閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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いやはや、前回の投稿から早い事三週間……。
本当、申し訳ありませんでした。

中間考査、修学旅行と行事が続き、こちらの方に全く手がつけられませんでした。


中間考査後に修学旅行って酷いと思うんですよ。テストの結果悪かったら、折角の旅行なのにテンション上がらないじゃないですか。僕みたいに!


……それでは、お楽しみください。


三十八話目

あ〜…ヤベェ……眠ぃ……。

 

馬鹿みてぇに重かった瞼を何とかこじ開け、フラフラする足を引きずりながら家に帰ってるけども…これじゃ一瞬でも気を抜けばバタッと倒れてしまう。

 

道端のど真ん中で眠りこけるなんてマジ勘弁なんで、どうせ寝るならあのあったかい布団の中でスヤスヤしたい。冷たい夜の風に吹かれながらお休みなんてしたくない。

 

とは言え、オレはもう既にイッセー宅のすぐ近くまでは来ていた。ここまで来れば自分の家にはすぐに辿り着く。我ながらよくここまで我慢したと思う。

 

 

取り敢えず早く家に帰って寝よう…。後の話は全部それからだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っていたのに……どうやら現実というのは残酷なようです。

 

ここを曲がればイッセー宅に着くという道に差し掛かった時、オレはイッセー宅の方から嫌な気配を感じた。オレに向けられたものではないが、これは明らかに殺気だ。

そこでオレは曲がり角に身を寄せて、そ〜っとイッセー宅の前を覗いてみたんだ。

 

なんとそこには、制服を身につけた部長とイッセーとアーシア。そしてあの野郎の姿が見えた。

 

銀髪を長めに伸ばし、所々に赤いシミのついた黒い神父服を身につけ、もう見ているだけで腹が立ってくる顔をした男_フリードだ。

 

部長が若干怒気のこもった目をしているとこを見る限り、なにやらトラブル発生中のようで……。

 

 

何故ここにフリードがいるんだろうか。ユウト達は無事なのだろうか。そう言った疑問が頭に浮かんできたが、それは取り敢えず後にしておこうか。

 

 

 

あんなチンケな野郎より……。

 

 

 

オレは視線を上に向ける。

 

すると、月をバックにして空に浮かぶ堕天使の姿が目に入った。

 

堕天使は背中に生えている翼が何枚あるかによって強さが分かるようになっていると聞いた事があるが、あの堕天使は十枚も生えていた。

 

堕天使のトップである堕天使総督が十二枚らしいから、十枚持っているあいつの実力も相当なものだと伺える。そもそも放っているオーラが違うしね。

 

以上の事から予測するに……あいつが問題のコカビエルっていう奴だろう。

 

流石は堕天使幹部ってとこか……。

 

これは厄介事が発生するパターンだな。平穏な眠りは妨げられる運命にあるようで……。

 

 

コカビエルはイッセーに向かってポイッと大きな何かを投げた。優しくキャッチしたイッセーは驚きの顔を浮かべる。

 

…オレも驚いたよ。まさかイリナが投げられるなんてな。

この距離から見てもはっきり分かるくらい大怪我をしている。

 

さっき、ユウトとゼノヴィアとイリナが三人でフリード達を追って行ったが…まさか……。

 

「俺たちの根城に入り込んで来たからな。少しもてなしてやった。後の二匹は取り逃したけどな。」

 

今の言葉から察するに、ユウトとゼノヴィアは逃げ切ったようだな。

 

イッセーがアーシアを呼んでイリナの治療をさせた。少しずつ回復してはいるようだが……。

あいつが持ってたエクスカリバーが無くなっていた。

大方、奪われたんだろう。

 

 

「……それで、私との接触は何が目的かしら?」

 

部長が憎悪の感情をさらけ出した状態でコカビエルを睨み、尋ねる。

一方のコカビエルは嬉々とした顔を浮かべながら答えた。

 

「お前の根城である駒王学園を中心にして、この町で暴れさせてもらおう。そうすればサーゼクスも出てくるだろう?」

 

学園を中心に暴れ回るだと⁉︎

こいつ、一体何を企んでやがる!

 

「そんなことをすれば、堕天使と神、悪魔との戦争が再び勃発するわよ?」

 

「それは願ったり叶ったりだ。エクスカリバーでも奪えばミカエルが戦争を仕掛けてくれると思ったのだが……寄越したのが雑魚のエクソシスト共と聖剣使いが二名だ。つまらん…実につまらん!だからサーゼクスの妹の根城で暴れるんだよ。楽しそうだろ?」

 

最早コイツが何を考えてんのか理解しがたい状態だ。

コイツは戦争を好んでいたーとかそんな事は聞いてはいたが、かといって〝つまらないから〟とか言う、それこそつまらない理由でそんな計画起こすかフツー。

 

「俺は三つ巴の戦争が終わってから退屈で退屈で仕方がなかった!アザゼルもシェムハザも次の戦争には消極的でな。神器などつまらんものを集めだして訳の分からん研究に没頭し始めた!そんなクソの役にも立たんものが俺たちの決定的な武器になるとは限らん!

……まぁ、そこのガキが持つ赤龍帝の籠手クラスのものならば話は別だが……」

 

随分長い間喋ってるが……こいつ、さっきと今の言葉で天使と堕天使のトップクラスを馬鹿にするような発言しやがったよな。魔王に対してはモロに敵対心を露わにしているし…。

 

あ、一応解説すればミカエルってのは皆さんご存知と思われる超有名な天使の事です。この世界でも〝熾天使〟って言う有力な天使の中の一人らしいけどな。

んで、アザゼルとシェムハザってのは、順に堕天使総督と副総督だ。

 

堕天使幹部って、各勢力のトップクラスを軽んじる事が出来るほどの実力があるのか?

 

「何にせよ、俺はお前の根城で聖剣を巡る戦いをさせてもらうぞ!リアス・グレモリー!戦争をするためにな!サーゼクスとレヴィアタンの妹のどちらもが通う学び舎だ。さぞかし魔力の波動が立ち込めていて、素晴らしい混沌が楽しめるだろう!エクスカリバー本来の力を解放するのにも最適だ!戦場としては丁度いい!」

 

……頭がどうにかしてんじゃねぇかって思っちまうなコイツ。

自分の娯楽のために、戦いを求めるためにこんな迷惑な事をしようってのかよ……!

 

「ひゃはははは!最高でしょ?俺のボスって。イカれ具合が素敵に最高でさ。俺もついつい張り切っちゃうのよぉ。こんなご褒美までくれるしね。」

 

フリードが笑いながら前に出て、体の色々なところに隠し持っていたであろう物を五本取り出した。

 

あれ……全部エクスカリバーか。元から奪われていた三本とガベリが渡した一本、そしてイリナが持ってた一本だ。

 

「右手のが〝天閃の聖剣〟、左手のが〝夢幻の聖剣〟、右腰のは〝透明の聖剣〟、左腰のは〝祝福の聖剣〟でござい。ついでにその娘さんから〝擬態の聖剣〟もゲットしちゃいました!

ひゃはっ!俺って世界初のエクスカリバー大量所持者じゃね?聖剣を扱える都合よすぎな因子を爺さんから貰ってるから、全部使えるハイパー状態!完全無敵!最高だぜ!ひゃはははは!」

 

後も馬鹿みてぇにベラベラと喋りまくっているフリードはこの際無視だ。聞いてても何の意味もねぇ。

 

 

なんにせよ……大迷惑だ!

 

 

「では、戦争をしよう!魔王サーゼクス・ルシファーの妹よ!」

 

コカビエルの高笑いと共に、フリードが使った目くらまし用の道具から目潰し用の光が発せられた。

視力が治った頃には既にコカビエルもフリードもいなくなっていた。

 

 

もうそろそろ出て行っても良いだろ…。

 

壁から身体を離し、イッセー達の前に歩み寄る。

 

「シュウ…。」

 

「貴方、いつからそこにいたの?」

 

「俺たちの根城に〜のとこからっすよ。大体の話は頭に入ってます。また厄介事が起きるみたいっすね?」

 

「…えぇ、私達の学校を、この街を奴らの好きにはさせないわ。」

 

部長はスッと顔を上げ、学園のある方角を見上げた。

 

「イッセー!アーシア!シュウ!学園に向かうわよ!」

 

「「「はい!」」」

 

 

オレ達は一斉に学園へ駆け出していった。

 

 

ーーーーーーーー

 

学園の正門前には今、会長を始めとしたシトリー眷属のメンバーと我らがグレモリー眷属のメンバーが集まっていた。

朱乃先輩や小猫も異変を感じ取っていたらしく、正門前に来るように部長が指示したとほぼ同時くらいに飛んで来た。

 

今回シトリー眷属も来たのは、学園の危機に生徒会が動かないわけにはいかないという会長の考えもあるらしい。

 

「私たちはここで結界を張り続けます。少しでも学園に負担がかからないように……。」

 

「えぇ、ありがとう。ソーナ。」

 

部長と会長が二人並んで話している。

会長の顔はどこか悲しげで、どうやら部長の事を心配しているようだ。

 

これからの戦いは、今までの物とは違って命をかけた戦いになる。オレとしては前世で何度も経験してきたし、苦しい戦いになった事もある。

だが、他の皆は多分違う……。圧倒的な実力差のある敵と初めての殺し合い。会長が心配するのも当然の話、か。

 

「魔王様からの援軍が来るまでの一時間。それまでは俺たちだけで戦うのか……。」

 

「ハッ。なんだよイッセー、ビビってんのか?」

 

「違う!…って言っても、見栄っ張りにしか聞こえないか。」

 

肩を落とし、小さく溜息をつくイッセー。

今さっきイッセーが言ったように、あと一時間もすれば冥界から魔王が加勢に来てくれる事になった。

その間、オレ達は言わば時間稼ぎ。死なないように、上手に戦う事が必須となる。

 

「そんな顔すんなよ。お前ならそうそう死ぬことはねぇさ。しぶとさなら、こん中でお前が間違いなくNo.1だ。」

 

「…バカにしてるだろ。」

 

「いいや、褒めてるさ。」

 

こんな馬鹿みてぇな会話をするだけで、イッセーの顔にまた元気が戻ってきたようだ。

 

「ま、頑張ろうぜ。オレもまだ死ぬつもりはねぇし、誰も殺させやしねぇさ。」

 

「……あぁ!俺だって同じだ!」

 

互いに拳をぶつけたところで、部長から集合の声がかけられ、オレ達は正門前に円陣を組んだ。

 

「さぁ!私の下僕悪魔たち!私達はオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んで、コカビエルの注意を引くわ。これはフェニックスの時とは違い、死戦よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

正門に向き直り、門を開ける。

 

 

さぁ……行くとしますか!

 

 

ーーーーーーーー

 

正門から校庭に入ったオレ達が最初に見た物は、校庭の中心付近で浮かぶ五本のエクスカリバーとそれを囲むように描かれた魔法陣、そして何かの呪文のようなものを唱えているバルパーの姿だ。

 

「これは一体……」

 

イッセーがオレ達全員の疑問を代表して呟く。

 

「五本のエクスカリバーを一本に統合しているのだよ、赤龍帝。」

 

すると、その疑問に答えるようにバルパーがゆっくりと振り向いた。

 

 

 

「バルパー。後どれぐらいでエクスカリバーは完成する?」

 

空から聞こえた声に視線を向ける。そこには空に浮かぶ椅子に座っているコカビエルがいた。偉そうに足まで組んでやがる。

 

「五分もいらんよ、コカビエル。」

 

「そうか……」

 

バルパーの答えに、小さく笑みをこぼしたコカビエル。

その後、部長の方に向き直り……

 

「さて、サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」

 

と尋ねた。

 

「ルシファー様とレヴィアタン様の代わりに私達が……」

 

 

部長がそう答えたところで、オレ達の真上を何か巨大な物が通り過ぎて行った。

それとほぼ同時に、真後ろでかなりデカイ爆音が響き渡る。

 

ゆっくりと後ろを振り返る……。

 

 

 

 

 

そこには何も無かった。ただ地面に突き刺さる、柱のような光の槍があっただけ……。

 

 

 

……いや、何も無くなっていたと言うのが正解だな。

 

 

 

オレの記憶が確かなら……

 

 

 

 

 

その槍が突き刺さっている場所には、元々学園の体育館があった筈だ。

 

あの一瞬で吹き飛んでしまったって事かよ……軽く身震いしてきたわ。

 

「つまらん。ならば、地獄から連れてきたペット達と遊んでもらおうか?」

 

コカビエルが伸ばした腕の先に、これまでに見たことがないほど大きな魔法陣が現れた。

 

そっからグルルルルって何かの唸り声が聞こえ、その声の持ち主と思しき姿が見え始めた。

 

 

十メートルは余裕であるだろう大きさの身体から生える足は、一本一本が大木のように太い。

牙や爪はギラリと光り、これで斬り裂かれたらたまらなさそうだ。

 

そして極め付けに……

 

 

身体からは、三つの頭がついていた。

 

 

 

 

 

 

 

…………完全にケルベロスじゃないですか〜ヤダ〜。

 

 

「グギャアァァァァァァ!!!!」

 

 

ケルベロスは大きな叫び声をあげ、真っ直ぐにこちらへ向かって走り寄ってきた!

 

すぐさま全員が散らばり、ケルベロスの突進を避ける。

 

【Boost!!】

 

イッセーが着地と同時に倍加を始めた。

今回の作戦は、回復要員のアーシアと倍加に専念して欲しいイッセーを後ろに下げた状態で、オレと小猫、部長と朱乃先輩の四人で敵の相手をするというものだ。

イッセーの倍加が終わり次第、譲渡の力で一気に決めに行く事になっている。

 

まさかケルベロスと戦う事になるとは思わなかったが、やるべき事は変わらない。

 

だから今は部長と朱乃先輩と小猫がケルベロスの相手をしている。

 

 

ケルベロスの頭Aが部長に炎を吐いた!

しかし、朱乃先輩によって炎が凍らされてしまった!

 

部長がケルベロスの体に滅びの魔力を放った!

しかし、ケルベロスの頭Bが吐いた炎によって止められてしまった!

 

魔力と炎はぶつかり続けている……。

 

ケルベロスの頭Cが追加で炎を吐いた!

魔力をジリジリと追い詰めていく……。

 

ケルベロスの頭Aがまた追加で炎を吐こうとした!

しかし、小猫によって殴り飛ばされてしまった!

 

 

そんな状態が続いている。

 

 

じゃ、オレも参加するか!格闘体に変化!

 

手に力を込め、一気に指を弾く。

小さな火花が生じてケルベロスへ向かっていき、大きな爆発を起こした。

 

 

……コカビエルの槍攻撃の後だからか、結構ショボく見える。

 

 

攻撃先をオレに変えたのか、今度はオレに向かって炎を吐き出した。

 

「甘いんだよ犬っころが!」

 

俊敏体に変化、水の壁を生成して炎をかき消す。

 

近くに落ちていた鉄パイプ(なんで落ちてんの!?)を拾い、槍に変えて猛ダッシュ!ケルベロスの身体の上に辿り着いた。

 

「これで、どうだ!」

 

持っていた槍をケルベロスの背中に深くぶっ刺した!

 

「グギャァァァァァ!!」

 

ケルベロスが暴れだし、ロデオが始まる。

 

「うぉぉぉぉ!部長!朱乃先輩!イイっすか!?」

 

「えぇ!いいわよ!」

 

「いつでも大丈夫ですわ!」

 

二人がそう答えたのを聞き、オレは槍を手放して地上に降りた。

それと同時に、オレがロデオしてる間貯め続けられた二人の魔力がケルベロスを襲う!

 

ケルベロスは電撃に包まれ、魔力の一撃をモロに受けた。

 

 

…なのに、ケルベロスは倒れない。

チッ!まだ威力が足りねぇか!

 

 

 

 

「うあぁぁぁぁ!!」

 

「イッセー!?」

 

イッセーの悲鳴が聞こえ、慌ててそちらの方を見ると、イッセーがもう一体のケルベロスに追いかけ回されているのが見えた。

オイオイ!もう一体いんのかよ!

 

倍加が終わってねぇイッセーでは、ケルベロスには太刀打ち出来ねぇだろうし……。

 

 

 

「シュウ!」

 

「クギャァァァァァァ!!」

 

 

な!ヤベッ!

 

ちょっと目を離した隙に、オレ達が相手をしていたケルベロスがオレを踏みつぶそうと足を上げていた。

 

これから避けようたって間に合いそうにねぇ……!

 

オレは剛力体に変わって両手を伸ばし、奴の足を支えようとした。

ズンッ!とかなりの重圧がかかる。

 

お、重い……!けど、ここは取り敢えずイッセーの方を……!

 

 

「部長!コイツはオレが引き受けるんで、イッセーの方を助けに行ってやって下さい!」

 

「! えぇ、分かったわ!」

 

オレの叫びに答えた部長達はイッセーの方に飛んで行った。

これでイッセーの方は何とかなるだろう。あとはこっちの方なんだが……!

 

かぁ〜!重いなんてもんじゃねぇ!足がどんどん地面にめり込んでいっちまってるし!

あぁ〜!もう膝まで埋まってるよ〜!

 

 

 

 

 

 

その時、急に一本の剣がシュッ!と勢いよく飛び出してきた。

 

オレの真横から……。

 

 

 

「うおっ!!」

 

ザシュ!

 

 

 

突如生えてきた剣に刺さって驚いたのか、ケルベロスは呻き声を上げながらスッと足を退けた。

 

……何が起こったのか全く分からん。けどとにかく助かった〜。危うく生き埋めになっちまうとこだったぜ。もう腹までいってたもんな〜。

 

さて、さっさと穴から出ちまおうかね…と思ったところで、スッと誰かの手が差し伸ばされた。

 

 

この手は……。

 

 

「大丈夫?引き上げてあげるよ。」

 

「ユウト…」

 

 

オレはユウトの手を掴み、穴から引き上げてもらった。

学園で戦いが起こったことを察して駆けつけてくれたんだろう。お兄さん感激だね!

さっき突然剣が生えたのも、ユウトの能力によるものだったんだな。

 

「助かった、サンキューな。」

 

「うん……」

 

ユウトはどこか暗い顔を浮かべていた。

……まぁ、人間態のオレが最後に会って話をした時がアレだもんな。気まずい空気になるのも頷ける。

だってオレも気まずいもん。

 

「シュウくん。この前は」

 

「その話は後でしようぜ。取り敢えず、今はあのワン公を沈めるのが先だ。」

 

「……そうだね。」

 

謝ろうとしたユウトの言葉を遮り、オレは再び視線をケルベロスに向ける。

奴は既に体制を整え、もう一度こっちに飛びかかって来ようとしていた。

 

「ユウト、ゼノヴィアはどうしたんだ?」

 

「あ、彼女なら……」

 

スッとユウトがある一点を指差す。さっきまでイッセーがケルベロスと追いかけっこを繰り広げていた場所だ。

 

そこではなんと、ゼノヴィアの持つ聖剣に斬り殺されたケルベロスの死骸がチリとなって消え失せていく場面が……。

 

うん、流石はエクスカリバーだ。魔獣なんて一瞬なんだ。

 

 

あっちの方はもう心配いらねぇみたいだから……。

 

「こっちも決めてやろうぜ、ユウト。」

 

「…うん、任せて。」

 

互いに頷きあい、一斉に動き出した。

まずはユウトが素早い動きでケルベロスを翻弄する。いつも通りのユウトの動きだ。オレも要所要所で援護の攻撃を加える。

 

「はぁっ!」

 

ユウトが剣を横薙ぎに振るった!その剣はケルベロスの肉を裂き……

 

そしてついに、奴の身体がガクッと崩れ落ちた!

 

「今だ!!」

 

格闘体に変わって高く飛び上がり、ケルベロスの頭部目掛けて拳を繰り出す!

 

今度こそ決めてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチチッ!バチンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「! クソッ!」

 

また変な電気が走りやがった!

これじゃガベリん時の繰り返しになっちまう…!

 

「……がぁぁぁぁぁ!!」

 

腕が滅茶苦茶痺れてきてるが、そのまま拳を振り下げる!

 

 

その拳はケルベロスの頭に命中し……

 

 

 

 

ドゴォォォォォォン!!

 

 

 

 

と、物凄い音を立て、ケルベロスを地面に叩きつけた。

奴は苦しそうな声をあげていたが、そのまま息をしなくなった。

 

「……はい?」

 

情けねぇ声をあげてしまったが、心底驚いた。

 

え、だって威力おかしくね?たかが一発のパンチがケルベロス沈めるって、ドユコト?

槍を刺した時は全く効いてなさそうだったのに?

 

「…シュウくん、すごいね……」

 

「いや、オレも何が何だか……」

 

一体何があったんだ?さっきと今ので何か違ったのか?

 

 

がぁぁぁぁぁ!!って叫んだから?気合の問題?

 

いやでも、さっきもしっかり叫ばせてもらったぞ。これでどうだ!って。

 

じゃあ一体何が……?

 

 

 

 

 

 

 

……そう言えば今、電流が流れてきたな。さっきは何もなかった気がするが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……一体、何が起こったんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュウくん!危ない!」

 

「なっ!」

 

ユウトの叫びで現実に戻ってきた時には、高速で近寄ってくる何かがオレのすぐ目の前まで接近していた。

 

そのままモロに何者かの突進を受け、校舎の壁に叩きつけられた。

 

「シュウくん!」

 

「ハッハッハ!油断大敵だね!」

 

オレに突進してきた奴_ガベリは大きな笑い声をあげていた。翼が大きく広がっているから、突進と言うより翼で打ってきた感じか。

既に電撃の傷も回復したようで、顔も随分余裕そうだ。

 

やっぱりあいつら、共同戦線張ってやがったのか……。

 

 

「シュウ!大丈夫か!?」

 

イッセーがアーシアを連れて走り寄って来た。

 

「……あぁ、大丈夫だ……。」

 

「大丈夫ってお前!」

 

「頭から血が出て!すぐに治療します!」

 

「だから大丈夫だって……」

 

心配しているのがモロに顔に出ている二人を宥め、スッと立ち上がる。

頭から血が出てるってのは本当らしいな。アーシアが嘘つくとはこれっぽっちも思ってねぇけど、足がフラフラしているから何となく実感出来る。

 

 

 

……けど、段々頭が冷えてきた……。

 

 

 

考えてみりゃ、前世でユウスケがキックをする時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々、炎だけじゃなくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電気も帯びていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しだけボヤける視界の中で、ガベリの姿を捉えた。

 

「よぉ、後悔するんだなガベリ。お前のお陰で、頭に登っていた血が流れて頭が冴えた。」

 

「…何を言ってるんだ?」

 

怪訝な表情を浮かべるガベリ……はほっといて、イッセーに頼み事をした。

 

「…朱乃先輩に話がある。悪りぃけど、呼んできてくれねぇか?」

 

イッセーは一瞬戸惑った様子を見せたが、すぐに朱乃先輩の方へ走って行った。

イッセーが朱乃先輩を呼びに行ってくれている間、オレはアーシアの治療を受けている。

 

そんなに長く待たないくらいで朱乃先輩が降りてきた。

 

「どうしたのですか?」

 

さっきの突進された瞬間を見ていたのか、少し不安な顔を浮かべながら尋ねてくる。

 

「…朱乃先輩……」

 

 

……少し言葉を選ばねぇといけない。

 

何故なら、今回の頼みは……

 

 

 

オレは先輩に向かって、周りに聞こえないような小さな声でオレの頼み事を告げた。

 

 

「!? な、何で……?」

 

朱乃先輩はかなり驚いたようで、目を見開いた。

まぁ、普通ならこの頼みは明らかに変だからな。戦いの最中に絶対頼まない内容だ。

 

けど、今回ばかりは必要なことなんだ。

 

「お願いします。これは先輩にしか頼めない。

……大丈夫ですよ。オレに少し、考えがあるだけですから。」

 

もう一押し、今度ははっきりとした言葉で頼む。

朱乃先輩はオレが真剣に頼んでいることを察しているのか、少し迷っているようだった。

 

「何を企んでるのか知らないけどさぁ!そんなことやらせるとでも思ってるのか!?」

 

チッ!ガベリが痺れ切らしたか!

再び突っ込んでくるガベリを射撃体で捉え、近寄らせないように弾を撃ち続ける。

 

「朱乃先輩!お願いします!」

 

「……分かりました。」

 

少し叫ぶように頼んだら、先輩も流石に折れてくれたようだ。

両手を前に突き出し、魔力をため……

 

 

 

 

 

大きなサイズの雷を、オレに目掛けて落とした。

 

 

 

 

 

「な!朱乃!?」

 

「朱乃さん!?」

 

「……血迷ったか?」

 

 

アァ〜!!クッソ痛ぇ〜!クッソ熱ぃ〜!

 

 

 

なのに……何故だか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……最高の気分だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? か、雷が……」

 

最初に部長が異変に気がついたようだ。

オレも何となく分かる。雷が持つエネルギーみたいなもんが、段々オレに吸収されていくような感じだ……!

 

「朱乃先輩!もっとデカイの!」

 

「……!!」

 

そう叫ぶと同時に、さっきよりも数サイズ大きな雷がオレ目掛けて落ちてきた!

 

大きな地響きがなり、視界が土煙に覆われる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて土煙が晴れ、視界がはっきりしてきた。

 

 

 

近くにある窓ガラスに映っている自分の姿は……

 

 

 

 

 

 

目が金色に染まり、髪にも少し金色のエクステンションがかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして最後に…身体にバチッ!と小さな稲妻が走った……。

 




雑談は今回置いときまして……。

本文がちょうどぴったりで9000文字になっちゃいました。あの姿になる決定的な瞬間までやりたかったのですが、まさかここまでとは……。

読みにくいと感じられた方、申し訳ありません。
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