遊戯王 ARC-Vs 儀式次元追加版   作:崖っぷち

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不審者と言いたい


第二章
開催と再会


その町は熱狂で溢れていた。町の名は『舞網市』と言い、今の時期に限りその人口は普段の倍以上に膨れ上がっていた。『子供』、『老人』、『家族連れ』等様々な人間が道路を行き交い、かつ人々は皆一斉に同じ方向へと向かう。

 

全国的にも有名なデュエルの祭典『舞網チャンピオンシップ』が行われる会場へ足を運ぶためだ。

 

 

 

 

「ついに、この日が来たっ!」

 

目の前の男『修造』は少年少女達を見て、強くそう宣言した。

 

「我が遊勝塾の塾生………そして、スイゴくんやシェレンちゃんも含めた全員が『舞網チャンピオンシップ』に出場できるとは…」

 

男の目には薄く涙が滲んでおり、彼にとってその事実が何れだけ重要で喜ばしいことなのかを表しているようだった。

 

「俺は……、俺は…………、お前たちを…」

 

感ここに極まれりと言わんばかりに身体中を奮わせている。爆発寸前の感情を抑え込もうにも抑え込めない状態。故に……。

 

「『誇りに思うぞ~~~ッ』」

 

身体ごと彼らに飛び込み、その喜びを……『熱血』を皆で共有すべく全身全霊でぶつかっていった。

 

 

 

…………が。

 

 

 

子供達、遊矢や柚子、素良、おれとシェレンはその塾長のハグを全員紙一重でかわす。

 

「って、…………うわぁっ!?」

 

受け止める者はいない。それ故、当然と男はおれ達ではなく地面と抱き合うハメになった。

 

 

《あっ、自転車に引かれた……》

 

 

目の前の塾長の行動に対して、おれ達の反応はただただ冷たかったと言える。

 

「………なぜ…、避ける……?」

「お父さん……テンション高過ぎ……」

 

全くその通りで。おれは心の中で彼に謝りつつ、娘の『柚子』のその意見にも深く同意した。

 

「まだ会場にも行ってないのに…」

 

赤い髪の女の子も同様の反応だ。

 

「ごめんなさい…………でも、どうせハグするならわたしは好きな人とやりたいのよん♪」

 

女性達による容赦の無い感想が次々と彼を襲った。正直、あれはダメージがあると思う、メンタル的に。

 

「……では、改めて説明しておくぞ!」

 

自身の行動により生まれてしまったこの気まずい空気を何とか払拭したいのか、修造は咳き込みつつ説明を開始する。

 

内容はおれ達がこれから参加する『舞網チャンピオンシップ』に関することで、参加者による対戦枠の違いのことだった。おれとシェレンは『ユースクラス』、遊矢と柚子と素良は『ジュニアユースクラス』、タツヤとフトシとアユは『ジュニアクラス』の部門で戦う。

 

またこの大会は舞網市だけではなく、全国の資格を満たしたデュエリスト達が一斉に集うらしい。そのため世間的注目度も高く、彼ら『遊勝塾』にとってはこれ以上無い宣伝なるということだ。だが、同時にこの場にいる全員がそれぞれの『クラス』でのライバルとなりうる。

 

おれ達はその説明を理解しつつ、再び燃え上がる塾長を他所に大会行きのバスへと乗り込むことにした。そして、バスは出発する。

 

各々が自身の大会における意気込みを語る中……。

 

 

 

「あっ!」

 

「ど、どうした?柚子!」

 

「お父さんっ、遊矢が…………」

 

 

 

「「「「「「「「いなーーいっ」」」」」」」」

 

 

 

「なにーーーっ!?」

 

 

 

バスの後部座席には、確かに『榊 遊矢』のみがいなかった。この塾はいつもトラブルと全く無縁とはいかないらしい。

 

 

 

「「…………なるほど」」

 

スイゴとシェレンは目の前のモニターで中継された内容を見て、同時に感想をもらした。彼らは今『舞網チャンピオンシップ』の開かれる会場内にいた。

 

「凄いわねー、この大会ってやっぱり全国規模らしいわよ」

「改めてこういう風に説明されると、本当にそう実感するな」

 

二人は口々にそう言い合い、アナウンサーの言った内容に興奮を示す。映像には『赤馬 零児』も写っていた気がするがおれ達は無視した。

 

「ちょっと!?二人ともモニターなんか見てないで遊矢を捜してよっ」

 

柚子が怒ったような声で話しかけてくる。彼女も幼馴染みが大会直前にいなくなったから、心配しているのだろう。

 

「でもまあ……、遊矢なら大丈夫だろ」

「わたしもそんな気がするわ」

 

彼女の不安も分かるがこの会場には何万人、何十万人、何百万人と人間がいる。この中から遊矢のみを見つけ出すのは不可能に近い。おれ達が下手に捜すよりも集合場所の決まっているこの場所で待つほうが、出合える確率は遥かに高い。

 

「まあまあ、多分遊矢くんは大丈夫だと思うわよ」

「どうしてっ、そんなこと言えるんですかっ!」

「カ・ン」

「…………」

 

目の前の柚子が無言でハリセンを取り出した。シェレンの物言いには耐性が出来ていた筈だが、緊迫した状態に置いてはそうでは無いらしい。

 

 

《やめろッ、シェレン!その言葉は今は逆効果だ》

 

 

仕方なく彼女らの仲裁に入り、おれ達は集合場所の位置取りを素良に頼んで捜すことにした。……しかし、1時間ちかく費やしても遊矢が見つかることはない。シェレンが柚子を宥めつつ、元の場所に戻るしか方法はなかった。

 

「私のダーリンが来てないって本当なの?」

 

帰ってきたおれ達が聞いたのは、体形的に未熟な子供の域を出ないと思う少女の声だった。彼女の名前は『方中 ミエル』と言い、求愛対象の遊矢の姿を見に来たようだった。

 

「あ~!もしかしたら私のダーリンったらこっそりミエルのパパとママに挨拶に行ってたりして!いや~ん、サプライズ!」

 

ミエルによる脳内妄想だだ漏れの空想話を聴かされる中、怒った柚子が謎のオーラを放出していたり、シェレンは面白そうに二人を煽っていたりと大変な事態になっていた。

 

「ダーリン、ダーリン、どこにいるの?ダーリンったら、ダーリン!」

 

ミエルが持ち前の特技の占いを披露する中、子供達は柚子をおれはシェレンを止めることにひたすら忙しかった。

 

「見えた!」

 

少女が何かに気づいたように視線をとある方向に向ける。彼女の行動に理解が出来ないおれ達に痺れをきらしたのか、今度は指を使って意図を示した。

 

「だから~」

 

「「あっちのほう」」

 

少女の行動に重ねるようにシェレンも同じ方向を指差す。ミエルも含め全員が戸惑うなか、おれは底知れないその思考の深さに恐れを感じた。

 

 

 

結局、遊矢は一人で勝手に帰ってきた。一人用事を済ませて来たアイツは意気揚々としている。それから後は、遊矢が知らない奴に絡まれたりしていたが親友の『権現坂 昇』がその男を止めることで事態は一時的に終息した。権現坂もまたギリギリで勝率6割に到達したようで、遊矢もそれを喜んでいるようだった。

 

 

 

そして、おれ達は大会開催を告げるスタジアムへと入って行った。

 

中には数えきれないほどの数の『デュエルスクール』とそれに所属するデュエリスト達がいる。スイゴとシェレンは赤馬とのデュエル以降、『遊勝塾』の所属で登録されていた。あの男の真意は分からないが、修造塾長は自身の塾の名前が売れる機会が増えたので大喜びだ。いいのかそれで。

 

「へ~、本当にたくさん人がいるわね」

 

シェレンは感心したように周りを見て呟く。お祭り好きの彼女にとって、この状況はまさに打ってつけと言える。

 

「確かに………あッ、『ユウ』や『リンドウ』もいるぞ!」

「『ノウン』もね。……………げっ、あの時の黒男もいるじゃない」

 

ああ、名前は確か……『涙瞳 シュウジ』だっけ?

 

「……でも、やっぱり一番気になるのは」

「……ええ」

 

おれ達は一人のコートの男の方を見る。赤馬よりも短いマフラーを首に巻き、周囲に鋭い視線を向ける少年。学園で『オベリスク・フォース』と敵対していた時にもいたその人物が何故この大会に出場しているのか。

 

「…………彼、『ジュニアユース』だったのね」

「…………おれもその事は驚きだ」

 

見た目的におれ達と同年代だと思っていた。『LDS所属』から出て来たのを見ると、やはりあの男もまた赤馬の手駒の一人なのかもしれない。

 

「わたし達をLDS所属にしなかったのもこのためかもね」

「かもな……」 

 

そうこう無駄話をしている内に開催宣言が始まり、おれ達『遊勝塾』は皆一斉に気を引き締める。実況役の『ニコ・スマイリー』により遊矢が選手宣言をする係に指命されたのを横目にただ黙って見守る。遊矢は始めは動揺していたが……。

 

『《レディース、エンド、ジェントルメン!先ほどは大変失礼いたしました》』

 

彼による演説が行われ、遊矢の身の上も語られた。おれ達はアイツのことを何も知らされてなかったから、その内容にはとても驚いた。会場で因縁を吹っ掛けた男はこのことに難癖をつけたのだと気づいた。

 

 

《そうか…………『遊矢』も父親の汚名で苦しんだんだな…》

 

 

でも、彼の話は自分の父親を誇りに思っているようだった。その事は、本当に良いことだと思う。そう考えていると、ふと横のシェレンがこちらを見ていた様な気がした。

 

かくして彼の演説は終了し、会場にいるほとんど全員が拍手を贈ることで大会は始まった。大会には事前に受付でもらった『登録カード』を用いて対戦相手をランダムで決めるらしい。

 

「俺の相手は…………『沢渡』!?」

「私の相手は…………『真澄』!?」

 

対戦相手に皆が驚く中でおれとシェレンもまた自分の対戦相手を見ていた。

 

「おれは無所属の『斬桐 ソウジ 』が相手か」

「わたしはLDS所属の『竹貴 ムツミ』ね」

 

そして、素良の対戦相手は…………おれ達が気にしていた例の少年。男の名前の部分には『黒咲 隼』と表示されていた。

 

 

 

「しびれさせてやるぜ~!」

 

塾の皆が見守る中で、遊勝塾による今大会の初勝利はフトシが決めた。実力を見るに意外とこの塾は周りの塾よりも優秀なのかも知れない。そして、次の遊勝塾が対戦するのはアユだった。

 

対戦相手は少年で、『赤馬 零羅』。その名前からあの男を連想させる。おそらくは弟だろうとおれ達は考えた。

 

『《僕は手札より『CC隻眼のパスト・アイ』を召喚》』

 

一時はアユが優勢に進めていたようだったが、『赤馬 零児』が見学しに訪れたことで零羅が力を発揮し始めた。零羅の自身の魔法カードとモンスターを素材に使っての融合には度肝をぬかされた。そして……。

 

『《僕は『CCC 武融化身ウォーター・ソード』で『アクア・アクトレス アロワナ』を攻撃!》』

 

アユのモンスターが打ち砕かれて勝負は決着した。少女が弱かった訳ではない。だが、おれはあの『零羅』という少年が周りよりも跳び抜けている様に見えた。

 

「……とんでもないわね、あの子」

 

横にいるシェレンは少年を警戒するような目で見ている。恐らく、彼女にはそれだけ強力な相手に見えたのだろう。

 

アユは遊矢達が慰めているみたいだから、大丈夫そうだ。おれとシェレンも後で一言くらい励ましおこう。そう思い、次の対戦カードのことに頭を向ける。……確かこの後は遊矢の幼馴染みの試合だったな。




赤羽と黒咲はどっちの方が強いのか。
ハッキリしてなくて扱うのが難しい。
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