今日も情報を収集し、実験を指示し、『プラン』を練る。
窓のないビルの中、逆さまでビーカーに浮かんだまま末端の人間を動かし、事態を思い通り操る。
そんないつもの作業中、1つの情報に目を止める。
「ほう。『神の子』がこの学園都市に来ているのか。
―――
これはいい。
彼を使えば『プラン』をいくらか前倒しにできるだろう。
どれ、彼を巻き込むには……そうだな。
データを1つ送ってやればいいか。
ふ、ふふふ。
さあ、『神の子』よ。お前の好きな人助けだ。
精々頑張るがいい。」
指先すら動かさずに、ある研究所に1つのデータを送る。
“
先日壊されてしまった
あたかも今回のイレギュラーを組み込んで再計算されたかのようなデータ。
研究者たちは飛びつくだろう。
そして彼を巻き込むだろう。
そう考え、学園都市統括理事長は、アレイスターは、密やかに笑う。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
今、俺は危機に瀕していると言っても言い過ぎではない、と思う。
目の前には昨日病院に担ぎ込んだはずのシスターズが居る。
いや、居るだけなら問題ない。
怪我はどうしたとか心配はするが、問題はない。
ずばり俺の危機=問題とは、この子に話が通じない、ということだ。
以下、本日の出合頭の会話。
「……どうしてここに居るのかな?」
「おはようございます、と御坂は言外に挨拶もできないのかと侮蔑を込めます。」
「オハヨウゴザイマス。……侮蔑してても表情は変わらないのかよ。」
「怪我は大丈夫なの?」
「学園都市の最新医療なら、銃創などの小さな傷は2~3時間もあれば治療可能です、
と御坂は、自分で連れて行った病院の技術レベルも知らないのかと呆れながら解説します。」
「スゲェな学園都市!?……呆れの表情もなしですか、そうですか。」
「それで、キミの名前は?」
「御坂の名前は御坂ですが、と御坂はバカにしたように答えます。」
「だから、表情に出てないって!
それに御坂は名字だろ!? 名前はないのかよ?」
「御坂は9982号と呼ばれていました。
これが名前でしょうか?と御坂は問いかけます。」
「何でキミが問いかけてんの。そして表情ェ……。
そしてそれは決して名前ではない。」
分かってくれただろうか。
この会話のかみ合わなさ。そして無表情っぷりが!
俺はハァ、とこれ見よがしにため息をつき、くるりと踵を返して歩き出した。
そう、シカトすることにしたのだ!
当初の目的通り、日用品を買いに行く!
行く、のだが……。
……ついてきてるね。
何で?どうして?
用があるなら、さっき言ってるよな?
あれだけ無駄に喋ってたんだし。
用は無いけどついてくる?
―――意味が分からん。
考えるだけ無駄か。無視だ無視。
スタスタスタ(無言で歩く俺
テクテクテク(無言でついてくる御坂名無し
スタスタスタ(無言で歩く俺
テクテクテ、ク(無言でついてくる御坂名無し、ちょっと躓きそう
スタスタスタ(無言で歩く俺
テク、テク「っ。」(痛みで息を飲んだ御坂名無し
っておい、足引きずってんじゃん。
怪我してたとこ押さえてんじゃん。
―――表情、苦しそうに変わってるじゃん。
「だぁあああ、もう!
―――どこに行きたいんだ?」
「?」
「どこか行きたいんだろ?
連れて行ってやるから……無理はするな。」
「ありがとうございます、と御坂は満面の笑顔で応えます。」
「……どこいった
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「見て見て、初春!」
「はいはい、今度は何ですか佐天さん。」
「あれ御坂さんじゃない?」
「え?あー、本当ですね。隣の男性はどなたでしょう?」
「もー、何言ってんのよ。女と男が2人きりで歩いてんのよ。
デートよ!デート!!」
「えぇ!?じゃあ、あの男性は御坂さんの、か、かかか彼氏!!?」
「決まってんじゃない!
いや~、流石お嬢様!恋も進んでるわねぇ~。」
「ででででも、まだ決まった訳じゃ……。」
「いい、初春。あの2人をよっく見てみなさい。」
「? はい。」
「男の人は御坂さんの歩く速さに合わせて、ゆっくり歩いてるでしょ?」
「い、言われてみれば……。」
「ほら!今よろけた御坂さんを抱きとめた!!」
「は、はわわわ……!」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「あれ?こっちは通行止めか……。」
「ここから先は工事中のようです、と御坂は報告します。」
「何だこの車?これじゃ通れないな……。」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
「よォ、お人形遊びは楽しかったか?」
「ア、
遊び歩いているアイツらが、暗部の下っ端どもに誘導されてノコノコ現れたところで声をかけてやれば、男の方が驚きに目を見開いて俺を見る。
ハッ!いいツラだ。
昨日見た時からスカしたツラが気に入らなかったンだよ。
「お前、『原石』ナンだってなァ?
『
中々レアなモノ持ってンじゃねぇか。」
「何でそれを!?
……って、ああぁ~!くっそ忘れてた!
アン?この野郎、外の人間の癖にやけに詳しいな?
……どうでもいいか。
どうせココで
「サァ、そろそろ始めようぜ。」
「ま、待て!
もう実験は上手くいかないって分かったはずだろ!?
今更この子を殺しても……。」
「そんな奴はどうでもいいンだよ。俺の狙いはテメェだ。」
「俺?」
「これでも感謝してンだぜ?
テメェって要素が増えてくれたおかげで、
俺はチマチマ雑魚を片付けなくて済むンだからよォ!」
コイツという不確定要素が学園都市に現れたおかげで研究者どもは慌ててやがったが、
今度は一転して喜びだしやがった。
無理もねぇ。俺だって喜びが湧いたぜ。
何せコイツ1人をヤれば、残りの1万回近くの“作業”を減らせるってンだからなァ。
1回だ。
後1回で全て片付く。
「逃がさねぇし、命乞いも聞いてやらねぇ。
―――テメェはここで終わりなンだよ!!」