と言うことで、今回も全部三人称です。
小猫とビュレント、木場とシュリヤー、マリオンの戦いはすでに終わりを迎えようとしていた。
木場は先日八神との修行の中で生み出した戦い方でシュリヤーとマリオンを翻弄していた。
一定のコースを走るのではなく、様々なコースを走り回ることで自分の位置を相手に特定させない。その上、相手の隙を突いていく。一撃の重さが軽い木場は、数で攻めていくしかないであろう。
「くっ!一体どこにいるの⁉︎」
「でてきなさいよ!」
シュリヤーとマリオンは木場の思惑通り、木場の位置を特定できずに見渡すだけになっており、まさに隙だらけであった。
すでにかなりのダメージが与えられているため、二人の限界は近かった。
そこで、最後の隙が生まれる。
「そこだ!」
木場は己が出せる最大限の威力を秘めた一撃を二人に放った。
「カッ…!」「そんな…!」
その一撃を開けた二人は、地に倒れ伏せてしまった。
「…えいっ」
「グァッ…!!」
その頃、小猫も最後の一撃をビュレントに叩き込んだところであった。
相手にねじり込むように放った彼女の一撃は、ビュレントを脱落させるには十分な威力があった。
動かなくなった三人の体が淡い光に包まれていく。
〔ライザー様の“兵士”三名リタイア〕
三人の体が冥界に送られたのを確認して、木場と小猫は互いに近寄る。
「お疲れ様でした、祐斗先輩。」
「お疲れ。次はどうするの?」
「イッセー先輩が相手本陣に向かったので、そこに行こうかと思います。」
「そうだね、じゃあ僕に乗って。
その方が早く着くと思うから。」
小猫を背中に乗せて、木場は“騎士”のスピードで兵藤の元に向かう。
これなら、兵藤が本陣に着く前には追いつくであろう。
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「残念だったわね、これで形成逆転よ?」
朱乃とユーベルーナの戦いは、他の戦いとは違って劣勢となっていた。
つい先程までは、朱乃が勝っていた。
負け惜しみでも何でもなく、事実であった。
朱乃が一度、ユーベルーナを戦闘不能の状態まで追い詰めた。
しかし、ユーベルーナは《不死鳥の涙》を用いて回復してしまったのだ。
《不死鳥の涙》とは、簡単に言えば万能薬である。
この液体を浴びた者はたちまち傷が治り、体力までは戻せないが、それまでに負ってしまったダメージが完全回復するのだ。
その不死鳥の涙を浴びた事で、彼女の体から傷跡が無くなっていき、戦いを始める前同様の姿に戻ってしまったのだ。
こうなると、朱乃にはもう勝ち目はないだろう。
これからも全力の戦いが出来るようになったユーベルーナに対し、朱乃はもうほとんど戦えない状態である。
「…それでも、私は貴女と戦い続けますわ。決して、諦めるわけにはいきませんから。」
それでも逃げない。
戦いが始まる前に、あの男の思いを授かったのだ。
朱乃は残った魔力を一点に集中させる。
「…?一体何をするつもりなの?」
「最後の切り札ですわ。私は必ず貴女を倒す。今の状態であれば、こうするしかありませんもの。」
「!まさか、貴様!!」
彼女が何をせんとしているか読み取れたユーベルーナは、自分の羽を伸ばして飛び立とうとする。
しかし、既に遅すぎた。
暗雲がかかり、所々に稲妻が走る。
「…後は任せましたわ、皆さん。」
大きな雷が凄まじい雷鳴を轟かせ、二人がいる場所に落ちた。
《リアス様、ライザー様の“女王”リタイア》
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《リアス様、ライザー様の“女王”リタイア》
この放送は、戦場にいたグレモリー眷属を全員驚かせた。
「そんな…朱乃さんが…。」
「イッセーくん!(先輩!)」
「木場!子猫ちゃん!」
愕然とした顔を浮かべていた兵藤の元に、木場と小猫が合流した。
「聞いた?今の放送…。」
「あぁ、聞いた。まさか朱乃さんが…」
悲しそうな顔で会話をする兵藤と木場。会話に入ってはいないが、小猫も同じような顔をしている。
チームの要の一つが落とされたのだ。これからの戦いに、少し不安がかかるのも仕方のないことであろう。
「でも、それだったら俺達がやるしかないだろ!勝って、朱乃さんとシュウに報告してやるんだ!」
しかし、その表情を浮かべるのも束の間。木場と小猫は兵藤の一言に頷き、敵本陣である校舎前にいる者達に視線を向ける。
“兵士”のニィとリィ、“戦車”のイザベラ、“騎士”のカーラマインとシーリス、“僧侶”の美南風とレイヴェル。合計七人の敵がそこにいた。
その中で最も身分の高そうなレイヴェルが一歩前に出た。
「貴方達のご健闘、本当に素晴らしいものです。先日は戦いのたの字も知らなかったような貴方達が、ここまで戦えるようになるとは思いませんでした。」
「それはどうも!俺達だって伊達に修行したんじゃない!」
「ですが、もう戦いは終わります。」
レイヴェルの一言の意味を捉えることができなかった三人は疑問の顔を浮かべる。
その様子を見たレイヴェルは、余裕の笑みをこぼす。
「上をご覧なさいな。」
その言葉の通り、三人は新校舎の屋上を見上げる。
そして、驚愕の表情に変わる。
「部長⁉︎」
そこには、悪魔の羽を広げたリアスと、不死鳥の羽を広げたライザーが向かい合う形で飛んでいた。
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『ハァッ!』
『まだまだ!』
結界の中のガドルとジャラジの戦いは激しさを増していく一方であった。
ガドルが右手で持っている剣を振り下ろし、ジャラジはサイドステップでそれを躱す。その後、左手で横に振られた剣を針で受け流し、ガドルの背後に回り込む。
ガラ空きである背中に針を突き刺そうとしたが、ガドルは前転で背後にいるジャラジとの距離を開ける。
そして、剣と針のラッシュが始まった。針は一撃受けるだけで折れてしまうが、折れた針の後埋めのようにすぐさま新しい針が生成される。
やがて、ガドルはジャラジの足を踏みつけることでジャラジが下がる事が出来なくなるようにし、体重を乗せた一撃を振り下ろした。
針で防ごうとするも、その一撃が針で止められることはなく、そのままジャラジを切り裂いた。
『ウグッ…!ハハハ、流石にやるなぁ。』
『そういう貴様もな。その力ならば、ジャーザやバベル、貴様の世界の私と同格になっているのでは?』
『残念だけど、彼らはもっとパワーアップしてるからね…。
…特に君なんかは。』
最後の一言はガドルに届いていなかったようで、再びジャラジに向かっていった。
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新校舎前の戦いもかなり激しいものになっていた。
木場は己の神器、魔剣を作り出す“魔剣創造”【ソードバース】を活用してカーラマインとシーリスを追い詰める。
小猫はニィ、リィに格闘勝負を仕掛け、持ち前の馬鹿力で全く引けを取らなかった。
兵藤は“洋服崩壊”で女性であるイザベラに対し強制的に隙を作って、そこに魔力弾を打ち込んで撃破し、美南風に向かっていく。
レイヴェルは戦闘要員ではないらしく、外から指示をするだけではあるが、その顔は苦々しいものになっている。
その様子をライザーは屋上から見下ろしていた。
「中々やるようになったじゃないか、君の下僕達も。」
その言葉の先には、服が所々焦げていて肩で息をするリアスがいた。
アーシアも隠れるようにではあるが、屋上にいる。
「ハァ、そうでしょう?自慢の下僕達ですもの。」
「あぁ、素晴らしいものだ。」
リアスは余裕を見せようとするも、体力は既に限界を超えていた。
ライザーの許しで時々アーシアが回復してくれるが、それでも体力はもたない。
そもそも、実力的に大きな差があるライザーと戦い、まだ倒されていないこと自体が既に奇跡であるが…。
「…それに対して俺の下僕共は…。」
ライザーが誰にも聞こえないように呟くと、手に炎の魔力弾を作り出した。
何をしようとしているのかリアスは理解できず、ただライザーの手の上の弾を見つめるだけであった。
しかし、その疑問はすぐに晴れた。
「やめなさい!ライザー!」
慌ててリアスが叫ぶが、時既に遅し。
ライザーが作り出した弾は真っ直ぐに兵藤達のいる校庭に向かっていき、大きな爆発を巻き起こした。
ごく普通の校庭が、一瞬にして火の海に変わり果てた。
「なんて事を!あそこには貴方の下僕達もいるのでしょう⁉︎」
「七人もいるくせに、たった三人に押されるようでは駄目だ。あいつらは今後鍛え直させるとして、この場では敵を巻き込む爆弾をさせるしか使い道がないだろ?」
リアスの抗議に、淡々とした口調で返すライザー。
その瞬間、放送が流れた。
《ライザー様の眷属、全員リタイア。及び、リアス様の“騎士”“戦車”リタイア》
「赤龍帝は逃れたようだな。」
兵藤はどうやら逃げ切ったようで、放送では乗らなかった。
しかし、それでもかなりの戦力を落とされた。木場と小猫、先程は朱乃も倒された。
その上、八神は敵のグロンギを倒すことに精一杯であり、アーシアは回復要員である。よって、リアスと兵藤だけで目の前の男を倒さなければならない。
しかし、倒せる可能性は極めて低い物である。なぜなら…
「俺は不死鳥だ。例え君達が何度攻撃してきたとしても、その数だけ蘇る。
既に君達に勝機はないという事だ。」
この男の体質にあった。
もし木場達が倒されていなければ、人数差で押し切ることが出来たかもしれない。しかし、リアスと兵藤だけでそれができる可能性はゼロに等しい。
現実を突きつけられ、思わず俯いてしまったリアス。
もう勝てない。この男と結婚しなければならないのか…。
そんな思いがリアスの頭に浮かんだ。
その時、屋上に繋がる扉がバンッ!と乱暴に開けられた。
その場にいた誰もがその来訪者の顔を見る。
そこには、兵藤が息を切らせながらも立っていた。
「お前…何してんだよ…」
途切れ途切れになっている言葉だが、兵藤は激怒しているのがハッキリと分かる。
「お前の仲間を犠牲にしてまで!部長を手に入れたいってのか!!」
「それもあるが、違うな!俺はフェニックス家の誇りのために、必ずこのゲームに勝たなければならんのだ!」
「こんな事して手に入れた勝利に!一体何の意味がある!」
「確かに君達を全員圧倒的な力でねじ伏せてこそ意味がある!しかし、あれ以上恥を晒すわけにはいかない!」
「ふざけんな!王ってのは、下にいる奴らをいいように使って良い訳じゃねえだろ!」
兵藤の脳裏に、下で見た光景が浮かび上がる。
『後は任せたよ』『よろしくお願いします。』と、言葉を残して兵藤を庇ってくれた二人。
そして何より、ライザーの名を呼びながら消えていったライザー眷属。
「俺はお前を絶対に許さねえ!ここでぶっ潰してやる!」
【Burst】
聞いたことのない音声がなったと同時に、兵藤は膝から崩れ落ちてしまった。
元々、赤龍帝の籠手は体力を他の神器より大きく消費させるため、持ち主の肉体的負荷もかなりある。
これまでの戦いを通し、今になって限界が訪れたのだ。
「イッセー!」「イッセーさん!」
リアスとアーシアの叫びが聞こえたが、兵藤の意識は少しずつ消えていくのであった…。
無理やり感半端ない事になってしまいました。
だが後悔はしていない。