おれは再び気持ちの良い目覚めをした。昨日、シェレンとのデート(仮)を終えたおれは遊矢の家でペンデュラム召喚についての話を聞きつつ、眠りについた。
今日もまた、デュエルをやることになっているのでおれは早めに起きた。そして、遊矢の母親の洋子さんの食事の手伝いを遊矢として、並べられた豪快か料理を三人で食べた。
「なー、スイゴ。俺もスイゴの試合を見ちゃだめかな?」
「分からないな。赤馬に許可をとれば、いいんじゃないか?」
遊矢は、どうやら、自分のエンタメデュエルの方向性について悩んでいるようだった。解決のきっかけになる可能性があるなら、藁にもすがりたいのかもしれない。
「でも、遊矢はその答えをもう見つけたらしいじゃないか」
「うーん、まあ、そうなんだけど。出来ることならいくつも見つけたいんだよ」
わがままだな遊矢。まあエンターテイメントを心がける者なら、それも必要かもな。
おれは、遊矢とそんな話をしながらLDSへと向かった。LDSの前では、シェレンが柚子と一緒に待つのを見かけた。
「遅いわよ、スイゴ。今日は大切な日なのを忘れてないかしら」
「一時間前に来て、それはないだろ」
「私より遅いから、ダ・メ」
シェレンの言ってることはひどく理不尽だ。
おれたち四人はLDSの中に入った。受付の人に事情を説明すると、「少し、お待ちください」とエントランスで待たされた。
「にしても、広いよなLDS。俺達の塾とは、大違いだよ」
「確かに、一規模のデュエルスクールとしてはかなりのものね」
「でも、お前とおれが通っていたとこはもっと広かったけどな」
「学園と比べるのは、間違っているわよ」
おれとシェレンの在籍する『聖フランチェスカ学園』はデュエルのための複合施設だからな、まあ大きさも人数も前提からして違うな。
《そう言えば、アイツら。今頃、何しているんだろうな》
おれ達がこの世界に来てまだ二日しか経ってないが、精神的にはもっと長い時間のような気分になる。元の世界とは、時間の進みが同じかは知らないがおれとシェレンがいないことに気づいたらどうするのだろう。
《メイリン、リアン、カンウン、シュセン……》
幼馴染みや親友は探してくれているのか、おれ達を。友人は多くないかも知れないが、一人一人絶対に、大切な奴らだとは思っている。
「な~に、センチメンタルになってるのよ!スイゴ」
シェレンは笑って、励ます。
「私達の親友が、そんなすぐに私達のことを忘れるわけないわよ。心配いらないわよ、強い人達だって知ってるでしょ」
「ああ、そうだな。アイツらなら、大丈夫だ!」
きっと、その内におれたちの前に現れるさ。
「なんだ、おまえ達。LDSになんか用か」
スイゴとシェレンが声の方を振り替えると、遊矢達が誰かと話しているようだった。
「あっああ、今日はスイゴ達の試合を見に来たんだ」
「は?誰だよ、スイゴって」
不思議そうな表情をする少年。その彼は背中に竹刀の様なものを背負っていた。
「あれ、『刃』達はスイゴのこと知らないのか」
「だから、知らないって。LDSには何人通ってると思うんだよ。ほとんど、顔だけのやつも多いぜ」
「そうか、そういうもんなんだな」
遊矢は納得したように、頷く。刃と呼ばれた少年は、今度はこちらへ向いた。
「で?アンタら、どこの所属よ」
黒い髪の気が強そうな少女が尋ねる。
「私達、仮の留学生みたいなものだから授業には出てないのよ」
「ふーん、なるほどな。それで名前は」
二人は、LDSの生徒達にスイゴとシェレンだと名乗る。
「そうか、俺の名は『刀堂 刃』だ」
「私は、『光津 真澄』よ」
「僕は『志島 北斗』」
遊矢達に話しかけてきた三人は、おれたちにそう名乗った。第一印象からは中々に、クセの強そうな奴らだと感じた。
「スイゴ達は、どんな召喚法を使うんだい?」
紫色の髪の、北斗はそう聞いた。しくさが、いちいちキザったらしいのが目に痛い。
「儀式召喚だ」
「儀式ぃ、ってことは『総合コース』か。」
話した途端に、三人の視線の印象が悪くなった気がする。なんか、見下されてるような。
「あの『沢渡』と同じクラスなのね」
「それじゃあなぁ」
沢渡が誰か知らないが、あんまりバカにしてるようなら腹が立つ。
「北斗!二人も!スイゴ達はおれ達と違ってユースクラスなんだぞ、しかも、儀式召喚もすごい腕だし」
遊矢も見かねたのか、フォローしてくれる。
「ユースって、ことは俺たちより上か」
「でも、どうかしら。スイゴとシェレンなんて、聞いたこともないし」
「それに、『黒咲』さんの方がおそらく強いんじゃあないかな」
三人の見方は多少は変わったが、それでも納得はしてないようだ。
「なら、あなた達もデュエルを見て行きなさいよ」
「悪りィが、今日はこれから授業なんだ。俺たちはもう行かせてもらうぜ」
刃のその言葉を最後に、三人はLDSの教室へ行ってしまった。受付の人が、遊矢と柚子の同行を許可したのはそれからすぐ後のことだった。
「それじゃあ、私と遊矢は観客席で見てますから」
柚子達はそう言い、一足早く行った。私とスイゴは、と言うと。今だに、デュエルの方法に悩んでいた。
「私は、一対一で良いと思うわよ」
幸い一昨日は試合が出来た。そのおかげで、アクションデュエルに関しては多少は慣れたつもりだ。
「大丈夫なんだな、シェレン」
「大丈夫よ♪」
それに、一人で戦いを勝ち抜けないようじゃやっぱり話にならないわよ。
「わかった、おれは観客席で観てくる」
がんばれよ……との言葉を残して、スイゴは去った。私はデュエルステージへと足を運ぶ。
「貴女が、ワタクシの相手かしら?」
私は、目の前の女性にそう尋ねる。
「はい、そうです。ワタクシは赤馬社長から『直々に』デュエルの相手と認められた『ノウン ハーチェ』と申します」
金髪に、童顔ながらもつり上がった瞳を持つ女性。髪は長く、胸こそ控えめだが身体のスタイルは良い。その仕草は優雅だが、同時にプライドの高さも象徴しているようだった。
《んー、なんか『レイハ』みたいな人ね》
私のクラスメイトのことだ。たてロールの髪がないのと、胸以外はだいたい似たような容姿。シェレン自身は、ぶっちゃけ、苦手な人種だ。
「では、早速ですがデュエルに参りましょう。ワタクシの美しく、華麗なデュエルを御見せしますわッ!!」
「……ええ」
もうなんとでもなれと、思う。
二人はデュエルデュエルを構え、始まりの時を待つ。
《《アクションフィールドセット、『暗闇の水源』》》
天井は黒く染まり、床には浅い水面が見えた。部屋全体が巨大な洞窟の内部空間のようになっている。これでは、アクションカードを探すのも一苦労だ。
向き合う彼女らは、お決まりの口上を口にする。
『 戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが』
『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡りますわ』
『見なさい!』
『『これぞデュエルの最強進化形、アクショ-ン!』』
『『デュエル』』
ノウンvsシェレン
LP4000/LP4000
「先攻は、ワタクシですわ」
水に濡れないように少し小高い石の丘に移動しつつ、ノウンは戦略を建てる。
「ワタクシは手札より、『インフェルニティガン』を発動します。この効果で手札から『インフェルニティ・リベンジャー』を墓地に送りますわ。」
「次々にカードを墓地に、どういう意図かしら?」
私はノウンの戦術を見ながらも、アクションカードを探す。…まさか、水の中に落ちてるのだろうか。
「さらに、ワタクシはカードを二枚伏せて、手札の『インフェルニティ・ビートル』を召喚します。『インフェルニティ・ビートル』の効果で、このカードをリリースしてデッキから『インフェルニティ・ビートル』を守備表示で特殊召喚!」
《あ、あったわ。やっぱり、水の中にあるのね》
「そして、ターンエンド。あなたのターンよ」
ノウンのターンが終わり、次はシェレンの番だ。
「…なんか、事故ってるわね。まあいいわ、ドロー!私は手札から『呉国の兵士』を攻撃表示で召喚」
忠実なる彼女の僕が、フィールドに召喚される。
「バトルよ、呉国の兵士でインフェルニティ・ビートルを攻撃」
「しょうがないですわね、通しますわ」
奇形な昆虫が破壊される。しかし、ノウンに焦りは見えない。次の瞬間、彼女の墓地からモンスターが現れた。
「インフェルニティ・リベンジャーは、効果でフィールド上に特殊召喚されますわ。さらに、レベルは2になります。あなたのせっかくの攻撃も無意味でした、残念…」
「効果で呉国の兵士を守備表示に変更、カードを三枚伏せてターンエンドよ」
ノウンの話を遮り、私はさっさと自分のターンを終わらせる。手札のアクションカードはまだ使用しない。
《とりあえず、他のアクションカードを見つけましょ》
シェレンは、水がかかるのも気にせずにフィールドを縦横無尽に走る。