閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

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すんごく今更な話題ですが、D×Dの新しいアニメをご視聴の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
僕はテレビが家族共有であるということもあり、見れたり見れなかったりを繰り返しています。

さて、四期から大分画風が変わった今期のアニメですが、皆様はどちらがお好きでしょうか。古きを慈しんでばかりの僕は、これまでの画風の方が好みだったりします。思い出補正というやつでしょう。

それに限らずなにかと古いものを好みがちな僕は、漫画やアニメ、ひいては音楽まで、今ブームのものより以前ブームだったものの方が好きだったりします。ヒロアカや進撃よりハガレンが好きだったり。

そのせいで今を生きる若者とはなかなか話題が合わないんですが、先日とうとう友人からおじんくさいとまで言われてしまいました。まだピチピチの二十代なのに。辛いね。


五十六話目

冥界に出発する日が来た。

かつてのトラウマを思い出したために行くことを一度は渋ったオレだが、あの時とは移動方法が違うから大丈夫だという部長の言葉を信じ、こうして皆と冥界に向かうことを決心したのだ。

 

学生にとって一番の正装となる制服を身につけたオレたちが最初にたどり着いたのは、学園から最寄りの駅だった。電車を利用するときはいつもこの駅から乗っている。

この街に住んでいるなら誰もが使うであろう駅にどうして行く必要が? まさか冥界の出入り口は街の外にしかなくて、そこまでの道のりを電車で移動するとかだろうか。しまった、電車を使うって分かってればなかなか使えずにいるsumocaでも持ってきたんだがな。

 

ベテラン悪魔の部長と朱乃先輩が、真っ先に駅のエレベーターへと向かう。二人は先にエレベーターに乗り込むと、待機する部員たちに向けて声をあげた。

 

「じゃあ、まずはイッセーとアーシアとゼノヴィアが来て。シュウは、あとで祐斗たちと一緒に来てちょうだい」

 

「はい」

 

部長に呼ばれた新人悪魔の三人が、同じくエレベーターに乗り込む。扉が閉まり、エレベーターが動き出した。

 

この駅のエレベーターは正直言って狭く、五人乗ったらほとんど満員になる。その上階層は一階と二階しかないから殆ど無意味に近く、多くの利用者はそんなエレベーターをわざわざ使おうとは思わない。かく言うオレも、普段ここを使うときは階段で移動してる。

なんでエレベーターを使おうと思ったんだろう。でかい荷物もあることだし、こっちの方が楽だというのは間違いないんだが。

 

部長たちが乗って行ったエレベーターが戻ってくるまで、その出入り口で待機する。二分近く経って、エレベーターはやっと戻ってきた。

 

いや遅すぎじゃね? 一階から二階に移動するのに二分とか、どんだけ時間かけてるんだこのエレベーター。そこまでポンコツだっただろうか。

「…行きますよ、先輩」

 

「お、おう」

 

慣れているという小猫とユウトはあっさりとエレベーターに乗り込む。けど、オレは正直乗りたくない。

はっきり言って怪しいんだがこれ。乗った瞬間ロープがブチッと切れてヒューッと落下とか、そんな展開ないだろうな。

 

「おーい、さっさと来いよ。お前が乗らねえと出発できねえだろうが」

 

…気がついたらアザゼルも乗り込んでた。

 

ひとまずオレもそっと乗り込む。エレベーターは特に揺れるわけでもなく、一般のそれと同じだという安心感がある。さっきの移動に時間がめっちゃかかったのはなんだったんだろうか。

その疑問の答えを、オレは直後に知ることになる。

 

ユウトがポケットからカードのようなものを取り出し、エレベーターの電子パネルに向ける。

 

ピッという電子音が鳴り、エレベーターは動き出した。

……なんと、下に向かって。

 

 

「っ!?!?」

 

 

マジで落ちるのかと一瞬狼狽えてしまったわけだが、どうやらこれは落ちているわけではないらしい。本当に地下に向けて移動しているようだ。

どういうことだろう。ここ、地下なんてあったっけ?

 

「この駅の地下には秘密の階層があるんだ。悪魔専用のルートで、普通の人間にはたどり着けない階層なんだよ」

 

「この町には、こんな風に悪魔専用の領域がいくつか隠れているんです」

 

なるほど、そういうものなのか。オレの気がつかないところにも、こういう悪魔専用施設があるもんなんだな。

…クソッ! ユウトがニコニコしてやがる! そんなにさっきの狼狽えようが面白かったか!

 

エレベーターは一分ほどで停止した。ということは往復で二分くらいってことだし、さっきやたら時間かかっているように感じたのはそういう原理なんだろう。

 

扉が開き、外に出る。そこは人工的な空間で、びっくりするほど広い場所だった。

 

「…駅の、ホーム?」

 

何となくだが、地上のそれに近いものがあるった。それも大規模のやつな。

線路が引かれているあたり、まさにそれっぽい印象を受ける。

 

「全員揃ったわね」

 

部長率いる先頭メンバーと合流した。部長の背後ではイッセーがこのバカ広い空間に興奮していた。

その気持ち分かる。この大声出したら響き渡りそうな感じ、何となくワクワクするものだ。

 

「さ、三番ホームまで歩くわよ」

 

三番ホームとか完全に駅のそれじゃねぇか。てことは、やっぱここは駅と言っていい場所なんだろう。

となると、冥界に行く正式手段というのは電車ってことになるのだろうか。

 

人間界発、冥界行きの電車は三番ホームまで。冥界に行くってところまでは幻想的だったのに、なんだか一気に現実臭くなってしまったなぁ。

 

そこそこ長い距離を移動している間…朱乃先輩がさりげなくオレの隣に来た。

なるほど、並んで歩こうということか。いいだろう。長らく先輩のお迎えを受けているうちに、並んで歩くことには慣れて来たんだ。いつまでも以前のオレではないってことを見せてやろう。

 

 

《ギュッ》

 

 

って手を繋がれることには慣れてなァァァァァっっ!!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「着いたわ」

 

部長の声で現実に引き戻される。良かった到着したようだ。危うく心臓が止まるところだった。

結局最後の最後まで手を繋いで歩くことになった。そろそろヤバい。いつかオレの心臓がマジで止まる。早く先輩のスキンシップに耐え得るメンタルを身につけなければ…。

 

再び開けた部屋に入ったオレたちの目に映ったのは、鋭角で悪魔を表す紋様がたくさん刻まれた、一般的によく知られている列車のようなものだった。

部長の家の紋様も見受けられる。ってことは、まさかとは思うが…。

 

「グレモリー家所有の列車よ」

 

本気かよ。専用列車まで持ってんのか。凄すぎんだろこの人の家。所有できるのは精々専用ジェット機くらいまでと思ってたところに列車は想定外だった。

 

開いた列車の扉から乗り込むと、間も無く発車の汽笛とともに列車が動き出した。

列車には色々と細かいしきたりが定められているようで、主人である部長は一番前の車両に、その他の眷属や客人たちは中央から後ろの車両に座ることになるんだとか。郷に入っては何とやら。ちゃんとそのしきたりには従おう。

 

走り出して数分。ひたすら暗がりの道を進む。さっきイッセーがどのくらいで着くのか聞いてみたところ、一時間ほどで到着するとの答えが返ってきた。

この列車は次元の壁を正式な方法で通過して冥界にたどり着くようになっているらしい。

 

魔法陣か何かでジャンプしてからの冥界入りというコースもあるようだが、イッセーをはじめとした新眷属悪魔は一度この正式のルートで入国しなければ、違法入国ということで罰せられるらしい。正式な入国手続きを兼ねた正式ルートでの移動といったところだろうか。

 

ということで、どうあれ一時間ほどの時間を要するらしい。アザゼルも端の方で爆睡してる。まる一時間もやることがなかったら暇だろう。

こう言う時は

 

「皆、ちょっといいかしら?」

 

前方の扉が開き、先頭車両にいたはずの部長が現れた。その隣には車掌姿の老人の姿が。

ダンディな白いあごひげが目立つ老人は、帽子を取って頭を下げた。

 

「初めまして、姫の新たな眷属悪魔の皆さん。私はこのグレモリー専用列車の車掌をしております、レイナルドと申します。以後、お見知り置きを」

 

「こ、こちらこそ初めまして! 部長…リアス・グレモリーさまの“兵士”、兵藤一誠ですよろしくお願いします!」

 

「アーシア・アルジェントです! “僧侶”です! よろしくお願いします!」

 

「ゼノヴィアです。“騎士”、今後もどうぞお願いします」

 

老人ことレイナルドさんの丁寧な挨拶に、新人眷属である三人が答える。他のメンバーは既に顔を合わせたことがあるのか、皆それぞれの席についていた。

レイナルドさんは新人眷属との挨拶をすませると、隅の方に座っていたオレに気づく。ここはオレも挨拶しておこう。

 

部長の家の関係者とのファーストコンタクト。ここで与えた印象がそのまま報告されることもあるし、ここはちょっと頑張った方が良さそうだ。

 

「八神 柊と申します。人間の身ではありますが、常々リアス・グレモリーさまの御高配を賜っております。此度はグレモリーさまのご家庭にご招待いただき、眷属の皆様方ともにご挨拶に伺いました。どうぞよろしくお願い致します」

 

姿勢を正し、可能な限り丁寧な言葉を並べてみた。

そういや初めて研究部に接触した時、こんな感じの挨拶したんだっけな。あん時はもうちょい砕けてたと思うが、ちょっとばかし懐かしい気持ちになる。

 

「リアス姫から伺っております。こちらの方こそ、よろしくお願い致します」

 

レイナルドさんからの返事を受け取り、これで全員分の挨拶が終わった。

その後、レイナルドさんは何やら特殊な機器を取り出してオレたちの姿を一人ずつモニターして行く。なんだか人間界の入国審査のような感覚を思い出すけど、多分それに似たものなんだろう。

 

「なんか久しぶりに聞いたな、シュウのかしこまった挨拶」

 

「部長んとこ、礼儀とか結構厳しいんじゃないかって気がしてさ。相応の態度で接するべきかと思ってよ。

…イッセーも気をつけといた方がいいぞ?」

 

「え、俺が? なんで?」

 

「オレもこっち来て思い出したんだが、あの人れっきとしたお嬢様だからな。最低限の礼儀は弁えてるってところをアピールしとかねぇと、貴方みたいな人はグレモリー家に仕えるものとして相応しくありませんとかなったら嫌だろ」

 

特にこいつの場合、グレモリー家の一員になることまで想定されている可能性がある。あっちに着くなり、礼儀作法が何たるかを叩き込まれるかもしれないからな。

納得したように頷くイッセーが、その意味に気がついているかどうなのか知らんけどね。

 

『ピンポーン』

 

なにやら軽快な音がなる。誰かクイズ番組でも見てるのだろうかと、音が鳴った方に視線を向ければ、レイナルドさんが先ほどの機械をしまっているところだった。照合完了、データ一致。といったところだろうか。

 

「姫、これで照合と同時にニューフェイスの皆さまの入国手続きも済みました。あとは到着予定の駅までごゆるりとお休みできますぞ。寝台車両やお食事を取るところもございますので、どうぞご利用ください」

 

「ありがとうレイナルド。あとは、アザゼルかしら」

 

クルッとアザゼルのいる席に振り返る。

アザゼルはガーガーといびきをあげ、それはそれは気持ちよさそうに眠りにふけっていた。

 

「…よくもまあ、ついこの間まで敵対していた種族の列車で眠れるものね」

 

「ホッホッホ、堕天使総督さまは平和ですな」

 

平和というか剛胆というか、怖いもの知らずというか…ある意味で頼もしいよ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

アザゼルが寝ている間に照合を済ませ、全員入国の手続きを終える。それぞれがそれぞれで暇を潰し、発車から一時間弱ほど経った頃だろうか。

車内アナウンスのようなものから、レイナルドさんの声が発せられる。

 

『もうすぐ次元の壁を突破します。もうすぐ次元の壁を突破します』

 

「外を見ていてごらんなさい」

 

結局寂しいのなんのと言って後部車両に移動してきた部長の言葉に従い、新人悪魔の三人は列車の窓から外に目を向ける。冥界の景色にはさしたる興味もなく、暇つぶしとして広げた夏休みの課題にそのまま取り掛かろうとしたオレの耳に、三人分の感嘆の声が響く。

 

「スゲェッ! スゲェよこれ!」

 

「はい! 本当にすごいです!」

 

凄い凄いと、特に感性豊かなイッセーとアーシアが連呼するが、一体なにがそんなに凄いのだろう。流石に少し気になって、イッセーの脇から同じく窓の外を覗き込む。

 

「…へぇ」

 

その景色は、思っていた以上に独特の雰囲気を醸し出していた。

 

山があり、森があり、川がある。それはまるで、オレたちが普段生活している街とそう大差ないものだ。

けれど、空気から感じる微かな感触は、明らかに人間界のそれとは大きく違うことを実感させる。

 

冥界というくらいだから針山地獄だの灼熱地獄だのといった光景を想像していたのだが、そんなものはなかった。町の家々の形が独特であるくらいで、あとはオレたちのよく知る街の風景とよく似ている。

 

「ここはすでにグレモリーの領地よ」

 

…今、何か信じられない言葉が聞こえたような気がした。

 

「えっ!? じゃあ、今走っているこの線路も含めて、全部部長のお家の土地ってことですか!?」

 

イッセーの驚きに、部長は自慢気に頷いた。

 

この街の全部が領土と言われると、ファンタジー物とかでよく見かけるような城下町を思い出す。王政を敷いている国で、お城があって、そこに住む王様が国全体を支配しているようなやつな。

魔王の一族だからなのか、そもそもグレモリー家自体が強力な力を秘めているからなのか。どちらにせよ、これだけの領土を持つと言うのは末恐ろしい話だ。

 

ここまでくると、これ以上驚かされることは到底ない。もう一生分驚き尽くしたような気さえするぜ……。

 

「グレモリーの領土って、どれぐらいあるんですか?」

 

「確か、日本で言うところの本州丸々ぐらいだったかな」

 

「ほ、本州丸々ぅぅぅぅっ!?」

 

本州丸々ときたか。本気で言ってるのだろうか。

日本は世界全体で比べれば小さい方だが、それでも広い。あれだけの広さを支配していると言うのは、正直イメージが掴みづらい。ファンタジー物でもそんな国は見たことがない。

この街は領土のほんの一部分に過ぎないと言うことだろう。末恐ろしいどころの話ではなくなってきた。

 

「本州ぐらいといっても、ほとんど手付かずなのよ? ほぼ森林と山ばっかりなんだから」

 

部長が何かほざいていらっしゃるが、だからなんだと言う話だ。

 

「シュ、シュウ。俺、どうすればいいんだ? もう想像をはるかに超えていて、どう反応すればいいのか分からねえよ…」

 

「難しいことは考えるな、感じるんだ」

 

「そうだわ、イッセーとアーシアとゼノヴィア。あとで貴方たちに領土の一部をあげるから、欲しいところがあったら言ってちょうだいね」

 

「領土、もらえるんですかぁぁぁぁっっ!?」

 

「貴方たちは次期当主の眷属悪魔ですもの。グレモリー眷属として、領土に住むことが許されるわ。朱乃も祐斗も、小猫やギャスパーだって自分の敷地を持っているんだから」

 

…幼馴染が、敷地をもらうそうだ。

 

『まもなく、グレモリー本邸前。グレモリー本邸前。ご乗車、ありがとうございました』

 

再度聞こえる、車内アナウンス。

窓から列車前方に視線を送ると…何やら兵服を身につけた兵士の軍勢が、列車の到着を待ち受けていた。

 

とうとうオレたちは、裕福と言う言葉では収まらないほどの領域に足を踏み入れることになった。

 

 

…まだ到着していないのにアレなんですが、早速帰りたくなってきたんですが…。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

部長先導のもと、開いたドアから降車していく。

アザゼルは魔王領の方に用事があるとかで、そのまま列車に乗って行くそうだ。いち組織のトップとなれば、スケジュールも忙しいらしい。

 

「じゃあ、先生あとで」

 

「お兄さまによろしくね、アザゼル」

 

部長とイッセーの言葉に、手を振って応えるアザゼル。

アザゼル一人を抜かし、九人でホームに降りる。その瞬間……

 

『リアスお嬢さま、おかえりなさいませっ!』

 

怒号のような声と、空に打ち上げられた花火。楽隊らしき人々が奏でる音楽などなど、壮大な出迎えが披露された。

ボーゼンと、そこに立ち尽くすことしかできないオレ。イッセーやアーシアも、身を寄せ合ってポカンとしている。ゼノヴィアは目をパチクリとさせている。

 

「ヒィィ…人がいっぱい…」

 

そして少し違う内容でビビったギャスパーが、イッセーの背後に隠れた。

 

なんだこれは。お出迎えって、こんな派手なものなのか。前今世ともに「おかえり〜」くらいのものしか味わったことがないオレにとって、これはもうとんだ場違い感。

 

「ありがとう、皆。ただいま。帰って来たわ」

 

嬉しそうに、満面の笑みを浮かべる部長。やっぱこの人にとってはこれが通常運転なのだろうか。よく見れば慣れているというユウトや小猫、朱乃先輩は普通だった。

 

「お嬢さま、おかえりなさいませ。お早いご到着でしたね」

 

そんな中、人混みの中から見知った顔が姿を現した。

銀髪のメイド、グレイフィアさんだ。

 

「道中ご無事で何よりです。さあ、皆様も馬車へお乗りください。本邸までこれで移動しますので」

 

グレイフィアさんが、傍で待機してある馬車を指差した。

豪華絢爛を体現したような馬車。それを引く馬も、普通の馬ではないことが見てわかる。

 

なんだか、馬車との間にドデカい壁があるような、そんな錯覚を感じさせられる。

 

「さあ、行きましょうシュウくん」

 

「は、はい…」

 

なかなか乗れずにいるオレを、朱乃先輩が引き入れてくれた。全員が馬車に乗り込むと、馬車は少しずつ蹄の音を鳴らしながら進み出した。

馬車が進む先に見えるのは、何やら巨大な建造物。どうやらあそこに向かっているらしいが、まさかとは思うがあれは…。

 

「部長のお家のひとつで、本邸です」

 

デスヨネー。もう何となく察してたわ。

ひとつって言葉がどうにも気がかりだが、どうせまだ多くの家を持っているとかそんなところだろう。領土のあちこちに、何番住居とか言ってさ。

 

「何というか、改めて部長がお嬢さんなんだってことを思い知らされましたよ…」

 

思わず溢れたつぶやきに、朱乃先輩がクスクスと笑う。

 

美しい花々の花壇、見事な造形の噴水。色彩様々な旅が飛び回る庭のようなところを馬車が進む。やがて馬車は止まり、ドアが開かれた。

 

「着いたようね」

 

部長が一足先に降り、オレたちが後から続く。両脇にメイドと執事が整列し、道を作っている。レッドカーペットまで敷かれ、気分は完全に王族のそれである。

 

「お嬢さま、眷属のみなさま。どうぞお進みください」

 

巨大な城門が開かれ、内部へと誘われる。内部も変わらずメイドの列が続き、その先の建物まで途切れていない。一体何人の使用人が控えているのだろうか。

 

「リアスお姉さま! おかえりなさい!」

 

そんな中、可愛らしくも元気な声とともに部長の元へ駆け寄る小さな人影。部長はその姿を認識するとともに、その人影を優しく抱きとめた。

 

「ミリキャス! ただいま。大きくなったわね」

 

ミリキャスと呼ばれたその少年は、部長と同じような紅い髪を肩まで伸ばした、まさに美少年と呼ぶにふさわしい顔の持ち主だった。

 

「部長、その子は?」

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄さまの子どもなの。私の甥ということになるわ。

ほらミリキャス。挨拶をして。この子は私の新しい眷属なのよ」

 

「はい。ミリキャス・グレモリーです。初めまして」

 

「こ、これは丁寧なご挨拶をいただきまして! お、俺…いや、僕は兵藤 一誠です!」

 

へー、サーゼクスさんの息子さんかぁ。息子がいるなんて、そんな様子見かけたことなかった。

てことは、魔王の息子ということになるのか。イッセーが歳下相手に無様に緊張するのも無理はない。

 

「サーゼクスさまのご子息なのに、姓はルシファーじゃなくてグレモリーなんですね」

 

「魔王の名は継承した本人しか名乗れないから、この子はお兄さまの子でもグレモリー家なの。私の次の当主候補でもあるのよ。

さて、屋敷に入りましょうか」

 

ミリキャスくんと手を繋ぎ、門の方へと進み出す部長についていく。巨大な一つめの門を潜り、更に途中までのいくつかの門を通っていくうちに、ついに玄関らしきところへ着いた。

一体幾つの門をくぐってきただろうか。流石に日本列島分の土地を支配するだけあって、その家も信じられないくらい広い。分かりやすく言えば、玄関ホールの時点で既に余裕で運動会ができるくらいのスペースがあるくらいだ。

 

「お嬢さま、早速皆様をお部屋へお通ししたいと思うのですが」

 

「そうね、私もお父さまとお母さまに帰国の挨拶をしないといけないし」

 

「旦那様は現在外出中です。夕刻までにおかえりになる予定です。夕餉の席で皆様と会食をしながら、お顔合わせをされたいとおっしられておりました」

 

「そう、分かったわ。それじゃ、一度皆はそれぞれの部屋で休んでもらおうかしら。荷物はすでに運んでいるわね?」

 

「はい、お部屋の方はすぐにお使いになられても問題ございません」

 

部長とグレイフィアさんの会話を耳にする。ここで休めるのは正直に言ってありがたい。冥界に来てからというもの、驚愕の嵐だったからな。なんだかどっと疲れた。イッセーやアーシアなんかもフラフラしてるし…。

 

「あら、リアス。帰ってきたのね」

 

その時、階段の上の方から、聞き覚えのない女性の声が届いた。

降りて来たのは、オレたちとそんなに歳が変わらなさそうな女性だった。雰囲気がどこか部長に似ている気がするが、髪色が紅くない。

 

ひょっとすると、部長のお姉さんとかだろうか。妹って感じはしないし、双子って線もあるけれど…。

 

「お母さま、ただいま帰りました」

 

…え、お母さま?

 

「お、お母さま!? だって、どう見ても部長とあまり歳の変わらない女の子じゃないですか!」

 

「あら、女の子だなんて嬉しいことをおっしゃいますのね」

 

イッセーの驚きに、ふんわりとした笑みを浮かべる部長のお母さま。隣にリアクション芸人がいて助かった。でなければ、オレはもう朝からのリアクションの連続でくたびれきっていたに違いない。

 

イッセーの言葉通り、部長のお母さまにしては見た目が若い。どう頑張ってもお姉さんくらいにしか見えず、到底お母さまとは思えないんだが…。

 

「悪夢は歳を経れば魔力で見た目を自由にできるのよ。お母さまはいつも今の私ぐらいの年格好なお姿で過ごされているの」

 

そんなことまでできるとは、便利すぎんか魔力。

ということは、この方は本当に部長のお母さまなんだな。

 

「初めまして。私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーです。よろしくね、新しい眷属の皆さま方」

 

部長のお母さま。ヴェネラナさんは、丁寧なお辞儀をしてみせた。




雑談ショー with アーシア

八「さて、一応冥界までの旅は終わったわけなんだが…どうだった?」

ア「初めて冥府に来たんですが、こんなに凄いところだったなんて! 感動してしまいました!」

八「だな。オレも色んな国を回ったことがあるが、それらとはまた違う感じで貴重だった」

ア「はい! 祖国とも日本とも違う、新しい文化と触れ合うことができそうで楽しみです!」

八「あ、そういやアーシアも一応異文化交流の経験があるんだったな」

ア「そうですね。他にも、色んな国を訪れたことがあるんですよ?」

八「そっか。色んな国を…訪れた…」




八「そういや、イッセーは外国に行ったことなかったな」

ア「そうなんですか?」

八「初めての異文化交流が冥界…。なんか、不思議な話だよなぁ」
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