意図せず世界を手中に収めよう   作:マーズ

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クズ日記更新しました。


シロと院長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大したことはないわね」

 

シロは眼下の戦闘を見て、そう呟いた。

現在、IS学園のアリーナでは織斑 一夏とセシリア・オルコットの決闘が行われていた。

 

始業式が始まって早々の戦闘。

しかも、その役者が『世界で唯一の男性操縦者』と『イギリス代表候補生』だというのだから、聴衆もかなりの数が集まっていた。

 

そこで繰り広げられる激闘。

多くの者はセシリアの圧勝という形での戦闘だと思っていたのだが、一夏も案外くらいついている。

 

そんな様子を、シロは高い場所から見下ろしていた。

そこは、アリーナ全体を見下ろすように設計された特別な観戦室であった。

そこに入れるのは、この学園の中では一人しかいない。

 

「あなたはどう思う?院長」

 

それは、学園の長である理事長。シロにとっての院長であった。

彼は柔らかそうな椅子に腰かけ、シロと一緒に戦闘を観戦していた。

シロの質問に、院長は彼女を見て答える。

 

「……そりゃ二人とも頑張っているでしょ」

 

的外れな返事が返ってきて、シロは思わずクスクスと笑う。

その笑顔の美しさは男の心を根こそぎ奪ってしまうほどのものであった。

 

だが、院長はシロの反応を見て、何か間違ったことを言ってしまったかとおろおろとしていた。

そんな情けない姿も、シロにとっては可愛らしく見えた。

また、自分がいないとダメだなっと母性的な感情まで伴っている。

 

「私が聞いたのは、あの二人の戦いぶりについてだったのよ」

 

まあ、いいか。

院長の答えの裏を返すと、今戦っている二人は関心に値しない能力しか持ち合わせていないということだ。

 

つまり、院長はあの二人を障害だと認めなかった。

院長がそう判断したのであれば、それは絶対にあっている。

 

シロは強く思っていた。

だが、油断はできない。

 

「(院長には、絶対に何かあってはいけないのよ)」

 

シロは椅子に座る院長に、後ろから腕を回す。

腕を交差させて、院長をギュっと優しく抱き寄せる。

 

真っ白な改造制服に包まれた豊満な胸が、院長の後頭部に押し付けられる。

むにゅうっと柔らかそうに歪み、張りのあるそれはすぐに押し返す。

 

「は……っ」

 

なによりも愛おしい存在をその胸に抱いていると、色々なことが心を満たす。

大切な存在が身近に感じられる安心感。

 

至上の存在と密着できていられる幸福感。

そして、量感のある乳房に固い後頭部が押し付けられて得られる快感。

 

「(……ちょっとムラムラしてきちゃったわ)」

 

シロは雪よりも白い頬の肌をうっすらと赤く染める。

院長にかからないように工夫しているが、息も荒くなっている。

 

豊満な乳房の奥では心臓がバクバクと高鳴っているし、むっちりとした肉付きの脚は不自然にもじもじさせている。

幸い、院長はまだ気づいていないようだが……。

 

「(もうここで覆いかぶさっちゃおうかしら)」

 

シロの真っ赤な目がドロリと濁る。

危険な思考にINしてしまった。

 

院長がいくら聖人じみた優しさと鋼の如き理性を持ち合わせていようと、性欲はあるだろう。

女に迫られて嫌なはずがない。

 

それに、シロは超という前置詞が付くほどの美少女である。

長い白髪は絹のようにサラサラとしていて上品であるし、顔の造形も彫刻師が丹念に彫ったように整っている。

 

肌は汚れ一つない新雪の如き白さである。

さらに、性欲という枠内で外せないのがスタイルであるが、シロのスタイルはかなり優れている。

 

相棒のクロよりは少し小さいものの、十分に豊満で張りのある双丘。

キュッと引っ込んだお腹のせいで、胸とお尻がさらに大きく認識される。

 

お尻は安産型で、肉付きがいい。

脚はむっちりと肉がのりつつも下品ではなく、スラリと伸びたそれはモデルをも上回る。

 

シロはしたことはないが、軽くチラ見せをするだけで火に寄せ付けられる虫のように男が集まってくる。

それどころか、そっち趣味の同性も引き付け、ノーマルな同性もアッチの趣味に引きずり込んでしまう危うさを持っている。

シロは自分の容姿の優れを誰よりも理解していたし、院長に対してならそれをいかんなく発揮するつもりである。

 

「(……まあ、するつもりはないけど)」

 

ドロドロに濁った真紅の瞳に、理性の光を取り戻すシロ。

身体の火照りは収まらないものの、院長の頭を胸に抱くことでなんとか抑えることにする。

 

院長に身も心も完全に捧げた身であるから、身体を重ねたいと思うことも事実である。

シロが強引に迫っても、優しい院長なら受け入れてくれるだろう。

 

しかし、院長の意に沿わないことは決してするわけにはいかない。

基本的に院長が望むことを全力で遂行するのが、シロたち孤児院メンバーの務めである。

 

本来なら許されないが、院長のためを思うことで彼の許可を得ずに行動することもある。

だが、そのときは万が一にも院長を失望させたりしないように、世界でもトップクラスの各種能力を持ち合わせている幹部会で決定することになっている。

 

今回のことは、シロの肉体的および精神的快楽を目的とした行為である。

院長が喜んで受け入れてくれるまで、それを行動するわけにはいかない。

 

「(それに、致したあとが色々と面倒だし)」

 

それは、シロが院長と一つになれた後の話。

孤児院の一般メンバーの多くは、シロが育ててきたこともあるし、シロは自分たちより格上の存在である。

 

だから、彼らは【心の中で何と思っていようと】表面上は祝福してくれるだろう。

だが、同格の幹部メンバーはどうだろうか。

 

全員が全員少しの差はあれど、院長を盲目的に愛して最早崇拝しているとさえ言える狂った女たちである。

今まで院長に対して実力行使をしてこなかったのは、十人の幹部がそれぞれを抑止し合っていたことも大きな要因の一つである。

 

クロなどはお風呂に乱入すると言う暴挙をたびたび起こしているが、まだ許容範囲内である。

皆大体それに似たようなことは行っているからだ。

 

しかし、それが一人の抜け駆けで抑止の輪が崩壊してしまったら?

まさに、血で血を洗う戦争の勃発である。

 

その参加メンバーが、一人で小国を滅ぼしてしまうような高い戦闘力を持っているのだから、笑えない。

一人の男を取り合う女の戦いで、世界が滅亡の危機である。

 

もし、そうなった場合は誰が勝つかわからない。

有力候補でいくと、ずば抜けた戦闘力を持つクロや実戦経験が豊富な『亡国機業(ファントム・タスク)』潜入チームである。

 

しかし、院長のためなら人間の限界や理解を容易く踏み越える孤児院メンバーに、常識や当たり前は存在しない。

誰が勝つかはわからないし、もしかしたら全員相打ちという壮絶な結果が待っているかもしれない。

 

「(でも、真っ先に狙われるのは私になるものね)」

 

仲間意識など、院長を介してでしか持ち合わせていない幹部メンバー。

おそらく戦争になっても総当たり戦になるだろう。

 

だが、院長を襲って肉体関係を持つ者が最初の標的になるのは当然である。

誰だってそうする。シロだってそうする。

 

いくらシロでも、自分と同等の力を持つ9人に襲い掛かられれば、どうなるかはわからない。

院長と末永く寄り添うためにも、そのような下策は実行するわけにはいかない。

 

「そうね、終わったわね」

 

院長の言葉にコクリと頷くシロ。

その少し後、ビーッという高いブザー音が鳴り響く。

 

一夏とセシリアの決闘の終わりを告げる音であった。

結果、エネルギー残量がゼロになってしまった一夏の敗北という形で終わった。

 

シロは自分の胸に抱き寄せる院長を見る。

院長は分かっていた。一夏が敗北することを。

 

やはり、先見の明があるなあっと院長の評価をさらに上げ、崇拝の度合いがグレードアップする。

ちなみに、好感度が高すぎて最早あまり変わらないことを書いておく。

 

「(一応、ちゃんと観察していたけど、やっぱり杞憂みたいね)」

 

シロは院長といちゃついていたが、色ボケていたわけではない。

一夏とセシリアの情報を、しっかりと入手していた。

 

ちなみに、9割が院長のことを考えていて、残りの一割で決闘内容を見ていた。

シロの優れた頭脳だからこそ、できることである。

 

そんな卓越した脳ではじき出した彼らの脅威は、まったくないというものであった。

一夏とセシリアも、未だ純粋な能力は非常に低いと言っていい。

 

勿論、彼らは他の一般人よりも優れた操縦者だが、シロ視点では取るに足らない程度の力しか持ち合わせていなかった。

ただ、シロは一夏の専用機である白式だけは注意することを決めた。

 

あの機体の『ワンオフ・アビリティー(単一仕様能力)』である零落白夜は、対象のエネルギーを消滅させるという恐るべき能力を持っている。

ISで戦う以上、下手をすれば一撃で戦闘不能に持って行かれることもある。

 

「(ちっ、あの糞ウサギ。面倒な機体を作りやがったわね)」

 

次会ったら一発殴ることを心に決めるシロであった。

それに、思っていた以上に早く決闘が終わってしまった。

院長が理事長としてIS学園に君臨し、シロは生徒という関係にあるので、孤児院にいたときよりも気軽に逢えないようになってしまった。

 

「(能天気なあの子はフラフラと逢いに行っているみたいだけど……ずるいわ)」

 

シロは可愛らしく頬をぷくっと膨らませる。

院長とクロにしか見せない、気の抜けた表情である。

ほとんど会えないからこそ、決闘時間の間になんとか触れ合おうと特別な観戦室にまで侵入したのに……。

 

「(もっと戦っていなさいよ、馬鹿)」

 

シロの中で、敗北した一夏に対する気持ちが急降下する。

思い切り八つ当たりであるが、そんなことは知ったことではない。

 

「はぁ……お互い頑張りましょうね」

 

院長は不思議そうにしながらも、コクリと頷いた。

シロはそんな彼を優しく、愛おしげにギュッと抱きしめるのであった。

 

 

 

 





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クリスマスに盛大に苦しんだ腹いせです。

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