬化能力で脇腹を固め、回し蹴りを敢えて喰らう。
そうする事でガドルにはダメージが入らなかったが、ジャラジの足に痛みを与えることが出来る。
『もらった!』
足の痛みに顔をしかめたジャラジに、再び剣を振り下ろした。
ジャラジはその剣に気づくのが遅かったため、避けることは出来そうにない。
しかし、その剣が当たる直前
『甘いって』
指に挟んでいた針四本でガドルの剣を受ける。
ギンッ!と小さく金属音が鳴り、針は全て折れてしまったが、少しだけガドルの剣が止まった。
その少しの間でジャラジは剣の軌道から移動した。
『フゥ、一体なんなんだい?急に体が硬くなるなんて聞いてないよ。』
ジャラジは一息つき、ガドルに対する疑問をぶつけた。
『貴様に教える事など無い。一つだけ言える事は、私は貴様が思っているような私ではないという事だ。』
『相変わらずお堅いことで…』
言葉を交わす二人の間に、緊迫した空気が走る。
ガドルは己の得物を構え、ジャラジは指に針を作り出す。
『…なるほどな、何もないところから針を作り出す事が出来るようになったのか。』
『ご名答。それが僕のゲゲルの成果による新しい力だ。君達のように原料がいらないから無限に作り出せる。
つまり、無限の死の可能性を生み出せるのさ。』
得意な顔で自分の能力を紹介するジャラジ。
その説明を聞きながらも、ガドルは怪訝な顔を浮かべている。
『一つ聞きたいことがある。貴様は何故このゲームに参加した?』
ジャラジがわざわざこのゲームに参加した理由。何故別世界のゲームに、ルールを守るわけでもないのに参加するのか。それが分からなかった。
ただ自分を殺すだけであれば直接戦いに来ればいい。ゲゲルを遂行するのなら元の世界でやったほうがいくらか楽であろう。
『その理由は二つあるよ。どっちから聞きたい?』
変わらない飄々とした態度でジャラジは返す。
どちらでもいい、とガドルが言うと、少し考える素振りを見せて口を開く。
『一つ目は自分の力を試すため。
この前ガリマに何となくついて行った時に、この世界と君の存在を知ってね。ガリマを簡単に倒す君なら、僕の力を試すのには最適かな?って。』
どうやらあの日、ジャラジはこの世界に来ていたようだ。
ガリマとガドルが戦うところを目撃して、それ以来ガドルの様子を時々伺っていたようだ。
そしてこのゲームの中であれば、多少暴れても問題ないであろう、そう考えた。
それが一つ目のようだ。
『二つ目はね〜。報酬を得るためかな?』
『報酬…とは?』
グロンギにとって人間界のものは無用の長物であるはず。
一体この者は何を得ようとしたのか?その答えは、すぐにその口から出た。
『君とリアス…だっけ?それ以外の君のチームメンバーだよ。
ゲゲルの最中で、高校生達が苦しむところを見るのは堪らないって思ったから。このゲームに勝たせることで僕は君達を好きに扱うことができるんだ。
針を刺して、死ぬか死なないかのギリギリの状態で放置し続ける…どんな顔をすると思う?』
簡単に並べられた言葉。
ジャラジは非道とされるグロンギの中でも更に非道と言われているため、何となく想像はついていた。
『なるほどな…ならば、』
ガドルは手を合わせて地面に向ける。すると、もう一本の剣が生成された。
『ここで貴様を殺しておくほうが良いということだな。』
『やれるものならやってみなよ…。
これからは、僕も全力でやらせてもらうからさ!』
二人はそれぞれの得物を構え、走り出した…。