「それで、まずは君達の名前から聞かせてもらおうか」
銀髪のメガネをかけた男-赤馬 零児は二人にそう尋ねた。
「わたしは、シェレン。『ソン シェレン』よ」
「おれの名前は『ギユウ スイゴ』だ。」
オレ達はこの赤馬に脅され、路地裏から『LDS』と名乗る組織の本拠地へと着いた。ただ黙ってつれていかれた訳ではない。この男はおれ達が知らない情報を知っている。それを知るために、ここへ来た。
「そう警戒しなくてもいい、私は君達が『アカデミア』の関係者だとは既に思っていない」
「アカデミア、だと?」
「ほう…、知っていたか」
「おれ達が……居た場所に現れた奴等だ。変な仮面を付け、人をカードにすると言っていた」
アイツらによって、シェレンが傷つけられたのは今でも思い出せる。胸くそ悪い話だ。
「何、それは本当か?何か他に、証拠は提示できないかね」
「……約束がある。これは他の人には見せないと」
赤馬はおれの言葉に頷く。おれが今いるこの部屋は、既に周りにいた部下がいなくなったため、中にいるのはおれ達三人だけだ。見張られていなければ、いいけどな。おれは例のモノをポケットから、取り出す。
「な…に、これは」
シェレンは言葉が詰まったように、おれの手にあるものを見た。ショックが強すぎるからと、シェレンには見せなかったモノだ。
「これは、……カードか。しかも、人が写りこんでいる。成程」
赤馬は、そのカードをじっくりと見ている。
「このカードからは、強い『デュエルエネルギー』を感じる。つまり、これらのカードは本物のデュエリスト自身だと言うことだ」
《くそ、このカードは本物ってことかよ》
「そのカードをどうやって手に入れた」
「襲いかかってきたその仮面のデュエリストを倒した」
「そうか。すると君は『オベリスク・フォース』を倒したというわけか」
「オベリスク・フォース……、それがアイツらの名前か」
「オベリスク・フォース」
絶対に忘れないぞ、その名前。おれ達の……学園の人をカードにしやがった。それに倒したのはおれだけじゃない、シェレンもいたからアイツらを倒せたんだ。彼女もまたこの事実に顔をしかめている。
「アイツらは、……オベリスク・フォースは何者なんだっ。お前はアイツらの仲間なのかッ!?」
「違う。落ち着きたまえ」
《落ち着けるわけがない、こちらは犠牲者がでてるんだよ》
あの男達が、いつまた学園を襲うのかわからない。ひょっとしたら、もう今頃は攻めて来ているかもしれないんだ。感情的さを隠さないおれとシェレンとは対称的に、目の前の男はどこまでも冷静な態度だった。
「オベリスク・フォースは、『融合次元』にあるアカデミアから来ている『デュエル戦士』だ」
「融合次元……、それはどういう意味かしら」
「言葉の通りだ。彼らはこことは違う…この世界とは違う次元の者達だ」
そして侵略者だ、と言葉を加えた。シェレンはこの事実に、どこか確信がいったような顔をした。
「まるで、世界が複数有るみたいな言いぐさだな」
「そうだ。彼らオベリスク・フォースが来たのは『融合次元』、君達の世界は……そうだな『儀式次元』と呼ぼう」
赤馬の言葉に、おれはアイツらが言っていたことを思い出した。
【甘いな。流石は『サンクチュアル』だ遅れている】
【 確かに、貴様は儀式次元の者達とは違うようだ】
「そして、私達がいる世界。他にも、『エクシーズ次元』の存在はとある人物に確認をとったが……君達は知っているか?」
その言葉に、おれ達は首を横にふる。エクシーズ次元ということは、エクシーズ召喚が関わった次元のはずだ。しかし、おれはエクシーズ召喚がそもそもどんな代物か解らない。
「そうか。まあ、現状判明しているのはこの四つだ。もしかしたら、もっと他にもあるのかもしれない」
「そいつらは、何の目的で来てる。どうして、人を襲うっ」
「分からない。……が、少なくともそれは次元を侵略しなければ成し遂げられない何かだと言うことだ」
次元を侵略する。ならば、やっぱりアイツらはあの時おれ達の次元を侵略しに来たのか。
「待ちなさい。貴方はどうして、そんなに詳しく知っているの」
一緒、シェレンのした質問の意味を理解出来なかった。
「おかしいと思わない、スイゴ?今日見た町の様子はどうだったかしら」
何って、平和な普通の町その物で…………まさか。
「おかしいわよね、貴方がこのことを知っているってことは彼らに会ったことがあるはずよ。でも、この町は敵からの警戒をしているには余りにも無防備に見えたわ。そんなのは、異常よ」
シェレンは戦の事となると、頭と勘が働く。彼女は、彼の話の中にある何処とない違和感に気づいたのかもしれない。おれ達は赤馬の方を睨みつけた。
「確かにそうだ。しかし、単純な話だ。先程私はエクシーズ次元に関わるとある人物がいるといったはずだ。私はその協力者から、情報を聞いたために知っている」
その発言にシェレンは納得しなかった。
「ウソよ。それだけで、貴方みたいな人がこんな話をするはずがない。……なにか、もっと、明確な根拠があったはずよ」
「やれやれ、……これ以上はプライベートに関わる。出来れば、控えて貰いたい」
「だとすれば、貴方のことを信じられないわね。真実を隠して、自分に都合の良いことを言ってるのかもしれない」
「信頼してくれ、とは言わない。だが、少なくとも私は君達とは敵対する意思はない」
彼はこれ以上は何も言う気がないようだ。自らの嘘を追及されても全く揺らがないその様子は、この話題が無意味であることを暗に意味していた。
「わかったわ、そのことはもういい。しかし、質問がある。貴方はカードにされた人を戻せないの」
「残念ながら、無理だ。我々の技術力ではアカデミアの技術でカードにされた人を戻すことは出来ない」
つまり、このカードらはそのままってことか。おれ達はこの事実に項垂れるしかない。
「私は君達に興味がある」
突如、赤馬は下向くおれ達に話しかけてきた。
「君達からは、強力な力がある。『儀式召喚』だったか、私はモニターで君達を監視していた。」
最初から、見られていたのか。
「我々の世界では、あれほどの強い『デュエル・エナジー』を持つデュエリストを確認出来なかった」
「『デュエル・エナジー』?」
「モンスターを召喚した時に起こるエネルギーのようなものだ。君達はその力が一般のデュエリストよりも遥かに高い。私は召喚反応のレベルも低く、滅多に使い手がいない召喚法のため放っておいたが。なるほど、それは誤りだったのかもしれない」
《確かに使い辛いもんな儀式召喚。おれも、ずっと敬遠してたし》
「しかも君達は『アカデミア』の刺客の一人を倒したようだな。ならば、私の考える『ランサーズ』の一員に相応しい」
「「ランサーズ?」」
また出てきた新たな単語におれもシェレンも頭をひねる。まるで、部活か何かの名前みたいだと思った。
「私が構想する。……対アカデミアのための組織だ」
「対アカデミア。…つまり、アイツらを追えるのかっ!?」
赤馬の話す話に一筋の光明が差した気分になった。もしオベリスク・フォースを追えるなら、おれ達は元の世界に帰れるかもしれない。横を見ると、シェレンもまた僅かに興奮してる様子だ
「追うことに関しては今は無理だ。だが、近々その問題は解決するかもしれない。現状、私はこの次元に攻めこんできた時に対する防衛組織にするつもりだ」
「ウソではなさそうね」
「なら、話は早い。おれ達をそのランサーズ加えてくれ!!」
今のどうする術もないおれ達にとって、この話は渡りに舟だ。
「だが、それには条件がある」
「「条件?」」
途端に、頭の中が冷静になる。無条件で済むほど、簡単な話ではないようだ。
「ああ、正直な話。私は君達の実力を完全に信じてはいない、オベリスク・フォースを本当に倒した所も見た訳ではないからな。そこで、君達には『舞網チャンピオンシップ』に参加して成績を残して来てもらいたい」
「なんだ、それは」
「私達の世界のデュエル大会だ。規模はこの町の区域内のみだが、出場するデュエリストは世界でも充分に通用する。このデュエル大会の優勝者はプロになる資格を得られる。」
「つまり、私達の世界でいう大規模なプロデュエルの試験。…面白そうね」
「そうだ。本来はこの大会は三つのクラスにわかれているのだが……、君達には『ユース』クラスに参加してもらいたい」
ユース……つまり、大人のクラスか。まさか、一番強いクラスじゃないのか。
「ユースクラスへの参加条件は?」
シェレンが回答を急かす。
「50戦中の勝率が6割を越えていることか、連続のデュエルで六連勝するか。そのどちらかだ」
「デュエル大会までの期限はどのくらいだ」
「あと10日くらいか」
もうすぐ直前じゃないか。なら、最初の方はダメだ。時間が足りない。この世界の戦術が分からない以上、おれ達は無闇矢鱈には戦えない。
「そうなると…」
「連続で、六連勝するしかないだろう。対戦相手は、こちらで用意するがどうするかね」
「わかったお願いする。その代わり、おれ達はあと何回戦えばいい」
「君達が戦ったデュエルは、確か『タッグ・マッチ』だったな。ならば、君達は二人とも二連勝扱いにしておこう」
「なら、後4回連続で勝てばいいわけね」
「タッグを組むのも自由だ。同じように、カウントしよう。……ただし」
舞網チャンピオンシップでは闘えるのはシングルのみだがな、と彼はそう言った。こうして、スイゴとシェレンは新たに異世界における『舞網チャンピオンシップ大会』の参加を目指すという目的が出来た。