翌朝(6時)
昨日は寝る前に走らされ、考えさせられて疲れていたはずだが朝早くに目覚めた。
やはり、今日の事が心配な気持ちがあったのかもしれない。
とりあえず、二度寝する気にはなれなかったので、部屋から出た。昨晩タツミに朝食を
とる場所を指示されていたので、まだ誰もいないかもしれないが向かってみる。
向かう途中で料理をしているらしい音や匂いがする。誰かが朝食を作っているみたいだ
。
「おはようございま~す。」
挨拶をしながら調理室らしき部屋へ入る。
期待していたのは昨日会ったアカメや他の団員(女)がエプロンをして料理している姿
。
「お、結構早く起きてきたな。おはよう。」
エプロン姿のタツミだった(泣)
「おはよう。」
エプロン姿のアカメだった(喜)
「ちょうど良かった。作った料理を持って行ってもらっていいか?」
タツミ達が作ったらしい料理の皿を手渡され、大きいテーブルに並べていく。朝食なの
に肉系の料理が多い気がする。見てるだけで胸焼けしそうだ。
皿を並び終える頃になると、ボスや他のメンバーらしい人たちが食堂へ入ってきた。
オレを見ると警戒した目つきになり中にはいきなり銃口を突きつけてきた人もいたが、
アカメやタツミに事情を聞いて納得して(警戒し続ける人もいるが)テーブルに着いて
いく。
「よし、では皆集まったようだな。すまんが飯の前に聞いてくれ。」
ボスがそう言ってオレに目配せする。なんとなく察して立ち上がる。
「一応、アカメやタツミから事情を聞いたと思うが、ナナシは昨晩連れてきてナイトレ
イドへ加入を希望している。そこで皆の意見を聞こうと思っている。補足すると、殺し
の素質は未知数、だが特殊体質みたいだから上手く使えば戦力になるかもしれん。」
ボスがそう言って、メンバー達がざわめく。
「とりあえず、俺とアカメは加入に賛成だ。」
そう言ってタツミの目配せで、アカメも頷く。
「連れてきたって、また!?それに仕事ができる顔立ちじゃないわ。私は反対。」
ピンク髪のチビ女が真っ先に反対する。
(また?誰か他にも同じ境遇の人がいたのか?)
「俺も反対かな(せっかく女子多めなのに、また男かよ)。」
緑髪で顔を半分隠している男も反対らしい。なんか理由が邪な理由っぽい気がする。
「私は賛成!なんか楽しそうだし!」
ボインな姉ちゃんは賛成。
「俺も賛成かな。特殊体質というのも使えそうだ。それに・・・ポッ///」
リーゼントの兄ちゃんも賛成みたいだ。何故最後、こちらをみて頬を染めた・・・。寒
気がした。
「私は、戦力が増えることには賛成です。」
メガネをしたお姉さんも賛成みたい。
「決まりだな。修羅の道へようこそ、ナナシ。」
案外、あっさりと加入が決まった。
「俺とアカメとボスは自己紹介済んでるから分かるよな?実は俺も最近連れて来られて
加入したばかりなんだ。」
どうやら先程、ピンク髪がまたと言ったのは、この事らしい。
「私はレオーネ!よろしくナナシ。」
ボイン姉ちゃんから自己紹介が始まる。
「俺はラバック。ラバって呼んでくれ。」
緑髪の男の子からそう言われる。
「・・・私はマイン。あんたなんか認めないんだから。」
なんかピンク髪のチビっ娘には認められていないらしい。
「シェーレと申します。よろしく。」
メガネ姉さんから微笑まれながら言われる。
「最後に俺はブラート。兄貴かハンサムと呼んでくれ。」手を差し出される。
ハンサムは嫌だ。兄貴と呼ぶことにした。
「こいつホモだぞ。」
横からレオーネが補足した言葉で握手しようとする手が止まった。
「おいおい、誤解されちまうだろ?なぁ。」
頼むから否定してくれ(泣)
自己紹介が終わり、やっと食事になった。
加入して安心したせいかお腹が空いてしまい、朝から肉でも大丈夫な気がしてきた。
さすがに朝から肉はキツかったらしく、胃もたれした。残ってしまった食事を物欲しそ
うなアカメにあげたら喜ばれた。あの細い体の何処に収まったんだろうか。
食事が終わってからナジェンダさんから、色々と教わるためにアカメにつくように言わ
れた。
「覚えが悪ければ斬っていいぞ。」「うん。」
恐ろしい事を言われた気がした。
数日後
オレは包丁を握り、食堂に立っていた。殺しにいくのではなく食事を作るために。
横ではタツミとアカメも料理をしている。アカメは主に味付け(1割)、味見(9割)し
かしていないが。
「あの、殺し屋の勉強は?」
オレは疑問をぶつけてみた。
「私はアジトでは炊事担当。必然的に私についた人も炊事担当になる。」
アカメが味見しながら答えた。正直、味見できるから炊事担当になったとしか思えない
。
「まぁ、諦めてくれ。俺も最初は思ってたから。」
タツミは野菜の皮を剥きながら言った。
料理は自分の世界で一人でも作ることが多かったので問題はなかったが、まさか数日間
ずっと炊事しているとは思わなかった。
炊事をしている間に他のメンバーは依頼があって殺しに出かけているようだ。
(マインから何回か威圧的に留守を言い渡されている。)
ナジェンダさん曰く、ナイトレイドは表向きは帝都民の依頼を受けて暗殺を行う組織と
している。そのほうが何かと都合が良いらしい。
「いずれ頼むかもしれんから、期待しておけ。」
そう言われてから数日経っている。
正直、自分が殺しを出来るかは分からないので今の仕事でも良いような気がしてきた。
だけど、いずれ暗殺をすることになるのであれば、今のうちに勉強したい気持ちもある
。
「よし、じゃあ私達も命を奪いに行こうか。」
アカメにそう言われ、心臓がハネる。
「安心しろ。人じゃなくて食材だから。」
タツミに言われて、安心したようなガッカリしたような微妙な気持ちになる。
アジトから山奥へ入り、しばらくすると滝がある川へ着いた。
「川の獲物を葬る。」
そう言ってアカメが脱ぎだす。
「!!?」
まさか全・・・
「この水の中で動きやすい服で。」
そう言ったアカメは水着を着用していた。
「・・・そうですよね。」
少し落ち込んだオレをタツミが肩を叩いて慰めてくれた。
「狙いはコウガマグロ。ここがポイントだ。」
「警戒心が強いレアな怪魚だ。」
「マグロ?小魚じゃなく?素手で取れるの?」
オレの疑問をよそに、アカメが川に飛び込んだ。しばらく川の音だけがしていた。
次の瞬間、川から飛び出してきた物が雨のようにカゴに降ってきた。
「爆釣!!?」
アカメが川から顔を出した。
「川底へ潜り気配を断ち、獲物が通りがかった瞬間を狙う。思い切りのよさがポイント
だ。」
アカメが説明してくれたが、出来る自信がない。
「まぁ、最初は難しいけど慣れれば簡単だよ。」
そう言ってタツミが飛び込んだ。
結果、4匹。
「慣れると?」「タツミはまだまだ甘い。」
オレとアカメが川べりで落ち込んでいるタツミに追い打ちをする。
「じゃあ次はナナシの番だ。」
アカメがオレを見て、肩を押す。
「ボウズでも斬らないでね?」
そう言って飛び込む。川底へ潜り、出来るだけ岩の陰へ隠れるように身を潜める。
しばらくするとコウガマグロが群れで頭上を泳いでいく。タイミングを見計らい、思い
切って群れへ突っ込む。泳ぎに無駄があるため、水の中に音が響く。
「ナナシ、上がってこないな。」
「まさか、溺れてたりしないよな?」
アカメとタツミが心配して川を覗きこむ。
ザパーーン!!!
5匹のマグロが宙を舞う。1、2匹は陸に届かず川へ着水したため逃げられたが、3匹は上
手く届いたため、タツミとアカメがカゴへ入れてくれた。
「ぶはーー!どうだった?上手くいった?」
「すごいじゃん。初めてで3匹も穫れるなんて、俺より上手いぞ!」
タツミが川へ寄ってきて、手をのばしてくれた。
「うん、タツミは2匹だからな。」
アカメも近づいて手を貸してくれる。
「ごめん、先に両手のマグロあげてくれる?」
「「え?」」
そう言ってオレは両手に掴んでいたマグロを二人に差し出す。
二人が驚いたように目を見開いている。
「まさか手掴みで捕まえたのか?」
「うん、さっき上げたのも尻尾掴んで陸側に放り投げただけだから陸に届くか分からな
かったんだ。」
「不可能だ。そんな悠長にする前にマグロが逃げるはず。」
そう言いながら二人でマグロを上げてくれた。
「それがさ、マグロ逃げなかったんだよね。まるで気配が最初からないみたいに、オレ
を素通りしていったんだ。」
「「!!」」
「まさか自分にこんな才能が・・・どうしたの?」
「ナナシ、まさか。」
タツミがオレの手を取る。
アカメはオレの心臓に耳を当てた。
「無い。脈が、無い。」
タツミが衝撃的な事を言う。
「何言ってんの?そんなわけないじゃん。オレ、元気に動いてるよ?」
二人を見た後、自分で心臓の位置に手を当てる。
あるべき鼓動が無い。
「私の村雨の呪毒が効かないのが何故かがやっと分かった。ナナシ、お前は死んでいる
からだ。死人には呪毒が効かない。」
「ナナシ、お前・・・」
アカメとタツミに見つめられ、呆然と見つめ返す。
さっきまで暖かかったはずが、風があたると、とても冷たく感じた。
数分くらいすると、とりあえずアジトへ戻ろうとアカメが言った。せっかく獲った食材
を腐らせてしまうわけにもいかないので、3人でカゴを担いで山を下る。
「もしかすると、ナナシの体は帝具による作用かもしれないな。」
アカメが道中、そんなことを言った。
「心臓が止まっても動き続けること?そんなことも出来るの、帝具って?」
「分からないが、ただ死者を操る帝具を知っている。それと同じようなものかもしれな
いな。」
アカメが暗い雰囲気で話す。
何か事情があるみたいだ。今は深く聞かない方がいいかもしれない。
そんなことを話していると夕方にはアジトへ到着した。
食材を食堂へと持って行き、夕食の準備を始める。
食事を作り終わる頃には、ナジェンダさんとレオーネさんが食堂に来た。
事情を2人に話す。ナジェンダさんも知っている帝具の中に、そんな作用があるものは知
らないようだ。
「けどさ、心臓止まってるなら暗殺に向いてるんじゃない?気配ないわけでしょ?」
レオーネさんが、軽い調子で言う。
「まぁ、そうかもしれないけど。」
「なら、いいじゃん。暗くなってもどうしようもないし、とりあえず今まで通り過ごし
てみれば?」
「確かにレオーネの言う事も一理ある。暗くなっても解決しないだろうしな。」
なんとなく雰囲気が和らいできた。
「それより、タツミが新人より釣果が悪いことが問題あるんじゃない?」
レオーネが笑いながら、ナジェンダさんに言う。
「いや姐さん、ナナシの気配無しは反則じゃん。」
タツミが言い訳する。
「それも、そうだな。アカメ、後でタツミをしごいておけ。」「うん、分かった。」
ナジェンダさんの指示でアカメが頷く。
「そんなぁ。」
タツミが落ち込み、皆が笑う。
レオーネさんに心のなかで感謝して、オレも一緒になって笑った。
というわけで、今回やっと漫画の話も入りました(進んだとは言ってない。)
すみません。
話を進めようとしたのですが、途中で主人公の特殊体質について少し判明させたいなと
思ったので、急遽変更しました。
なんか暗い雰囲気になって今後も暗い話にするのは嫌だなぁと思いましたが、最後のオ
チでなんとか元通りの感じにしていけたはずです。
今回の内容でご意見ありましたら、お気軽に。
次回こそは漫画の話(権力を斬る)に進めていきますので、お楽しみに。