閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

33 / 63
夏休み終わってしもた……。
まだ海行ってない〜山行ってない〜遊び足りない〜!(駄々っ子)

ま、仕方ないね。心機一転、二学期も頑張りますか!

それではどうぞ、


二十九話目

 

イッセー宅で部活をしたあの日以来、目に見えてユウトの様子がおかしい。嘗ての部長以上にボーっとしてる。十回話しかけた内、四回は「うん?どうしたの?」ってなるし、六回は反応すらしない。オレの言葉に全く耳を傾けてくれねぇんだ。

今だって窓越しにグラウンドを見てるが、その目は何か気になるものを見ているというより、ただ目に映っているものを眺めている感じだ。

 

そんなユウトのもとに、女子生徒の木村さんが歩み寄ってきた。

 

「木場くん、バスケチームのメンバーに入ってくれないかな?」

 

「………」ボーッ

 

近い内にあるクラスマッチ、バスケに関する相談をユウトに持ち込む。けど、ユウトは相変わらず外を見ているだけだ。

ほらほら、木村さんが無視されて悲しそうにしてるぞイケメン。

 

仕方ねぇな、何とかしてやろう。

オレはスゥッと息を吸って…

 

 

「おーい!!ユウト〜!!」

 

 

と、耳元で叫んでやった。

 

「うわっ!ど、どうしたの?」

 

「どーしたもこーしたもあるか、木村さんがお前のせいで泣きそうだぞ?」

 

「えっ⁉︎あの、そこまでじゃないんだけど…」

 

ユウトの耳元で叫んだ事でやっと気付いたらしく、その後はユウトと木村さんの話になる。ユウトは二つ返事で引き受けたようだ。

 

「八神くんも入ってくれない?」

 

「オッケ、任しとけ!オレとユウトで絶対勝ちをもぎ取ってやっからよ!」

 

「……うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

一方、部活の方でも部活対抗戦に向けての練習が進められていく。部活対抗戦がクラスマッチと同時期に行われるのは珍しいよなぁ。

部活対抗戦はクラスマッチとは違って、競技は何になるのか前日…と言うか今日の放課後、午後六時になるまで分からねぇ。だから手当たり次第にいろんな競技を練習していくしかねぇんだけどな。

 

今日の練習は野球。攻撃と守備に別れて練習をする事になった。攻撃は小猫とアーシア、朱乃先輩が、守備はオレとユウト、イッセーと部長が行っている。

 

 

「…えい。」

 

グワァキィィィィィン……!!!

 

…相も変わらず、声と威力が一致してない。なんだよ今の、野球選手もビックリな『大・大・大・大・大・ホームラン!』がぶっ放されたぞ。遥か彼方、マンションの窓を突き破ってるし。(←射撃体)あ、住んでるオバさんがオロオロしてる。

コレなら攻撃は問題なし、四番は小猫で決定だな。

 

 

オレとユウトとイッセーは、部長がバッティング練習の相手をやってくれている。

 

「イッセー!」カァァァン

 

「オ、オーライ!オーライ!」パシッ

 

「シュウ!」カァァァン

 

「ほいほいっと」パシッ

 

「ナイスキャッチ!二人ともいい感じよ!」

 

危なっかしくもしっかりキャッチできたイッセーと、楽々キャッチできたオレ。

 

 

 

「祐斗!行くわよ!」カァァァン

 

「………(ボーッ)」ボスッ

 

しかし、ユウトは飛んできたボールに反応出来なかった、いや、反応しなかった。

ボールはユウトの真横に落ちてコロコロと転がっていく。動きが速いから守備の要になると考えてるのに、アレじゃなぁ〜。

 

「祐斗!ちょっとこっちに来なさい!」

 

部長が大きな声でユウトを呼んだ。多分説教されるんだろうが、

 

「なぁシュウ、木場のやつ、一体どうしたんだろうな。」

 

「…知らねぇよ。お前も知っての通り、お前ん家で部活したあの日以来ずっとあんな調子だ。理由なんてオレも知りてぇくらいだ。」

 

心配してるのか、イッセーが少し暗い顔で話しかけて来た。とは言え、オレ自身も分からねぇことだらけだから何も答えられなかったがな。

 

 

……確か、ユウトがあの写真を見てからおかしくなったんだよな…。オレとイッセー、そしてアイツが写ってる写真。その背景にあった一本の剣を凝視してた。聖剣って言ってたが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙な音が鳴り、脚元がフラフラし始める。

ナンダ?地震か?とても立てたもんじゃなく、オレは思わず倒れ込んでしまった。

頭から倒れたのか、かなり頭が痛ぇ。

オレの視界に、イッセーが驚愕の顔を浮かべながら走って来ているのが映る。いや、別の方から部長や朱乃先輩達も来てるな。

…アンタら…よく…普通に立って…いられるな…。

 

 

…って…あ…あれ…?目の前…が…真っ暗に…なって…いく…。

 

 

 

 

 

八神の意識、Black Out

 

 

ーーーーーーーー

 

アホー アホー

 

 

 

…あれおかしいな。アホウドリって今現在は絶滅危惧種じゃなかったか?この世界では違うのか?

ってか、実際にアホーとは鳴かねぇぞ。聞いた感じはギーだったハズだ。何で空気を呼んだようにその鳴き声を出すんだよ。

 

とまぁ、オレはアホウドリの鳴き声で目を覚ました。頭には柔らかい何かが敷かれてる。枕でも置いてくれたのか?

既に赤くなった日光が眩しく、中々目を開けられねぇけど、何とかうっすらと目を開けた。オレの目に映ったのは、女子用制服の上部分の生地だった。

…アリ?何でそんなもんが映るんだ?

 

「あらあら、うふふ。目が覚めたのですわね。安心いたしました。」

 

…生地の向こうから朱乃先輩がニュッと顔を覗かせてきた。

 

「シュウくん、部長との練習の中で頭を打たれたんですの。それからずっと気絶しておられたんですわ。」

 

成る程、それで頭痛が起きたりフラフラしたりしたのか。脳震盪にならなかったのは不幸中の幸いだな。

 

「すんません、世話してくれたんすよね?」

 

「いいえ、対した事ではありませんわ。シュウくんの可愛い寝顔も見れたことですし。」

 

…クソ、そんな事言わねぇで欲しい。恥ずかしすぎる。練習中に頭打って気絶して、人に寝顔を見られるとか…今日は最悪の日だな…。

 

 

 

……ん?ちょっと待てよ?

 

 

 

寝顔を見られて、オレの視界に朱乃先輩の顔が映るって事は……

 

 

 

……イヤナヨカンガスル。

 

 

 

オレはそ〜っと頭に敷いている柔らかい物の正体を確認した。

それは、綺麗な艶のある肌色だった。

それは、丸みがありながらも綺麗な形をしていた。

それは、そのまま目の前に映る女性の元に繋がっていた。

 

 

 

 

……まさか、コレって……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膝枕ぁぁ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オンギャァァァァァ!!!」

 

オレは変な叫び声をあげながら跳ね起きた。直ぐそこにあった木に身体を預け、ゼーゼーと息をする。

なんてこったい!女性に…在ろう事か、部活の先輩にあんな事されるなんて!イッセーなら泣いて喜ぶだろうが、オレはとてもじゃねぇけど喜べねぇよ!緊張するわ!!

 

その様子をポカンとした顔で見ていた朱乃先輩は、段々と顔を暗くする。

 

「……嫌……でしたか?」

 

「いや、決して嫌だったわけじゃないんすけど…!えっと、なんと言うか、ビックリしただけでして…!」

 

目をウルウルとさせて聞いて来た朱乃先輩。そんな顔しないでくれ!今のは拒絶反応じゃなくて、反射的な動きだったんだ!

やべぇ!朱乃先輩の顔がどんどん暗くなっていく!

 

あ〜!こうなったら!

 

「すんませんしたぁぁぁ!!」

 

THE☆土下座だ!

 

「その、意識なかったとは言っても、かなり迷惑かけちまって…!」

 

朱乃先輩は黙ってオレの土下座を見ている。こうなりゃ仕方ねぇ!雷でもなんでも受けてやらぁ!どんと来い!

 

 

「……フフッ」

 

朱乃先輩から優しい笑い声が聞こえた。顔を上げたオレが見たのは、さっきまでの暗い顔をしておらず、いつも通りの笑い顔を浮かべている朱乃先輩だった。

 

「冗談ですわ。最初に飛び起きられた事には驚きましたけれど、シュウくんの性格の事を考えると当然の事ですし。

ただ単に、シュウくんが面白くてからかっていただけですわ。」

 

 

…なんだよそりゃ〜。

オレはヘナヘナヘナと脱力していく。

 

「さぁ、そろそろ部室に戻りましょうか。恐らく、部活対抗戦の競技が決まった頃だと思いますし。」

 

「え、えぇ。そうっすね。」

 

オレと朱乃先輩は一緒に部室へと戻っていく。

 

 

「…でも、少しだけ残念ですわ。」

 

「ん?何か言いました?」

 

「いいえ、なんでもありませんわ。」

 

 

 

部室に着いて少し待つと、部長が嬉しそうな顔を浮かべながら一枚の紙を持って入ってきた。

 

「部活対抗戦は、ドッヂボールに決定よ!」

 

ドッヂボールか…生徒会メンバーと皆が戦って以来だな。

 

「明日は全員で勝ちに行くわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

皆でモチベーションを上げる。しかし、ユウトは見事に無反応だった…。

 

ーーーーーーーー

 

クラスマッチ及び部活対抗戦当日。

 

二年のクラスマッチ決勝はオレ達のクラスとイッセー達のクラスだった。

相手チームにはイッセーを始めとする、そこそこ運動神経がいい奴が集まっていた。

 

「どぅらっしゃい!!」

 

「どんな掛け声だよ!」

 

ブロックで飛んできたイッセーを跳ね飛ばし、ダンクを叩き込む。一点差でオレらのリーチだ。

ところが、攻守交替になったら奴らが凄い勢いで攻めてくるため、オレが戻ることもできねぇ。

 

「これでもらった!」

 

松田が意外と綺麗なレイアップを決めた。そーいやあいつ、運動神経悪くねぇんだよな。忘れてたけど。

残り時間は少なく、一点差で負けている。

 

「さぁ、守りだ!」

 

「ユウト!パス!」

 

ゴールの近くに立っていたユウトにパスを要求する。

しかし、ユウトは相変わらずボーッとしており、ボールを取りに行く素振りすら見せなかった。

 

「ユウト!!」

 

「!…あ、ゴメン」

 

やっと気がついてくれたユウトは、安定したパスを送ってくれた。

 

「よし!次は絶対止めてやる!」

 

オレの前にイッセーが立ち塞がった。成る程、オレと少し距離を空けた位置に陣取っていることから、時間稼ぎをしようという事か。

 

フッ、甘いなイッセー。

 

 

「…オレのシュートは…。」

 

オレはそのままシュートモーションに入る。ハーフラインで撃ってくるとは想定外だった様で、イッセー達が驚いてる。

 

 

「落ちん!」

 

 

放たれたオレのシュートは高い起動を通り、ゴールネットに触れる事もなくストンとゴールに入っていった。

 

 

 

…ごめんなさい盛りました。あんな天才的な事は出来ません。

ポストで数回バウンドをしながらも、何とかゴールに入れることが出来た。

 

三点追加され、オレ達が二点リードしたところで試合終了のブザーが鳴る。オレ達の勝ちだ。

勝ったのは良いものの、結局ユウトは終始ボーッとしていた。こんなんじゃ部活対抗戦も大変な事になるぞ?

 

 

 

ーーーーーーーー

 

午後から始まった部活対抗戦。我らがオカルト研究部は一応文化部ではあるが、一人一人のスペックが異常のため、運動部相手でもかなり善戦であった。

 

…まぁ……

 

 

 

「クソッ!当たれ変態野郎!!」

 

「お前の存在が腹立つわ!!」

 

「何で俺ばっかり狙われんだよぉぉぉ!!」

 

 

 

イッセー君しか狙われてないけどね。

 

恐らく、奴らにとってはイッセー以外の人物を狙いたく無いんだろうな。理由は下の通り

 

部長←憧れの美女に当てる事など出来ぬぅ!!

 

朱乃先輩←お姉様に当てる事など出来ぬぅ!!

 

小猫←可哀想だから当てる事など出来ぬぅ!!

 

アーシア←天使様に当てる事など出来ぬぅ!!

 

ユウト←女子の怨みが飛んできそう。当てる事など出来ぬぅ!!

 

オレ←外野にいる。当てる事など出来ぬぅ!!

 

ってとこだな。それだけでもイッセーが狙われんのには十分な理由なのに加え、周りが美人ばかりという嫉妬の心も籠っているのであろう。愚かな話よ。

……外野に逃げたのは正解だったな。

 

けど、イッセー自身も身体能力は高いからスルスル避けることが出来ている。

やがて、痺れを切らした一人の男子…金山君だっけ?がユウトを狙い始めた。

 

「女子に怨まれたって知った事か!俺の憎しみは、オカルト研究部の男全員に向いているんだ!」

 

放たれたボールは真っ直ぐにユウトの顔面目掛けて飛んでいく。あのスピード、普段のユウトなら軽く避けられるんだろうが…。

 

 

 

バンッ!

 

 

 

あっさり当てられた。

 

 

 

ユウトが外野に来ることで、元から外野にいたオレが交代という形で内野に入り、まだ自陣を転がっていたボールを拾う。

 

さて、最初の的はあいつだな。

 

 

「ズドリャッシャイ!!」

 

「グボァ!……何で…いきなり…俺…?」

 

「オレに宣戦布告してきやがったから」

 

金山君に全力投球をお見舞いしてやった。

オレのバーニングショット(仮)を腹に喰らった金山君は地に倒れ伏せる。オレに歯向かって来たものの定めなり。

 

 

 

そっから先も順調に相手を倒していき、その試合では勝利を収めた。

 

 

 

…途中でイッセーが股間にボールをブチ当てられて悶絶してたけどな。アーシアが治療の為に抜けたから、チームの内二人もいねぇ状態だったけど、何とかなった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

パンッ!

 

 

乾いた音が部室に鳴り響く。ユウトが部長に叩かれた音だ。

 

何故叩かれたのかって?簡単な話だ。以前からボーッとしていたのに加え、クラスマッチや部活対抗戦でも集中していなかったユウトに、部長が怒ったんだ。

 

「どう?少しは目が覚めた?」

 

部長が棘がありながらも心配するように言う。けど、一方のユウトは相変わらずみてぇだ。目にいつもの穏やかさが感じ取られない。感じるのはマイナスな感情だけだ。

ユウトは一度息を吸うと、部長に向き直る。

 

「もういいですか?競技大会も終わりましたし、今日はこれで帰ってもいいですよね。

…今日の事はすみませんでした。失礼します。」

 

謝りはしたものの、アイツの顔は変わっていなかった。そのまま何処かへ歩いて行こうとする。

そんなユウトの肩をイッセーが掴み、引き戻した。

 

「どうしたんだよ、木場。お前最近変だぞ?何かあるなら、俺達に相談しろよ。仲間だろ?」

 

イッセーの問いかけに暫く黙ったままだったユウトは、フッと笑みをこぼして口を開く。

 

「仲間…か……。イッセー君、僕は思い出したんだよ。僕が戦う理由を。」

 

「戦う理由って…部長のためじゃないのか?」

 

そうであって欲しい。そういうイッセーの心境が読み取れた。コレはイッセーだけの願いじゃねぇと思う。オレだってそう思いたい。

 

「違うね。僕は復讐のために戦っているんだ。」

 

 

しかし、ユウトははっきりと否定した。

 

 

「聖剣、エクスカリバー。僕はそれを破壊するために戦っている。」

 

ユウトはそう言うと、イッセーの手を振りほどいてから歩いて行ってしまった。

 

「祐斗…どうして……?」

 

胸の前に手を添えて、部長は悲しそうに呟く。

 

 

 

聖剣…木場 祐斗…。一体、アイツの過去に何があったんだよ…。

 




雑談ショー☆with小猫

小「先輩、頭は大丈夫だったんですか?」

八「気にかけてくれんのはありがてぇんだが…その言い方は止めてくれ。オレが狂ったみてぇじゃん。」

小「祐斗先輩の事も、心配です…。」

八「確かにな…アイツに一体、何があったんだ?」

小「その事はまた次回になるそうです。」

八「そっか、なら来週まで大人しく待つとするか〜。」

小「…ところで、先輩。」

八「ん?どした?」

小「朱乃先輩に膝枕してもらったんですね…」

八「え!あー、それは、その、えっと…」

小「…えいっ!」

八「ゲブボァ!!」

小「……」プイッ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。