私の対戦相手は、黒い髪をした短髪の青年だった。身長は高く、顔は一応整っている、と言っていい。しかし、何と言えばいいのかしら。
「キミが、この僕の相手かい?光栄に思いなよ」
髪を手で一々払う動作やどこかスカしている姿は、物凄くキザらしい。
「まあ、僕はLDSの中でもトップクラスで有名なんだけどね。聞いたことない?エクシーズ召喚クラスの『赤瞳 シュウジ』って」
「無いわねん」
「ふふん、まあ良いけどね。僕は寛大だから、許して上げるよ」
本当に上から目線で人のことを見てるわね。相当プライド高そうよ、コレ。
私が好き勝手思っている間も、コイツは頼んでもいないことをペラペラ喋る。
「やっぱりね、デュエルはただ勝てば言い訳じゃないんだ。もっとこう……、エレガントでないと!」
この前のノウンが可愛く見えるレベルの痛々しさだ。正直、目に入れるのも鬱陶しいわ。
《私の相手は、どうしてこう偉そうな人が多いのかしら……》
もし仮に、性格のみを基準に対戦相手を選んでいるとすれば…………恨むわよ、赤馬。
「さて、もっと話したいこともあるが。残りは、デュエルでお見せしよう」
「ええ、たのしみにしてるわ」
まあ、『棒読み』だけどねん。
《《アクションフィールドセット、『薔薇の花園』》
見渡す限りの薔薇が床一面を覆った。辺りに建物らしいモノはなく、この平面的な地面のみで戦うことを意味していた。
『行くよ?戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が』
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る」
『見よ!これぞデュエルの最強進化形、アクション!』
『『デュエル』』
シュウジvsシェレン
LP4000/LP4000
「さあ、行こうか。僕のターン、手札から『伝説の黒石』を召喚。さらに、このカードをリリースしてデッキから『真紅眼の黒炎竜』を特殊召喚する」
漆黒のその身体に、地獄の炎を纏わせたドラゴンがフィールドに飛来した。
「……『レッドアイズ』ですって?」
「そう、この僕に相応しい!まさに、華麗なカードだ」
あら、耳ざといわね。……見た目は正反対じゃないかしら?
「さらに、僕は手札から魔法カード『黒炎弾』を発動。キミに2400のダメージだ」
「うっ」
シェレン
LP1600
……油断したわ。まさか、いきなりこんな攻撃を決めてくるなんて。腐っても、LDSね。
「そして、僕はカードを一枚セットだ。さあ、存分に来るがいいよ」
顔に手を当て決めポーズまでしているコイツを見てると、もはや怒る気力も沸かない。ただ、めんどくさいモノを見るような視線を向けるだけだ。
「私のターンよ、ドロー」
しかし、攻撃力2400のモンスターとは中々に倒しずらい。ここは、一端、守りを固めましょうか?
《でもねーー、何かイヤな予感するのよ》
私、特有の勘だが。あのモンスターは、ただ攻撃力が高いだけじゃない気がするわ。
「仕方ない、……私は効果で呉国の騎馬兵を特殊召喚するわ」
馬を駆る王に忠実な兵士がフィールドに出現し、シェレンを馬の後部へと乗せる。
「さらに、手札から『破砕の黒弓 呉』を発動。そして、呉国の騎馬兵に装備よ」
破砕の黒弓 呉
装備魔法
このカードは『呉』と名のつく戦士族モンスターにのみ、装備可能。このカードを装備したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。このカードを装備したモンスターは、相手フィールド上にモンスターカードが一体も存在しない場合攻撃できない。 このカードを装備したモンスターが破壊された時、相手ライフに500ポイントのダメージを与える。
「攻撃力3200だって!?」
「バトルよ、呉国の騎馬兵で黒炎竜を全力で破壊しなさいっ!」
巨大な黒塗りの弓を引き絞り、兵はその矢で敵を射抜いた。
「うわ~~」
シュウジ
LP3200
ひどく情けない声をあげつつ、吹き飛ばされる姿は滑稽でしかない。
「こういう、『攻撃一辺倒』ってダメよねー」
彼女自身、デュエルでは意外と暴走しやすい。戦いに愉しみを求める余り、味方のことを省みずに攻撃を仕掛けるのもしばしばだ。所謂『戦闘狂』だ。故に、ただ手持ちのカードを使うだけでなく、フィールド上のカードも使う『アクションデュエル』は頭を冷やすのに良いブレーキになってくれる。
《まあ、お祭り好きなのもあるんだけどね》
「私は、カードを二枚伏せてターンエンドよ……と!」
シェレンは悠々とフィールドを動き回りながらも、ちゃっかり、アクションカードはゲットした。
「……くくく、よくもやったね。こうなったら、僕も本気のデュエルを見せよう」
「鼻血ついてるわよ」
シュウジは慌てて自分の顔を腕で拭き取る。そして、シェレンの方に爽やかな笑顔を見せながら、こう言った。
「やだな。僕は、鼻血何かしないよ?」
どの面がこんなことを言うのか。シェレンは、ただひたすらに彼に侮蔑の視線をを送り続ける。
「さてと、僕のターンだ!ドロー」
彼は手札を見て、『フフフ』と笑みをこぼす。というか、私から見るとニヤケてるようにしか見えないわ。
「僕は手札から、伝説の黒石を召喚。そして、このカードをリリースして『真紅眼の黒竜』を召喚だ」
紅き瞳を持つ、漆黒の翼がフィールドに出現する。伝説のデュエリストも愛用したレアカードが、シュウジの僕として彼に項垂れる。
「そして、僕はフィールドから、罠カード『真紅眼の凱旋』を発動。僕のフィールドに『レッドアイズ』が存在することにより、墓地の真紅眼の黒炎竜を再び召喚するよ」
「それでも、攻撃力はこっちが上よ」
真紅眼の黒竜も真紅眼の黒炎竜も、共に攻撃力2400のモンスターだ。シェレンのフィールドの呉国の騎馬兵には、遠く及ばない。
「ふふーん、これだから素人は。仕方ない、僕が手本を見せて上げるよ」
「何一つ、言葉が通じないわね」
一人で勝手に納得し、相手に自らの考えが解らないと見下すその姿勢。このデュエリストを相手に、シェレンはかつて無いほどにストレスを感じていた。
「さあ、見たまえ!僕は、フィールド上の、レベル7『真紅眼の黒竜』とレベル7『真紅眼の黒炎竜』で『オーバーレイ』!」
『黒き体躯はメタリックで美しく、紅き瞳はまるでルビーのよう!さあ、僕の元に来たまえよ!』
『エクシーズ召喚』
「これぞ、僕に相応しきカード。ランク7 『真紅眼の鋼炎竜』!!」
シュウジのフィールドに、出現したモンスターカード。その身体はメタリックな鎧で包まれており、全身から溢れんばかりの熱気を放っている。その存在感はまさに、真紅眼の進化形だと言える。
「そして、僕は手札から『黒鋼竜』をこのモンスターに装備。これで、真紅眼の鋼炎竜の攻撃力は3400!」
「うっわ、マズい」
「僕は『真紅眼の鋼炎竜』で、キミのモンスターに攻撃だ」
漆黒の鋼炎竜から放たれた灼熱のブレスが、シェレンの呉国の騎馬兵を焼き尽くす。シェレン自身は、モンスターによって避難させられていたので無事だった。
シェレン
LP1400
「ハッハッハッ、どうだい?これが僕の力だっ!!」
再度、彼による決めポーズを見せつけられる。
「破砕の黒弓の効果で、500ポイントのダメージよ」
「ハッハッハッハッ…………グヘェッ!?」
破壊される寸前の騎馬兵が、その弓の効力により、最期の力を発揮させた。モンスターからの一撃を受けて、シュウジはまたも盛大に吹き飛ばされる。
シュウジ
LP2700
しかし、彼のモンスターはただでは転ばない。鋼炎竜の口が開き、シェレンに炎のブレスを吐きかける。
「キャアアァッ!」
シェレン
LP900
「成程、私が効果を発動する度にダメージを食らうわけね。なら、私は永続罠『呉の監視態勢』を発動よ」
呉の監視態勢
永続罠
相手フィールド上のモンスターが効果を発動した時に発動出来る。このカードを効果発動した相手モンスターに装備し、装備されたモンスターの効果を無効にする。このカードを発動した時、自分はデッキからカードを一枚ドローできる。
「……私はドローするわ」
シェレン
LP400
「……さて、私のターンね」
フィールドにうなだれ、何も反応をし返さないシュウジを放って置きつつシェレンはカードを引く。
自身のモンスターを破壊された上、態度がデカい彼に非常にイライラしていたのもあった為だ。
「私は手札から、呉国の遠弓兵を召喚。更に、手札から『呉国の特殊兵』を守備表示で特殊召喚」
呉国の特殊兵
レベル2
戦士族/効果
自分フィールド上に『呉』と名のつくモンスターが存在するとき、このカードは一ターンに一度、手札から特殊召喚できる。このカードは、一ターンに一度、自分フィールド上の『呉』と名のつくモンスター一体を選択し、その表示形式を変更出来る。
AT500/DF500
そしてバトルよ、呉国の遠弓兵でダイレクトアタック」
「バカかい!僕のフィールドには、真紅眼の鋼炎竜がある。キミの攻撃など届かないっ!」
いつの間にか起き上がっていたシュウジが、彼女に指摘する。
「はいはい、効果よ。効果」
しかし、彼女とモンスターは華麗にスルーしシュウジにダメージを与えた。
「グヘェェッ!!」
シュウジ
LP1800
「そして、呉国の特殊兵の効果で呉国の遠弓兵を守備表示にする。カードを一枚伏せターンエンドよ」
シェレンは、アクションカードを使うのをもて余していた。