閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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先日、Y◯uTubeに投稿されていた『仮面ライダーゴースト 伝説のライダー魂』ドライブ編を見てみました。

…やはりお祭り企画あるあるですね。ハート様が…。

鎧武編ではロードバロンっぽいですし、子ども達の記憶に新しい『かっこいい怪人』や『強い怪人』が、フォームチェンジしただけで倒されるのはちょっと…って感じるのは僕だけでしょうか?
うーん、せめてデェムシュ辺りならいいのか…な?

ではでは、遅くなりましたが、本編。どぞ〜


四十五話目

「…まだ、帰ってこねぇんだな……」

 

白龍皇___ヴァーリ来訪後、解散となった日の夜遅く。

もう良い子は寝る時間を過ぎており、もはやレムレムしていてもおかしくない時間になっていた。

____にも関わらず、良い子である筈のオレは未だ家の椅子に座って、寝ようともしていなかった。

 

これは決してオレが良い子じゃなくなったからではない。ちゃんとした理由がある。

 

それは、さっきの呟きにもあったように、この家の住人のクロが未だに帰って来ないからだ。

 

実を言うと、あいつはここ最近ずっと遅い日が続いている。厳密に言えば、サーゼクスさんがオレの家に来た日からだ。

どこかお気に入りの場所でも出来たのか、あるいは友猫でも出来たのか。理由は知らねぇけどな。

 

それでも昨日までは、良い子が寝始める時間帯___大体十一時くらいまでには帰ってきていたんだが……。

 

 

チラと時計を見やる。

既に短い針は一を過ぎており、長い針は六のあたりを指していた。

つまり、今の時刻は…

 

 

……一時半。

 

 

 

「…こりゃ、流石に変だな……」

 

お気に入りの場所で遊ぶのに夢中になって、時間が経つのを忘れていたなんて可愛いオチじゃなさそうだ。

 

道に迷っている…わけじゃないか。

アイツのことだ。そうなったら町の掲示板の地図でも見て帰ってこれるだろうし、何よりあんな頭いい奴が道に迷うなんて考えらんねぇし。

 

 

となると……何か厄介ごとに巻き込まれたパターンか?

 

けど、ある程度のハプニングくらいなら解決しちまいそうなもんだけどな……。

 

 

 

 

 

「…そういやあいつ、初めて会った時はヒッデェ怪我してたよな……」

 

ふと、初めて会った時の出来事を思い出す。

そうそう。確かボロ雑巾みてぇに転がってたっけ。

カラスか何かに襲われた感じだろって思ったような覚えが……

 

 

 

……カラス?

 

 

確かカラスって、頭がいい動物として結構有名な代表者だったような……。

 

 

 

 

 

 

 

…まさか……

 

 

 

 

 

 

『おお! 美味そうな獲物がいるでカラス! 早速頂くでカラス!』

 

『ニャー! 食べられちゃうニャー!』

 

 

 

 

 

ってな感じで、カラスに襲われてるんじゃ……

 

 

 

 

 

 

 

「……探しに行くか」

 

 

椅子から立ち上がり、玄関から外に出る。

既に辺りは真っ暗で、時々どこぞの酔っ払いどものやかましい騒ぎ声が聞こえてくる。

 

正直、こんな真夜中の世界には突入したくねぇんだが…。それでもクロのためだ。ここは一発、主人が我慢しなきゃな。

 

 

「まずは、近くにある公園にでも行ってみるか」

 

最初の目的地を定め、そこに足を向ける。

 

カラスに襲われてる(と思しき)クロを助けるため、オレは夜中の町へ繰り出していった…。

 

 

ーーーーーーーー

 

そうして探し続けること三十分。

時刻としては二時を回っており、流石にオレの体も疲労感を訴えているのか、瞼がだんだん重くなってきた。

 

 

にも関わらず……見つからない。

 

 

 

俊敏体になって考えられるポイント全てを回り、射撃体になって目を皿のようにしてクロを探し、剛力体になって物をあちこち動かしながら探しているものの、全く見つからない。

 

あてが一つ外れるにつれて、オレの頭には嫌な光景が浮かび上がる。

追いかけられて、捕まって、突っつかれて、啄ばまれて……そして最終的には……

 

 

「がぁぁぁぁ!! 考えたくねぇよそんなのぉぉ!!」

 

そして浮かび上がる度に叫ぶ。

 

 

誰かにクロを見ていないか聞こうにも、周りを歩いている人間はどいつもこいつも酔っ払いばかり。

一回近くにいた奴に聞いてみたところ、「そんな事より俺の歌を聴いていけ〜」って超音程が外れまくったクッソ音痴な歌を聴かされる羽目になった。

 

せめて一人くらいはまともな奴がいてくれれば……って思うんだが、こんな時間帯にうろついているオレの方がおかしいわけで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は……なのか?」

 

 

そんな心境でいたオレの耳に、突如誰かの声が届いてきた。

 

 

「……で……なの…」

 

 

しかも二人組っぽい。声の調子からして、最初の方は男。後の方は女だろう。

 

声がした方には、木が生い茂った自然公園が広がっていた。

そこは、クロがいると考えられるポイントの一つでもある。こういった公園には野良猫などもよく集まっているし、可能性としては十分高い方だろう。

 

そこに人がいた。それも声からして、話が通じるまともそうな人が……。

 

 

「よし、行ってみっか」

 

早速自然公園の中に足を運ぶ。

最も考えられる有力ポイントにいた人…。これは期待できると、オレは足を急がせた。

 

少し進んで行ったところで、さっきの声の持ち主と思われる男の姿が眼に映る。

 

 

美しく輝く銀色の髪。スラッと伸びた綺麗な体。間違いなくイケメンの部類に入る整った顔……。

 

 

 

 

 

 

男は顔を上げ、こちらに向けて微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「…やぁ、また会ったね」

 

「……ヴァーリ!」

 

 

思わず、男___ヴァーリの名を叫ぶ。

 

 

「こんな時間に何をしているんだ?

俺と戦いたくて追いかけてきたというのなら、相手になるが…」

 

さっきのような笑みを浮かべて口を開くヴァーリ。

「相手になる」と言った瞬間だけ、若干だが戦おうとする気配を感じ取った。

 

 

…けど、敵意そのものはないらしい。オレが背中を見せたと同時に飛びかかってくるってことはなさそうだ。

 

んなら、現状でこいつと戦う必要はない。いいことなんて何もねぇし、勝っても負けても疲れるだけ。

そんな勝負は丁重にお断りさせてもらう。

 

 

「…冗談。オレは敵意がねぇ奴に喧嘩売るほどヒマじゃねぇよ」

 

オレがそう答えると、ヴァーリは「そうか、残念だな」と言いながら、全く残念そうでない顔を浮かべていた。

 

…癪な話だが、今の状態…人間態じゃ、こいつにはどう足掻いても勝てねぇだろう。こいつ自身もそう思っているが故に、この余裕なんだろうさ。

 

こいつと戦うのは、こいつがオレ達にとって『敵』だとハッキリ分かった時。怪人態で、だ。

それまではこいつを刺激するようなことは控えておこう。下手に暴れられると手が付けらんねぇ。

 

 

 

「…それじゃ、何しに来たんだ?」

 

「あぁ、それについてなんだが……」

 

取り敢えずクロについて聞いてみようとした時、オレは少し妙なことに気がついた。

見渡す限り、周りには多くの木が生えているものの、こいつ以外の人の姿は見受けられなかったんだ。

 

「…なぁ、もう一人ここにいなかったか? こっからお前の声と、女の声が聞こえたような気がすんだが…」

 

オレがそう尋ねると、ヴァーリもすぐに答える。

 

「あぁ。ここにいた彼女なら、君がここに来るほんの少し前に帰ってしまったよ」

 

「そうか…ならいいや」

 

いてくれたら良かったんだが、いなくなっちまったんなら仕方ねぇ。取り敢えずのところはヴァーリにだけでも聞いてみるとしよう。

 

「なぁ、ここら辺でネコ見なかったか? 結構小型で、真っ黒な毛並みなんだが…」

 

すると、ヴァーリは一瞬驚いたような顔を浮かべ、すぐに何か考えるような素振りを見せた。

ここに猫がいたかどうかを思い出そうとしている。というより、どのように答えるか考えるかのような……。

 

やがて、頭の中が整理し終わったように顔を上げて口を開く。

 

「…それなら、確かにここにいた。先ほど君が来た方向に向かっていったから、君の家にでも戻ってるんじゃないか?」

 

「…マジか!? 」

 

意外な返答に訊き返すと、ヴァーリは「ああ」と頷いた。

 

「わ、分かった。サンキューな!」

 

まさかの入れ違いのパターンかよ! そうなった時の対策考えておくんだったわマジで!

 

慌てて身体の向きを変え、家に足を向ける。

早いとこ安心したかったのか、オレの足は自然と走り出していた。

 

 

 

 

 

「…そうか、あいつが言っていたのは彼のことだったのか……。フフ、これは面白くなりそうだ」

 

離れて行く途中、後ろからヴァーリの独り言が聞こえたが、慌てていたオレの耳にその内容までは入ってこなかった…。

 

 

 

 

 

 

家に飛び入り、慌ててクロの布団を覗き込むと、確かにあいつはいた。

スヤスヤと、悪気は全く無さそうな顔で眠っていた。

 

「ったく、心配させやがって……」

 

眠っているクロの頭を撫で、オレも自分の布団へ向かう。

布団へ入るや否や、一気に疲れが身体に襲いかかり、オレは深い眠りについた……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

そんなこんなで迎えた授業参観当日。

 

保護者、駒王学園中等部の生徒達、そして地域の方々等、直接的に学園とは関わりのない人々も来られるこの参観は、参観というより学園解放のようなものに近いと思う。

 

イッセーのご家族さんも、アーシアとそのついでにイッセーを見に来るようだ。

実の息子であるイッセーがまさかのついで扱いという衝撃の事実については突っ込んではならないそうで…。

 

隣のクラス、つまりイッセーのクラスは大変賑わっているようで、何やら「六千円!」だの「七千出すぞ!」だの、授業中とは思えない叫び声がしている。一体何やってんだあのクラス。

 

オレのクラスはというと、全くと言っていいほど面白みがない。普通に授業を進め、普通に受ける。ただそれだけだ。

俗に言う「お前の母ちゃんどれだ?」といったこともやろうとは思わん。興味ねぇし、そもそも知ったところでどうすんだ?って話だ。

 

オレんとこの親はこねぇし、ユウトんとこは親がいねぇし。もうほんと退屈な時間だ……。

 

 

《キーンコーンカーンコーン》

 

 

「よし、今日の授業はこれで終わりだ。次の授業はこの続き、南北朝時代から行う。各自、予習復習を忘れずにしておくように」

 

 

ふぅ、やぁっと終わった……。

 

ったく、こういう日に限って寝れねぇ授業だったりするんだよなぁ。ほんと勘弁して欲しいぜ……。

 

後は昼休み挟んでテキトーに過ごしときゃ終わる。今日は魔王さんも来るし一般人も多いってことで夜の部活は休みだ。久しぶりにゆっくり過ごさせてもらおうかね。

 

 

「おーい。八神、木場。メシ食おうぜ〜」

 

「ん、オッケー」

 

「うん、いいよ」

 

いつものように、ユウトを含めたクラスメート数人と一緒に食事を取り始める。

今日のオレの飯はふわふわ卵焼きの入った弁当だ。何気に自信作だったりする。

 

「うわっ! 相変わらず美味そうな弁当!」

 

「ハッ、おだてたって分けてやんねぇよ。たまには自分で作ってみるんだな」

 

このように雑談しながら飯を食っていると、突然教室の扉が大きな音を立てて乱暴に開かれた。

その扉を開けたのは、このクラスの新聞部で情報屋の山下くんだ。

 

山下くんは興奮したように口を開く。

 

「おい! 魔女っ子の撮影会やってるらしいぞ!」

 

「魔女っ子!?」

 

山下くんの言葉にクラスの全員がざわつき始める。

山下くんはそのまま続けて口を開いた。

 

「あぁ、自販機の近くでやってるんだってさ!

余りに似合いすぎで可愛すぎなもんだから、多分撮影会か何かじゃないのかって話だ!」

 

流石情報屋を名乗っているだけのことはある。一体その情報をいつどこでどうやって仕入れてきたのか、甚だ疑問だ。

 

「似合いすぎで可愛すぎだって!?」

 

「ああ! まるでアニメにでも出てきそうなほどの美少女だってよ!」

 

「と、とにかく、行ってみようぜ!」

 

「私たちも見てみた〜い!」

 

好奇心からくるものなのか、それともゲス心からなのか。クラスの殆どが、その魔女っ子なるものを見物しに行ってしまった。

さっきまでオレ達と飯食ってた連中も残さず行っちまい、ポツンとオレとユウトだけが残されてしまっていた…。

 

「…一気に静かになっちゃったね」

 

「そうだな」

 

互いに苦笑しあうオレとユウト。

周りでも魔女っ子の話で盛り上がっていた。

オレも魔女っ子とかコスプレそのものには興味ねぇが…。学園にコスプレで来た人は、一体どんな人なのか。そっちの方面で気になってきた。

 

「見に行ってみるか?」

 

「うん、いいね」

 

同じようなことを考えていたのか。オレの提案にユウトは二つ返事で賛同した。

早いとこ食事を済ませ、撮影会が行われているらしい場所に向かっていく。

 

 

そして向かっている途中、自販機の前で見知った顔を見つけた。

 

「お? イッセーとアーシア…それに部長と朱乃先輩?」

 

そこで談笑していたらしいイッセー達が、オレたちの登場に気づいたようで顔を上げる。

イッセーの手の上には、何やら何かの像のようなものが置かれていた。

 

…なんでだろうな。あの像、遠くから見た感じそんなに変な形はしてねぇのに、スッゲェ嫌な予感がする……。

 

 

「イッセー。お前、その手に持ってるもん、なんだ?」

 

滲み出るイヤ〜なオーラに警戒しつつ、イッセーにその物体の説明を求める。

 

「あ、これはさっきの授業で作ったんだ。一応英語の授業だったんだけどな…」

 

苦笑いを浮かべながら、手に持っていた像を見せてくるイッセー。

まぁ英語の授業ならそんなに警戒することもねぇか。美術とかなら危ねぇもんだけど。

さて、一体何を作ったんだ…?

 

 

「部長の裸体の像」

 

 

「ドブファァッ!?」

 

 

……吹き出してしまった。

この艶かしい形の像は、全く警戒していなかった状態のオレに最大級のダメージを与えるのは十分すぎる威力を秘めている。

 

しかも妙にリアルだったりする。まるで、そこにホントに部長が立っているかのようだ。

 

「な、何でこんなもん作ってんだ!? ってか上手いな無駄に!?」

 

「い、いやぁ。何を作ろうか試行錯誤を繰り返している内に勝手に手が動き始めちゃってたというか、何というか……」

 

イッセーの口から職人的な発言が飛び出した。

そういう言葉は、テレビで出てくるようなお爺ちゃんが言っていたのしか聞いたことねぇんだけども…。

 

 

 

……隣のクラスで突然オークションが始まったのはそういうことか……。

 

 

 

 

「ところで、貴方達もお茶?」

 

「いえ、何やら魔女っ子が撮影会を聞いたので、見に行こうかなと」

 

部長の疑問にユウトが答える。

お、そうだったそうだった。ここに来た目的を忘れかけてたぜ。

 

「撮影会? 一体なんのことだ?」

 

「オレらも詳しくは知らねぇよ。これから見に行くところだ」

 

 

 

合流したイッセー達と一緒に校舎に入ると、カシャカシャとカメラのシャッター音が喧しく鳴り響いていた。

魔女っ子目当ての男どもがあちこちで撮影しているんだろう。あのメガネと坊主も探せば見つかりそうだ。

 

人混みをかき分けかき分け、無理矢理中に潜り込む。イテッ! 誰だ足踏んだやつ! あたっ! 誰か頭殴ったな!

 

身体中をボコボコ殴られつつ、なんとか中に入り込むのに成功すると、人混みのど真ん中には確かに魔女っ子らしき人がいた。

 

「あれ? あの格好……」

 

同じく人混みをかき分けてきたのか、ボロボロになったイッセーがキョトンとした顔を浮かべ、中にいる魔女っ子に視線を向けた。

 

「お前、見覚えあんのか?」

 

「あぁ。確か俺のお得意さまが夢中になってるアニメキャラの格好だよ。『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』だったはず」

 

「『魔法少女ミルキースパイラル…』何だって?」

 

「『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』だよ。確かによく見ると、ミルキーによく似てるな」

 

……まぁ、題名はどうでもいい。

ミルキーってのがどんなキャラなのか知らねぇけど、イッセーがそう言うなら結構リアルな出来なんだろうな。あちこちで男どもがゲス顏浮かべてやがる。

 

「ちょっと失礼するわね、ありがとう」

 

後ろから部長が、人混みを作っている男たちに場所を譲ってもらいながら優雅にこちらへ歩いてくる。

朱乃先輩とアーシアもいるせいか、男どもは素早く場所を譲っていた。

その後ろを、ユウトが爽やかな顔をしてついてきている。

……オレらがあんな酷い目にあった意味は一体……。

 

そして前方の…魔法少女ミルキーナンタラを目にした途端。部長が驚きの声をあげた。

 

「なっ!」

 

ミルキーナンタラを見て慌てふためく部長。

一体何に驚いてんだろうな〜と、部長の姿にオレ達が驚いていると、また別の人物が人混みの中に突入して来る声が聞こえてきた。

 

「こらこら! 公開授業の日に撮影会なんかするな! 解散解散!」

 

生徒会の匙だ。他のメンバーも匙に続いている。

生徒会の連中は撮影会に参加していた生徒たちを引き剥がしていき、遂にはあれだけの人混みを綺麗に消し去ってしまった。

ここに残っているのは、生徒会、オレ達。そして問題のミルキーナンタラのみとなった。

 

「あんたもそんな格好しないでくれ。もしかして、生徒の保護者様ですか? そうだとしてもその場に合う衣装ってのがあるでしょう? 困りますよ」

 

「えー。だって、これが私の正装だもん☆」

 

匙の注意にキラッとポーズを決めるミルキーナンタラ。

こういう奴って、いくら注意しても聞く耳持たずだもんな〜。匙も大変だろうが、これは根気勝負になること間違いなしだ。頑張れ匙、応援してやるよ。

 

「これはリアス先輩。ちょうど良かった。今先輩のお父さんと魔王様をご案内していたところなんですよ」

 

っておぉっと! まさかのスルーか! その戦法は予想外だったぞ匙くん。

匙の後方には、生徒会長が先導して紅髪の男性二人を引き連れていた。

 

一人はパッと見でわかる。サーゼクスさんだ。予告通り来たみてぇだな。

あと一人は…部長のお父さんか。なるほど、サーゼクスさんと部長の産みの親なだけはあるな。こちらもかなり整った顔をしている。

 

「何事ですか? サジ、問題は簡潔に解決なさいといつも言って___」

 

生徒会長が小言を言おうと匙に近づいていく。

まぁやめてあげて下さいよ。匙くんは立派に注意していましたよ。

ただミルキーナンタラさんが聞かなかっただけで…。

 

 

しかし、会長さんはミルキーナンタラさんの姿を見るなり、その足を止めた。

 

そして、ミルキーナンタラさんはパァッと嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「ソーナちゃん! 見つけた☆」

 

……ソーナちゃん?

 

 

ミルキーナンタラさんは会長さんに嬉しそうに抱きついた。

 

んん? ひょっとするとこの人、会長さんのお知り合いなのか? それにしちゃ堅物な会長さんに対し、やたら柔らかそうな人柄だなぁ。

 

すると、会長さんの後ろを歩いていたサーゼクスさんがミルキーナンタラさんに声をかける。

 

「ああ、セラフォルーか。キミもここへ来ていたんだな」

 

…セラフォルー? へぇ、それがこの人の名前なんだな。

なんか見た目によく似合う名前だな。

 

 

 

「…セ、セラフォルー…様?」

 

隣のイッセーが、ガタガタと震えながら口を開く。

 

「どうした? 知り合いか?」

 

よく見ると、周りの皆も同じように驚いていたり頭を抑えたりしている。

んん? 理解してないのオレだけ?

 

「あの、部長? あの人、何なんですか?」

 

部長は頭を抑えながら、オレの問いに答えてくれた。

 

「…セラフォルー・レヴィアタン様。ソーナのお姉さまで、現四大魔王のお一人よ」

 

 

 

 

 

 

……え?

 

 

 

 

 

 

「ええぇえええぇええ!!?」

 

 

いやいやいや! 嘘だろ!? この人が、えっ!?

まず、この人が堅物会長さんのお姉さん!? 一体どんな遺伝子の組み合わせでこんな正反対な姉妹が産まれるんだよ!

 

次に、この人が現四大魔王だと!? どんなだよ! 軽すぎるわ魔王様!!

仮にも冥界を治める王となる人物が! 妹(らしい)の学園にコスプレでやって来るって! それいいの!?

 

「セラフォルーさま、お久しぶりです」

 

「あら、リアスちゃん☆ おひさ〜☆」

 

だから軽いっつーの! なんじゃ「おひさ〜☆」って!

そんなの前世でクッソ濃ゆいメイクした女が言ったのしか聞いたことねぇよ!

 

こんなんでいいのか魔王様! サーゼクスさん含め!!

 

 

「今日はソーナの授業参観に?」

 

「うん☆ ソーナちゃんったら酷いのよ? 今日のこと、黙ってたんだから。

もう! お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだからね!?」

 

 

だから軽いって……いや、もういいわ。なんかこれ以上突っ込んだら負けな気がする。

 

 

部長とイッセーがセラフォルーさんとサーゼクスさんと話している間、オレはこそっと朱乃先輩に尋ねてみた。

 

「魔王って、皆揃ってこんな感じなんすか?」

 

「えぇ。現四大魔王の皆様方は、どなたもプライベートの時はすごく面白い方々ばかりなのです。そしてそのご兄弟は例外なく真面目な方ばかり。

うふふ、きっとフリーダムなご兄弟が魔王様になったせいで、真面目にならざるを得なかったのでしょうね」

 

へ、へぇ。個性的なんだな、魔王の連中は…。

 

 

「あら? 貴方がリアスちゃんのお友だちの人間さん?」

 

げっ、こっちに話が来やがった。

 

「え、えぇ。八神 柊と申します」

 

「私はセラフォルー・レヴィアタンよ☆ よろしくね、シュウちゃん☆」

 

グググ…ただでさえ普通の女性とも接し辛いってのに、もっとやり難いタイプだこの人……。

というか、シュウ『ちゃん』って……。

 

「お、お姉さま。ここは私の学び舎であり、私はここの生徒会長を任されているのです……。

いくら身内だとしても、お姉さまの行動は、あまりに……容認できません」

 

暫く意識が飛んでいた生徒会長さんが必死にセラフォルーさんに説得しようと口を開いた。

 

「そんな! ソーナちゃん! ソーナちゃんにそんなことを言われたら、お姉ちゃん悲しい!」

 

が、効果は今ひとつのようだ。

全生徒の中で一、二を争う発言権を持つ会長さんの言葉が、てんで効いてない。

 

「お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんは知っているじゃない! きらめくスティックで天使、堕天使をまとめて抹殺なんだから☆」

 

「お姉さま、ご自重ください。お姉さまがきらめかれたら、小国が数分で滅びます」

 

魔王様が魔法少女に憧れるってのは変じゃないか?って突っ込むのは間違いなのだろうか。無性に突っ込みたいのに、なぜか声に出ない。

周りの皆もノーリアクションだし…いいのかな?

 

 

 

「うう、もう耐えられません!」

 

あ、逃げた。

目を若干潤ませ、会長さんは元来た道を走って戻ってしまった。

 

まぁでも逃げるよな。オレだって会長さんの立場でこんな場面に出くわしたら、迷わず『逃げる』を選択するし。

 

 

「待って! ソーナちゃん! お姉ちゃんを置いてどこに行くの!?」

 

「ついてこないで下さい!」

 

「いやぁぁぁん! お姉ちゃんを見捨てないで! ソーたぁぁぁん!」

 

「『たん』付けはお止めになってくださいとあれほど……!!」

 

 

 

…嵐のようなお二方は過ぎ去ってしまい、周りは一気に静かになった。

 

 

……なんか、大変なんだな。魔王の一家ってのも。

 

 

 

 

 

この後、サーゼクスさんも悪ノリして部長を泣かせ、グレイフィアさんに叩かれるという、なんか予想通りの展開を迎え、今日という一日は終わった……。

 

 




雑談ショーwith小猫

八「オレんとこもイッセーんとこも、部長んとこも大変だったらしいが…そっちの授業参観はどうだった?」

小「特に何もありませんでした。私のクラスも、普通に授業をこなしました」

八「そう言えば…ウチの部活の一年って、今のとこ小猫だけだよな?」

小「いえ、あと一人います」

八「え、マジで!? 知らなかった!」

小「次回、登場予定です。それまでお待ちください」
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