遊戯王 ARC-Vs 儀式次元追加版   作:崖っぷち

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無名の剣聖

「何……だ……、このカードはッ!?」

 

おれのフィールド上で、いつの間にか謎のカードが発動していた。文字は所々擦りきれ、書いてある内容も全くおれの知らない未知のものだ。

 

 

《あり得ないッ!おれの手札はもう無いのにっ、カードが発動出来る訳がないだろッ!!》

 

 

しかし、目の前の現実はそんなおれの想像を置いていくかのように狂いながらも正常に機能していく。

 

「スイゴ、そのカードを使えっ!」

 

ユウが、おれに叫びかける。

 

「君がカードに選ばれたなら、それを使うべきだっ!!」

 

彼はひどく興奮したような声をしている。彼自身もこの摩訶不思議な事態に魅了されているのかもしれない。

 

「…………ああ、そうだ!おれは自分フィールド上の『無名の剣将』と『無名の使者』を生け贄に捧げる」

 

スイゴの手札に『このカード』は無い。しかし、何故だか彼にはそのモンスターを呼び出せる気がした。

 

「これにより、『無名の剣聖』の儀式償還を執り行えるッ!」

 

『その真実は己にすらも気づけず、その才気は誰にも知られざる筈だった!しかし、その勇気のみが男と仲間を英雄へと至らしめる!!友の叫びに応えよ!!!』

 

 

『儀式召喚』

 

 

「仲間を救い、運命を乗り越えよ。『無名の剣聖』」

 

 

無名の剣聖

 

レベル10

 

戦士族/--儀式/効果

 

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AT3000/DF2500

 

 

語られる筈の無かった英雄が、フィールドという表舞台に姿を現した。

 

「おれは、『無名の剣聖』の効果発動ッ!墓地の『無名の傭兵長』を装備する。これにより、攻撃は1250ポイントアップする」

「攻撃力4250だって!?」

 

スイゴは、フィールドを駆けた。

 

「バトルだッ!!無名の剣聖でハイロンを攻撃ッ!!」

「そうは、いかない。俺は、伏せカード『ゲーテの魔導書』を発動。墓地の『トーラの魔導書』、『ヒュグロの魔導書』、『ヒュグロの魔導書』をゲームから除外して、君のモンスターを除外するっ!」

「おれは、無名の剣聖の効果発動ッ!その効果で、『魔法カード』を選択する。これにより、このターン、魔法カードの効果を受けないッ!!」

「そんなっ!ばかなっ!!」

 

知られざる英雄と高名なる魔導士の戦いは、その一撃を持って、英雄に軍配が上がった。

 

 

ユウ

LP450

 

 

「さらに、アクションマジック『ミニチュア・ワイバーン』を発動ッ!!」

 

ミニチュア・ワイバーン

 

このカードを発動したプレイヤーは、フィールド上に『ミニチュア・ワイバーン・トークン』を特殊召喚できる。

 

ミニチュア・ワイバーン・トークン

 

「ミニチュア」と名のつくトークンはフィールド上に一体しか、存在出来ない。

AT700/DF100

 

「………フィールドにもうカードはない。わかった、来いっ!!」

「バトルッ、ミニチュア・ワイバーン・トークンでユウにダイレクトアタックッ!!」

 

スイゴの持てる全力以上を彼へとぶつけた。

 

「うっ……わあぁぁぁーーっ!!」

 

 

ユウ

LP0

 

 

スイゴは自分のデュエルディスクを見る。そこではカードが消えていく光景を見た。僅かな間を残し、『無名の剣聖』はその姿を完全に消し去った……。

 

 

 

 

 

 

「シェレン、………悪かった」

 

おれは、遊矢や柚子それに、ユウやノウン

のいる前で首を下げた。

 

「スイゴ、一度じゃなく、二度も同じ間違いを犯すのはバカのすることよ」

「はい……」

 

仰る通りです。黙って、頭を下げたままにする。

 

「三度目は無いわよ」

「はい………」

 

有難い。彼女からは一応見放されてはいないみたいだ。

 

「…今日は一緒に寝なさい」

「は……………いや待て」

 

思わず頷きそうになった自分に激しく後悔した。

 

 

《……本当に何でこの状況でそんなこと言っちゃうかな、コイツはッ!?》

 

 

……ふと視界が暗くなる。何事かと思ったが、頭に何か布切れを当てられているような触感があった。少しの間、その状態で成すがままにされた。

 

「………まあ、よろしい。首を上げなさい♪」

 

首を上げると、そこではシェレンが可笑しそうにクスクスと笑っていた。周りにいる皆は顔が少し赤いように見えるが、それでもこの状態を容認しているように思えた。おれが頭に手をやると、額に何か巻かれているようだった。

 

「無くしちゃだめよ。それも貴方には必用なんだから」

 

成程、さっきの謎の行動の正体はこれか。彼女は試合中におれが投げ棄てた『コイツ』を拾ってきていたのか。スイゴが額に触れていると、シェレンはまたクスクスと笑いだした。

 

「………何だよッ!」

「何かしらねーー♪」

 

変なところがないか何回も手で確認する。そうしている間もシェレンはただただ笑い続けている。そんな彼女を見て、おれはどこか望郷に帰ったような安心感を感じた。

 

「……それで、スイゴ。さっきの召喚は何かしらん」

 

彼女は、ぐいっ、と音が聞こえそうな位におれの前に近づいてくる。

 

「おれも分からない。何か、夢中でやってたら出来たんだよ」

「まあ、俺も焚き付けちゃったからね。そのせいで敗けちゃうし……」

 

どこか、心臓がうるさく感じる。スイゴはシェレンから少し距離を置いてそう言った。ユウもまたそんな彼をフォローしてくれた。

 

「………恐らくだが、あれは儀式召喚だと思う」

「ふーん、なるほどねん。それで、カードは?」

「無くした」

「スイゴォ………」

 

シェレンはじとっとした目でこちらを睨んできた。正直、少し怖い。

 

「無くしたっていうか。無くなったんだよ、勝手にッ!」

「………無くなった?それはカードがひとりでに何処かにいったということよっ」

「だって、デッキ探してもないんだよッ!おれはカードが消えるのを見たんだよ。何なら、何処探してもいいぞッ!?」

「………良いの?」

「やっぱり、だめだ」

 

証拠の裏付けなら他の人にやってもらわないと。

 

「………に、しても不思議ですわね。カードが勝手に消えるなど…」

 

ノウンは納得出来なそうな顔をしている。

 

「確かに変だけど、デュエル中は正常に機能してたからね。………何か、新しい召喚法かな」

 

ユウは考えるように手を首にあてる。他の人達もだいたい同じような態度だ………『榊 遊矢』を除いては。

 

「俺は信じるよ。俺もデュエルの最中にペンデュラム召喚を見つけたから」

「そうなのか?」

 

それは、初耳の事実だ。

 

「確かに、遊矢もそうだったし。『デュエルモンスターズ』にはそんな不思議な力が有るのかも」

 

柚子もまた彼の意見に頷く。

 

「まあ、深く考えても無いものは無いわよ。遊勝塾に返って、じっくり、と考えましょう」

「ああ、そうだな」

 

深く考えてもしょうがないよな。スイゴは心の中でそう思い、これ以上考えることを止めた。。

 

「スイゴ!今度は『舞網チャンピオンシップ本選』で戦おう!」

「わかった。今度は本選でなッ!」

 

おれは、ユウとそう握手を交わした。

 

「ワタクシもシェレン、あなたには本選でリベンジしますわっ!」

「ええ、いいわよ。その時は噛まないようにねん♪」

「絶ッ対に、噛みませんからっ!!」

 

ノウンは一方的に宣言し、シェレンもそれにのっかる。彼女達もまたもう良いライバルなのかもしれない。

 

「「「「またな」」」」

 

この言葉を最後に、おれ達四人はユウやノウンと別れた。この件について彼らには『赤馬』以外には口止めしてもらうことも頼んだ。シェレン曰く、『どうせ、どこかで見てるでしょう』だと。

 

 

 

 

 

 

「『無名の剣聖』か」

 

赤馬はそう言い、一人熟考に耽る。

 

 

《『ギユウ スイゴ』………彼があのような召喚法を生み出すとはな》

 

 

通常の儀式召喚と似通っており、全く、異質なその召喚法。赤馬自身、まだ判断するには未知過ぎたものと言えるだろう。

 

『本当に彼らが儀式次元の人間』なのか、赤馬自身はそれを見るまでは完全には信じていなかった。しかし、彼らは我々の知らぬ私さえも知らない召喚法を出したと有れば、信じざるを得ない。それほどの存在なのだ『多次元』の人間という存在は。

 

「『黒咲』、君は彼についてはどう思う」

 

赤馬は後ろにいる一人の男にそう尋ねる。眉間にしわをよせ、険しい顔はそのまま彼自身の人生を表している様だった。

 

「知らん」

 

男は一言だけ、そう言って部屋を出た。

 

 

 

しかし、赤馬はそのことを気にも留めない。ただ静かにモニターを眺めるばかり。ふと、彼は一つの可能性を口に出してみる。

 

「………『榊 遊矢』との会合が変化をもたらしたか?」

 

しかし、それもまた明確な根拠のない憶測に過ぎない。ペンデュラム召喚に続き調査することが増えたのにも関わらず、彼の口は細い三日月を描いていた。

 

 

 

 

 

 

先日、二人はギリギリの勝負を勝ち終えた。そんなおれ達は今はなぜかとあるデパートに来ていた。

 

「うん、これなんか良いじゃない。貴方はどう思う、スイゴ」

「………なあ」

「何かしら」

「おれ達、明後日はまたデュエルあるだろ」

「そうねー。あっ、これもいいわっ!」

「なら、少しは練習する気にならないのか」

 

二人は今、人形に囲まれたファンシーな見た目の店の中にいた。正直、彼は今すぐにでも『遊勝塾』に行きたい。スイゴ自身はこんな所で人形なんか見てるよりもずっとその方が良かった。しかし、彼が本当に居づらい理由は何よりも周りにカップルしかいないことだ。

 

 

《すっごい、見てて胸焼けしそうな気分になるんだが。……なんか、『アイツ』のこと思い出してムカムカしてきたッ》

 

 

スイゴは決心する。今度、同期生のその人物に会ったら出会い頭に殴ることを。

 

「ダメよ。これも昨日の罰の一つ」

「頼むから、もっと肉体的に辛い感じにしてくれ」

 

精神的にガリガリ削られるような感じがして、こっちは辛いんだよ。

 

「『肉体的』て…………やだー。スイゴ、意味深ね!」

「お前の頭の中こそ随分と深刻な状況だな」

 

いったい、どうしてコイツがこうなったのか。本当に分からない。昔からこんな性格だった気がするし、母親の厳しい教育の反動だろうか?

 

「スイゴは昨日の新しい召喚法を忘れられないみたいね」

「……………別に」

「隠さなくたって、分かるわよ。私も気になったのは事実よ?」

 

でも、とシェレンは言葉を切った。

 

「『私』とどっちが大事かしら?」

 

真剣な目で尋ねる。スイゴは、彼女のその質問に含まれる真意に気づいた。

 

「………シェレン。お前はそんな質問するなよ」

「でも…スイゴは私と居て嫌にならないの」

 

きっと、昨日のことを僅かに引きずっているのだろう。そんな不安な所を見せる彼女にスイゴはらしくないと思った。シェレンらしくない。彼は、そんな姿を見ていたくない。

 

「大丈夫だ。普段のお前に比べたら、今日なんて平和その物だろ」

「えー、スイゴ冷たくない?」

「いつも通りだろ。ほら、今日は一日中買いものに付き合ってやるから」

「あらら、急にどうしたのよん。…うん、わかった。じゃあ、頼もうかしら」

「後でカードショップも見に行くけどな」

「ええ、分かってるわよ。それじゃあ張り切って買いものするわよ--ー♪」

 

シェレンはおれを連れ立って次々と店を回る。元の世界に帰った時のお土産も買うとか言ってたから、最後には両手で抱えきれない量になっていた。しかたないから、気合いで何とか持ち帰った……。

 

 

 

結局、その日は夜遅くまで二人で店を回り歩いた。遊勝塾についた頃にはおれ達は正座させられて、修造塾長と洋子さんに一時間もの間ありがたい説教を頂くことになった。




なんか、スマゲに飽きてきた。執筆に集中しよう
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