閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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お気に入り数が三百件達成…本当に皆さんありがとうございます!

まだまだ先は長いですが、頑張っていこうと思います!


四十二話目

 

オレの(さっき考えついた)必殺技を喰らったコカビエルは勢いよく学園の壁に衝突。そのまま壁を突き破り、学園の一部だった瓦礫に埋もれていった。

 

流石にもう立ち上がることもないだろう。

 

 

……ふぅ、案外うまくいったな。

 

前世の時からずっと憧れていた〝必殺キック〟なるものをやってみたくて、見よう見まねでやってみたんだが…。ハハッ、スゲェ威力だ。

 

一応ユウスケのキックに無かった要素って事で回転を加えてみたんだが……どうだろ、強そうかね?

 

 

 

「少しいいかしら?」

 

後ろから声をかけられたので、後ろを振り向く。

 

そこにはやはりと言うかなんと言うか、部長が立っていた。

 

この姿のオレにも普通に話しかけるのって、この人とイッセーくらいのもんじゃね?

 

 

「また貴方に助けられたわね。ありがとう。」

 

「勘違いするな。私はこの町が壊されるのを防ぐ為に来ただけだ。」

 

「そう?それでも助けられたのは事実なのだから。」

 

「……フン」

 

オレは部長の声に素っ気なく返す。

 

いやぁハッハッハ……慣れませんなぁ、女性からお礼を言われるのは。どんな顔をすればいいのか全く分からん。

 

 

 

 

 

…パチチッ…パチンッ…パツン……

 

 

 

 

……何だ今の音。みっともねえ音だったが…。

 

 

「す、姿が戻った……?」

 

あ?なんだよイッセー。

戻ったって、一体何のこと………

 

 

……なるほどね

 

 

 

 

 

視線を下に向けたオレの目に、さっきまで金色に輝いていたオレの胸板が元の色に戻っているのが映った。

 

 

これは…電撃体が切れたって事か?

 

おっかしいなぁ。別に解除したつもりないんだが……。

もしや、制限時間付きか?

 

…要研究だな。帰ったら修行スペースでも作ろうかね〜。

 

 

 

「…なぁ、お前って金色の目になる事あったっけ?」

 

おぉっと鋭いなイッセー。

けど、ちゃんと理由も考えてるぜ?

 

「…先日、教会の中で少年と会った時の話だ。奴の翼を掴んでいた私は、そのまま奴と共にこの町の発電所なる場所に落下した。

そこで電撃のエネルギーを受け取り、この力を手に入れたのだ。」

 

以上、〝怪人態のオレが電撃の力を手に入れた理由〟です。

 

事実は違うけども、どうよ。しっかり筋が通ってるだろ?

 

ほら、イッセーも納得したような顔をしてる。

 

 

 

 

 

 

 

「…さて、学園はどうしようかしら……」

 

 

……部長が虚ろな目で崩れ落ちた学園を眺めている……。

 

…そんな目で見ないでくれ!やり過ぎたって事はオレも重々承知しているんだ!

 

「す、すまん……」

 

「気にしなくていいわ。

私の友人の中に、修理とかの仕事にうってつけな能力を持った子がいるから、その子に頼むわね」

 

「……そうか」

 

 

あぁ〜、部長の優しさに感激〜。

 

 

と言うわけで、この八神 柊!後でバチッ!と修理してみせますよ!

 

貴女が言ってるその子って、どうせオレの事だろ?ちくしょうめ。

 

 

 

……ま、丁度いい罰ゲームか。

 

 

 

 

 

んじゃ、さっさと姿眩ませて戻るとしますかね〜……

 

 

オレは学園の敷地の外に身体を向け、さっきの廃工場へと足を進めていった……

 

 

 

が、突如空から聞こえた声に足を止めることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々面白い事になっているようだな」

 

 

 

 

 

 

誰の声なんだ?と思った矢先に、空から何かが急降下で落ちてきた!

 

おいおいおい!どこの誰だか知らねぇけど、そんな勢いで落ちてきたら真っ逆さまに…!

 

しかし、オレの考えとは裏腹に、落下してきたそれはフワッと着地。ズシンともドシンとも、それどころかスタっとも音がしなかった。

 

 

 

 

…龍?

 

 

それは何か鎧のようなもんを纏ってるんだが、何て言えばいいんだろうか……。

 

そう、龍を模したような鎧なんだ。

 

 

一点も汚れが見当たらない、まさに純白の色をした全身鎧。所々に宝玉が埋め込まれており、八枚の光の翼が綺麗に輝いていた。

 

 

これは……まさかっ!

 

 

 

 

 

「〝白龍皇〟〝白い龍【バニシング・ドラゴン】アルビオン〟」

 

 

部長がその名を口にした。

 

やはりか! 龍を模した鎧って時点で何となくそんな気がしてたんだ!

 

イッセーが持つ〝赤龍帝の籠手〟に眠るドラゴン〝赤い龍 ドライグ〟とは全く対になる存在だって聞いた。

 

〝白龍皇の光翼〟【ディバイン・ディバイディング】という神器に眠っており、倍加と譲渡の力を持つ〝赤龍帝の籠手〟とは真逆の力を持っているってさ。

 

確か……相手の力を半減させて、その分の力を自分の糧にする能力だっけ?

 

 

目の前のそいつ…白龍皇は鎧を纏っている事から予測するに、禁手を使っているんだろう。

 

 

 

……こいつ…強いな。それこそ、コカビエルなんざ問題ねぇくらいに……。

 

 

 

「まさかコカビエルが倒されるとは……。フフフ、アザゼルが知ったら驚きそうだ」

 

白龍皇は面白そうな笑みを浮かべ、コカビエルの体があると思われる校舎の中へ入っていった。

その後、コカビエルの体を肩に担いだ形で外に出てきて、フリードの体も拾い上げる。

 

こっちには余り興味を示さないところを見る限り、奴らを回収しに来ただけって事なのか?

 

そしてオレの前を通り過ぎろうとした時……奴はオレの顔を見て笑みを浮かべた。

 

「そうか、お前が……。いずれお前とも戦ってみたいものだ」

 

あ、そう? 残念、オレは勘弁ですわ。

 

 

 

二人の体を持ち上げた白龍皇はその翼を広げ、どこかへ飛び去っていこうとした。

 

何事もなく終わりそうだな……。安心安し

 

 

《おう、無視か?白いの》

 

 

んおおぅっ!! イッセーの左腕が勝手に喋った!?

 

ま、まさかコレが……〝赤龍帝の籠手〟に宿る〝赤い龍 ドライグ〟なのか……?

 

《起きていたか、赤いの》

 

て事は、こっちは〝白龍皇の光翼〟に宿る〝白い龍 アルビオン〟って事か。

 

《生憎だな。せっかく出会ったのにこの状況では》

 

《いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある》

 

《しかし、白いの。以前のような敵意が丸っきり伝わってこないが?》

 

《赤いの、そう言うそちらも敵意が段違いに低いではないか》

 

《フッ。お互い戦い以外の興味対象があるということだな》

 

《そういうことだ。しばらくの間は独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ》

 

《それもまた一興か。じゃあな、アルビオン》

 

ドラゴンのお二方は互いに話し合い、別れの挨拶を済ませた…。

 

「ちょ!ちょっと待てよ!一体どういう事なんだ!お前は一体誰なんだよ!」

 

しかし、状況が全く分からない赤龍帝ことイッセーが声を張り上げる。

 

そんなイッセーにむけて、白龍皇は一言だけ残していった。

 

「全てを知るには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う宿敵くん」

 

その後は最初に来た時と同じようにシュバッ!とどこかへ飛び去っていく。

 

 

…何だったんだよ、今の……

 

 

…まぁとにかく!これでやっと全て終わったんだな……。

 

 

 

 

「やったな!色男!」

 

バルパーの死体を憂いの表情で眺めるユウトの頭をイッセーが叩き、笑顔で声をかける。

 

「へぇ、これが聖魔剣か〜。黒と白が混ざってて綺麗なんだな〜」

 

「イッセーくん、僕は……」

 

「まぁ、今は細かいことは言いっこなしだ。取り敢えず一旦終了でいいだろ?聖剣も、お前の仲間のこともさ。」

 

あぁ、イッセーの言う通り。

 

これからもまだバルパーの研究を引き継いだ奴とかいるだろうから、まだ聖剣計画そのものは終わっていない。

漫画風に言うなら、俺たちの戦いはこれからだ〜ってとこだろうさ。

 

けど、この場はここで終わらせてもいいだろう。

 

 

「…木場さん。また一緒に部活できますよね?」

 

アーシアが小声で尋ねる。

 

まだ内心では神が死んだって事にショックを抱えてるだろうに、もうユウトの心配が出来るなんてさ……。

 

優しいヤツだよ、ホント。

 

 

「祐斗」

 

お、最後はやっぱり部長だな…。

 

「よく帰ってきてくれたわ。それに、禁手だなんて、本当に誇らしいことよ。」

 

「…部長。僕は皆を、僕を救ってくれた貴女を裏切ってしまいました…。お詫びする言葉も見つかりません……。」

 

ユウトは心底反省しているのか、声が若干震えていた。

 

そんなユウトの頭を優しく撫でる我らが部長……

 

「でも、貴女はこうして帰ってきてくれた。それだけで十分。

…彼らの想いを無駄にしたらダメよ?」

 

「部長…!」

 

ユウトの頬から一滴の涙が溢れ落ちる。

 

「はい…!僕は改めてここに誓います。木場 祐斗はリアス・グレモリーの眷属〝騎士〟として、貴女と仲間達をお守りします……!」

 

「えぇ、ありがとう。これからもよろしく頼むわ」

 

 

……いい雰囲気だな…。

 

 

ほんじゃま、オレもこの空気に入りてぇし、さっさと帰るとしますかね〜…

 

 

「…それから……」

 

 

? ユウト?

 

オレが帰ろうとしたのに気がついたのか、ユウトがオレの方を向いた。

 

 

「貴方にもお礼を言わせてください。

貴方のおかげで、僕は大切な仲間達を失う事がありませんでした。

それに、皆を守る剣になる為のヒントを、貴方から得られたような気がします。」

 

 

…そうきたか、このイケメン王子。

 

 

くそ〜。なんでそんな小っ恥ずかしい事を平然と言えんだよ〜。

聞かされてるこっちの身にもなって欲しいってもんだぜ全く……。

 

オレは頬をポリポリ、小さな声で答えた。

 

「私は少年に特に何もしていないと思うのだが……まぁ、そのヒントを活かすか殺すかはお前次第さ。」

 

……こんなもんでいいかな?

 

「はい。ありがとうございます。」

 

 

だからやめろっての恥ずかしい。

 

 

 

 

……気まずいし、とっとと戻るとすっか……!

 

 

 

 

俊敏体に姿を変え、今のオレの最高速度でガベリと戦った廃工場へ向かった。

 

周りの景色がすごい勢いで変わり、オレはいつの間にやら工場のど真ん中に立っていた。

 

ここなら誰も見てねぇし…よっ!

 

 

人間態に姿を戻すと……一気に身体に溜まった疲労がオレを襲う。

 

 

ハァ〜…身体中がギシギシいっているぜ。電撃体って、他の形態より体力使うのかもな…。

 

 

 

少し腕を回したりして体を慣らした後、もう一度学園に戻る。

 

 

そこそこ怪我もしてっから、長期戦になったって言っても通じそうだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長〜! こっちも終わりましっ!?」

 

学園に着いて、皆の元へ駆け寄るオレを待っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペシーン ペシーン

 

 

 

 

 

「お疲れ様。さっそくで悪いのだけど、仕事を頼んでもいい?」

 

 

 

 

 

ペシーン ペシーン

 

 

 

 

 

「え、えぇ……何なりと……」

 

 

 

 

 

ペシーン ペシーン

 

 

 

 

 

「学園の一部が壊れちゃったの。直してくれないかしら?」

 

 

 

 

 

ペシーン ペシーン

 

 

 

 

 

「りょ、了解しました……お姉様……」

 

 

 

 

 

ペシーン ペシーン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……部長にケツを叩かれているユウトの図だった。

 

心なしか、部長の手が紅いオーラに包まれてるような……

 

 

 

 

 

……うん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでの雰囲気カムバァァック!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============

 

コカビエル襲撃事件から数日後。この日は俺たちオカルト研究部が久しぶりに登校する日だ。

 

俺、兵藤 一誠はアーシアと並んで部室に向かっている。隣のクラスには木場もシュウもいなかったから、多分二人とも先に行ってるんだと思う。

 

「失礼しま〜…す……。」

 

扉を開けた俺は、驚くべき人物の姿を発見した。

 

「や、赤龍帝」

 

……ゼノヴィア!?

なんで!? なんでゼノヴィアがここに居るんだ!?

 

ゼノヴィアは俺の様子を見て面白そうな顔を浮かべると……

 

 

バサッ!

 

 

と、背中から見慣れた翼を生やした……。

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

なんで!? なんでゼノヴィアから悪魔の羽が生えるんだ!?

 

「既に神がいないって知ったからね。破れかぶれでリアス・グレモリーから余った〝騎士〟の駒を頂いて悪魔に転生したんだ。で、ついでにこの学園への編入もさせてもらった。

今日からこの学園の二年生で、オカルト研究部の一員だ。よろしくね、イッセーくん♪」

 

「いや、真顔で可愛い声を出すな」

 

「ふむ、イリナの真似をしてみたのだが、上手くいかないな……。」

 

 

おい俺!動揺しているのか?なんだよ今の中途半端なツッコミは!

 

というか、いいのか?貴重な駒を使っちゃって。

 

「デュランダル使いが眷属にいるのは心強いわ。これで祐斗と一緒に剣士の二翼の誕生ね」

 

 

……いいんだ。

 

でも、確かに安心感は違うよな。伝説の聖剣使いが味方についてくれるなら、これからの戦いにも優位に働くと思うし。

 

「…けど、思い切ったことをやったよな」

 

「そう、そこなんだ。私はもう悪魔だ。後戻りはできない。

いや、でもこれで本当に良かったのか?いやいや、神がいない以上、私の人生は破綻したわけだ。いやいやいや、だからといって魔王の妹という理由で悪魔に降るというのはいかがなのだろうか」

 

……ゼノヴィアが自分の世界に入っちゃったぞ。

 

何かブツブツと独り言を呟き、終いには祈りのダメージで頭を抑えている。

 

……これはまた個性的なメンバーが増えたなぁ。

 

 

「……あれ?そう言えばイリナは?」

 

俺はふと、イリナがどうなったのか気になったので尋ねてみた。

 

ゼノヴィアは頭を抑えながら答える。

……まだ痛むんだね。でもよく分かるよその痛み。

 

「イリナなら、私のを含めた六本のエクスカリバーとバルパーの死体を持ってヴァチカンに帰ったよ。

エクスカリバーは破壊したから欠片の状態になったけれど、錬金術で直せるから問題ない。

色々あったけど、最終的には任務成功というわけさ。」

 

「え? エクスカリバー返しちゃってよかったのか?

てか、教会裏切ってもいいのか?」

 

俺が更に疑問をぶつけると、ゼノヴィアは自嘲気味に笑って答えた。

 

「一応、アレは返しておかないとマズイからね。幸い、私はデュランダルさえあれば事足りる。

教会を出たことも問題ない。あちらに神の不在について問うたら何も言わなくなったよ。つまり、神の不在を知った私はめでたく異端者になったわけだ。

教会は異端を酷く嫌うからね。例えデュランダル使いでも切り捨てる。

……アーシア・アルジェントと同じようにね。」

 

なっ…!? またかよ!

一体どれだけの人を悲しませれば気がすむんだよ教会は!

 

「そう考えればイリナは運がいい。あの時戦線を離脱していたおかげで真実を知らずに済んだのだからね。

私以上に信仰が深かった彼女のことだ。神がいないと知れば心の均衡はどうなっていたかわからない」

 

……そうか、イリナはあん時怪我してたから知らないんだ。

 

でも…ゼノヴィアやアーシアだって信仰が深かったはずだ。相当ショック受けただろうな…。

 

「私が悪魔になったことを残念がっていたね。理由が理由だったから、何とも言えない別れだった。次に会うときは敵かな」

 

遠い目をするゼノヴィアに、俺たちは言葉を発することが出来なかった。

 

部室に暫くの沈黙が続く……。

 

 

 

すると、タイミングを見計らったように部長が「ちょっといいかしら?」と声を出した。

 

「教会は今回のことで魔王に打診してきたそうよ。『堕天使の動きが不透明で不誠実だったため、真に遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』って。

それにバルパーの件についても、過去に逃がしたことに関して自分たちにも非があると謝罪してきたわ。」

 

教会が魔王様に?

天使と悪魔が話すのか……。昔の感覚なら違和感を感じる話だな。

 

「堕天使総督アザゼルからも、今回の真相が天使側と悪魔側に伝えられたわ。エクスカリバー強奪はコカビエルの独断行為で他の幹部は知らないことだった。三すくみの均衡を崩そうと画策し、再び戦争を起こそうとした罪により、〝地獄の最下層〟で永久凍結の刑の執行を考えていたそうよ。

…結果的に無駄に終わったみたいだけどね。」

 

部長が難しそうな顔をしてそう言った。

 

…結局、アイツは何なんだろうな?何かと俺たちのピンチに駆けつけてくれるし、めちゃくちゃ強いし……。

 

 

 

 

シュウはあいつの事を悪く言うけど……

 

 

 

 

……って、あれ? そう言えば……

 

 

 

 

「木場、シュウはまだ来てないのか?」

 

「え? てっきりイッセー君と一緒に来るのかと思ってたんだけど……」

 

 

二、三回部室を見回し、シュウの姿を探すけど……やっぱりいない。

 

 

 

あいつ、どこ行ったんだ?折角仲間が一人増えたってのに……。

 

 

「…まぁ、後で来るでしょう。

それより、近いうちに天使側の代表と四大魔王様、そしてアザゼルが会談を開くらしいわ。なんでもアザゼルから話したいことがあるみたいなの。

その時にコカビエルのことを謝罪するかもしれないなんて言われているけど、本当に謝るかどうか甚だ疑問だわ。あのアザゼルだから」

 

部長は肩をすくめ、忌々しげに言った。

さ、三大勢力の代表者が集まって会談を開くなんて……。滅多にない事だよな?

 

そこで何を話すかは想像もつかないけど、今後の生活にも影響を与えるって事は間違いなさそう……。

 

「私たちもその場に招待されているわ。事件にかかわってしまったから、そこで今回のことを報告をしなくてはいけないの」

 

「マジっすか!?」

 

部長の言葉に、全員が驚愕の表情を浮かべていた。

 

それはそうだろ!偉い方々が集まってる中に呼ばれるなんて、そんな経験した事ない!

 

……驚き通り過ぎて逆に冷静になってしまうぜ……

 

 

 

あ、そういえば……。俺、ゼノヴィアに尋ねたい事があったんだった。

 

「なあ、ゼノヴィア。〝白い龍〟は堕天使側なのか?」

 

「そうだ。〝白い龍〟はアザゼル率いる〝神の子を見張る者〟の幹部を含めた強者の中でも四、五番目に強いと聞く。

すでに完全な禁手状態を得ているところを見るに、現時点でライバルのキミよりも断然強い」

 

 

そうか、やっぱりな……

 

不思議と、あまり驚かなかった。

 

だって、初めて見ただけでも圧倒的な実力の差があるって感じ取れたんだ。今さらあいつが強いって言われても、驚きはしないさ。

 

それならここはいっその事、素直に開き直った方がよさそうだ。そっちの方が現実を認められるし……。

 

俺が一人でウンウン頷いていると、ゼノヴィアがアーシアに視線を移した。

 

「クリスチャンで神の不在を知っているのは私と君だけだ。もう、君を断罪するなんて言えやしないな」

 

ゼノヴィアは瞳に皮肉と哀しみの影を映し、そっと顔を伏せる。

 

「異端視、か…。異端の徒に堕ちた私を見る彼らの態度は忘れられない。今ならキミの気持ちが痛いほどよくわかるよ」

 

声を震わせながらそう言ったゼノヴィアは、もう一度アーシアに視線を向けて深々と頭を下げた。

 

「アーシア・アルジェント。私は君に謝らなければならない。主がいないのならば、救いも愛もなかったわけだからね。すまなかった。君の気が済むのなら殴ってくれてもかまわない」

 

再び部室に沈黙の空気が走る…。

 

頭を下げているからゼノヴィアの表情は見えないけど、彼女の謝罪は本心からくるものだと思う。

 

皆が行く末を見守る中で、アーシアは静かに口を開いた。

 

「頭を上げてください、ゼノヴィアさん。私はそのようなことをするつもりはありません。

…確かにあの時は辛く、悲しい思いをしました。でも、こうして大切な人に、大切な方々に出会うことができました。私は皆さんといられる今この瞬間が本当に幸せなんです」

 

優しい笑顔を浮かべ、アーシアはゼノヴィアを許した。

 

……流石アーシア!凄く優しい!

 

側から見ているだけなのに、俺が泣きそうになるよ!

 

「…ありがとう」

 

ゼノヴィアはただ一言呟き、心底嬉しそうな笑顔を見せた。

 

「では、私はそろそろ失礼するよ。この学園に転向するにいたって、まだまだ知らねばならないことが多すぎるからね」

 

「あ、あの!」

 

そう言って部室を立ち去ろうとしたゼノヴィアをアーシアは呼び止める。

 

「今度の休日に、みんなで遊びに行くんです。ゼノヴィアさんもご一緒にいかがですか?」

 

あ!そうだった!俺たち今度遊びに行く約束してたんだった!

 

そうそう、早く木場とシュウも誘ってやろうと思ってたんだった。

 

 

満面の笑顔のアーシアにゼノヴィアは大きく目を見開いて驚いた顔をした。

その後、すぐに苦笑を浮かべる。

 

「いや、今回は遠慮させてもらおう。まだ気持ちの整理がついていないんだ。

…ただ……」

 

「ただ?」

 

不安げに首をかしげるアーシアに、ゼノヴィアは笑顔で尋ねる。

 

「よかったら今度、私に学園を案内してくれないかい?」

 

それを聞いたアーシアは、見る見る明るい顔になっていき、大きな声で答える。

 

「はい!」

 

 

そして、ゼノヴィアは次に木場に不敵な視線を向けた。

 

「我が聖剣デュランダルの名にかけて、そちらの聖魔剣使いとも再び手合わせしたいものだね」

 

「いいよ。今度は負けない」

 

うんうん。ライバル〜って感じがする!

 

木場は前回負けたもんな。リベンジマッチ、応援してるぜ!

 

「さ、ようやく全員揃ったのだから、部活も再開するわよ!」

 

『はい!』

 

全員で声高らかに返事をして、いつかのように楽しく談笑を始める…。

 

 

オカルト研究部はこうじゃないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……結局、その日の部活が終わるまでシュウ来なかったけど、一体どうしたんだろ?

    

 

 

 

 

 

==============

 

 

 

 

オレは今……多くの人々が涙を流したであろう戦場にて、鬼と向かい合っている。

 

 

……絶対に負けられない戦いが繰り広げられているんだ。

 

 

ここは…ここだけは絶対に譲れない。

 

 

ここを譲ったら、オレの未来は終わるも同然……。だから、絶対に目の前の鬼を打ち破らなければならないんだ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まだそんなふざけた事を抜かすか、八神」

 

「一つ訂正。オレは天に誓ってふざけてなどいません。大真面目です。」

 

 

オレはゆっくりと右手をあげる。

 

 

 

 

「オレのこの髪の色は……

 

 

 

 

……突然変異です。」

 

 

 

 

オレは、多くの人々が涙を流したであろう戦場(生徒指導室)にて、鬼(日本史の先生。名前は織田先生という)と向かい合っていた!

 

 

 

 

……どうしてこうなったか説明しよう。

 

 

皆様は、オレがコカビエル戦にて電撃の力を手に入れた事を覚えていらっしゃるだろうか。

 

その際、人間態の方にも変化が生じただろう?

 

そう。髪に金色のエクステンションがかかったんだ。

 

 

あん時は気にしてなかったんだが、後になって衝撃的な事実が発覚した。

 

 

なんと……通常体でもエクステンションがかかったままだったんだ。

 

 

よくよく研究してみれば、電撃の力は人間態と怪人態で影響される形が違ったらしい。

 

簡単に言えば、人間態は常時発動型。怪人態は非常時型って事さ。

 

 

つまり、今のオレの髪の色は黒に金色のエクステンションがかかった様な色をしているんだ。

 

 

 

さて、ここで皆さんに聞きたいんですが……

 

この前まで真っ黒だった男の髪に、ある日金色が混じっていたのを見たらどう思う?

 

染めた、と思うだろ?

 

 

つまり、今オレが置かれてんのもそんな状況なんだわ。

 

学生が髪を染めるなど、ましてや金髪なんて言語道断。即刻罰せられる。

下手すりゃ地獄を見るだろう。織田先生ならやりかねん。

 

 

けど実際、オレは染めてはいない。突然変異なんだ。オレ自身想定外の変化なんだ。

 

 

「いい加減吐いたらどうだ?スッキリするぞ?カツ丼食うか?」

 

「いくら刑事ドラマ風な事やっても意見を変えるつもりはありませんよ。オレは本当の事を言ってるんですから。

というか、金髪なら他にもいるでしょ? ついでに紅髪とか、白髪とか。」

 

「あれは全員地毛だからな。地毛の色は人それぞれだから何も言わん。」

 

「なら、地毛の色が突然変わっちまったパターンなら認めてくれますか?。」

 

「急に髪の色が変わるなど、あるわけがないだろう」

 

「そうでしょうね。オレもそう思います。でも事実、変えられない。」

 

 

そう。絶対に譲られない。

 

何度でも言おう。

 

 

「これは…突然変異なんだっ!!」

 

 

声高らかに宣言すると、織田先生は黙り込んでしまった。

 

…ど、どうだ? 納得してくれたか?

 

 

「…お前がそこまで言うのなら、チャンスをやろう」

 

チャ…チャンス……?

 

「お前には二択の選択権を与える。それ以外の返答は認めん」

 

 

二者択一ってわけね……いいだろう。

 

よっしゃ!かかって来いや!

 

 

「ここで白状してしまうか、出席簿百叩きを喰らうか、だ。

前者を選ぶなら、明日までに黒に染めて来い。後者を選ぶなら、次からお前がその髪の色で過ごす事を許そう」

 

 

 

………フフフ、なるほどなるほど…

 

前者の方がお得のように見せかける事で、オレに前者を選ばせる作戦だな。

 

甘い甘い。こんなもんじゃオレはぶれんぞ!

 

 

 

 

 

だって…白状する道を選択したところでアンタ、絶対百叩きするよな?

 

 

 

 

「……後者で宜しくお願いします…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

オレはあの後、本当に出席簿百叩きを喰らい、暫く生徒指導室でぶっ倒れてた。

 

…次の日からはこの髪で登校できるよ。やったね……。

 

 

あ〜あ、もう外が大分暗くなってんじゃねぇか。もう部活終わってんだろうな〜。

 

……仕方ねぇ。今日はもう帰るか。

 

帰ってから猫の世話してさっさと寝る。そうしよう。

 

 

 

オレは一人で校門まで歩いて行き……

 

って、あれ?

 

 

「ユウト? 何してんだ?」

 

そこにはユウトが校門に寄りかかるようにして立っていた。

 

オレの事に気がついたユウトは、「やぁ」って感じで手を上げた。

 

「ついさっき、織田先生に会ってね。先生から事情は聞いたから、折角だし待っておこうかなと思って。」

 

わ、わざわざ待っててくれたのか…。なんか悪いな……。

 

て事で、オレはユウトと二人並んで家に帰っていった。

 

何気に久しぶりだなぁ、ユウトと帰るの。最初は偶に一緒になったんだが、フェニックス戦以降はオレとイッセーとアーシアと部長の四人で帰るのが圧倒的に多くなったもんな。

 

 

 

「……シュウくん」

 

「ん? どうした?」

 

すると、唐突にユウトが話しかけてきた。

 

「君にはちゃんとお礼を言っておきたかった……ありがとう。」

 

「別にいいってことよ。オレも部長も、皆お前を許した。それでいいじゃねぇか。」

 

「…うん。そうだね」

 

ユウトはそこで笑みを浮かべた。

 

今まであまり見たことのない、ユウトの本当の笑顔。

 

 

「そうだ。今度の日曜日空いてる?イッセー君から遊びに行く誘いを受けてるんだけど、シュウくんも一緒にどうかなと思って」

 

「お、いいな。行く行く〜。」

 

 

その後もオレとユウトは談笑を交わしながら家に帰っていった……。

 

 

 

 

 

 

==============

【第三者視点】

 

場所は変わり、ここは八神が三回訪れた事になる〝神のいる世界〟

 

そこでは、神さんと呼ばれていた男が特大のモニターの前に立っていた。

 

何かを考え込んでいるような顔つきをしながら、そのモニターに映し出されている映像に目を向けている。

 

するとそこに、エプロンを身に纏った赤髪の女性がティーポット片手に現れた。

 

「失礼します。紅茶をお持ちしました。」

 

「あぁ、ありがとう。琴音」

 

琴音と呼ばれた女性は近くのテーブルに置かれていたティーカップに紅茶を注ぐ。

 

その間も神はモニターから全く目を離さなかった。

 

 

映像の内容が気になったのか、彼女は神の横から画面を覗き込む。

 

 

「またあの男ですか?」

 

そこに映し出されていたのは、神の手によって転生を果たした男、八神の姿であった。

 

「…えぇ。私が彼にあの世界のことを任せたのですから、私には彼が辿る物語を見届ける義務がある。」

 

「またまた〜。難しいこと理由にして、ただ彼自身に興味があるだけでしょう?」

 

「…そうかも知れませんね。」

 

琴音のからかうような口調に、神は小さな笑みを浮かべた。

 

そして再び視線を画面に戻す。

 

 

『〝電撃体〟……そう呼ぶとしよう。』

 

 

そこには、八神が電撃の力を手に入れた瞬間が映し出されていた。

 

 

「〝電撃体〟ですか…。」

 

 

神はより一層難しい顔を浮かべ、その映像に目を向けていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、モニターから緊急事態を知らせる警報が鳴り響いた。

 

神は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに慣れた手つきでコンピューターを操作。緊急事態の内容を確認した。

 

 

「……まさか、奴がここにくるとは……。」

 

そして驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「これは…少々厄介な事になってしまいましたね…。」

 

 

忌々しげな顔でモニターを眺める神。

 

その視線の先には、怪しい雰囲気を醸し出している黒のタンクトップを着た白髪の男の姿があった……。

 




雑談ショーwith木場

八「第三章もこれで完結だな〜。」

木「うん。色々あったけど、無事に終わってよかった。」

八「ユウトも新たな決意を固めてくれたし、新しい仲間も増えたし…いい感じだな。」

木「…僕は皆を守る剣になる。」

八「頼みにしてるぜ。 さて、次回からはいよいよ第四章が始まります! お楽しみに!」
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