閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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ここでの“不死鳥”は、死んでもある程度の回数なら蘇ることが出来る設定になってます。もちろん原作の様に傷が治ったりもします。

今回、レーティングゲーム決着!


二十五話目

(…ここは…?)

 

兵藤はどこか不思議な空間で横になって寝転んでいた。否、浮かんでいた。

その場は無重力状態であるため。まるで宇宙にでもいるかのような気さえする。

 

周りを見渡す限り、この場には兵藤ただ一人だけがいるようだ。

 

壁と言っていいのか分からないが、真っ赤に染まった空間が広がっている。

 

「ここは一体何処なんだ?部長?アーシア?」

 

先程まで一緒にいたリアスとアーシアの姿を探す。

しかし、二人の姿どころか声すらしない。

 

兵藤はこの状況に頭が付いて行かず、困惑の表情を浮かべていた。

 

 

『やっと話ができるな、クソガキ。』

 

 

そんな兵藤に、太く重い声がかけられた。

それと同時に灼熱の炎が舞い上がり、辺りを照らす。

 

声をかけてきたのは誰なのか、その人物を探そうと振り向いた兵藤の前に、驚くべき光景が広がっていた。

 

全長がビルよりも大きく、全身を覆う真っ赤な鱗、紅蓮の翼を広げているそいつは、正に伝説の生物、ドラゴンであった。

 

なぜこんな所にドラゴンがいるのかは分からないが、このドラゴンが一体何なのか、それは薄っすらとだが想像ついた。

そのドラゴンは口の端をつりあげながら兵藤に話しかける。

 

『自分でもわかっているだろう?今のままではお前はあいつには勝てないどころか、強くなる事も絶対にないことが。』

 

その言い方に腹を立てるも、言われている事が正論であるため、兵藤は顔を顰めながらも俯く事しか出来なかった。

 

『お前はドラゴンを身に纏う、いわば異常な存在なんだ。あまり無様な姿を見せてくれるな。白い奴に笑われてしまうからな。』

 

「白い奴…?」

 

『その話はまた今度でいいだろう。

とにかく、負けるのは構わないんだが、その後に強くなれるかどうか、だ。

負けた数だけ強くなり、勝ち進んでいくが良い。

そうすれば、いずれ奴はお前の前に現れる。』

 

淡々と話すドラゴンに対し、兵藤の頭には様々な疑問が浮かんでいる。

 

『兵藤 一誠。お前に問う、何を求める?』

 

ドラゴンがぶつけた疑問。

兵藤の頭に、仲間の顔が次から次へと浮かび上がる。

自分を守ってくれる、自分と共に戦ってくれる仲間の顔が。

 

「…力……。」

 

ボソッと呟く兵藤。ドラゴンはその言葉に反応して、兵藤に少しだけ近寄った。

 

「皆を守れる力が欲しい!俺の仲間が、どうしようもない俺の事信じてくれているんだ!

俺は、そんな皆を守りたい。

不死鳥だろうがなんだろうが関係ねえ!立ちはだかる奴らをぶっ倒すだけだ!」

 

そこまで一息に叫び、兵藤は左手をドラゴンに向かって突き出した。

 

「…だから、俺に力を貸しやがれ!赤龍帝!」

 

兵藤の思いをドラゴン…赤龍帝にそのままぶつける。

互いに沈黙が続いたが、赤龍帝は兵藤の真剣な顔から、兵藤の思い全てを受け取った。

 

『フッ…いい覚悟だ。合格だ兵藤 一誠。お前に俺の力の、本当の使い方を教えてやる。』

 

すると、兵藤の手に〝赤龍帝の籠手〟が現れた。

赤龍帝が翼を羽ばたかせると、周囲の炎の勢いが強さを増し、それに反応した籠手の宝玉が、より一層強く輝いた。

 

「これは…?」

 

『お前が望めば、俺はいつでも力を貸そう。ただ、これだけは覚えておけ。力を求めれば、それ相応の対価を払ってもらう。対価の大きさの分の力を与えてやる。

さぁ、お前を嘲笑った連中に見せてやれ。“ドラゴン”という存在を。』

 

赤龍帝は翼を羽ばたかせ、どこかへ飛び立とうとしている。

 

『我が名は赤い龍の帝王、ウェルシュ・ドラゴン“ドライグ”。来るべき日のために、強くなるが良い。相棒。』

 

その言葉の後、兵藤の意識は再び現実世界へと戻っていったのだった…。

 

 

ーーーーーーーーー

 

兵藤が倒れた後、リアスがアーシアに兵藤を診るようにさせたため、リアスとライザーは本当に一対一で向き合っていた。

 

「もう降参したほうがいいんじゃないのか?

もう結果は見えてるだろ。」

 

相変わらず余裕の笑みを浮かべているライザー。

リアスは両手の拳を強く握りしめて答えた。

 

「例え勝ち目がなかったとしても、私は諦めるわけにはいかない。必死に戦ってきた下僕達の王として。

ここで諦めるなんて、皆を裏切るようなことは絶対にしない!」

 

「…そうかい。熱い思いをする事がご希望なら、仕方ないな。」

 

ライザーは手に炎を灯し、リアスに向ける。

リアスはアーシアと兵藤の前に立ちふさがるように身構え、自分の魔力を高める。これで、いつライザーが攻撃してきても対応できる。

 

 

しかし、いつまで経ってもライザーは攻撃してくることは無かった。

 

それどころか、リアスの後ろを見て、驚いた顔をしている。

一体何に驚いているのか?

 

「イッセーさん!無茶しないでください!」

 

アーシアの叫びが聞こえる。疑問に思ったリアスは後ろを振り向いた。

 

 

そこには、足をふらつかせながらも立ち上がった兵藤がいた。

 

 

「イッセー…?」

 

「部長、もう、大丈夫です。」

 

兵藤は一歩、また一歩と歩き、リアスの前に立つ。

しかし、もう軽く押しただけで倒れてしまいそうな程であった。

 

「イッセー!無理しないで!」

 

兵藤の身を案じたリアスは、兵藤に向かって叫ぶ。しかし、兵藤は後ろを振り向くことなく返した。

 

「俺は、木場みたいに剣の才能はないし、小猫ちゃんみたいに力が強いわけじゃないし、朱乃さんみたいな魔力の天才でもないし、アーシアみたいな素晴らしい治癒の力もないし、シュウみたいに戦えるわけでもありません。

……でも、それでも俺は!最強の“兵士”になってみせます!輝やきやがれ!オーバーブーストォォ!!」

 

【Welsh Dragon Over Booster!!】

 

新しい音声が鳴ると同時に、フィールド全体に赤い光が走り、兵藤の身体は赤い装甲に包まれていく。

光が収まると、兵藤の姿は最初のそれと大きく変わっていた。

右手には左手と同じような籠手が装着され、頭も赤いカブトに覆われている。

両手の甲、両腕、両肩、両膝、身体の中心に宝石が輝く。

その姿は、龍の姿を象った全身鎧であった。

 

『どうやら、上手くいったようだな。先に言っておくが、この姿は十秒が限界だ。それ以上はお前の身体がもたない。』

 

「十分だ。それだけあれば、俺は…俺達はあいつをぶん殴れる!」

 

兵藤の脳裏に、ドライグの声が響く。

ドライグと頭の中で会話した兵藤は、鋭い眼光でライザーを睨みつけた。

 

「まさか…赤龍帝の力を鎧に具現化させたのか⁉︎」

 

「これが俺の“禁手”、“赤龍帝の鎧”【ブーステッド・ギア・スケイルメイル】!

俺を止めたきゃ、魔王様でも連れてくるんだな!禁じられた忌々しい外方らしいからな!」

 

 

【テン】

 

 

カウントダウンが始まり、兵藤はライザーに向かって動き出した。

まずは両手で魔力の弾を作り、ライザーに向かって撃つ。

ライザーは最初は受け止めようと手を構えたが、弾が徐々に大きさを増していったため、急転換してその弾を避ける。

 

 

【ナイン】

 

 

兵藤はライザーが避けた方向に向かう為に、背中についていた排出口から魔力を吹き出し、一気に距離を詰める。

しかし余りにもそのスピードが速すぎたために、気付いた時にはとっくにライザーを通り越してしまった。

 

 

【エイト】

 

 

「なんだそのスピードは…!

赤龍帝のクソガキ!悪いが、もう容赦はしねえ!認めたくないが、今のお前は化物だ!」

ライザーの心にも火が灯り、炎の羽をより一層強く羽ばたかせて兵藤に向かって飛び上がる。

 

 

【セブン】

 

 

兵藤とライザーの激しいぶつかり合いが続き、やがてライザーが魔力を込めた一撃を兵藤に放ったことで、兵藤が地面に向かって勢いよく落ちていく。

 

「カハッ…!」

 

地面に背中を強打して、肺の中の空気を吐き出した。

 

 

【シックス】

 

 

「不死鳥フェニックスと名付けられた我が一族の業火!その身で受けて燃え付きろぉぉぉ!」

 

「そんなチンケな炎で、俺が燃え尽きるわけねえだろうが!」

 

炎を纏い、正に“火の鳥”となったライザーと、背中から炎を吹き出し、“龍”のオーラを纏った兵藤が互いの全力がこもった一撃をぶつける。

 

 

【ファイブ】

 

 

「グッ…!」

 

その一撃の勝負を制したのはどうやら兵藤の方だったらしく、ライザーが苦痛の顔を浮かべた。

すかさず、兵藤がかかと落としをライザーの肩に命中させ、ライザーを地面に叩きつける。

 

 

【フォー】

 

 

「グ…!馬鹿な、この俺が、こんな…!」

 

余りの痛みに苦しむライザー。

そんな彼の元に、空から降り立った龍の鎧を纏った兵藤が、一歩一歩と近づいてくる。

彼から滲み出てくる覇気は、ライザーに恐怖を感じさせるのには十分だった。

 

 

【スリー】

 

 

「ま、待て!分かっているのか⁉︎この婚約は、魔界の未来がかかっている大事なものなんだぞ!お前みたいな小僧が一人でなんとかなる問題じゃ!」

 

「そんなの関係ねえよ。最近悪魔になった俺は、魔界の事情なんかよく分からねえさ。けど!お前は一つやってはいけない事をしたし!一つだけはっきりしていることがある!」

 

 

【ツー】

 

 

「お前に一つ教えてやるよ!アイツの受け売りだけどな!」

 

兵藤は大きく息を吸って叫ぶ。

 

「《王は民無くしては有り得ない》!

眷属の人達を道具としてしか見ないお前と、大事に見てくれる部長とじゃ!器も力も!部長の方が段違いに上だ!!」

 

 

【ワン】

 

 

「そんなお前みたいなヤツが!部長を幸せにできるわけねぇだろうがぁぁ!!」

 

兵藤が最後に残された全ての力を込めたパンチをライザーに打ち込み、真っ直ぐに殴り飛ばす。

ライザーは背後にあった壁に背中から打ちつけられ、ズルズルと崩れ落ちていった。

 

 

【カウントオーバー】

 

 

「…ざまぁみろ…。」

 

鎧が解除された兵藤は、今度こそ疲労によって倒れ伏せてしまった。

 

《ライザー様の脱落を確認。よってこの勝負、リアス様の勝利となります。》

 

勝利を知らせる放送が流れ、横になった状態で安堵の息を漏らす兵藤。

そんな彼の元に、リアスとアーシアが駆け寄ってきた。

 

「イッセーさん!」「イッセー!大丈夫⁉︎」

 

「部長…勝ちましたよ、俺達…。」

 

「!…えぇ、良くやってくれたわ。ありがとう…!」

 

倒れ伏せた兵藤を強く抱きしめるリアス。

あの時のような、平穏が戻ってきた…。

 

 

 

 

…一瞬だけの話だが…。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

『ハァッハァッ…流石に、そろそろマズイかな?』

 

『…よくやれた方ではないか?ここまで粘った事、十分賞賛に値する。』

 

『ハハッ、そう言ってもらえるとは、光栄だね…!』

 

不意を突くように投げた針も、虚しくガドルが持つ剣に弾かれてしまった。

すぐそこまで、自分の死が訪れてきている。その事はジャラジも十二分に分かっていた。

 

しかし、彼はまだ不敵な笑みを浮かべている。

ガドルは、彼が何を企んでいるのか読めなかった。

 

そんな二人の元に、一つの放送が流れる。

 

 

《ライザー様の脱落を確認。よってこの勝負、リアス様の勝利となります。》

 

 

『…フッ、やってくれたようだ。』

 

ガドルは嬉しさのあまり、この姿では珍しく笑みをこぼした。

 

対するジャラジはというと…

 

 

『そうか…負けちゃったのかぁ…。』

 

と、言っていることは残念そうにしているが、口調からは全くそのような感情は読み取れなかった。

 

『あちらも終わらせたという事だ。こちらも終わらさせて貰おうか?』

 

そう言ってジャラジに剣先を向けるガドル。

間違いなく、ジャラジの命運尽きたと言える場面である。

 

 

しかし、彼は未だに笑っていた。

 

 

『ねぇガドル…知ってるかな?』

 

ゆっくりと立ち上がり、ジャラジは開いた手をガドルに突き出す。

 

『勝ったと思った瞬間が、最も逆転されやすいタイミングだって事をさ。』

 

そう言って手を握る。

何をしたかったのか、ガドルはその時理解できなかった。

 

しかし、周りから異変の空気を感じたのはそのすぐ後のことであった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「う!がぁあああぁぁぁ!!」

 

「レイヴェル様⁉︎」

 

冥界の治療スペースにて、ライザーの妹であるレイヴェルが突然頭を抑えて叫んだ。

他のライザー眷属がレイヴェルに駆け寄り、治療魔法を使っている悪魔はより強く治療魔法をレイヴェルにかける。

 

しかし、そんな意味はありませんよと言わんばかりに、レイヴェルは少女から出てるとは思えない程の大声をあげていた。

 

「一体、何が…⁉︎」

 

その場にいる木場と小猫と朱乃も、不審そうな顔で目の前の現象を見ていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「うぐ!グォオおオォォォ!!」

 

バトルフィールド内では、ライザーがレイヴェルと同じように頭を抑えてうずくまりながら叫んでいた。

 

「なに⁉︎一体どうしたのライザー⁉︎」

 

たった今まで敵として戦ったリアスまでもが心配するほど、今の彼の状況は異常であった。

 

「「アアァァァアァァァ!!!」」

 

冥界とバトルフィールドで、二人の兄妹が凄まじい悲鳴をあげていた…。

 

ーーーーーーーーーー

 

『なんだ⁉︎貴様、一体何をした!』

 

結界の外で起こっている異変に気付き、ジャラジに問いただしているガドル。

更に、ジャラジの力が徐々に上がっているような気さえしている。

 

『…この前さ、僕がこのゲームに参加する許可を得るために、フェニックス達の元に殴り込みに行ったんだよ。』

 

その問いに答えるためなのか、ジャラジは静かに語り出した。

 

『奴らは簡単に倒したんだけど、君との戦いはどうなるか分からなかったから、彼らに保険かけといたんだ。』

 

『保険…だと…?』

 

『そう。』

 

言ってる意味が分からない。

彼ら、とはライザー達のことであろうが、ライザー達に保険をかけるとはどういう事なのか。

 

その疑問を読み取ったのか、ジャラジは笑みを浮かべながら続けた。

 

 

 

 

『不死って便利だよね〜。何度殺しても、限度越さない限りは蘇り続けるわけでしょ?』

 

 

 

その言葉で、ジャラシが言った保険の意味が分かった。

更に言うと、先ほどジャラジがやった不可解な行動の意味も分かってしまった。

 

 

 

『まさか、貴様!!』

 

 

 

『そう、フェニックスと呼ばれる二人に、針を仕掛けたんだ。僕が意図した時に伸び縮みする特注品の針をね。

僕はゲゲルの対象を人外に設定してるから、彼らを殺せば力が上がる。

つまり、この世界のゲームで言うマサオの無限一アップってやつ?』

 

 

 

ジャラジの世界では、ゲゲルは指定された条件に当てはまる人物を殺せば殺すほど己の力が上がっていく仕組みである。ついでに、その殺した人物のスペックが高ければ高いほどその力はより強く上昇するのだ。

ジャラジはゲゲルの対象を人外としているため、ライザーとレイヴェルを殺せば力が上がる。その上、この二人の種族は“不死鳥”であるため、死んだと同時に蘇る。

それを利用して、ライザーとレイヴェルを殺し、生き返ったと同時に殺し、また生き返ったと同時にまた殺す。それを繰り返している。今二人は、無限の苦しみを味わっているのであろう。

 

 

『ゲスが…!』

 

『なんとでも言うといいさ。僕は力が手に入るのなら、ゲスの道でも喜んで進むつもりだよ?』

 

ガドルの中に、ジャラジに対する憎悪の感情が湧き上がってくる。

 

『そんな綺麗事なんか求めていないよ…。

さあ、再開しようか。僕と君との決着つけるために。』

 




今日、私佐竹は退院しました〜!

「てことで、更新ペースが遅くなりま〜す。」

ちょっと!言うの早すぎだよ!

「だって事実じゃん?」

…確かに、これからは一日一回の更新はできなくなると思います。ただ、一週間に一回は更新できるようにしていこうと思いますので、これからもどうかよろしくお願いします!

「次回もお楽しみにな〜」
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