詩菜さん「そろそろお店の中に入りますよ~。」
男ども 「「「は~い!」」」
ファミレスの中に入り、飲み物を頼む。
それぞれの飲み物が届く頃には、先ほどのバカ騒ぎの余韻も抜けて、
みんな落ち着いた
これで本題に入れるだろうと思ったところで、刀夜さんがゆっくりと切り出した。
「……静馬、お前のことだ。
何も言わず家を出て行ったのには、何か訳があるんだと思う。
それを話してはくれないか?」
「…………。」
さて、何から話したものか。
あの頃は色々と手詰まりを感じてて焦ってたからなぁ。
順序立てて話すとなると―――。
「俺が悪いんだ!!」<ガシャンッ>
おお!?ど、どうした当麻!!?
急に立ち上がると危ないぞ?
「俺が!俺があんなこと言ったから!!」
あんなこと?何のことだ??
「まぁ待ちなさい、当麻。
確かにお前は酷いことを言ってしまったかもしれない。
しかし、お前たちのことをよく見ていてやれなかった私たちにも責任はある。
……それに、それだけが理由ではないと、私は思う。」
「そうですよ、当麻さん。
以前も言ったように、あまり自分を責めては駄目ですよ。」
「父さん……母さん……。」
あ、あれー?(汗
何か突然シリアスが始まっちゃったんですけどー???
「……確かに、兄ちゃんにも何か理由があったのかもしれない。
だけど、あの日あの時、幸せを壊したのは俺だ。
間違いなく俺だった。
あの暖かかった日常を、日溜りのような幸せを、俺が壊しちまった。
これは、ただの自己満足なのかもしれない。
俺が許して欲しいだけなのかもしれない。
それでも俺は!……俺は兄ちゃんに謝らなきゃ。
アレはただの八つ当たりだった。
あの子が兄ちゃんを好きだって知っても、本当は当然だと思った。
不幸なのは俺で、兄ちゃんはずっと助けてくれてたんだって。
分かってた!全部分かってたんだ!
なのに俺は……それなのに俺はっっっ……!
ごめん!ごめんよ―――兄ちゃん!!
兄ちゃんを嫌いだなんて言ってぇ!
兄ちゃんが嫌いだんて嘘だよぉ!
だから!……だから『“僕”を置いて行かないでぇ!!』」
ちょっ!!?
当麻泣き出したんだけど!!!?
最後なんて昔の言葉遣いに戻ってるし!
何で!?どうして!!?
ど、どうしたら?
そうだ!こんな時こそ親の出番!!
刀夜さん、詩菜さん!
「うぅ、当麻ぁ……。」
「当麻さん……。」
こっちも泣いてるぅううう!!?
いい年した大人が何泣いてるのぉ!?
どうすんだよ、これぇえええ!!
何か、何かないか!?
当麻を泣き止ませるには……そ、そうだ!!
昔よく慰めてた方法で!
「大丈夫、お前は悪くないよ、当麻。
俺が黙って家出したのが悪かったんだしな。
だから『泣くな、当麻。兄ちゃんが一緒に居てやるから!』」
そして頭をぽんぽん撫でてやれば、いつも泣き止んでたはず!
迷子になってたのを迎えに行った時も、いじめられてた時も、これで泣き止んだし!
実際のところは何も分かってないんだが、もうこれしかない!
泣き止め、当麻!!
「……うん!ありがとう、兄ちゃん!」
お、おお……何とかなったな。
しかし油断は禁物だ!
ここで流れに身を任せると、またシリアスに走るかもしれん。
いや、百歩譲ってシリアスはまだいい!!
だが話の流れに置いていかれるのは勘弁だ!
という訳で、俺のターン!!
「それじゃ、今までのことを説明していこうと思うんだけど、
流石に5年間にあったことを全部話すのは無理だし、
みんなの質問に答えていく感じで話したいんだ。」
どーよ!
これなら質疑応答だからビジネスライクに話せるだろう。
シリアスなど入る余地なし!
3人―――いや、詩菜さんはニコニコしてるだけだから2人だな―――は目を合わせて、
刀夜さんから聞くことに決めたらしい。
「……では先ほども聞いたが、どうして出て行ったのか教えてくれるか?」
「魔術師を見つけて追いかけたから。」
「「「……え?」」」
ハモッたww
「いやいやいや、何で追っかけてんの?」
「というか魔術師ってのは何だ?」
「あらあら、静馬さんたら夢見がちなんだから。」
びっくり顔の当麻と不思議顔の刀夜さんは、まあ分かる。
しかし詩菜さんはいつものおっとり顔のままだ。
なんて可愛い人なんだv
「追いかけたのは、魔術について教えてもらうため。
魔術師ってのは、分かりやすく説明するなら科学を使わない超能力者みたいなもの。」
「「端的過ぎて逆に分からん。」」
「あらあら。」
またハモッたwww
けど2人の言うことも尤もだし、補足しますかね。
「おとぎ話とかでよくあるでしょ?魔法使いとか、仙人とか。
そういう不思議な力を使える人たちのことを魔術師っていうんだ。
で、科学の力で似たようなことをするのが超能力者ね。
あの日俺は(前世のアニメで)魔術を使った人を見つけた。
で、魔術を教えてもらおうとお願いしたんだけど、駄目だって言われた。
それでも諦めずに追いかけてたら、そのうち空港に着いた。
で、イギリスに着いてから、もう一回お願いしたんだ。」
「え? ちょっ!!? イギリスぅ!!!??」
「待て待て待て! どうやって飛行機に乗ったんだ!?」
はっはっは、見慣れたリアクションだなぁ。
昔の話するとみんな同じ反応するからなw
「その魔術師、イギリスに帰るところだったんだよ。
後、飛行機は車輪格納部なら簡単に潜り込めたよ。」
「はあ!? 車輪格納部ぅ!?
飛行機って高度1万メートルだぞ!?気温マイナス50度だぞ!!?」
「うんうん。あれは中々寒かったよ。」
「あらあら、静馬さん大丈夫?風邪を引かなかった?」
「大丈夫だったよ。心配してくれてありがとう母様v」
実際あの時は『聖人』の力をフルに発揮したね。
普通の人だったら耐えられないじゃないかな?
そもそも普通の人はあんな真似しないがw
「……あ~、そもそもどうして魔術を教えてもらおうとしたんだ?」
「それは―――」
言ってもいいものかどうか。
ちらり、と当麻を見るとビクリと体を震わせた。
あ、これはまた自分が悪いことしたと勘違いしてるな。
となると、はっきり言ってやった方がいいか。
「―――当麻を助けようと思ったからだよ。」
「「「っ!!」」」
「当麻の右手が不幸の原因だって俺は分かってた。
それがお祈りや科学では、どうにもならないことも。
だから魔術を使おうと思ったんだ。」
「み、右手の力が分かってたって、どうやって!?」
「―――当麻。右手を出してくれ。」
「こ、こうか?」
握手するように差し出された当麻の右手を、左手で包むように握る。
途端に<パキンッ>と音が鳴り、手が弾かれる。
「っ、な、何が???」
「ん~、やっぱり駄目かぁ。」
「静馬、当麻に何をしたんだ?」
「俺の
まあ、昔と同じで弾かれたけど。
あ、これが当麻の右手の力が分かった理由ね。」
やっぱり当麻の『
何と言っても世界の基準点として、全てを戻しちゃうなんてトンデモ能力だしな。
俺のは所詮、個人で発動する点みたいな物で、当麻のは世界規模だからな。
当り前と言えば当り前か。
「あ~、つまり何だ。
お前はその
それを何とかするために魔術を学ぼうとした、ということか?」
「そういうこと。」
「……兄ぢゃん。」
うぉ、また泣きそうになってんじゃん(汗
ペシペシと、幾分おざなりに頭を叩いてやる。
そう何度も甘やかしたりしないぞ。
「静馬さん。それでも行く前に一言伝えて欲しかったわ。
いいえ、行った後でも連絡くらいくれれば……。」
「ごめんなさい、母様。
でも、あの時を逃すとあの人には2度と会えないと思ったから。」
まあ、イギリスまで行っちまった時はやらかしたとも思ったが。
ただそのおかげで、あの人に俺が『聖人』だって分かってもらえて、
魔術について教えてもらえたんだから結果オーライだ。
それはそれで、また別の問題も出てきた訳だが。
「それに俺の
「何だと?―――お前、誰かに狙われてるのか?」
……流石は刀夜さん。鋭い洞察だ。
とは言え、もうその段階は過ぎた。
「それは大丈夫。結構な後ろ盾を手に入れたから。
それより本題は当麻の方だ。
―――なぁ、当麻。
魔術関連で何とかできそうなモノが幾つかある。
お前はその
魔神をどうにかできれば、だがな。
けどまあ、そんなこと必要ないだろうけど。
だって当麻は―――
「兄ちゃん。俺……俺は、この
恨んだことだってある。
―――だけど、この
この先も不幸が続くかもしれない。
またみんなに迷惑をかけるかもしれない。
それでも俺はコイツと向き合わなきゃいけないんだと思う。
俺の持って生まれた
俺の『力』だから。」
「そっか。……大きくなったんだな、当麻。」
「そうだよ。俺ももう、兄ちゃんと並んで歩けるんだぜ。」
あぁ……、あの小さな弟が。
俺の後ろで隠れてばかりいたあの泣き虫が。
こんなにも格好良いヒーローになっている。
ずっと守ってやるつもりだったけど。
お前の
お前はもう、独りで立てるんだな。
「……そっか。
…………そうか。
そりゃあ……いいな。」
「あ、母様。これ今の住所と電話番号です。」
「あらあら、静馬さんたら母さんたちと一緒に住まないの?」
「……もうちょっと、当麻と居たいんだ。」
「……あらあら、お兄ちゃんたら甘えん坊ね。」