閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

62 / 63
一年ぶりですな(唐突)
なんでこんなかかったのかと言われると、正直今回の話でめちゃくちゃ悩まされたってのが一つと、少し小説を進めることに意欲を向けられない事情があったってのが一つです。

なんとか完結までは持っていきたいので、頑張りたいものです……。

さて。先日、声優の梶裕貴さんと竹達彩奈さんがご結婚されたというお話を耳にしました。梶さんと竹達さんといえば、この小説の原作でもあるハイスクールD×Dが真っ先に思い浮かびます。

イッセーくんと小猫ちゃんが結ばれる世界。そんなifストーリーもあるのかなぁなんて想像してみたのですが、今後の物語のことを考えると……ハッハッハッ。ないな、これはない。強く生きてくださいレディ。

いえまあ小猫ちゃんにまったく非はないんですが、後のイッセーくんの異名がおっ◯いドラゴンからちっ◯いドラゴンになるのは、ちょっと犯罪臭が凄い。そんなものに子どもたちを熱中させるわけにはいきません。

あれ、おっ◯いも十分アウトだよね?

以上、ちっ◯いも悪くないよね! などと供述する変態野郎の戯言でした。





五十八話目

「さて。貴方自身を進化させて魔石の支配力にとらわれないようにするとは言いましたが、そもそもあの事件に巻き込まれたほぼ全ての人間が等しくグロンギの姿に変えられ、自我を失い、あのような地獄絵図を生み出してしまった中。なぜ貴方だけが、人としての自分を保っていられたのか。まずはそれについて軽く説明した方が良いでしょう」

 

あくまで憶測に過ぎませんが、と付け加えた上で空間にモニターを表示させる。見ると、画面にはかつての脅威であったグロンギ。ガミオの姿が映っていた。少なからず身震いしてしまう。

 

「あの日、貴方が元いた世界に現れたグロンギ。ン・ガミオ・ゼダは、自身が放つ黒煙に包まれた人間たちをグロンギ化させる能力を持っていました。

今となってはその仕組みの解析は不可能となり、どうやって人間をグロンギ化させてきたのかは不明です。ですが、その黒煙は人の身体に魔石を埋め込み、強制的に人をグロンギ化させてしまうのではないかと私は推測しています。

古代、グロンギという種族がどのようにしてあれほどの力を手にしたのか、ご存知です?」

 

「ああ、知ってる。元々ただの人間の狩猟民族でしかなかったグロンギ族は、宇宙から飛来した隕石から魔石ゲブロンを入手し、怪人としての力を手にしたとかいう話だろ?」

 

「そう。魔石から得られた怪人の力を存分に振るうことを選択したグロンギ族は、周辺諸国に対する侵略行為を開始させました。力を受け入れた彼らは、その力を己が意思のままに扱うことができた。

本題に戻りましょう。先ほど申し上げたように、私はガミオの黒煙の能力は、人間を強制的にグロンギ化させるものだと考えています。魔石ゲブロンは本来、その力を欲し、その存在を受け入れたもの。かつてのグロンギ族などに対しては、超人的な力を与える源のような存在でした。では、宿主がその存在を否定しようとした時、その身に何が起きてしまうのか…。私はそれの答えとなり、貴方の身に起きている事情を説明できるとある仮説を立てました」

 

ガミオの腹部に位置するベルトの中心部。グロンギの力の核とも呼べる魔石ゲブロンが拡大される。不気味な顔を模したグロンギのベルトは、魔石と呼ぶにふさわしい、ただならぬ邪気を帯びていた。

 

「恐らく魔石は、その宿主の魂を抹消し、抜け殻となった身体を支配してしまうのではないかと。

相手の意思とは無関係に対象をグロンギ化させる能力の恐ろしさの真髄は、宿主たる人間の魂を死滅させた上で抜け殻となった身体を操り人形のように動かし、かつてのような惨劇を生み出してしまうところにある…私はそう考えています」

 

モニター上に、八神が経験した地獄の光景が映し出された。

魂が死滅し、空っぽとなった身体を操られ、ゾンビのように不気味に動く元人間のグロンギたち。同じ境遇に立ちながら、より悲惨な運命をたどった彼らの姿に、八神は険しい表情を浮かべた。

 

「それで、オレがこうならなかったのは?」

 

「貴方が特殊だったから、としか言いようがありませんね。類稀なる精神力によって魔石の支配力に屈することがなく、魂が死滅することもなかった八神さんは、人間としての心を保ちながらも強力なグロンギの力を手にすることができた唯一の存在となったんです」

 

「…なるほどね」

 

口では理解を示すが、複雑だった。

聞いた話によると、かつて八神と同じようにガミオの黒煙を吸いながら、最期まで人として生き続けられた刑事がいたらしい。たくましく、頼りになる存在だったとかつての友は語っていた。なるほど、確かにその人物は精神的に“強い”人間だったと言えるだろう。

 

…自分は、それほどの強さを備えているのだろうか。今もこうして不安を感じずにはいられない自分のことを、強い人間だとは到底思えなかった。

 

「ところがそれは、グロンギ族と違って心から受け入れたものではありません。常に貴方の体内では魔石が身体を支配しようと活動を続けている。ここ最近で貴方の身に起きている異常はすべて、新しい世界で起きた様々な要因から進化を遂げた魔石による影響ですからね。

だからこそ、貴方は人間としてパワーアップし、魔石の支配力に劣らないようすることが今後の課題となるわけです」

 

何もない空間にホログラムのようなものが現れた。それは徐々に形を作っていき、巨大な影を生成する。

巨大な身体に三つの頭。八神も以前戦ったことがあるケルベロスそのものであった。

 

「貴方がご存知である個体を多少スペックを高めさせた強化体です。ひとまずはこれを倒すことを目標とし、それが達成された後、本格的な修行に入るとしましょうか」

 

神の言葉が合図であったかのようにケルベロスが咆哮を轟かせ、八神に突進する。すんでのところで飛んでかわし、グロンギ態に転身しようと力を込める。

 

「一応言っておきますが、今修行においてグロンギの力の使用は厳禁です。人間としての貴方を強化するというのが目的ですので、人間の力だけで戦ってください」

 

直後、神の言葉によって転身は中断されることとなった。追撃を仕掛けようとするケルベロスを前に、急ぎ対処をしようと構えるが、ケルベロスの前足による高速パンチが八神の反応速度より僅かに早く届いた。

 

強化体と言うだけあり、ケルベロスの速度はかつてと比べて大幅に上がっていた。人間の姿の八神には、とても捉えられる速度ではない。

 

(上等……やってやる!)

 

武器を錬成し、ケルベロスに突っ込んでいく。

グロンギの力一切の使用を許されないということは、人間態での各戦闘形態になることも禁じ手だ。あの力は元々、グロンギの力に多少の手ほどきを加えたもの。今修行で八神が使うことが許される力は、精々神から与えられた神器の力と己の手足のみ。

 

神としても、本当にケルベロスを倒すことを想定しているわけではない。これはあくまで前座だった。

修行を始める前に、彼が今、修行を始められる状態にあるのかどうかを見定めるための…。

 

 

 

その結果は、散々だった。

既に数日分の時が経過し、ほぼ休む暇なく八神とケルベロス両者はぶつかりあっている。

それだけ立ち向かってもなお、八神はケルベロスを倒すどころか、一発の決定打すら与えられずにいた。

 

(本日三十二回目のダウン。いくら強化した個体であるからとはいえ、一度戦って倒した相手である以上、戦い方などは頭にあるはずだ。それがここまで手も足も出ないとなると…それは彼の内面の問題、というところでしょうか)

 

今後の課題を詮索する。事実、八神の能力そのものは件の獣を倒すまではいかなくとも、適度に攻撃をいなしたり、数発程度の攻撃を加えたりするには十分のものを備えているはずだ。

故に、模擬戦の結果がこのようになった原因は、焦りや怒りといった内部的なところにあると考えた。

 

そして、その推測は的中していた。

 

(なんで…なんで思うように動かねぇんだよ…チクショウ…ッ!)

 

歯噛みし、この結果の不甲斐なさを招く自分の力に苛立ちを見せる。

より上手く戦うだけの実力を備えていながらもそうならないのは、徐々に強力になり、扱いきれなくなってきたグロンギの力に対する恐怖や焦り。それを乗り越えられない自分に対する怒りが、彼の動きを鈍らせているのだった。

 

悲嘆な表情を浮かべる八神の様子を横目に、神は下界の、オカルト研究部員たちの様子に目を落とす。心にゆとりがない現状、何か気分転換にでもなるようなものがないかと考えてのことだったのだが…。

 

「八神さん、一旦中断させましょうか」

 

「いや、大丈夫だ。十分休憩はとった。続けてくれ」

 

「誰も貴方の身体の心配はしていません。下界の方でどうやらちょっとしたトラブルがあったらしく、貴方も向かってあげたほうがよろしいんじゃないかと」

 

「…なにか、あったのか?」

 

トラブルという言葉を耳にし、八神の関心が一気に移る。部員たちのこととなると、そちらを優先させる心のゆとりがあることに安堵しつつ、下界で起きたトラブルについて告げた。

 

「塔城さんが倒れました。オーバーワークによる過労か何かでしょう。一息つきがてら、様子を見に行かれては?」

 

それは、以前から様子がおかしいと感じさせていた仲間が倒れたというものだった。

 

==========

 

 

神さんから下界に送り届けられ、オレは真っ直ぐ小猫がいるであろう屋敷の一室に向かう。

例の空間から下界に降り立つ際、その瞬間を誰かに見られるわけにはいかないだろうと、便所に転送されたことはこの際気にならなかった。気にしないことにした。

 

そんなくだらない事より、小猫のことが心配だった。ここに来る以前からずっと落ち込み気味だった小猫が、過労で倒れた。その出来事は、決して楽観視していい事ではないとオレの直感が告げていたんだ。

 

「小猫!!」

 

部屋の扉を、つい勢いよく開いてしまった。大きな音を立てて開いた扉に反応し、椅子に腰掛けていた朱乃先輩が顔を上げた。手当てをしてくれていたんだろう。先輩の傍には、タオルを浸らせた水桶の台があった。

 

「…先輩、小猫は……?」

 

「過労だと診断されましたが、もう大丈夫です。暫く身体を休めていれば、すぐに回復するだろうとのことでした」

 

「そう、ですか…それは良かった…」

 

ホッと息を吐き、ベッドに腰掛ける小猫を見る。倒れたことは事実だとしても、特に顔色が悪いだとか怪我をしているとか言った様子は見受けられなかった。

…が、どこか悲しげな様子なのは変わらない。消沈し、顔を伏せる小猫の様子は、ここに来た時と同じ。またはそれ以上の憂いを見せていた。

 

「なあ、小猫。どうして、過労でぶっ倒れるまで踏ん張り続けたんだ?」

 

デリケートな部分かもしれず、小猫にとっては触れて欲しくない話題である可能性も踏まえた上で、思い切って聞いてみた。触れて欲しくない話題で、デリケートな部分だからこそ、このまま何もしなければ。小猫はまた、倒れるまで無茶をしてしまうかも知れない。そう思ったからだ。

小猫は何も答えない。その様子は、この出来事が小猫の身上に何かしら起因となっているという一種の答えでもあった。

 

「そういえば、シュウくんもまだ小猫ちゃんの昔のお話についてご存知なかったのですね」

 

「小猫の話…ですか?」

 

朱乃さんが告げた言葉に耳を傾ける。

言われてみると、確かにオレは小猫のことについて知っていることは、他のメンバーと比べて圧倒的に少ない。どういった経緯で部長の眷属になったのかも不明で、そもそも小猫は悪魔になる前の種族にあたる情報すら知らない。

元から悪魔で、部長の眷属になったタイプなのか。イッセーやアーシアと同じく、人間から悪魔になったタイプなのか。ギャスパーのように、さらに異なる種族だったなんてことも考えられる。更には朱乃先輩や祐斗のように、何かしら深い事情から悪魔になったパターンのことまで考えると……非常に複雑だ。

 

「小猫ちゃん……いいかしら?」

 

小猫は俯いたまま、しばらく何も答えなかった。朱乃先輩に対する返答に悩んでいるようで、時間にすれば実に短い間だったはずのだが、その空気のせいか、異様に長く感じてしまった。

 

やがて意を決したらしい小猫は、俯いたままながら、ゆっくりと頷いた。

 

それから、朱乃先輩は語り出した。二匹の姉妹猫の話だった。

 

姉妹はいつも一緒だった。衣食住を常に共にし、ひと時たりとも離れることはなかったという。

親と死別した姉妹は、帰る家も頼る者もなく、一日を生きるだけでも懸命にならなければならない日々を送っていたという。それでも二匹の猫は、互いを頼りに、支えあい、必死に生きて来た。

 

二匹はある日、とある悪魔に拾われた。姉のほうが眷属になることで、妹も一緒に住むことができるようになり、ありふれた生活を手に入れることができた。二匹はそこで、幸せな時を過ごせると信じていた。

 

…だが、そこで異変が起きてしまった。

 

姉猫は、力を得てから急速に成長を遂げた。もともと妖術の類に秀でた種族だった姉猫は、転生悪魔となったことで隠れていた才能が一気にあふれ、魔力の力も開花し、仙人のみが扱えるという仙術までも発動させた。

 

短期間で主人を超えてしまった姉猫は、力に呑み込まれ、血と戦闘だけを求める邪悪な存在へと変貌。主人の悪魔を殺害し、『はぐれ』へと成り果てた姉猫は、追撃部隊をことごとく壊滅させるほど最大級に危険なものへと化していった。

 

姉猫の追撃を取りやめた悪魔たちは、その責任の追及する先を妹の猫に向けたという。『この猫もいずれは暴走するかもしれない。今のうちに始末したほうがいい』と。

 

そんな処分を待つのみとなってしまった妹猫を助け出したのが、サーゼクスさんだった。サーゼクスさんはその事件と関係のない妹猫には罪がないと説得し、自分が監視することを条件として事態を収束させた。

 

連れて帰られた妹猫は、信頼していた姉に裏切られ、更には他の悪魔たちに責め立てられたことの二重の辛さから、精神的に崩壊する寸前だった。

 

笑顔と生きる意志を失った妹猫を、サーゼクスさんは部長に預けた。部長と出会った妹猫は、少しずつ感情を取り戻していき、そして部長はその猫に、一つの名前を授けた。

 

 

 

ーー小猫、と。

 

 

 

「そんな過去があったんですか…」

 

正直、驚いた。小猫はあまり自分のことについて話さないし、つい最近まで何か迷いがあるような様子を見せることもなかったからだ。

小猫は元々、一匹の猫だった。そんな事実すら知らず、オレは本当に小猫のことを知らなかったんだってことを実感させられる。

 

「………なりたい」

 

「ん?」

 

小猫が震える声をあげた。ふとんを強く握りしめる様子から、必死に声を出している。

 

「強く、なりたいんです。祐斗先輩やゼノヴィア先輩、朱乃さん…イッセー先輩やシュウ先輩のように、心と体を強くして生きたいんです。ギャーくんも、強くなってきてます。アーシア先輩のように回復の力もありません。…このままでは、私は役立たずになってしまいます…。『戦車』なのに、私が一番…弱いから…。足手まといには、なりたくない……。でも、内側に眠る力…猫又の力は、使いたくない……使えば、私は…姉様のように……! もう、イヤです…もうあんなのは、イヤ……!」

 

…小猫がこんなに感情を露わにさせたところは見たことがない。普段からあまり感情を表に出さない小猫は、微かに笑ったり怒ったりするくらいで、ここまで表情を変化させることはなかった。だからこそ、オレには少し衝撃的だった。

 

そして、同時にやっと理解した。

小猫が過労で倒れてしまうまで自分を追い込もうとしていたのは、今後の戦いに備えて力をつけたくて。けど、その先にあるのが姉のような結末を迎える可能性だ。恐らく小猫にとって、それは迎えたくない未来。そんな矛盾に挟まれて、一人でガムシャラになっていたんだ。

 

その矛盾は、とても一人で支えきれるものじゃない。その重圧がとんでもないものだってのは、オレも…いや、オレが考えている以上のものなのかも知れない。

 

自分の奥底に眠る、危険な力。その力の存在は恐ろしく、しかし同時に、今後のことを考えた上でその力を欲してしまう。力をつけようとすればするほど、自分が自分でなくなる未来を想像してしまうんだ。

 

…ああ、全く腹ただしくなってくる。そんなもの、一人で支えさせておいていいはずがない。そんなことは、オレもよく分かってるはずなのに……。

 

「小猫は……強いな」

 

自然と、そんな言葉を口にしていた。僅かに顔をあげた小猫が、怪訝そうな様子を見せる。

 

「…こんな時に、お世辞なんて……」

 

「そんなものじゃない。内側に眠る力の危険性を知りながら、部長や皆の為にその力と向き合おうとしてる。間違い無く、小猫の心は強いよ。その重圧はとんでもないものなんだろうに、それに押しつぶされることなく、正面から向き合ってんだからな」

 

そう。まったくもって、お世辞なんてものじゃない。オレなんか、一体何度押しつぶされそうになったことか。なんなら、既にドン底の絶望だって経験した。

…オレが、人間でなくなった今のオレを受け入れられたのは、あいつがいたからだ。誰かを守ることにひたむきであり続けたあいつが励ましになっていた。

 

だから、重圧に押し潰されそうになっている小猫を救うには…一人で戦う必要はない、ということを理解してもらうのが一番だ。

 

「大丈夫だ。お前がその力に対し、どんな道を選んだとしても、お前ならその先の壁をきっと乗り越えられると信じてる。まずは一歩一歩、目の前の目標からこなしていこうぜ、オレたちと一緒に。だから、無茶だけはしないでくれ。約束だ」

 

小猫だけじゃない。朱乃先輩も、今回の修行で堕天使の力と向き合おうとしている。望まないものと向き合う時に、焦りは禁物。最も大切なのは、一歩一歩、確実に進んでいくことだ。小猫にとっても、朱乃先輩にとっても。

 

 

……オレにとっても、な。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

神さんのいる世界に戻ってみると、神さんはノンビリとティータイムを過ごしているところだった。さっきまでの戦いの跡は綺麗さっぱり無くなっている。

 

「おや、もうよろしいのですか?」

 

「小猫のとこには朱乃先輩がついてくれている。安静にしていればすぐに回復するだろうってことだし、もう大丈夫だろ」

 

神さんが、わざわざ下界の様子を見てオレを送り届けてくれた理由がなんとなく理解できた。自分の悩みに一生懸命向き合う小猫を励ますと同時に、オレにも精神的にゆとりを持たせること。それがこの人の本当の狙いだったんだ。

 

「…では、心の整理はもうできたってことでよろしいですね?」

 

「あぁ、面倒をかけた」

 

小猫にあんな偉そうなことを言っていたが、オレもどこかで焦っている部分があった。グロンギの力を抑えようと、少しでも早くパワーアップしようとするあまり、自分の動きに乱れか生まれていた。

この人はきっとそれを見抜いていたんだろう。だから、わざわざ時間をとって小猫のとこに向かわせてくれた。相変わらずなんでもお見通しなところ、ちょっといらただしい。

 

けど、今回ばかりは素直に感謝しておこう。おかげでパッチリと目が覚めた。この恩義はこれからの修行で返させてもらう。

 

「やろうぜ。今度こそ、あのスーパーワン公に“伏せ”を叩き込んでやる」

 

取り敢えず、さっきまでの不名誉を挽回するところからだ。無様を晒させてくれたお礼をキッチリと返して、次のステップまで進んでやろうじゃねぇか!

 

「いえ、もうあれはいいんです。あれはただの前座ですから」

 

「………オーマイゴッド」

 

「アイムノットユアゴッド、です」

 

神さんは、そんな機会を与えてすらくれなかった。どうやらオレは、あのワン公に弄ばれ続けたと言う屈辱を背負ったまま修行に取り組まにゃならんらしい。

しかもただの前座とまで言われ、オレはそのただの前座とやらに転がされていたことになった。あれ普通にキツかったんだが!?

 

この人は一体、どれほどの実力を備えているんだろうか。世界の神って言うくらいだし、もちろんそれなりの実力者なのは間違いないんだろうが、さっきのアレをそんな軽く言ってのけるほど強いのか、この人……?

 

「その状態なら、もう本格的なものに取り組んでもいいでしょう。時間もありませんし、サクッと取り掛かりましょうか」

 

「お、おお…いいけど、一体何をするんだ?」

 

ホワイトボード的なやつにカッカとペンを走らせる神さん。何を書いているのかといえば、多分メニューだとか課題だとかそんな感じのやつなんだろう。

 

くるりと回転し、ホワイトボードに書いてある面をこちらに向けられる。えーと何々…?

 

 

『基礎能力向上』

 

 

……え、これだけ?

 

 

「はい、これだけです」

 

「久し振りに心を読むなよ。…結構拍子抜けだな。もっと特別なことでもやるのかと思ってた」

 

「もちろん、他にも戦闘指南や武器術指南なども可能な限り行うつもりです。ですが何度も言うように、今回の修行の主な目的は人間としてのスペックを向上させることにある。

どちらかといえば肉体派の貴方のことだ。ごちゃごちゃしたことに取り組んでいくよりも、簡単簡潔なやり方で仕上げていく方が効率的でしょう?」

 

う、うーん。その通りなんだが、なんか脳筋バカって言われたような気がする…。でもそれくらいで強くなれるってんなら苦労しねぇんだけど……?

 

 

 

「因みに、これから行う修行内容をさっきまでの生ぬるいものと同様に構えていると…後悔することになりますので。気をつけてくださいね?」

 

 

 

ニコッ。神さんは微笑みかけた。

 

 

 

…オレには、断言できる。

 

 

 

この時のあの人の微笑みは、天使の微笑みなんかとは最もかけ離れたものだったと。

 




完結まで持っていきたいと言った直後でなんですが、この作品。リメイクしてみようかなぁなんて考えております。

というのも、やっぱ行き当たりばったりで始めたことなので続きを考えるのも大変でして。でも一方で愛着もありますし、このまま続けようかなぁってのも気持ち半分です。完結までやりたいって気持ちはマジですし。

まあまた随時お知らせします。それでもお付き合いくださる方がいらっしゃれば、どうぞまたよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。