閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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ファイズの木場 勇治役、泉 政行さんが亡くなりました…。
たっくんと木場さんの会話は、劇場版も本編も大好きだったし、激突シーンも大好きだったし…
というか、泉さん自身が好きだったので、本当に残念です…。

彼の御冥福をお祈りいたします。


二十六話目

ライザーとレイヴェルを複数回ずつ殺したジャラジの力は、始めの時と比べ大きく跳ね上がっていた。

ガドルの剣を受けるだけで一気に四本折れていた針は、一本だけで防ぐことが出来るようになっていた。

勿論ジャラジ自体の戦闘力も上がっているため、肉弾戦でも引けを取らない程になっていた。

 

それどころか、戦いを続けている今でさえライザー達を殺し続けているため、常に力は上がり続けているのだ。

 

『ほらほら!こんなにのんびりしていてもいいのかい⁉︎僕は少しずつ強くなっていくんだよ!』

 

針一本が剣と同等の威力を秘めており、一撃を喰らうことがそのまま致命傷になる。そのため、ガドルはジャラジの攻撃を防ぎ続けている。

つまり、結果として攻撃することが出来ずにいる。

 

 

これまで全ての攻撃を受け流していたガドルの横腹に、ジャラジの蹴りが入った。

スピードもより速くなっている。

 

『グッ!』

 

そのまま地面を転がっていき、結界の壁に衝突したガドル。

立ち上がろうとしたガドルに向かって、これまでより鋭い針が飛んで行く。

持っていた剣でその針を弾くことが出来たが、その頃にはジャラジはガドルの元に動いていた。

 

ジャラジは新たな針を作って指に挟み、メリケンサックの要領で拳をガドルに突き出した。

 

ガドルは剣を横に構えることでその拳を受け止めようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、剣はパリィンという音とともに粉砕され、その拳はそのままガドルの胸に突き立てられる。

 

 

 

 

その拳を引き抜くと、針が刺さっていた傷跡から鮮血が噴き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…グッ……ァ……。』

 

苦痛の声を漏らす。

針は心臓に届いてはいなかったが、それでも一本の威力が剣のそれと等しい針が身体に刺さったとなれば、かなりの痛みが走るのは当然の事だ。

 

『フハハ…さぁ、今度は君の方が大ピンチだね。

この中なら、君のお仲間が助けに来ることもないし、今現在もパワーアップしてる僕に勝てるわけないしね。』

 

ジャラジは余裕の笑みを浮かべつつ、ガドルに話しかける。

だが、当の本人は既に話す気力もないのか、その言葉に反応する気配はまるで感じ取られなかった。

 

『君に何個か選択肢をあげるよ。

小さな針を数本刺して出血多量で死ぬか。一思いに大きな針で即死になるか。毒を込めた針で苦しんで死ぬか。

あ、そうだ。もう少しすると更に選択肢が増えるから待っててくれてもいいよ?』

 

それでも帰ってくる答えはない。

ガドルは結界の壁に寄りかかるように座り込み、下を向いている。

 

しばらくして、待ちくたびれたようにジャラジが口を開いた。

 

『もう答える元気もなさそうだね。

だったら、もうここで終わりにしようか。僕のこの最も大きな針で貫いてあげる。』

 

そう言って、掌に新たな一本の針を作り出す。

もはや針と言っていいのかと、首を傾げたくなるようなソレの先をガドルに向ける。

 

 

 

 

『それじゃ、さよならだ。

安心していいよ?君の仲間達は僕の大切な玩具として使わせてもらうから。』

 

 

 

 

そう言って、針を持つ手に力を込めた一撃を放った。

針はガドルに突き刺さり、ガドルの身体から赤い血が吹き出す。

 

 

 

 

『フフッこれで終わりだね…。』

 

勝利を手にしたジャラジは、結界の外へ出ようと結界の壁に歩き出そうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、それを阻むように地面が蠢き始めた。

不意を突かれたジャラジは、自分の体勢を保つ事に意識を向けた。

 

『一体、何が…⁉︎』

 

ジャラジが本能的に危険を感じて前転する。

振り返ったジャラジの視界に入った物は、たった今まで自分が立っていた場所を粉砕した剣であった。

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

何かが凄まじい速さでジャラジの頭が掴み、ジャラジはそのままの勢いで結界の壁に叩きつけられる。

 

『な…何だ……⁉︎』

 

ジャラジは頭を掴む何者かの姿を見ようと頭を動かす。しかし、頭を掴む腕の力がかなり強く、全く動かすことが出来なかった。

 

必死にもがくジャラジの耳に、カシャっと金属の音が聞こえた。

 

その音の正体はすぐに分かった。

 

 

 

 

 

ジャラジは右肩から左腰にかけて一筋に切られてしまった。

 

 

 

 

 

『グァア!!』

 

あまりの苦痛に顔をしかめるジャラジ。

 

ジャラジの頭を掴んでいた何者かは、ジャラジを横に投げる。

そのまま地に倒れ伏せるジャラジ。

 

一体誰が自分をこんな目に合わせたのか、確認する間も与えないように、再び振り下ろされた一撃を受け止めるが、すぐさま別のもう一本の剣がジャラジを突く。

 

『ウグァ!』

 

吹き飛ばされたジャラジは、必死に顔を上げて何者かの姿を見ようとした。しかし、動きが速すぎて何処にいるのか見当さえつかない。

相手にしている何者かはそんな事御構い無しに少しずつ近寄ってくる。

何とか距離を開けようと、バックステップを切ろうとするが、真後ろに突然出てきた大地の壁に防がれてしまう。

焦りの色を見せたジャラジに、また剣が振り下ろされる。

その一撃を防ぎ、先ほどと同じように突き出されたもう一本を避けることに成功した。

 

攻撃が止んだ一瞬の間に、ジャラジは急ぎ距離を開ける。

 

『ハァ、一体、何なんだよ。』

 

今この結界の中には、ジャラジとガドルしか存在していない。

だが、ガドルは既に動く事が出来なくなっているはずであった。

そのため、最初に頭を掴まれた時は誰が掴んでいるのか分からなかった。

 

しかし、戦っている最中にその姿を確認する事が出来た。

 

『何で、まだ動けるんだよ…ガドル!』

 

針が刺さっていた部位からは血を流し、胸には小さな穴が痛々しく残っている。

勿論傷はそれだけではない。実際、身体のあちこちに針が刺さった痕がある。

 

にも関わらず、その立ち姿は高貴さを感じられた。

 

 

ガドルはチラリとジャラジを見据えると…。

 

 

『!!?』

 

 

爆発的なスピードで一瞬のうちにジャラジの懐に入った。

 

右手に持つ剣を振り上げる。

危険を感じたジャラジは一歩後ろに下がったが、少し腹を斬られたようだ。

応戦しようと、指に細めの針を数本作り出す。先程よりも強化されている針だ。

数本の針を一気にガドルに向けて投げる。

 

『この針、さっきより数段威力が上がっているよ!これまでの針でさえ受けきれなかった君では、この量を防ぐことなんて出来はしないだろ⁉︎』

 

少し焦りが見えるが、それでも笑みを崩さない。

先程ガドルを追い詰めた針よりも威力が高い針。これなら、確実にガドルを仕留めることができる。

そう思っていた。

 

 

だが、ガドルは持っている剣を思いっきり横に降ると、強烈な衝撃波が起こった。

その衝撃波は、すべての針を止めてしまった。

 

ジャラジはその光景を信じられない顔で見ていた。

急に自分が圧倒され、切り札があっさりと止められた。

悔しげに俯き、ギリギリと歯ぎしりをしている。

 

『まだだ!数でダメなら、一撃で沈めてやれば!!』

 

そう叫ぶと、両手を広げた。

ジャラジの両手の前に、また新たな一本が生成されていく。

しかし、その一本は長く太いものであり、最早針というより槍と呼べるようなものであった。

 

たった今、ジャラジは己の戦い方を捨てたのだ。

 

『これで決めてやる!流石にこれを止める事なんて、出来るはずがない!!』

 

ジャラジはその槍のような針を全力で投げた。

 

針は真っ直ぐにガドルの心臓に向かって飛んでいく。

 

ガドルは一度剣を手放し、右手を前に突き出した。

 

手先から少しずつ黒く染まっていく。

 

ガドルの手と、ジャラジの針がぶつかった…。

 

 

 

バギィンッ!!と激しい音がなり、ジャラジの槍はガドルによって粉々になってしまった。

 

『そ…そんな…。』

 

自分の最強の一撃が止められた。

そのショックは、ジャラジを戦意喪失には十分であった。

 

 

『…こんなものか?貴様の本気は。』

 

これまで全く口を開かなかったガドルが話し出した。

 

『この程度の攻撃、いくらでも破壊してやるぞ。

俺を倒すのだろう?今の貴様ははっきり言って話にならん。』

 

その言葉は冷たく、鋭かった。

さっきまで死に損ないであったとは思えない覇気をまとっている。

まるで別人のようだった。

 

『何なんだよ…。』

 

ジャラジは身体を震わせている。

それが恐怖から来ているのか、闘争心からなのか、悔しさからなのか…

 

『一体何なんだよ!お前はあぁぁぁ!!』

 

そこら一体に針を作り、一気にガドルに向かって撃ち出した。

ジャラジの力は既に最初とは比べ物にならないくらいに跳ね上がっていた。今となっては、針を空気中に作って撃ち出すことができるほどに。

 

 

『…俺は。』

 

多くの針が迫ってきているというのに、ガドルはその針を見向きもしていなかった。

そした、さっきのジャラジの問いに答えるように、静かに口を開いた。

 

 

 

『俺は破壊のカリスマ。ゴ・ガドル・バだ。』

 

 

 

二本の剣を融合させることで一本の剣を作り、構える。

そのまま上に振り上げ…

 

『はぁっ!!』

 

一気に振り下ろした。

 

斬撃は大地を荒らす衝撃となり、針と共に突撃してくるジャラジへと向かっていく。

 

宙に浮かぶすべての針を砕き、斬撃は消えていった。

 

 

『くっそぉおおお!!』

 

ヤケクソになったのか、ジャラジはかなり大きな針で攻撃を仕掛けた。

 

ガドルは剣を両手で持ち、走りだした。

すれ違いざまに、横一閃の斬撃を与える。

 

辺り一遍に沈黙が走る…。

 

 

 

 

やがて、ガドルは持っていた剣を投げた。剣は元のように石の塊となって、地面に落ちる。

 

ジャラジの横腹から血が吹き出し、ジャラジは膝から崩れ落ちるように倒れた。

 

『…ヤケになった時点で貴様の戦いは終わりだ。

戦い方を捨てた貴様に、勝ち目などない。』

 

『勝ち目ない、か…、言ってくれるじゃないか…。』

 

仰向けに寝ながら、ジャラジは笑ってガドルの言葉に返す。

その後、フラフラと膝に手を置きながら立ち上がった。

 

『けど…僕としても、こんなとこで終わるわけにはいかないんだよ!』

 

ジャラジが叫ぶと同時に、これまでより多くの、そして大きな針が出現した。

 

『君が僕の針を壊した時も!僕の横腹を切ってくれた時も!余裕ぶっている時も!あいつら殺し続けて力が上がってるんだよ!!』

 

高笑いしながら叫ぶジャラジを、ガドルは憎悪の顔で見ていた。

 

 

『このままずっと強くなる!今勝てなくても後で勝てる!そこで勝てなくてもいずれは勝てる!

お前程度のやつが、僕に勝てるわけが!』

 

 

 

 

ドゴォオォォォォン!!!

 

 

 

 

 

そこまで叫んだジャラジの顔で、大規模な爆発が起きた。

また、その爆発はジャラジが作り出した武器を全て打ち砕いた。

 

ジャラジはいきなりの爆発に驚き、苦しい声を上げる。

 

 

『…そうか、ならば仕方ないな。』

 

ガドルはジャラジを、蔑みの目で見ていた。

 

指を前にゆっくりと伸ばし、ジャラジに中心を合わせる。

 

『貴様に教えてやろう…。死ぬ一歩手前の身体で、味わい続ける痛みの苦しみを!』

 

そう言うと、力強く指を弾いた。

ジャラジの身体は爆炎に包まれ、ジャラジから悲痛の叫びが聞こえる。

炎が収まった頃にもう一度指を弾き、再び爆炎がジャラジを襲う。収まればもう一度…。それを繰り返していた。

 

『どうだ!これが貴様があの兄妹に味合わせた痛みだ!!

こんな物ではない…もっと、貴様が自ら死を選ぶようになるまで痛めつけてやろう!』

 

幾度となく繰り返される爆撃。ジャラジは既に黒コゲになって、満身創痍もいいとこである。

 

『それから、あの者達を玩具にするだと…?

調子に乗るな!貴様の様な外道に、あいつらを好きな様にはさせん!』

 

更に力を込めて大きな爆発を起こす。

続け様にもう一発、更にもう一発。連続で放たれる爆撃は、ジャラジを肉体的にも精神的にも追い詰めていった。

 

『あいつらも!あの兄妹も!貴様の思い通りにはさせん!

貴様の様な奴は!この俺がここで殺して!』

 

叫びながらも爆撃を起こし続けたが、最後の叫びをあげる。

 

 

 

 

 

 

すると、ガドルの指が止まった。

 

 

 

 

 

 

ガドルの腕は、力を込めてガクガクと震えている。

どうやら、指を弾くことを止めるために力を加えているようだ。

 

既にジャラジ自身は生き絶えており、身体がだんだん灰になって消えていってしまった。

 

それを見たガドルは、そのまま力が抜けたように倒れ伏せる。

すると、ガドルの身体は少しずつ人間の身体・八神に戻っていった…。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

バトルフィールド、旧校舎を出たすぐの辺りで、グレモリー眷属達は全員がとある一点に向かって走っていた。

最後までリタイアにならなかった兵藤、リアス、アーシアの三人は、ライザーを一度救護室に運び、リタイアになって治療を受け終わった朱乃、木場、小猫と合流した。

そして、まだもう一人の仲間が戦っている場所に向かって動いているのだ。

 

実は、このバトルフィールドがある空間は、大規模なエネルギーのぶつかり合いによって崩壊しかけている状況下にあったのだ。

 

勝利を収めた後とは思えない空気で足を急がせる眷属達。

 

「小猫!イッセー!この先なのね⁉︎」

 

「はい!」「間違いないです!」

 

体育館の角を曲がり、出入り口の前に着いた。

そこには、結界は既に無くなっており、誰かが横になっているのが見えた。

 

肩から、腕から、胸から…様々な部位から血を流しているもう一人の仲間・八神であった。

 

「「「シュウ(先輩)(くん)!!」」」

 

真っ先に兵藤、小猫、朱乃が駆け寄っていく。

目の前で大怪我をしている仲間を見て、動揺が隠せない部員達。

そんな中で、何とか平静を保っていたリアスは次々に指示を出す。

 

「アーシアはすぐに治療に入って!朱乃は魔法陣を展開!イッセーと小猫、祐斗はシュウを魔法陣まで運びなさい!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

八神を回収し終わった部員達は、すぐに魔法陣で冥界へと帰っていった…。

 




詰め込み感ハンパない事になってしまいました…。
ですが、後悔はしていません。

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