どうやら過去のライダー世界をディケイドとはまた違う形で巡っていくような物語らしいですが、今度は一体どんなジオウワールドを展開してくれるのでしょうか。
個人的に気になるのは、出演が決定している人物を除き、何人のオリキャスが出てくれるのか、ですかね。二期のメンバーは皆さん何かしらの形で再びライダー作品に触れられていますし、ワンチャンあると嬉しいです。
あとは同じく時空を渡っているディケイドや電王あたりでしょうか。ここまで全部揃ってくれれば僕としては大満足です。
とはいえ、最大の敵は、予算かなと。
それからあのスーツのデザイン、恐らくモチーフは腕時計なんでしょうが、腕時計が大好きな僕大歓喜でした。
冥界に到着して一日が過ぎた。
オレは今、グレモリー家の使用人の人たちに用意してもらった客間にいる。本邸の大きさから想像される通り、中の部屋は一室一室がバカ広い。ここでずっと過ごしていると、いずれ部屋という概念が分からなくなりそうだ。
部長たちはさっき、魔王領の都市に用事があるとかで出かけていった。聞くところによると、部長と同じく将来を期待された若手悪魔たちが集まって顔を合わせる恒例の行事があるんだってさ。
部長と同じ若手悪魔がどんな人物なのか気になったのだが、今回は特に用事のないオレが物見遊山気分で行っていい場所でもなさそうだったんで、自重して留守番することにしたんだ。
部屋の壁側にそびえ立つ本棚から、一冊の本を取り出す。文字は悪魔語で書いてあって、何を書いてあるのかてんで分からない。オレの目にはミミズがのたくったようなものにしか見えないのだが、これらもすべて意味のある文字らしい。
そういやさっき、イッセーが悪魔語の勉強をすることになったとか言ってたな。元々、上級悪魔や上流階級としての振る舞い方や、貴族とは何たるかについて学ぶくらいのものだったらしいが、色々あって語学も学ぶことになったんだとか。
何でそんなものを学びに行ったのかって? ああ、オレの予測通りだったよ。
しかし、あいつも大変だよ。まさかの第二外国語が悪魔語とは、全くもって想像つかなかっただろう。
英語や中国語なんかと違って、悪魔語は地上では絶対に見かけない文字。何の知識もなく言語を学ぼうってのは難しい話だよなぁ…。
「…ん? いや待てよ、これは…」
改めて本の表紙を。もっと言えば、表紙に描かれた絵をよく見ると、その絵が何か見覚えのあるもののように感じた。桃の鉢巻を頭に巻いた、可愛らしいお侍の絵だ。
いや、見覚えあるどころか…。
「これ、まさか『桃太郎』じゃねぇか?」
桃太郎。人間界では誰しもがよく知る、桃から生まれてお婆さんから団子もらって犬猿雉連れて鬼を退治する、あの昔話だ。
桃太郎が悪魔語に翻訳されて、冥界で大変位の高い家に置いてある。なんとも不思議なお話だ。
桃太郎の表紙をめくり、一ページ目を開く。見覚えのある挿絵と、見覚えのない文字が並んでいた。桃太郎の内容はオレだって知っているし、その見覚えのない文字列がどんな意味を表しているのかは理解できた。
「……………」
思わず、読み込んでしまう。
桃太郎が懐かしくて読み耽っているわけではない。悪魔の文字で表された言葉の読解に、無意識のうちにのめり込んでしまう。以前から古文や漢文が好きだったオレにとって、解読というものは心が躍るものだった。
それが今、容易くできてしまう。グロンギの力は、言語解読に対しても強い影響がある。
…心なしか、その解読はかつてのモノよりスムーズに進んで行っているような。そんな気がしてしまった。
「あークソッ、やめだやめ…」
一ページ目をあっさりと解読してしまったところで、桃太郎の本を元の場所に戻す。神さんの言う魔石の力の進化具合を、こんな形でまで実感するようになっちまうとは…。
《コンコン コンコン》
「?」
ノックがされる。律儀にこうやってノックしてくる辺り、使用人の誰かだったりするんだろうか。オレに何か直接的に用がありそうな人物って、あまり想像できないんだが…。
扉を開け、外にいる人物を招き入れる。
「…あ」
「ごめんなさい。突然お邪魔してしまいまして」
…部長のお母様、ヴェネラナ・グレモリーさんだった。
お母様は流石の丁寧な振る舞いで挨拶してくれた。
「いえ、特に何をしていたというわけでもありませんでしたし…何か御用でしょうか?」
「用事があるわけではございませんの。少しばかり、お話がしてみたかったのです」
お、お話って、オレと? オレ何かやらかした?
実はお母様、すごく温厚な見た目をしているわけだが結構怖いのだ。昨日の夕餉の席でも部長のお父様と比べて発言力があるっぽかったし、わがままが爆発しかけた部長をきつく窘めたりもしていた。あれ、外部から見ているだけでも結構怖い。怒るときは怒気を表情に込めて静かに諭すタイプって想像すれば何となくわかるかと。
ただ、決して厳しいだけってわけではない。
「私としては嬉しいのです。わがままばかりの困った娘だけれど、人間界でお友達ができたということが」
…今の言葉にもある通り、部長のことは何かと気にかけてるのは確かだ。
「人間界でのリアスの様子がどんなものなのか、教えてくださらない?」
それから、お母様と人間界でのお話をさせてもらっていた。部長は人間たちにとっても憧れを抱かれていたり、イッセーの両親やご近所さんとも仲が良さそうにしていたりだとか。部長に関係がないことながら、人間界の歴史については割と細かい分野まで話すこともできた気がした。
それから…イッセーの部長に対する呼び方が、『部長』のまま全く変化がないと言うのも、あまりよろしく思っていないようだった。
「ここは学び舎ではないのですから、主人の名前はちゃんと呼ばないといけません。ましてやリアスは…」
「まあ、あの唐変木が全く気が付きませんからね。外部が手を出して良いものかどうかって気にもなりますし」
「その通りです。それぐらい自分で答えを出していただかなければ…」
そこで、メイドの一人が姿を見せた。お母様に何かを告げた後、静かなお辞儀でその場を去っていく。
「先程、リアスたちが戻ってきたようです。色々と会って話をしたいのではありませんこと?」
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本邸のリビングに向かってみると、行事から戻ってきたらしい眷属の皆と、昨日はまっすぐ魔王領に向かっていったアザゼルが何やら話をしているところだった。
アザゼルが愉快そうな顔を見せている。一体何の話をしていたんだろう。
「何の話をしてるんすか?」
「ソーナたちと非公式のレーティングゲームを執り行うことになったの。元からアザゼルが若手悪魔同士で試合を組ませる予定だったらしいのだけど、まさかソーナと当たることになるなんてね…」
「レーティングゲーム? 生徒会長さんと?」
部長が頷き、オレの言葉に間違いがないことを示した。
生徒会長も若手悪魔の一人ということで、オレたちが来た道とは違うルートを使って冥界に来ていたそうだ。他にも若手悪魔は四人くらいいるとか聞いたが、その中でも馴染みの深い会長たちと試合をすることになるとは。
しかしレーティングゲーム、ねぇ…。オレとしてはジャラジとやりあった時の嫌な思い出しかないし、なんとも微妙な気持ちを感じてしまう。けれど皆にとっては一度経験したものだから、心にも多少ゆとりがあるだろうさ。
「今回は若手悪魔同士の親善試合だ。前回は助っ人だのなんだのと面倒な事態が絡んでいたらしいが、今度の試合はそれはない。グレモリー眷属だけで戦うことになる」
となると、オレは不参加しか道はないってことか。前回はホストフェニックスが余裕のハンデで参加させてくれたんだが、今回はそういうわけにもいかないらしい。
「人間界の時間で現在七月二十八日。対戦日まであと約二十日間だな」
試合まで残された期間は、僅か二十日間。直感的には長いような気がするものだが、実際過ごしてみると案外あっさり過ぎ去ってしまうような期間だ。
となれば、その間にできることってのは限られてくる。
「修行、か……」
「そうだ。明日から開始予定で、すでに各自のトレーニングメニューは考えてある」
アザゼルは頷き、手のひらにメモのようなものを広げた。個々の課題でも載っているのだろうか、色々と事細やかに書いてある。
「明日の夜、庭に集合だ。そこで各自の修行方法を伝える。覚悟しておけよ」
『はい!』
アザゼルの言葉に全員が返答をした。皆、かなりのやる気に満ち溢れているのが分かる。
…そうだ。オレも、この期間で強くならないといけない。
今後の戦いのために。そして、俺自身に負けないために…。
「…八神、ちょっといいか?」
「アザゼル?」
その時、オレはアザゼルから呼び止められた。他の皆は温泉の準備ができたとかで、次々に温泉へと向かっていく。
そしてその場に、オレとアザゼル以外の人影がなくなったタイミングで…アザゼルは小声で告げた。
「…お前に、言っておきたいことがある」
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次の日の朝。俺こと兵藤 一誠は、他の部員の仲間たちと一緒に広い庭の一角で準備運動などに取り組んでいる。早速今日から特訓が始まるというわけで、皆どこか緊張した面持ちだ。
かく言う俺も結構緊張していたり。修行をする機会はこれまでにも何回かあったけれど、アザゼル先生から受けるものとなればめっちゃ大変なものなんだろうなって、なんとなく想像できるからね。
「全員、揃っているな」
グレモリー宅の扉から、資料やデータらしきものを持ったアザゼル先生が現れた。全員分の視線を集め、部員の人数を確認している。
その視線に合わせ、なんとなく俺も皆の姿を確認してみようとしたところ…あれ? 一人足りない。一番見慣れたあいつの姿がどこにも無いような…。
「よし、八神以外は全員揃っているな」
「シュウのことはいいんですか?」
「ああ。あいつは昨日、ちょっと早めに修行に取り掛かりたいって言ってきたからな。既に許可してあるから問題ない」
うーん、なるほど。そういうことか。
あいつのことだし、そんな感じのことを言うだろうなってとこは想像できる。けど、それはそれとして最初の集合までは一緒に来てもいいだろうにさ。
昨日も折角の温泉に入ってこなかったし、なんか悩み事でもあるのかな…。
「先に言っておく。今から俺が言うものは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。すぐに効果が出るものもいるだろうが、長期的に見なければならないものもいる。ただ、お前らは成長中の若手だ。方向性を見誤らなければいい成長をするだろう」
先生はそこまで告げると、手元の資料に視線を落とした。恐らくこれから、全員分のメニューを伝えていくんだろう。
「まずはリアス。お前は最初から才能、身体能力、魔力の全てが高スペックの悪魔だ。このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補となっているだろう。だが、将来よりも今強くなりたい。それがお前の望みだな?」
部長は力強く頷く。昨日出会ったライバルの面々を見て、部長も燃えているのかも。
「なら、この紙に記してあるトレーニングを決算日直前までこなせ」
「…これって、特別すごいトレーニングとは思えないのだけれど」
「そりゃそうだ。基本的なトレーニング方法だからな。お前はそれでいい。全てが総合的にまとまっているからこそ、基本的な練習だけで力が高められる。問題は“王”としての資質だ。王は時によって力よりも頭を求められる。魔力が得意じゃなくても、頭のよさや機転の利きで上まで上り詰めた悪魔だっているのは知ってるだろ?
お前は期限までレーティングゲームを知れ。ゲームの記録映像、記録データ、それら全てを頭に叩き込め。王に必要なのは、どんな状況でも打破できる思考と機転、そして判断力だ。眷属悪魔が最大限に力を発揮できるようにするのがお前の仕事だ。ただ、これも覚えておけ。実際のゲームでは何が起こるか分からない。戦場と同じだ」
…お、おお。結構細かく分析してあるんだな。普段が普段だからちょっと不安だったけど、なんだかんだ言ってちゃんと考えてあったらしい。
説得力も段違いだ。俺も、多分部長も実践するしかないと感じさせられる。
「次に朱乃」
「…はい」
先生に呼ばれた朱乃さんは、どこか不機嫌だった。やっぱり堕天使というのが苦手らしい朱乃さんは、同じくアザゼルのことも苦手、それどころか少し嫌いなんだって言っていた。この前聞いたお父さんの話が関係しているんだろう。
「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」
「っ!」
え、そんなストレートに言っちゃう!?
「フェニックス家との一戦、記録映像で見せてもらったが、なんだありゃ。本来のお前のスペックなら、敵の女王を苦もなく打倒できたはずだ。
なぜ堕天使の力を振るわなかった? 雷だけでは限界がある。光を雷に乗せ、“雷光”にしなければお前の本当の力は発揮できない」
「…私は、あのような力に頼らなくても」
「否定するな。自分を認めないでどうする? 最後に頼れるのは己の体だけ。否定がお前を弱くしているんだ。辛くとも苦しくとも、自分を全て受け入れろ。お前の弱さは今のお前自身だ。決戦時までにそれを乗り越えてみせなければ、お前は今後の戦闘でも邪魔になる。“雷の巫女”から“雷光の巫女”になってみせろ」
先生の言葉に、朱乃さんは顔を曇らせたまま何も答えなかった。複雑極まりないってところなのかもしれない。やらなきゃいけないってことだけは理解してくれているんだろうから、俺は朱乃さんのことを信じるだけだけどね。
こういう時にあいつから言葉をもらえればいいんだろうけど、肝心な時に限っていないんだよなぁ、全く。
「次は木場だ」
「はい」
「まずは禁手を解放している状態で一日保たせること。それに慣れたら、実戦形式の中でまた一日。それを続けていき、状態維持を一日でも長くできるようにしていくのがお前の目的だ。あとはリアスのように基本トレーニングをしていけば十分な力を手にできるだろうさ。
剣系神器の扱い方はあとでマンツーマンで教えてやるとして…剣術の方は師匠にもう一度教わりに行くんだったよな?」
「ええ、一から指導してもらう予定です」
木場は淡々と話が進んで行く。するべきことは明確な分、簡単だ。けれど木場は真面目だから、きっと一から全てを学んでくるつもりなんだろう。滅茶苦茶強くなって帰って来そうだ。
「次、ゼノヴィア。お前はデュランダルを今以上に使いこなせるようになることと、もう一本の聖剣に慣れてもらうことになる」
「もう一本の聖剣?」
ゼノヴィアは先生の言葉に首を傾げた。もう一本の聖剣って何のことだろう。俺としてもちょっと気になる話だ。
「ああ、ちょいと特別な剣だ」
しかし先生は、ニヤッと笑うだけですぐに視線を動かす。その先にいるのはギャスパーだ。
「次にギャスパー」
「は、はいぃぃぃぃ!」
「そうビビるな。お前の最大の壁はその恐怖心だ。何に対しても恐怖するその心身を鍛えてやらなきゃいかん。もともと血筋と神器ともにスペックは相当なものなんだ。僧侶の特性、魔力に関する技術向上もお前を大きく支えてくれる。専用の『引きこもり脱出計画!』を組んだからそこで真っ当な心構えをできるだけ身につけてこい。全部が無理でも、人前に出て動きが鈍らないくらいにはなれ」
「はいぃぃぃぃっ! 当たって砕けろの精神でやってみますぅぅぅぅっ!」
…不安になることを言わないでくれよ。お前がいうと冗談に聞こえないからさ。
例の神器を安定させるリングは、どうやら長時間装着していると体に良くないらしいので、必要な時以外は外すようにしているんだ。だからこそ、そのリングが無くとも安定させるために心身を鍛える必要がある。
そのためのプログラムなんだろうけど…先は長いかもしれないな。ほら、すぐに段ボールに逃げ込もうとするし…。
「さて、同じく僧侶のアーシア」
「は、はい!」
アーシアは元気よく答えた。気合も十分入っている。いつだったか、アーシアは現状の自分が皆の役に立っていないと感じていると告白されたことがあった。俺は全くそう思ってないけど。あの回復能力には何度も助けられたし。
とはいえ、アーシアがやる気満々なら、俺も応援してやりたい。
「お前も基本的なトレーニングで、身体と魔力の向上。そしてメインは、神器の強化にある」
先生がアーシアの課題を告げた。でも、俺の頭に疑問が浮かぶ。
神器の強化? 今よりもっと強化するって、どういうことだ?
「アーシアの回復神器は最高ですよ? 触れるだけで病気やスタミナ以外ならなんでも治してくれますし」
「それは理解している。回復能力の速度は大したもんだが、問題はその触れなきゃならんって点だ。味方が怪我をしているのに、わざわざ至近距離にまで移動しないと回復作業ができないんじゃあなってことだ」
先生は俺の疑問に答えてくれた。
至近距離まで移動しないと、回復ができないのが問題…ってことは、アーシアの神器の強化案ってのはもしかして!
「アーシアの神器は、範囲を広げられるということ?」
「ご名答だリアス。こいつは裏技みたいなもんだが、“聖母の微笑”の真骨頂は効果範囲の拡大にある。俺たちの組織が出したデータの理論上では、神器のオーラを全身から発することで周囲の味方をまとめて回復するなんてことも可能なはずなんだ。
ただ、問題はアーシアの優しすぎる性格だな。性格上、アーシアは戦場で怪我をした敵を視認した時、そいつのことまで治療してやりたいと心中で思ってしまうだろう。それは敵味方を判別する神器の能力に妨げとなる。おそらくアーシアは判別する力を得られない。となれば今言ったとおりの範囲拡大はこのチームにとっての諸刃の剣となりかねない。だから別の方法で能力範囲を拡大させる必要がある。それは、回復のオーラを飛ばす力だ」
「そ、それはちょっと離れたところにいる人に、私が回復の力を送って治療をするということですか?」
「そういうことだ。さっきのが一定フィールド限定のものだとしたら、これは飛び道具バージョンってとこだろうな。直接触れずとも回復ができるようになる。直接触れて治すより多少効力は落ちるだろうが、それでも遠距離の味方を回復できる力は戦略を広くすることができる。前線に一人二人飛び込ませて、後方で回復役のアーシアと護衛役の誰かを配置すれば、理想的なフォーメーションが組めるだろうさ」
す、すげぇ! それが本当なら、アーシアはすごい役目を担うことになるぞ! まだ戦いにおいて未熟な俺でも分かる!
「王道だけど、シンプルに強い戦術だわ。通常味方を回復する術なんて、フェニックスの涙か、調合された回復薬ぐらいのもの。アーシアの神器は汎用性と信頼性に関して、それらよりも遥かに上だわ」
「そうだ。アーシアの悪魔をも治す神器の力はこのチームの特徴的な持ち味、武器と言える。あとはアーシアの体力勝負だ。基本トレーニング、ちゃんとこなしておけよ?」
「は、はい! 頑張ります!」
アーシアは再び、先生の言葉に元気に頷いた。
頑張れ、アーシア! いざとなったら、俺はいつでもアーシアの盾になるからな!
「次は小猫」
「……はい」
そして、最後に呼ばれた小猫ちゃんは…相当気合の入った様子だった。ここ最近ずっと調子が悪そうだったのに、今日は妙に張り切っている。
一体どうしたんだろう。皆、ちょっと心配してるんだよね。
「お前は申し分のないほどオフェンス、ディフェンスともに戦車としての素養を持っている。身体能力も問題ない。だが、リアスの眷属には戦車のお前よりもオフェンスが上の奴が多い」
「…分かっています」
ハッキリと言った先生の言葉に、小猫ちゃんは悔しそうな表情を浮かべた。
…ひょっとして、小猫ちゃんはずっとそのことを気にしていたんだろうか。そんなことはない。小猫ちゃんのパワーは有数で、単純な腕力なら眷属内でもトップランカーじゃないか…。
「リアスの眷属でトップのオフェンスは現在木場とゼノヴィアだ。禁手の聖魔剣、聖剣デュランダルと凶悪な兵器を有しているからな。ここに予定のイッセーの禁手が加わると…分かるな?」
そ、そうか。確かに木場とゼノヴィアのパワーは、この中じゃ抜きん出ているからな。
でも、俺だって禁手に至っても勝てるかどうかわからないのに…。
「小猫、お前も他の連中と同様に基礎の向上をしておけ。その上でお前が封じているものを晒け出せ。朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ、大きな成長なんてできやしねぇのさ」
「………」
先生の言葉に、小猫ちゃんは何も答えなかった。
…封じているものって、何のことだろう。小猫ちゃんは一体何を抱えているんだ? 全く分からない。
「大丈夫、小猫ちゃんならソッコーで強くなれるさ」
「…そんな、軽く言わないでください…っ」
険しい表情。こんなに厳しい感じの小猫ちゃんは初めてだ。
励まそうとしたけど、逆効果だったみたいだ。むしろ地雷踏んでしまったんじゃ…。
はぁ…ホントに何でこういう時に限っていないんだよ、あいつは…。
「さて、最後はイッセーだが、お前は…そうだな。そろそろ来ると思うんだが…」
空を見上げる先生。一体何を待てばいいのかと、同じく空を見上げた俺たちを……どデカイ影が覆う。
何やら巨大なものが、こちらに猛スピードで向かっていた。怪物か、魔物か、妖怪か。謎の襲来者は、地響きとともに目の前に飛来した。大地が揺れ、俺は尻餅をつく。土煙が収まると、眼前にでっかい怪物が現れた。
十メートルを優に超えるであろうそれは、まさに怪獣と呼んで良さそうなものだった。大きく裂けた口に生え揃う鋭い牙。ぶっとい腕に、ぶっとい脚。左右に広がる大きな両翼。
…俺は、これを知っていた。幾度となく目にしたこともあるし、それどころか、俺にもこれが宿っている。
「…ドラゴン!」
「そうだ、イッセー。こいつはドラゴンだ」
先生は愉快そうに頷いた。やっぱりドラゴンか! すげぇデケェ!
「アザゼル、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」
「ハッ、ちゃんと魔王様直々の許可をもらって堂々と入国したんだぜ? 文句でもあるのか、タンニーン」
ドラゴンは、先生と言葉を交わす。喋れるんだね、あのドラゴン。やっぱりこの世界のドラゴンというのは、案外喋るものらしい。
「…てなわけで、イッセー。こいつがお前の先生だ」
先生は、巨大なドラゴンを指差した。
なるほど、そういうことで待っていたのか。あのドラゴンが、俺の先生かぁ…。
…って、え?
「ええええええええええええぇぇぇぇっっっ!!??」
マジで!? え、あの怪獣が俺の先生!? あなたじゃないんですかアザゼル先生!!
「ドラゴンの修行相手はドラゴンが最適ってなぁ」
そんなもんなんですか、これ!? そんな単純な理由で選ばれたんですか俺の先生は!!
「久しいな、ドライグ。聞こえているのだろう?」
怪獣ドラゴンは、俺のほうを、改め俺のうちに存在するものに向けて語りだす。俺の左腕が勝手に輝き、赤龍帝の籠手が出現した。
籠手の宝玉が輝き、周囲にも聞こえるように音声を出して応えた。
『ああ、懐かしいなタンニーン』
「え、知り合いなのか?」
『こいつは元龍王の一角だ。五大龍王のことを以前話したと思うが、タンニーンは“六大龍王”だった頃の龍王の一匹だ。聖書に記された龍をタンニーンと呼ぶのだが、こいつのことを指している』
「タンニーンが悪魔になって今や六大龍王から五大龍王になったんだったな。転生悪魔の中でも最強クラスの、最上級悪魔だ」
はあ、龍王。確か俺を狙っている龍王もいるって話を前聞いたことがあるな。それの一匹だったのが、目の前のドラゴンってことか…。
いやいやいやいや、だとしたら怖すぎだろ! あれぐらいのサイズの化け物が俺を狙ってるだって!? そんなの絶対会いたくない! ドラゴン相手はヴァーリだけで十分だっての!
「魔龍聖タンニーン。その火の息は隕石の衝撃にさえ匹敵するとまで言われていて、未だ現役で活動している数少ない伝説のドラゴンなんだが…さてタンニーン。悪いが、この赤龍帝を宿すガキの修行に付き合ってくれ。ドラゴンの力の使い方ってやつを一から叩き込んで欲しいんだよ」
なんだって! 隕石級の破壊力を持つドラゴンだって!? 俺そんなドラゴンさんに修行をつけてもらえるんですか!? 俺死んじゃうやつだそれ!!
「俺がしなくてもドライグが直接教えれば良いのではないか?」
「それでも限界がある。やはりドラゴンの修行といえば…」
「元来から実践方式。なるほど、俺にこの少年を苛め抜けと言うのだな?」
おいおいおい! 俺いじめられちゃうのかよ! こんなのにいじめられたら即死亡だっての!
ドラゴンさんは大きな手を俺にむけて差し出す。握りつぶされる! と思ったら案外優しく包まれた。
なんだ、意外と優しかったりするのかも…と、ドラゴンさんを見上げた俺の目に、すごく嫌なものが写ってしまった。
「ドライグを宿すものを鍛えるのは初めてだ」
いやぁぁぁぁっっ!! なんか怖い笑みを浮かべてるぞこのドラゴン!! ホントに殺されるぅぅぅぅっっ!!
『手加減してくれよタンニーン。俺の宿主は想像以上に弱いんだ』
「死ななければいいのだろう? 任せろ」
ドラゴンさんは翼を広げ、今にも飛び立とうとしている! やだ、連れて行かれる! 助けて部長! 慌てて部長に助けを求め、涙ながらに部長の方を見た。
「イッセー、気張りなさい!」
部長は親指を立ててエールを送ってくれていた。
そうでした! 部長はトレーニングに関しては妥協を許さないお方だったんでしたぁぁぁぁっっ!!
「たぁぁぁすぅぅぅけぇぇぇてぇぇぇぇぇぇっっ!!!!!」
俺の絶叫は、静かな冥界に虚しく木霊するだけだった…。
ーーーーーーーーーー
部長の家が持つという領土の中で、最も離れた位置に存在する山。オレはそこを借りた上で、更にその山の最奥まで訪れていた。
俊敏体での全力疾走でさえ、移動するのにほぼ一日かかってしまった。前日に出発するのは成功だったよ。たぶん皆も、そろそろ修行に取り掛かる頃だろう。
ポケットの奥に突っ込んだ、神さんからもらった例の種を取り出す。これを蒔けば神さんのいる世界に行けるという話だったが、人目がつくところで使って良いものかと悩んだ結果、最も遠くの場所まで移動してきたんだ。あまり人に見られたくないし、丁度いいといえば丁度いい。
種を地面に植える。何が起きるのかと用心し、半歩下がったところでニョキニョキと何かが生え出した。それはオレの身長より少し高いところで止まると、二股に分かれ、扉のような形状になる。
これをくぐれば、あの世界に行けるというところだろう。意を決して扉をくぐると、オレの眼に映る世界は一気に変化した。
山奥にいたはずのオレは、真っ白な空間に立っていた。前後左右のどこを見ても、その空間は果てしなく続いている。
間違いなく。神さんのいる空間だった。
辺りを見回すオレの眼に、一人の人物の姿が映る。あの後ろ姿は神さんだ。神さんは振り返り、オレにむけて微笑みを浮かべた。
「来ましたね、八神さん。早速始めましょうか」
「……ああ!」
雑談ショー withリアス
八「皆修行に取り掛かったのはいいが…レーティングゲーム当日が心配だぜ…」
リ「大丈夫よ。貴方がいなくとも勝ってみせるから」
八「ええ…」
リ「そのために修行に出るんだから。きっと皆強くなって帰ってくるわよ」
八「そうですね…」
リ「…どうしたのよ、魂抜けた抜け殻みたいよ?」
八「いえ、試合は全く心配してないんすけど…当日暇になるなぁ…やっぱアレするしかないか…」
リ「…先に言っておくけど、またあの変な実況(十五話参照)はいらないからね?」
八「チェー、やっぱり」