遊戯王 ARC-Vs 儀式次元追加版   作:崖っぷち

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魔導法王 ハイロン

スイゴは一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。

 

 

 

……しかし、相手の場にモンスターがいるのを見て漸くその事実を理解した。

 

「おれのモンスターを使ったのかッ!」

 

スイゴの声が震える。視線はどこか虚ろで遠くをみているようだった。頼るべきものをなくしたかのような彼の姿は…………酷く弱々しく見えた。

 

 

 

スイゴの脳裏にふと一つの記憶がよみがえった。それは彼がまだ幼い頃のもの。状況は全然違っていた。……しかし、『無名の剣将』を破壊されたその姿が当時の自分に一瞬だけ重なった気がした。たった、それっぽっちのこと。

 

 

 

だが、それは…………。

 

 

 

《…………な、………けるな、ふざけるな、ふざけるなァッ、ふざけるなァァァァァァァーーーーーッ!!》

 

 

『ギユウ スイゴ』にとっての紛れもない『逆鱗』だった。

 

「…………ぐそっ……ガァッ……」

 

頭ん中が血でいっぱいになったような気分になる。吐き気やむかつきで思考がグラつく。額についているものが邪魔でしょうがない。

 

「……ッだよ、いらねぇよ……」

 

不快な『それ』を取り去り、何処かへ投げ棄てた。心の底から、二度と視界に入らなければ良いと思える。

 

「……忌々しいなぁ……」

 

おれの儀式召喚を踏み台にされるなんてよ。まるで、『あの時』のようだな……。

 

「……潰す……」

 

屈辱感と憎しみの感情しか、もう感じない。

 

 

《もう、デュエルなんか『どうでもいい』。『アイツら』は…………いつも『奪う』だけだ》

 

 

ただ、その存在を消し去りたい。こんなふざけたことが許されるのかと呪詛と怨念の言葉を吐き出してやりたい。なんで、なんでッ、なんでッ、『産んだ』!

 

 

 

「……『スイゴ』……………」

 

 

 

……………………ふと、声が聞こえた気がした。

 

 

…………………それが、誰のだったか分からない。

 

 

………………誰だよ、邪魔すんじゃねぇよ

 

 

……………アイツ、てあんな目細かったっけ

 

 

…………馬鹿みたいに、簡単に泣き崩れるようなヤツだったっけ

 

 

………あいつら二人も、阿呆みたいなツラして

 

 

……あの女が、あんな顔してるから

 

 

…シェレン、が?

 

 

 

「………ッ」

 

 

《……何を考えていたんだよ、『おれ』はッ》

 

 

視界は観客席へ向く。男が茫然としたような顔で彼を見ていたが『スイゴ』はきづかない。

 

……スイゴの視線の先では『シェレン』は泣いていた。いつも飄々として、いつもニヤニヤしてるような陽気な幼馴染みが涙を流している。『八年前』と同じ様に……。

 

「ごめん……シェレン」

 

彼女は泣き止まない。ただ、黙って下を向くだけだ。

 

「悪かった。約束したのにな」

 

昔のことだ。彼女が思い出す事なんてないと思ってた。ましてや、自分の為に無くなんてこと。

 

「『都合の悪いこと』から逃げるなって」

 

あの時と同じように泣く姿はひどく小さく見えた。

 

「お前、本当は何も変わってなかったんだな」

 

そんな風にさせてしまった自分が酷く情けない。

 

「……………………ばか」

「ああ」

「…………本当にバカよ、貴方」

「そうだな」

「……メイリンと一緒に約束したじゃないっ」

「覚えてる」

「なら、守りなさいよぉっ!」

 

シェレンがおれを睨みつけた。

 

「貴方がそんなんじゃっ!全然、安心出来ないわ!!」

 

怒声がおれの意識に突き刺さる。もはや、アクションデュエルなどそっちのけだ。

 

「何が『約束した』よ、人のこと馬鹿にしてるじゃないっ」

 

遊矢も柚子もただ黙って彼女を見ている。

 

「そんなんじゃ、幼馴染みの意味無いじゃない!私に話しなさい!!頼りなさいよ!!!」

 

彼女の顔にはすでに涙など無い。『ソン シェレン』という存在は強い。しかし、それは全く倒れない為じゃない。彼女は立ち上がるのが早い。辛いことを飲み干し背負う強い覚悟ある。だからこそ、その言葉を口に出来た。

 

「次に破ったら絶好。わかったら、さっさとデュエルに戻りなさいっ!」

「ああ、絶対だッ!」

 

おれはデュエルの対戦相手に向かいあう。今度こそ、約束を守るために。

 

「『桜樹 ユウ』、おれは再び戦いを申し込む。おれとデュエルを……アクションデュエルを続けて欲しいッ!」

「…………君は、大丈夫なのかい?」

 

彼は静かな目で、おれを見ている。

 

「ああ、大丈夫だッ!」

「ならば、戦おう。俺自身もこのままじゃ気分が悪い。決着をつけようっ!」

「デュエル再開だッ!」

 

大丈夫だ。今度こそ、おれは敗けない!

 

「おれは手札から、『無名の傭兵長』を召喚ッ」

 

無名の傭兵長

 

レベル6

 

戦士族/効果

 

自分フィールド上にモンスターが一体も存在せず、相手の場にモンスターが二体以上存在する場合に手札から特殊召喚出来る。

AT2500/DF1800

 

 

《もう一度だ。相手の場には攻撃力2500のモンスターが二体と攻撃力800のトークンが一体》

 

 

「バトルッ!おれは無名の傭兵長でミニチュア・フェニックス・トークンを攻撃ッ!」

 

名もなき上級剣士の一撃を受け、トークンは消滅する。ユウもまた、その衝撃で後ろに下がる。

 

 

ユウ

LP200

 

 

「さらに、おれはカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

……そうだ。確かにエースモンスターはいなくなった。それでも、戦えなくなる訳じゃない。ずっと、このデッキで戦ってきたんだ!

 

 

「いい表情だ。なら俺も全力で行かせてもらうよ!俺のターン、ドローーーっ!」

 

『桜木 ユウ』の渾身のドローが炸裂した。

 

「この瞬間、『魔導書院ラメイソン』の効果を発動!俺は墓地の『ゲーテの魔導書』をデッキの一番下に戻すことで、デッキからカードを一枚ドローできる」

 

ユウは再びカードをドローする。

 

「俺は手札から『グリモの魔導書』を発動、デッキから『セフェルの魔導書』を手札に加える。さらに、手札の『アルマの魔導書』を見せて、『セフェルの魔導書』発動。デッキから『ゲーテの魔導書』を手札に加える。まだ行くよ、俺は手札の『アルマの魔導書』の効果で除外されている『ゲーテの魔導書』を手札に加える」

 

先程とは違い、余り時間をかけないつもりみたいだ。

 

「さらに、フィールドのジュノンの効果発動!墓地の『セフェルの魔導書』を除外して、君のフィールドの無名の傭兵長を除外する」

「くっ」

 

おれのモンスターが魔導の本の魔力により、異次元へと引きずり込まれた。

 

「さらに、手札の『トーラの魔導書』を発動してブラック・マジシャンを選択する。そして、『ゲーテの魔導書』を発動。墓地の『トーラの魔導書』、『グリモの魔導書』、『アルマの魔導書』を除外して、伏せカードを除外!」

「おれの伏せカードは見返りなき緊急要請。よって、除外される」

「そして、俺はジュノンに『ヒュグロの魔導書』を発動。…………俺は、君には出し惜しみしたくないと思っているよ。バトルだ、ジュノンでスイゴくんのミニチュア・パンサー・トークンに攻撃」

 

これが直撃すれば、攻撃力の数値の差し引き3100でスイゴの終わりだ……。

 

 

 

「だが、攻撃は通さないッ。おれは墓地の『無名の使者』の効果発動ッ。フィールド上のミニチュア・パンサー・トークン一体を生け贄にして、このモンスターを守備表示で召喚しバトルフェイズを強制終了させるっ!」

 

無名の使者

 

レベル4

 

戦士族/効果

 

この効果は墓地に存在する時に発動できる。一ターンに一度、相手モンスターの攻撃宣言時に発動し自分フィールド上のモンスターを一体をリリースする事でこのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚出来る。この効果を使った場合、このターンのバトルフェイズを強制終了させる。

AT0/DF2000

 

 

 

「……言った筈だよ、出し惜しみはしないって!今度は、俺が君に見せる番だッ!『エクシーズ召喚』を!!」

「エクシーズ召喚だとッ!?」

「俺は、レベル7の『魔導法士 ジュノン』とレベル7の『ブラック・マジシャン』で『オーバーレイ』っ!!」

 

二体の魔術師の中心に、巨大な渦が出現する。それは二体の魂を重ね、より大きな力を生み出すのだ。

 

 

『数多の魔導を統べし者、善良なる心を持ちし賢者よ!深淵なる力を他が為に振るわん!』

 

 

『エクシーズ召喚』

 

 

「召されよ、ランク7『魔導法王 ハイロン 』!!」

 

 

高貴な仁徳を持つ魔導士の最高位がフィールドに出現した。

 

「俺は、カードを一枚伏せて、ターンエンドだっ!」

 

 

ユウはもうアクションカードを取らないだろう。故に、下級が並ぶことはもう無い。しかし、彼はわざわざ使わなくてもよいエクシーズ召喚を行ってくれた。なぜか?

 

 

《……わかってる、応えてくれてるんだよなッ!》

 

 

それはきっと彼が真のデュエリストで有り、スイゴの期待に応えた為だ。スイゴの全力を真っ向から受けとめ、倒す強い覚悟をしたに違いない。

 

 

《凄い……。これが一度ジュニアユースの頂きに至った強さってことかッ!》

 

 

戦術だけではなく、彼は心もまた強い。モンスターの力と合わせその三つの要素こそが彼を優勝に至らせた理由だった。スイゴの実力では、比べること自体がそもそも烏滸がましい。

 

 

《それでも…………出してくれたってことは、おれを認めてくれたってことだ》 

 

 

ならば。おれも今度こそ、その期待に応えたい。『シェレン』のために、『ユウ』のために、『遊矢』や『柚子』、『モンスター』、そして何よりも『自分自身』のために!

 

「デッキッ!こんなクソッタレでも良いなら……力を貸せッ」

 

その瞬間、スイゴの手には真の『勇気』が宿る。

 

『おれのターンッ、ドロォォォォォォォォォーーーッッ!!!』

 

その手に握られるモノとは。

 

「これは……『死者蘇生』」

 

つまり、おれに選べということか。何を呼び出すのかッ!

 

「選ぶのは『コイツ』だけだッ!魔法カード発動 死者蘇生ッ!!」

 

彼のフィールドに、今度こそ名もなき英雄が出現した。スイゴの心が弱いままであろうとも、仮に強くなれたとしても絶対に選ぶであろうエースモンスター。…たとえ、その結果がどうなろうと後悔はない。おれは『コイツ』が良くて選んだのだから……。

 

 

 

「『無名の剣将』」

 

スイゴは、目を閉じる。運命を変えることは出来なかったがこれで自分は満足した。得るものがあった。無くさなくてすんだ。その結末がこれなら、おれは受け入れられる

 

 

《何やってるのっ!?スイゴ!!》

 

 

シェレンの声が聞こえた。ならば、もうこのデュエルを終わらせる時だ……。

 

 

 

おれはそう思い眸を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知られざる---の昇華

 

--儀式魔法

 

このカードは、自分フィールド上のモンスターのレベルの合計が10以上になるように生け贄を捧げ、発動される。--------から、『無名の剣聖』一体を--儀式召喚する。このカードの生け贄素材の一体は、必ず『無名の剣将』でなければならない。----------------------------------。

 

 

 

運命は、これよりその動きを加速させる。

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