意図せず世界を手中に収めよう   作:マーズ

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院長のクズ日記2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月U日

 

 

俺は一応念のために携帯電話を持っている。

正直、携帯ゲームとかしないし、プライベートで会ったりする奴もいないし、別にいらないっちゃいらない。

 

だが、もし俺自身が何かしらの事件や事故に巻き込まれる可能性がある場合は、すぐに盾を呼ぶ必要がある。

そのために連絡手段として携帯電話を持っているのだ。

 

まあそれでも電話帳に登録されている人数は少ないけどな。

これでいい。面倒くさい奴と連絡先を交換していたら、面倒くさいことに巻き込まれるからな。

 

ただ盾のためとはいえ、時々メールやら電話やらをしてくるのは鬱陶しい。

これが孤児院に残っているクロやシロならまだしも、俺への恩を忘れて出て行った恩知らず共なら尚更だ。

 

いや、クロやシロの連絡も鬱陶しいんだけどな。

クロは言葉足らずだから何が言いたいのかいまいちわからない。

 

それが顔を合わせない電話での会話となれば、余計わからない。

いちいち深読みするのもしんどいわ。

 

シロからの連絡って、大体勉強の連絡なんだよなぁ。

もういいです。本当いいです。

 

さて、いきなり何で携帯電話の話を日記に書いているかというと、朝っぱらから携帯に関して面倒なことが起きたからである。

それは俺を裏切って盾という役割をぶん投げやがった一人である、オータムのメールだ。

 

……あいつ、早朝に何送ってきてくれてんの?

眠いんだよ。寝てたんだよ。起こしてんじゃねえよ。

 

携帯買ったからって無理やり連絡先をよこしやがって……。

……俺の連絡先、どこから手に入れたんですか?怖いんですけど。

 

っていうかいらないよ。なんかあいつメンヘラっぽかったし。

そして俺の予想は大的中である。

 

メールは超長いし、何を伝えたいのかが明確でない。

これってメンヘラだよね?

 

もう怖い。俺の敵は武装組織の屑どもだけだと思っていたけど、まさか孤児院から出るとは……。

とりあえず電話をしてみた。

 

しかし話をしているときは、案外ふつうである。

普通に、俺に対して生意気な女のままだ。

 

なに?二重人格だったりする?

メールの内容と話し方が全然違うんですけど……。

 

電話の内容は、メールを止めろ。それだったら直接会いに来い。せめて電話にしろという三つだ。

最初は当たり前のことだ。こいつのメール、気持ち悪いし怖い。

 

二つ目は、なんとかうまいことをしてオータムを孤児院に再び引き戻すためでもある。

俺の盾となって一生を費やしてほしい。

 

最後はまあ……苦肉の策だ。

電話はまともだからなぁ……。メールよりはマシだろう。

 

しかし電話でもあいつ、中々ムカつくな……。

全然俺を敬わねえ。俺、お前のこと育ててやったんだけど?

まあいいか。とりあえずあのメンヘラメールが来なくなっただけで良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月I日

 

 

前、オータムにメールではなくて逢いに来るか電話するかにしろと伝えたのだが、あいつはちゃんとそれを実行してくれている。

……ただな、毎朝電話してくるのはやめろ。

 

お前の声を毎日聞きたくねえよ。早く帰ってきて楯になれよ。

しかもオータム以外からも電話が来るようになった。

 

俺、お前らに教えたっけスコールとエム。

本当に切羽詰ったとき用にシロとは交換していたんだけどなぁ。

 

クロ?あいつは携帯持ってないだろう。

何とか持たせようとしたのだが、必要ないの一点張り。

 

お前に必要なくても、俺にはお前が持つことは必要なんだよ!盾的な意味で!

今日はまたまた勉強をしていた。

 

シロ先生が熱心に教えてくれるのだが、もうやめて……。

お前の教え方がムカつくことに上手いせいで少しは理解できるが、八割方は理解できていないんだよ……。

 

さっさと餓鬼どもに教えに行けよ……。

俺みたいに、勉学に悦びを見いだせないやつだっているんだよ……。

 

一緒に授業を受けていたクロのやつも、早々に目を回しやがるし。

ふはっ、俺よりも馬鹿が一人いて何だかいい気分だ!

 

俺の膝に座っていることが釈然としないが、いい気分だし許してやった。

ムニムニとしたお尻の感触も気にならないくらい、俺は上機嫌だった。

 

しかしそれは一瞬で超不機嫌へと変貌する。

今日は久しぶりにシャルロットの奴が帰ってきたのだ。

 

まあそれだけだったらよかった。

一時的にとはいえ、身近な肉壁が増えるのだから。

 

だがこいつの持ってきたものがダメだった。

それはとある高校の合格証書だった。

 

……いや、普通なら祝福するよ?

さっさと卒業して孤児院に戻ってこい。そして俺の人生の糧となってほしい。

 

しかしこいつの合格した高校が問題だった。

―――――IS学園。

 

世界でたった一つしかないIS操縦者育成機関で、世界中から志願者が集まる学園。

倍率はなんと一万倍!……らしい。シロから聞いただけだから本当かは知らねえ。

 

だがこれが本当なら凄まじく嫌だ。

何で俺を裏切ったやつがこんなに有能なんだ。ふざけんな。

 

そんなに賢いんだったら俺の役に立てよバーカ。もう知らないんだから!

あとシャルロット、てめえあざといんだよ!

 

ちらちらとブラが見えたり谷間が見えたり……。

生殺しなんだよ!どうせなら触らせろや!

 

風呂に突撃してくるクロよりはマシだけど、また悶々とするじゃねえか!

本当、ここらへん娼館とかないの?マジで行きたいんだけど。

 

あと、お前も勉強を教えようとするんじゃねえよ。

いつの間に教師風スーツに着替えたんだ。眼福です!

 

いや、確かに見ると幸せだけど、勉強は嫌なんだよ……。

シロと一緒に出て行ってくだせえ。

 

……ところで、なんでシャルロットのことを皆シャルルって呼ぶの?

もしかして俺、名前間違っている?

……機嫌損ねて盾にならないとかやめてね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q月O日

 

 

シロとシャルロットのダブル授業が、ようやく終わった……。

シャルロットのやつはフランス旅行やらを楽しんでいるらしい。くたばってください。

 

未だシロの勉強は続くが、ダブル授業はやっと終わった……。

年下のガキが自分より賢いって凄いストレスだ。

 

年下の上司並だろう。嫌すぎる。

だからといって勉強を頑張って二人を超えようという気持ちにはならないんだよね。

 

正直、努力するのは面倒くさい。

別に勉強しなかったら死ぬわけではないし、どうでもいいか。

 

……でも年下が俺より賢いって、やっぱり腹立つなぁ。

今日は珍しく勉強が休みだった。

 

俺の最終盾であるクロと一緒にのんびりしていたら、珍しい来客があった。

まあ客というよりかは裏切り者なんですけど。

 

それはクロと同じくスーパーおぱーいの持ち主である真耶だった。

確かこいつ、IS学園の教師をしているとか言っていたな。

 

世界中の超有能な選ばれた子供たちを、IS操縦者に育成する学園の教師。

もう想像できないくらい凄いんだろうなぁ。

 

……こいつも嫌いだ、うん。

ただまあ、性格は悪くない。

 

俺に対して従順だし、いざというときはクロと同じくらい盾にしやすい人材だ。

だから、こいつは裏切り者の中でもまだマシなほうだ。

 

スコールとかはダメだな。死刑ものだ。

だが今日のこいつは嫌いだ。

 

いきなり部屋に来たと思ったら、何が山に登ろうだ。

お前の名字が山田だからってダジャレかよ、面白くねえぞ。

 

というかいちいち報告しなくていいっつーの。勝手に逝けばいいじゃん。

理由も聞いてなかったぞ。しかもダイエットって……。

 

お前の体重の原因って、そのデカい乳のせいだろう。

そこは減らすなよ……俺の目の保養が減るじゃないか。

 

そんなこと考えていたら、真耶が俺と一緒に登りたいなどと寝ぼけたことを言ってきやがった。

めちゃくちゃ嫌だし激しく拒絶反応が出そうになったが、俺は頷くしかなかった。

 

ただでさえ孤児院を出て行ったやつなんだ。

もしこれで不機嫌になって孤児院から完全に独立するとなったら、有能な肉盾を一つ失ってしまうことになる。

 

それは老衰での臨終を夢見る俺の人生にとって、重大すぎる損失になってしまう。

……ご機嫌取りのためには、まったく興味のない山にも登る。

 

まさに人間の鑑である。

クロが止めてくれるかなと期待してみたが、案の定止めてくれず。

 

この野郎、俺の護衛じゃねえのか!?

腹いせに頭をぐりぐり擦ってやった。

 

攻撃とはとらえづらい地味な攻撃である。

反撃されたらあっさり殺されそうなので、これくらいで勘弁してやるぜ。

 

山登りは夕方から始まった。

最初に真耶を見たとき、俺は大丈夫かと不安になった。

 

俺たちが登る予定の山は大した標高はなかったはずなのに、こいつは何故か登山のフル装備である。

熱そうな登山服は着ているし、何が這っているのか気になるような巨大なかばんは背負っているし。

 

指摘してやっても良かったのだが、こいつがひーひー言っているのは面白そうだからそのままにしておいた。

事実、ろくに体力のない俺よりも先に息切れを始めた。

 

いやー、あれは楽しかったなぁ。登山をした甲斐があったといえるだろう。

フラフラしていたし、そろそろこけるかなぁと思っていたら予想通りにこけかけた。

 

正直、真耶がここで転んで怪我しようとどうでもいいんだけど、もしそうなって動けなくなったりしたら俺に迷惑がかかる。

真耶を担いで下山なんて無理だし、置いて行くには勿体ない肉壁だ。

 

だから俺はあいつの身体を受け止めてあげたわけだが、そのときに真耶の爆乳に腕が当たった。

……もうね、凄く柔らかいんだよ。

 

母性というものを強烈に実感したね。

男がおっぱいを求めるのには、この魔性があるからなんだと悟ったぜ。

 

これに乗じて爆乳を少しばかり揉んでやろうとしたのだが、身体は言うことを聞かずにただ優しく真耶を抱きしめていただけだった。

ふじゃけんな!おっぱいくらい揉ませろ!

 

本当、この身体欠陥だわ。マジで神様死ね。

転びかけたせいで真耶は足を挫くしさー。

 

俺が山頂まで負ぶって行かないとダメになったじゃん。

置いて帰ってもいいけど、もし山の害獣なんかに出会ったら囮に使えないからなぁ。

 

まあ負ぶっていたとき、爆乳の感触を背中で感じられたしOKとするか。

結局頂上まで登り終えると、疲れてすぐに寝ちゃったし。

 

次に起きたときはちゃんと孤児院に帰れていたので、真耶が運んでくれたんだろう。

当たり前だ。そこで全裸添い寝をつけてくれてもいいくらいだわ。

はぁ……もう絶対山登りなんてしない。

 

 

 





院長、ゆるぎない。

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