閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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バトライドウォー創世発売まであと少し。
フィリップと弦ちゃんが本人ボイスでなくなったことに、若干ショックを覚えながらも買うつもりの私です。
菅田さんも福士さんも、今大人気ですからね。出てこれないかな?と予想はしていましたが、ちょっと残念…。

さて、遅くなりましたが、本編どうぞ〜。


四十六話目

参観日の次の日の放課後。

オレたちオカルト研究部員は、旧校舎の中のとある教室の前に集まっていた。

 

『KEEP OUT!』と刑事ドラマとかでよく見かけるような黄色いテープが何重にも貼られ、怪しい魔法陣も合わさってかなり厳重に閉めきられているその教室は、怪しい感満載のオーラを醸し出している。

中の様子を知らないオレ、イッセー、アーシア、ゼノヴィアの間で『開かずの教室』と勝手に呼ばせてもらっている教室だ。

 

これまでも部室に行く途中とかで何回かこの教室の前を通ったことあるが、とても中に入ろうという気は全く起こらなかったし、スルーしてた。ダッテコワインダモン。

 

 

それがなぜ、今になってその教室の前に集まっているのかっつーとだな……。

 

 

 

 

…いやね、なんでもこの教室には、未だ知らされざるもう一人の眷属の〝僧侶〟がいるらしいのよ。イッセーが悪魔になる前、オレがこの部に関わり出す前からいたんだとさ。

てっきり今いるメンバーだけで全員かと思っていたオレからすると、その事実はちょっとびっくり。

 

これまで一回も顔を見せることはなかったし、更にはライザーとのレーティングゲームやコカビエルの襲撃といった眷属全体に関係する事件にも顔を出さなかったから、もう一人いるなんて予想だにつかなかったぜ。

 

…ただ、それにはちゃんとした理由があるという。

なんでも、その眷属は何やら恐ろしい能力を秘めた神器を身に宿しており、その上それを自分の力では制御できないという話だ。

 

でもって、ちょっと前までの部長は、その眷属を抑えきれる程の力は持ち合わせていなかったらしく、冥界のお偉いさん方からその眷属を封印しておくよう命じられたんだとさ。

 

 

その後、ライザー戦やコカビエル戦といった戦いで、着々と勝利を収めた部長の評価は冥界の中で急上昇。

更には今の部長なら、その眷属の力も抑えることが可能だろうと判断され、封印を解いていいって許可が下りたらしい。

それが昨日、サーゼクスさんから直々に伝えられたっつー話だ。

 

 

ということで、その眷属くんを迎えに、部員全員で参上したってワケなんだが……。

 

 

 

「ここに一日中住んでるの。一応夜中になると術が解けて旧校舎内だけなら自由に出歩けるのだけど、中にいる子がそれを拒否しているの」

 

「…それって、俗に言う引きこもりってやつじゃ?」

 

 

 

いきなり浮上、引きこもり説。

部長はこめかみに手を添えつつ、ハァとため息をついて頷いた。

そんな部長の傍から朱乃先輩が補足の説明を加える。

 

「でも、この子が眷属の中で一番の稼ぎ頭だったりするのですよ」

 

引きこもりで一番の稼ぎ頭って…なんかおかしくね?

だって、外に出ねぇと契約なんて結べねぇんじゃないのかな、と。願いを叶えたくても叶えようがねぇし、代償も貰えねぇし。

 

「パソコンを介して、特殊な契約を結んでいるのです。依頼人の中には、私たちと直接的に会いたくないという方もいらっしゃいますから」

 

…なるほど。確かに普通に考えりゃ、悪魔って怖い姿をしているイメージしかねぇもんな。

そもそも悪魔を呼び出そうっていう行為そのものが結構勇気いるもんだろうし、遠いところからコンタクト出来るってのならそれを選んだほうが安全なんだろ。

…或いはまぁ、それこそ引きこもりの依頼人だとか。

 

そういう人が相手のときは、引きこもりくんのやり方の方が有利だということか…。

う〜む、まさかこんなとこで情報社会の片鱗を見ることになろうとは…。

 

 

 

「さぁ、扉を開けるわよ」

 

部長がそう言うと、朱乃先輩が前に出て扉に手をかざした。

すると、扉を封印していた魔法陣が力を失っていくように徐々に光を失っていき、遂には綺麗さっぱり無くなってしまった。

後は手作業でテープをビリビリと剥がし、鍵を開け、中に入る…。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

その途端、耳をつんざくようなデカい叫び声が旧校舎中に響き渡った。

突然の事態に驚いた顔を浮かべる新人三人と、ノーリアクションで足を進める先輩四人。

オレはもちろん前者と同じ反応です。ギャアと叫びたいのはこっちの方だっつーの。

 

教室の中はカーテンで閉め切られているためか、薄暗く、部屋の雰囲気には似合わない可愛らしいぬいぐるみが至る所に置かれていた。

そして部屋の一角には、葬儀でも使えそうなほどの大きな棺桶がドドンと一つ。

 

「ご機嫌よう。元気そうで何よりだわ」

 

「な、何事なんですかァァァァァッ!?」

 

部長が棺桶にそっと声をかけると、その中から中性的な声の悲鳴がした。

さっきの叫び声もこの部屋の中からしたっぽいが…。ってことは、例の引きこもりくんはこの棺桶の中か?

 

「封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さぁ、私たちと一緒に__」

 

「嫌ですぅぅぅぅ!! ここがいいんですぅぅぅぅ!! 外怖いですぅぅぅぅ!!」

 

…見事に引きこもりらしい言葉だ。

ところが、朱乃先輩はそんなことお構いなしに棺桶の扉を開いていく。

ゴゴゴ…とでも音がしそうな気配とともに、棺桶の中身が露わになる…。

 

 

 

 

 

 

「……げっ」

 

「おおっ! 外国の女の子!」

 

そんな空気とは裏腹に、棺桶の中にいたのは、血のように真っ赤な眼と、アーシアのより少し暗めの金髪から伸びている僅かに尖った耳が特徴的で、女子の制服を着用したこれまた十分に美少女と呼べる少女だった。

棺桶の中で座り込み、部長たちに怯えた視線を向けている。

 

 

…また女子、かぁ……それもまた男どもが騒ぎ出しそうなやつがいたとはな…。

別にいやというわけじゃねぇんだが…せめてあと一人くらい男子枠が欲しいところだなぁ。今んとこ、こいつ含めて男三人の女六人だしさ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子は確かに見た目は女の子だけど、紛れも無い男の子よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……マジで?」

 

「……え?」

 

 

突然の部長のカミングアウトに、オレとイッセーは素っ頓狂な声を漏らす。

ゼノヴィアとアーシアも同じ心境なのか、信じられないような顔を浮かべていた。

 

 

 

もう一度引きこもり君の顔に目を向ける。

 

 

若干目を潤ませて、怯えるような視線を向けるその顔は、並の女優やアイドルならば裸足で逃げ出してしまいそうなほどの……。

 

 

 

 

 

………なのに、男?

 

 

 

 

 

 

 

「い、いや。冗談でしょ? だって、どこからどう見ても可愛い女の子じゃ……」

 

信じられないからなのか、それとも信じたくないからか。イッセーが明らかな動揺を見せながらも口を開く。

フラフラと、まるで生まれたての子鹿のように、慈悲を求める哀しい顔で部長の元へ歩み寄る…。

 

 

 

 

 

「女装の趣味があるのですわ」

 

 

 

 

……そしてサラッと放たれた朱乃先輩の言葉に、イッセーの希望は打ち砕かれるのであったとさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇええぇぇえええぇぇえぇえええっ!!?」

 

 

「ひぃぃぃぃぃっ! ゴメンなさぁぁぁぁいっ!!」

 

 

イッセーの絶叫にびっくりしたのか、“美少女”改め“美少年”は、イッセーの絶叫に負けないくらいの大きな声で悲鳴をあげた。

 

「完全に美少女なのに男だったなんて……。こんな残酷な話があってたまるか! 似合っている分余計真実を知ったときのショックがデカい! ってか、引き籠りなのに女装趣味ってどういうことだよ! 誰に見せるための女装だよ!?」

 

「だ、だって女の子の服の方がかわいいもん」

 

「もん、じゃねえよ! 野郎の癖に俺の夢を一瞬で散らせやがってぇぇぇぇぇぇっ! 俺はな! 俺はアーシアとおまえでダブル金髪美少女“僧侶”を夢見てたんだぞぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

涙を流しつつ、激しい怒りを見せるイッセー。

…気のせいかな。何故かこれまでの中で一番怒ってる気がする。

 

けどまぁ、こいつのショックも分かる…いや分かんねぇけど、一応納得はできるな。

オレでも美少女って思っちまったくらいだ。こいつにとっちゃ、もっと素晴らしい存在だったんだろう…。

 

 

「……“人”の“夢”と書いて、儚い」

 

「…なるほど納得」

 

「いやそれシャレにならんから! 」

 

小猫の鋭い呟きに賛同していると、すかさずイッセーがツッコミを入れてきた。

けど実質、うまいと思う。百点満点を与えたいくらいだ。この状況を見事に捉えたいい言葉だ。

 

 

 

 

「と、ところで、この方たちは誰なんですか?」

 

金髪少年がフルフルと震える指でこちらを指差し、怯えた声音で尋ねる。

その問いに部長が一人ずつ紹介する形で答えた。

 

「あなたがここにいる間に増えた新しい眷属よ。“兵士”の兵藤 一誠に、“騎士”のゼノヴィア。あなたと同じ“僧侶”のアーシア。人間の協力者の八神 柊よ」

 

「えっと…まぁよろしくな」

 

取り敢えず紹介されたので、軽く挨拶をしようかと手を伸ばす…。

 

 

「ヒィィィ、ふえてるぅぅぅぅ」

 

 

……ところが、当の本人は棺桶の中でビクビクと怯えているだけだった。

対人恐怖症なのかなんなのか…。事情はよくわからんが、これまた別の意味でやりにくいタイプだな…。

 

 

「お願いだから、外に出ましょう? もうあなたは封印されなくてもいいのよ?」

 

「嫌ですぅぅぅ! 僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁ! どうせ僕が出て行っても迷惑かけるだけだよぉぉぉ!」

 

部長が何とかして金髪少年を外に連れ出そうと優しく接するが、金髪少年は頑として外に出ようとしなかった。

 

そんな様子に腹を立てたのか、イッセーが若干お怒りな様子で金髪少年のもとに向かう。

 

「ほら、部長が外に出ろって__」

 

そう言ってイッセーが少年の腕を掴んだその瞬間____。

 

 

 

 

 

 

 

「イヤァァァァァァァァッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

____少年が叫び声をあげ、それと同時に視界が白に染まった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

気付いた時には、視界も元のような景色に戻っていた。

薄暗い部屋、開けられた棺桶、可愛いぬいぐるみ、そしてオカ研のメンバー全員…。特に何も変化した様子は見受けられなかった。

 

…しかし、唯一変わっているところが一つ。

さっきまで、というかたった今までイッセーが手を伸ばせば届くくらいの位置にいたはずの金髪少年が、何故か部屋の隅っこの方に移動して震え上がっていた…。

 

 

「おかしいです。いま一瞬…」

 

「…あぁ、何か起きたのは確かだね」

 

不可解な顔を浮かべる新人悪魔たち。

先輩悪魔たちはこの現象について何か知っているのか、ため息をついたり苦笑を浮かべるばかりであった。

 

 

「ひぃぃぃぃぃ、ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい……!」

 

一方、金髪少年は部屋の隅っこでひたすら謝り続けている。

…まさか、こいつがさっきの変な現象を巻き起こした原因ということなのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ーーーーーーー》

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

ふと、頭に何かがボヤァッと浮かび上がった。

これまでに見たことも聞いたこともないような単語が……いや、文章? それともイラストか?

…なんか、ボヤッとし過ぎて余り明確には出てこないな…。

 

 

 

「その子は興奮すると、視界に映るすべての物体の時間を一定の間停止させる神器を持っているのです。

しかし、その神器を彼自身制御できないため、大公や魔王さまの命でここに封じられていたのですわ」

 

 

…うーん、今のは何だったのか気になるところだが…。まぁ今はいいや。忘れるってことは、そんな大したもんじゃねぇだろ。

取り敢えず、目の前の金髪少年のことを先に済ませてしまおうか。

 

今の朱乃先輩の説明からすると…さっきの現象はその時間停止能力が発動したことによるもので、あいつはオレたちの動きを停めたあと、スーッと逃げていったってことか?

 

なんとまぁ末恐ろしい能力…。しかも制御出来ないときた。

なるほど。これじゃ確かに封印されんのも当たり前、か……。

 

 

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属の〝僧侶〟で、駒王学園の一年生。そして元は、人間と吸血鬼のハーフ」

 

 

部長が怯える金髪少年の後ろ姿を優しく抱きとめ、口を開く。

 

 

「そして神器、〝停止世界の邪眼〟【フォービトゥン・バロール・ビュー】の持ち主よ」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

「……あれ、大丈夫なんだろうな」

 

「さ、さぁ? 俺はなんとも……」

 

引きこもり少年____ギャスパーを半ば無理矢理外に引きずり出し、その神器についての説明を受け終わった頃には、空が見事に真っ赤に染まっていた。つまり、夕方だ。

 

あの後、部長と朱乃先輩は三すくみ会談の会場打ち合わせに、そしてユウトはサーゼクスさんからのお呼び出しってことで、この場を離れていった。

 

 

部長たちが戻ってくるまでのその間、ギャスパーをできる限り外に慣れさせるようにって指示がおりたワケなんだが……。

 

 

 

「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだ」

 

「ヒィィィィィィッ! デュランダルを構えて追いかけて来ないでぇぇぇぇぇっ!」

 

 

 

……聖剣デュランダルを手にした聖剣使い(ゼノヴィア)が、聖剣をブンブン振り回しながら吸血鬼の悪魔(ギャスパー)を追い回していた。

……しつこいようだが、聖剣で。

 

 

「…確か、聖剣で斬られた悪魔の末路って……」

 

「…消えるぞ、綺麗さっぱり」

 

 

……だよな。つい最近、そんなバタバタがあったからよく覚えてる。

 

ゼノヴィア曰く、「健全な精神は健全な肉体から」らしい。

その考えそのものには大賛成だが…うっかり当たっちまったらどうするんだよ…。側から見たら完全に吸血鬼狩りだぞアレ。

 

 

「…ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」

 

「いやぁぁぁん! 小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅ!」

 

 

……なんか小猫も楽しそうだ。

 

ギャスパーは吸血鬼でありながら、日光の下でも活動できるデイウォーカーであり、ハーフだから十日に一度輸血用の血液を補給すれば問題ない体質なんだとさ。ゼノヴィアは今、前者の一点をついて虐めてる。

なお、ニンニクや十字架が苦手なのは変わらないらしい。小猫は今、その一点をついて虐めてる。

……ギャスパーはいじられキャラで固定だな。

 

 

「おーおー、やってるやってる」

 

ふと、後ろの方から声がした。

振り向くと、そこには生徒会の匙がジョウロ片手に立っていた。花壇の手入れでもしてたんだろう。

 

「おっ、匙か」

 

「よー、兵藤。解禁された引きこもり眷属がいるって聞いて、見に来たぜ」

 

「ああ、あそこだ。ゼノヴィアに追いかけ回されてるやつ」

 

「おおっ! 金髪の女の子!」

 

ギャスパーの姿を目に捉え、歓喜の色を見せる匙。

 

「残念、あれは女装野郎だそうです」

 

そしてイッセーの言葉を聞き、一瞬で落胆した様子に移り変わり、その後、二人で肩を並べて悲しそうに愚痴りあい始めるのだった。

頼むからそこでやるのはやめてくれ。オレも同じくくりで見られんのは御免だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるわけか」

 

突然、誰のものか分からない声がした。

声のした方に目を向けると、そこには外国人のような男が浴衣を着て立っていた。

 

ニヤニヤといけ好かない顔を浮かべているそいつは……

 

 

「アザゼルっ!?」

 

イッセーの言葉とともに、その場の雰囲気がガラッと一転。ゼノヴィアは振り回していたデュランダルを構え、小猫もファイティングポーズをとる。

アーシアがイッセーの後ろに隠れ、イッセーはそれを守るように〝赤龍帝の籠手〟を出現させた。匙は慌てながらも自分の神器を発動させる。

 

「ひょ、兵藤、アザゼルって!」

 

「マジだよ。俺はこいつと何度か接触してるんだ」

 

緊迫した顔でそれぞれの獲物を構える悪魔たち。

 

「…やめとけ、こいつに敵意はねぇよ。やるだけ無駄ってもんだ」

 

そんな皆をなだめるように、オレは口を開いた。

 

「シュウ…けど、堕天使なんだぞ!?」

 

「お前の言いたいことは分かってる。堕天使は信用できねぇってのも同感だ。

けど、こいつとやりあっても勝ち目はねぇだろ?」

 

ポンとイッセーの肩を叩き、アザゼルの前に立つ。

…さて、強がって立ち塞がってみたはいいものの…。正直、怖いな。ブルッと鳥肌が立ちそうだ。

敵意がないのは確かなんだが、それが逆に異様なオーラを感じさせている。こいつは間違いなく、これまでに出会ってきた中で最も強いグループに入っているな…。

 

これか堕天使総督…。初めて会ってみたが、その名は伊達じゃねぇってことか……。

 

 

「その通り。俺だって、下級悪魔たちをいじめるつもりはない。ちょっと散歩がてら悪魔さんのところに見学だ。

聖魔剣使いはいるか? ちょっと見に来たんだが」

 

「生憎、ユウトならここにはいねぇよ。さっきお呼び出しがあったとこだ」

 

オレがそう答えると、アザゼルは「ちっ、つまんねぇな…」と頭を掻いた。

そのままキョロキョロと周りを見渡し、とある一本の木を指差す。

 

「そこに隠れてるヴァンパイア」

 

すると、その木にいつの間にか隠れていたギャスパーがビクッと震えた。

そのギャスパーに向かいながら、アザゼルは言う。

 

「〝停止世界の邪眼〟は使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足してる要素を補えばいいと思うが…。五感から発動する神器は、持ち主のキャパシティが足りないと自然に動き出して危険極まりない」

 

ギャスパーの両目を覗き込むアザゼル。

側から見れば、ギャスパーが堕天使に襲われているように見える光景だが、アザゼルからは悪意より興味のほうが感じ取られ、どう出るべきか悩むところだ。

ギャスパーはもう泡吹いてるが……。

 

次に、アザゼルは匙の方に視線を向けた。

 

「それ、〝黒い龍脈〟か? 練習するなら、それを使ってみろ。このヴァンパイアに繋いで神器の余分な力を吸い取りつつ発動させれば、暴走も少なく済むだろうさ」

 

慌てて身構える匙に、淡々と説明していく。

最初こそ緊張した顔つきをしていた匙だったが、段々と複雑なものになっていく。

 

「…お、俺の神器、相手の神器の力も吸えるのか? 単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと……」

 

「ったく、最近の神器所有者は自分の力をろくに知ろうともしない。

〝黒い龍脈〟は伝説の五大龍王の一匹、〝黒邪の龍王〟ヴリトラの力を宿している。

そいつはどんな物体にも接続することができ、その力を散らせるんだよ。短時間なら持ち主側のラインを引き離して、他の者や物に繋げることも可能だ。更に、成長すればラインの本数も増える」

 

呆れた様子で言うアザゼルに、とうとう匙は黙り込んでしまった。落ち込んで、というより、感心してのほうが近い。

 

いつか言ってたな…。アザゼルには異常な神器コレクター趣味があるって。

それもあって、ここまで神器について詳しいんだろうか……。

 

「神器上達で一番手っ取り早いのは、赤龍帝を宿した者の血を飲むことだ。ヴァンパイアには血でも飲ませとけば力がつくさ。

……ま、あとは自分たちでやってみろ」

 

そこまで言うと満足したのか、アザゼルはクルッと足先を変え、こちらに向けて歩を進めてくる。

そうして、オレの目の前で止まった。

 

「…で、お前が例の?」

 

顔を覗き込むようにするアザゼルの顔を睨み返してみる。

例のってのは、会談に参加する人間のことをサーゼクスさんあたりから聞いているんだろう。

 

「確かにそれなりに戦闘能力はあるみたいだが…。それだけでこの世界に入り込むってのは無理な話だ。

何かまだ、裏の力でも秘めてるんだろ?」

 

「…見てみるか?」

 

流石にグロンギの姿を見せる気はなく、手を叩いて近くにあった手摺に触れた。

すると、その手摺は青い光とともに形を変えていき、少し長めの棍へと姿を変える。

 

「…………」

 

それを、何やら不思議そうな顔で眺めているアザゼル。

ノーリアクションというわけでもなければ、過剰な反応を見せるわけでもなく、そのままの状態でいること数秒間…。

 

「……なるほど。あの嬢ちゃんの元には、色んな面白い力を持つ奴が集まってきたってことか」

 

途端、アザゼルは納得したように顔を上げた。

そしてそのまま、その場を離れようと足を進める…。

 

その途中、不意にその足を止め、こちらに振り返った。

 

「ヴァーリ___うちの白龍皇が勝手に接触して悪かったな。さぞ驚いただろう?

なーに、あいつは変わったやつだが、今すぐ決着つけようなんて思っちゃいないだろうさ」

 

「正体語らずに俺にたびたび接触してきたことには謝らないのか?」

 

「それは俺の趣味だ。謝らねぇよ」

 

 

それだけ言い残し、堕天使総督のアザゼルはこの学園から姿を消した……。




雑談ショーwithギャスパー

八「はい。ということで、今回から新しいメンバーが参加しました。〝僧侶〟のギャスパーくんです。ほら、挨拶」

ギ「ヒィィィィィィ……!」←段ボールの中

八「…えっと、こいつ、本編にもあったような性格なので、基本的にはこうやって段ボールの中に収まっているようでして……」

ギ「……………………(ガクブル)」

八「……なぁ、取り敢えずその中から出てきてくれねぇか? このままじゃオレの一人トークなんだが…」

ギ「……………………(ガクブル)」

八「おーい、ギャスパーさーん?」

ギ「……………………(ガクブル)」

八「……ダメだこりゃ」
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