閣下が生きるハイスクールな世界   作:佐竹 リン

7 / 63
三話目

オレは覚悟を決めて、体に力を入れる。

すると、体の様々な部分が人間とは全く違う形状に変わる。

柔らかい皮膚に包まれた肉体は、硬い甲殻に。腹には何もなかったはずなのに、いつの間にかベルトのようなものが現れた。人間の優しい目は獲物を捕らえる前の野獣のように鋭くなる。最後に、額から空に向け、小さく固い角が生えた。

これがオレの人ではない姿。グロンギ態の『ゴ・ガドル・バ』である。

この姿にさえなれば、人間態での俊敏体よか早く動ける!

オレは兵藤と天野の間に入るため、全力で今乗ってた家の屋根を蹴った。

その家に住む人、ゴメン!屋根壊しました!

けど、今はそれにかまってる場合じゃねぇんだ!

 

間に合えぇぇぇぇ!

 

 

 

 

 

ガキンッ‼︎

 

 

 

 

オレはなんとか兵藤に最後の一本の槍が刺さるのを阻止することができた。

 

天野のヤツが驚いてるな…ま、それも当然か。

急に出てきた化け物が、自分が作った槍をぶっ壊したんだ。

これで驚かずにいるってのが難しいだろうな。

 

オレはチラッと兵藤の方を見る。

 

腹に痛々しく槍が刺さっている。血がドボドボと流れ、地面を赤く染めている。

これはかなり痛ぇだろうな…。

それに、顔もかなり悪い。絶望しきった顔してる。

それもそうか、楽しい思いさせてやろうって思ってたのに、その彼女に殺されかけたんだ。

 

 

………先日、楽しそうな顔で考えてたプランを台無しにされたんだよな……。

 

 

辛いよな、兵藤……。

 

 

 

「あ、あなた、何者⁉︎」

 

天野がなんか聞いてくる。

ビビった顔だな。

んじや、こいつに教えてやるか…

 

 

「ビザラ…!」

 

 

本当の恐怖ってやつを!

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「あなた、何者?悪魔ではなさそうだけど…。」

 

もう少しであのクソ野郎を殺れるって時に、後ろから声がかけられた。

 

無視して引き金を引くことも考えたが、後ろにいるやつは多分戦えるヤツだな。天野とはオーラが違う。

無視してるとコッチが殺られるかもな。

そんなのは勘弁なんで、大人しく後ろを向いて……

 

 

って、え⁉︎

 

 

なんで学校の憧れ、グレモリー先輩がいるんだ⁉︎

こんな夜遅くに出歩くようなヤンキー少女だったのか⁉︎

いや、そーいやたった今、悪魔がどうのこうの言ってたな。まさか、ソッチ系だったのかこの人。

 

とりあえず、落ち着いて話するとしようか。テンパって話して、色々悟られると面倒だしな。

 

「ゴグギグ ビガラ ボゴ バビロボザ 」

 

「!?………私たちに理解できる言葉は喋れないのかしら?」

 

あ、うっかりグロンギ語で話しちまった。

この形態だと、ちょいと意識しねぇと日本語で話せねぇんだよな。面倒くせぇけど。

 

「……失礼した。そういう貴様こそ、何者だ?

さっきの話では、貴様私のことを悪魔だとか言っていたが…。」

 

コレで完ペキだろ。

あ、普段と口調が違うのは気にしないでくれよ?

この姿だと、それっぽい喋り方したほうがスッキリするんだ。

 

「……私はただの人間よ?

ただ、あなたの姿を見て、不思議に思っただけだから。」

 

あー、この姿ね。確かに普通の人間には全く見えないよな、そりゃ。

困ったなぁ〜、オレは何て言おうか。

グロンギって言っても通用すんのかな?この世界。いや通用する訳ないか。

仮に通用しても、人外であるのは確かだから、攻撃の標的になるのは確実だし。

 

 

 

 

あ、そうだ。

 

 

 

 

こういう時は逃げるのが一番かもな。

 

 

 

 

さて、どうやって逃げるか…。

 

兵藤も、ギリギリ息がある。これから救急車呼べば、なんとか間に合うだろ。

 

んじゃ、兵藤。ちょいと利用させてもらうぜ?

 

「…それより、そこの少年。放っておくのは危険というものだろう。すぐに手当てをしてやるのが良いと思うぞ。」

 

オレがそう言うと、一瞬グレモリー先輩が兵藤に意識を向ける。

 

その一瞬で十分だ‼︎

 

オレは全力で飛び上がり、電柱に着地する。

少し地面が割れたが、まぁ問題ないだろう。

グレモリー先輩がしまったって感じでこっちを見上げてる。

 

「さらばだ、人間の少女よ。またどこかで会う事があれば。」

 

つっても、明日学校で会うんだけどね。

 

「待ちなさい!あなたは一体何者なの⁉︎」

 

オレはグレモリー先輩を完全に無視して、自分の家に飛んだ。

 

また電柱が壊れたが、無視無視。それが一番だ。

 

グングンと家に向かうオレ。

かなり速い。これなら直ぐに家に着きそうだ。

飛びながら、ふと一つの事を考えてしまった。

 

 

 

オレ、どーやって止まるんだろ?

 

 

 

その事実に気付いた時、オレは家にぶつかる直前だった。

そのまま、不時着した。

 

家の大半が崩れ落ちた。

 

 

家だった瓦礫の前で、オレはボーゼンと立ち尽くしていた。

……何つーか、一軒家だったのが不幸中の幸いというやつだな。

 

なるべく一般の人に見つからないように、錬成で家を修理する羽目になった。

ちくせう

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「何だったの…?アレは……。」

 

公園に取り残された少女、リアス・グレモリーは、ただただ立ち尽くしていた。

 

突然現れた謎の生き物。

それはあくまでカンではあるが、かなり危険なものに感じた。

 

実は彼女は、悪魔と呼ばれる種族であり、これまでにも様々な人外と呼ばれる存在たちに出会ってきた。

悪魔に限らず、天使や堕天使。さらには妖怪やドラゴンまで。

しかし、ヤツのような種族だけは初めて見た。

悪魔、天使、堕天使、妖怪ならば、人間によく似た姿をしているはずである。

しかし、ヤツは人間のソレとは大きく違った。

さらに、理解不能な言語。

悪魔になると、世界中のあらゆる言語が話せるようになる。

と言うより、相手がたとえ英語で話してきてもイタリア語で話してきても、何語で話してきても勝手にその人物にとっての母国語に翻訳されて聞こえてくる。と言うのが正しい解釈である。

にも関わらず、ヤツの言葉は全く理解できなかった。

 

「何だか…不思議なやつだったけど……。」

 

ヤツはこちらの制止も聞かずに飛び上がり、電柱に立った。

その後、また別の場所に飛び出したのである。

結果、地面は割れ、電柱もポッキリ折れている。また、ヤツが飛んで行った方では、建物が崩れている。

おかげで街中が大騒ぎになっているのだ。

 

そんな中でただ一人、リアスだけは落ち着いた顔でいる。

 

そして呟く。

 

「もしこの街にとって危険であることが分かったら、容赦しないわ。」

 

リアスは紅い髪を振りかざし、一誠の元へ向かう。

この公園は、結界で囲まれているため、一般の人物は入ることができなくなっているのである。

 

「あなたね、私を呼んだのは。」

 

もちろん、返事は返ってこない。ただ今にも消えてしまいそうな息が聞こえるだけである。

リアスはそんな状態の一誠に話しかけ続けた。

 

「死にそうな状態ね…。傷はそこまで深くはないみたいだけど、放っておくと間違いなく死んでしまうわね…」

 

その後、リアスはチェスの駒を何個か取り出した。

 

「どうせ死んでしまうのなら、私が拾ってあげるわ。あなたの命、私のために使いなさい。」

 

そう言うと、チェスの駒が輝き、その光が一誠を包んでいく。

じわじわと、一誠の傷が癒えていく。

一誠の体が回復したことを確認したリアスは満足そうな笑みを浮かべ、一誠を抱き抱えて、魔法陣の中に消えていった…。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

オレは今とても驚いている。

 

何故か?

 

答えは簡単だ。

 

オレの前方約三十メートル先を歩いているあいつを見つけたからだ。

 

なぜ…なぜ貴様が普通に登校してきているんだ!

 

 

兵藤 一誠!

 

 

あ、先に言っとくけど別に学校に行ってることが不愉快だとかそんなんじゃねぇぞ。

けどお前昨日あんだけ怪我してたじゃねぇか。

それこそ入院とか手術とか普通にされるべきほどの怪我を。

なのに次の日に普通に学校に行ってるんだ。

そういう意味でなんでだ?ってことだからな。勘違いすんなよ。

 

ただ、あいつの様子を見る限り、元気には見えねぇな。昨日のことは記憶にあるのか?

 

そんなこと考えてるオレのとこに兵藤が歩いてくる。

なんだ?なんか用か?

オレは地面に向けていた顔を上げて兵藤を見る。

こいつが最初に言ったことはこうだ。

 

「なぁ、シュウは夕麻ちゃんの事、覚えてるか?」

 

……何言ってんだこいつ?

つい昨日会ったばかりのヤツのこと忘れるかよ。あ、こいつの中ではオレが最後に天野に会ったのが四日前くらいになるのか。

 

「あぁ、覚えているよ。お前の初めての彼女だろ?」

 

オレがそう言うのと同時に、兵藤が顔を明るくさせた。何つーか、ホッとした感じだな。

 

「何でそんなこと聞くんだ?お前とうとう頭おかしくなったか?」

 

「いやなってねぇよ!」

 

「あ、もとからか。」

 

「もとからでもねぇよ!」

 

「じゃあ何だよ。今みてぇなこと聞くってことは、お前めっちゃ早めのボケ現象みたいな感じか?」

 

「いや、そんなんでもねぇんだけどよ……。」

 

兵藤がそう言って言葉を濁らせた。

そして兵藤が発した次の言葉は、オレをかなり驚かせた。

 

 

 

「俺以外…いや、俺とお前以外が夕麻ちゃんの事忘れたみたいなんだ…。」

 

 

 

……何だと?

どういう事だ?そこら辺のただの生徒ならともかく、天野の事を知っているのは他に松田や元浜がいる。

あいつらが女に関する事を簡単に忘れるとは思えねぇ。ましてや兵藤の彼女ときたもんだ。忘れる可能性はほとんどゼロに等しい。

それなのに、忘れた…か……。

 

「ケータイから写真もメアドも消えてるんだ。まるで、元からいなかったみたいな感じで…。」

 

それはかなり妙だな。昨日の天野のあの姿、恐らくあいつはただの人間じゃねぇ。

てことは、松田や元浜たちから天野に関する記憶が消えた事も、ケータイから写真やメアドが消えた事もあいつらの仕業だな。

 

……何かあるな、この世界には。

今まで特に何も感じはしなかったが、昨日の一件しかり、今回の件しかり。普通ならあり得ない出来事だ。

 

取り敢えず、こいつ昨日のことは覚えてんのか?いや、それを聞くのは酷ってやつか。

先ずは情報収集、だな…。

 

 

今日家に帰った後にするべき事をずっと考えていたため、全く授業を聞かなかった。

 

結果、日本史の先生に出席簿で思いっきり叩かれた。

この先生の出席簿アタック、かなり痛ぇんだよ。腕力はかなりあると見た。ゴリラ先生だな、まさに。

とか考えていると、また叩かれた。

何で叩いたのか抗議したところ、オレが失礼なこと考えている気がしたそうで。

何だよこいつ、エスパーか何かかよ…。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

家に帰ったオレは、早速布団についた。

早速とは言っても、帰ってきたのが九時近かったし、問題ないだろ。

 

布団につきながら、オレは神様を呼び続けた…。

 

(おーい、神さん。ちょいと聞きてぇことがあるんだ。出てきてくれ〜。)

 

すると、オレはいつの間にか真っ白な空間で寝っ転がっていた。

この空間、懐かしいな。十六年ぶりか。

 

「どうかしましたか?て言うか、神さんって呼ばないでください。何でそんなにフレンドリーな呼び方なんですか。」

 

「よう、久しぶり。」

 

目の前に出てきたこいつは、オレを十六年前にこの世界に転生させた神だ。

 

寝るときに心の中で呼んでいれば、夢の時間を利用して話すことができるようになっている。

 

最後に呼んだのは生まれてすぐ、赤ん坊からのスタートになる事に文句を言うためだった。

まぁ、結局聞いてくれなかったけどな。

 

「一つ、聞きたいことがあるんだが…。」

 

「大丈夫です。大体のことは見ていましたから。」

 

お、見ててくれたのか。だったら話が早いな。昨日何があったのか、天野たちは何者なのか、説明してくれ。

 

「私の口から話すのは簡単なのですが…それよりもいい方法がありますよ。」

 

あん?いい方法って、なんだ?

 

神さんは向こうの方に歩いていく。何だよ、教えてくんねぇの?

 

「あなたは、オカルトって好きですか?」

 

……何を唐突に聞いてくるんだと思ったら、そんなことかよ。世間話しに来たわけじゃねぇんだけどな。

 

「まぁ、好きだよ。そういう話すんのはワクワクするしな。」

 

だって面白いじゃん、妖怪とか化け物とか。そういう話すんのは大好きだぜ?オレ。

 

 

 

……今子供っぽいって思ったやつ、出てこい。順番に殴ってやる。

 

 

 

 

「それなら、好都合です。あなたの学校に、オカルト研究部というのがあるでしょう?そこに入部してください。」

 

「え〜っでもあそこってさ……」

 

怪しい雰囲気バリバリするじゃん。

旧校舎に部室があって、しかも窓から一回中が見えたけど、変な作りしてたぞ。

そんなとこに一人で入部する勇気はないぞ。

 

「大丈夫ですよ。兵藤 一誠も明日入部するそうですし、木場 祐斗もそこの部員ですから。」

 

 

……そうなの?あの二人が?

変な趣味してるんだなぁ〜。

 

「ですから、あなたもそれに乗じて入部するといいですよ。

あの部活はそれこそ、今回の件のような事を専門にしていますから。」

 

え〜、そりゃそうかもしれないけどさ〜。怖いよあの扉入るの。

 

「今のが、私ができるアドバイスです。これに沿って動くかどうかはあなた次第です。ご自由にどうぞ。」

 

ま、仕方ないか。ちょっとでもアドバイスもらえただけでも感謝だな。

んじゃ、帰るとしますか。

 

オレは門を開ける。今度は落ちることが分かってるから慎重に行くぜ。

 

「じゃあな、神さん。また来るぜ」

 

「えぇ、いつでも。」

 

オレは門の向こうに飛んで落ちていった。

取り敢えず、明日…いや、明後日にでも入部してみるか。

 

決意を固めて、オレはまた自分の世界に帰っていった…。

 




一話一話で全く文字数が違う件について…。

なるべく揃えようとはしてるんですが、中々うまくいきませんね〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。