「じゃあ、俺のターンだね。ドロー!」
「俺は『魔導書士 バテル』を召喚。さらに、このモンスターの召喚に成功したことにより、デッキから、『グリモの魔導書』を手札に加える」
ユウは足場に気をつけつつ、その足で着実に、フィールドを移動し続ける。彼のモンスターもまた、それに従うように追従する。しかし、その手を休めることはない。
「そして、手札から『ゲーテの魔導書』を発動。その効果で、俺は墓地の『グリモの魔導書』、『セフィルの魔導書』、『トーラの魔導書』の三枚をゲームから除外して、君のフィールド上の伏せカードを除外だ」
「おれは、チェーンで速攻魔法『悔恨なき別離』発動」
悔恨なき別離
速攻魔法
自分デッキから、『無名』と名のつくモンスターカードを二枚墓地に送る。このカードを発動したターン、自分は墓地からカード効果を発動することはできない。
「うっ……ならば、俺は手札から速攻魔法『月の書』を発動、この効果でバテルを裏守備表示にする」
「何で、自分のモンスターを……」
「今わかるよ、俺はバテルを反転召喚。そして、リバースしたことでデッキから『ゲーテの魔導書』を手札に加えるよ。」
「また、そのカードか!」
色々と長長しい作業は見慣れないため、おれには何が何だかさっぱり分からない。とは言え、今度はまた除外されたら困る。
「心配しなくても、このカードが発動出来るのは、一ターンに一度さ」
「それは良かった……」
「でも、安心するのは早いよね?俺は手札
の『魔導書』魔法カード三枚を見せることで、手札から『魔導法士 ジュノン』を特殊召喚する。俺が見せるのは『グリモの魔導書』、『アルマの魔導書』、『ゲーテの魔導書』の三枚っ!」
「手札から特殊召喚ッ!?」
その魔導士は高位の存在であり、特別な力を持っていた。故に、人々からは敬れ、恐れられた。気だる気な目をする女の姿のモンスターが、フィールド上に現れた。
「攻撃力2500…………それが、お前のエースモンスターかッ!」
「残念だけど、違うよ」
ユウは首を振って、ハッキリと否定した。
「手札の『アルマの魔導書』の効果で、除外されている『セフィルの魔導書』を手札に加えるよ。そして、『セフィルの魔導書』発動。手札から『ゲーテの魔導書』を見せて墓地の『アルマの魔導書』の効果を使い、除外されていた『グリモの魔導書』を手札に!」
流れるようなユウのカード運びに、いよいよ、頭の処理が限界を越えた。おれはついに、足を止めてしまった。
《おれは、『ソリティア』のようなカード運びが嫌いなんだッ》
スイゴの頭は、既に爆発寸前である。
「『グリモの魔導書』を発動、デッキから『ヒュグロの魔道書』を手札に加えるよ。これで、準備は整った!」
《……やっとか》
このユウという人物の性格は嫌いじゃないが、『この戦術に置いてはその通りではない』、と核心して思うことができる。
「俺は、ジュノンの効果で墓地の『セフィルの魔導書』を除外し、君のフィールド上の無名の商人を除外」
「またかよっ!?」
スイゴは、効果でデッキからカードを一枚ドローした。
「そして、俺は手札の『ヒュグロの魔導書』の効果を発動、バテルを選択。これで、バテルの攻撃力は1500」
「行くよ、バトルだ。バテルでミニチュア・ドラゴン・トークンを攻撃っ!」
魔導士による一撃もらい、トークンはフーセンが割れるように破壊された。
スイゴ
LP3100
「バテルでモンスターを破壊したことで、『ヒュグロの魔導書』の効果は発動される。俺はデッキから、『アルマの魔導書』を手札に加えるよ」
《終わって、無かった……》
「ジュノンで無名の盗賊を攻撃ッ!」
「うあぁぁぁぁッ」
スイゴ
LP2100
ユウは、まだ終わらせるつもりはないのか空の階段を駆けあがっていく。そして、……。
「あった!俺はアクションマジック『ミニチュア・フェニックス』」
ミニチュア・バード
このカードを発動したプレイヤーは、フィールド上に『ミニチュア・フェニックス・トークン』を特殊召喚できる。
ミニチュア・フェニックス・トークン
「ミニチュア」と名のつくトークンはフィールド上に一体しか、存在出来ない。
AT800/DF0
「ミニチュア・フェニックス・トークンでスイゴに攻撃っ!」
「……」
スイゴ
LP1300
「さあ、行くよ!俺はカードをもう一枚伏せて、ターンエンドだ。君の番だよ、もっと、盛り上げようっ!」
「……」
「スイゴ?」
何故か、攻撃を受けたのにも関わらず微動だにしなくなってしまった。ユウは、不思議そうな表情で、彼を見る。
「あっ!ああ、悪いおれのターンだったか」
「うっ、うん。次は君のターンだよ…………なんか、ごめんね」
ユウの余りのカードのぶん回し具合に、思考が何処かへ吹っ飛んでいたスイゴも漸く正気に戻った。
「行くぞ、おれのターンッ!」
手札を引く。スイゴはそのカードを見て、会心の笑みを浮かべる。
《来たッ!これなら、絶対に呼び出せる》
再び動き出したスイゴはまず場の状態を確認した。
《ユウの手札は二枚。そして、伏せカードも二枚。場には、ジュノンとバテル、トークン一体がいる。墓地には、四枚の魔導書》
いったん、そこで思考を断ち切る。
《そして、おれの場にカードはない。手札は四枚か……ならば、おれが今一番するべきことは!》
スイゴは辺りを見渡し、目当ての物を探す。
「よし、アクションマジック『ミニチュア・パンサー』を発動ッ!」
ミニチュア・パンサー
このカードを発動したプレイヤーは、フィールド上に『ミニチュア・パンサー・トークン』を特殊召喚できる。
ミニチュア・パンサー・トークン
「ミニチュア」と名のつくトークンはフィールド上に一体しか、存在出来ない。
AT400/DF400
さらに、もう一枚アクションカードを掴んでおく。
「さあ、ここからが本番だ。おれは墓地の無名の医師の効果発動ッ!これにより、墓地の無名の軍師を手札に戻す」
名もなき救い手は、その身を消滅させ仲間を自陣へ送り返した。
「そして、無名の軍師は墓地から手札に戻った時に効果を発動できる。おれはデッキから、『無名の隊長』を手札に加える」
無名の隊長
レベル4
戦士族/効果
このカードがフィールド上にいる時発動できる。このカードは一ターンに一度、カードの効果の発動を無効にし破壊できる。
AT1000/DF1500
【「おれは、チェーンで速攻魔法『悔恨なき別離』発動」】
「あの時に送ったんだね」
「ああ、そうだ」
ユウの追求に、おれは理解を表明して返す。
「そして、おれは手札から、『無名の隊長』を攻撃表示で召喚」
「厄介そうなカードだ。俺は速攻魔法『ゲーテの魔導書』、墓地の『ゲーテの魔導書』、『アルマの魔導書』、『トーラの魔導書』を除外して、無名の隊長を除外だ」
これにより、おれのモンスターは召喚されずに砕け散った。
「だが、狙い通り」
「何だって?」
おれは、昨日、修造塾長とのアクションデュエルでアクションカードの可能性を知った。ただ、そのままカードを扱うのではなく自分の戦術として、あるいはエンターテイメントとしても使えると。
《ただ、おれは器用じゃないからな》
よって、やれることは一つだけだ。ユウのいる方向に向かって腕を伸ばす。
「ユウッ!おれは、これから、お前の度肝を抜いてやるよッ」
「ふーん。それは楽しみだ」
余裕たっぷりって、感じだな見てろよ。
「おれは、 カードを一枚墓地に送ることで手札から儀式魔法『知られざる生誕』を発動ッ!手札の『無名の使者』と『無名の軍師』を生け贄に捧げる」
「 これにより、『無名の剣将』の儀式償還を執り行える」
『その真実は何者にも気づかれず、その英断は何者も知ることはない!しかし、その勇気のみは男の仲間を奮い立たす‼未来を掴めっ‼!』
『儀式召喚』
「仲間と共に、戦場を駆けろ。無名の剣将」
《よしッ、これなら……!》
「かかった!俺は伏せカード『黒魔族復活の棺』を発動っ!』
「何ッ!?」
突如出現した棺が、おれの召喚した無名の剣将と相手の場のバテルをとりこんだ。そして、二体を入れ、蓋は完全に閉まる
「現れよ!『ブラック・マジシャン』」
時を越えた、最高位の魔術師がユウのフィールドに出現した。
しかし、おれの視線はモンスターがいた筈のただ虚空のみを見ていた。