「拙者は…、拙者は……っ、亡きもの達の為にも敗けるわけには行かないのだっ!」
「ふふふっ、いいわよ。……来なさいっ!」
そのほうが『ワクワク』するもの………………!
………………所で、少し芝居がかりすぎじゃ無いかしら。もしかして痛い子?
「無念はここに、必ずや果たそう!拙者の……ドローーー!」
ムツミは渾身の思いを込め、その手でカードを引きあてる。
「…!応えてくれたかっ、手札から『真六武衆-カゲキ』を召喚!その効果により、手札から『真六武衆-エニシ』を特殊召喚」
「さらにっ、エニシのモンスター効果。墓地の『六武衆の師範』と『真六武衆-シエン』を除害することでキサマのモンスター一体を手札に戻す!」
「ウソっ!?」
緑色の甲冑で身を守る武士が不思議な剣技を操り、シェレンのモンスターを瞬く間に手札に送り返す。これでシェレンの場は空になった。
「さらに、伏せていた『諸刃の活人剣術』を発動。この効果で墓地より『六武衆の影武者』と『真六武衆-キザン』を特殊召喚」
「っ……一気に二体も!」
「まだまだ、拙者は場にモンスターが二体以上いることで『大将軍 紫炎』を手札から特殊召喚」
シエンよりも赤い甲冑で全身をおおった大将軍こと攻撃力2500のモンスターがフィールドに登場した。
「まだぞっ!拙者はレベル3の『真六武衆-カゲキ』に、レベル2の『六武衆の影武者』を『チュウニング』でござるぅっ!」
『未来にその名を連ねる武士よ、赤き甲冑にその身を包み。いざっ、出陣ざ!』
『シンクロ召喚』
「出でよ、レベル5『真六武衆-シエン』」
「また、そのモンスターね」
「ふふん、今度のシエンはひと味違うわっ!」
そう言うと、今まで動かなかったムツミが急に動き出した。砂浜を走りながら、やがて地面に落ちているカードに気がつく。
「あったぞっ、拙者はアクションマジック『千力』発動。これでシエンの攻撃力を1000ポイントアップ!」
千力
このターン、自分のモンスター一体の攻撃力を1000ポイントアップする。
「あらら、どういう吹き回しー?」
「アクションカードを使うキサマを見ていたら、何だか拙者も使いたくなったわ!これぞ『シエン・カイ』ぞ」
「良いじゃない!」
うんよくわからないわ。でも、アクションカードを使うのは良い傾向ね。
「バトルっ、シエン・カイでお主にダイレクトアタックッ!」
ムツミのモンスターの一撃が降り下ろされ、わたしは身体に浮遊感を感じた。
「っ!…………キャアァァァァッ!」
シェレン
LP200
「トドメぞっ、拙者はキザンでダイレクトアタックゥッ!」
黒き甲冑に身を包む男-『キザン』は目の前の相手を見据え腰にある鞘へと手をかける。
一瞬で刀を抜きさり女へと近づく。
彼の『一閃』がその身に襲いかかった……。
シェレン
LP200
「……なぜじゃっ、なぜにキサマのライフは0になっておらん!?」
ムツミは驚愕した声で、わたしに叫びかけてくる。
《あー危なかったわ…》
腕に力を入れ、ふらつく足で無理矢理立つ。そうして砂浜にみっともなく倒れている自身の身体を起こした。
「…わたしは墓地の『呉国の抑止兵』の効果を発動したのよ」
呉国の抑止兵
レベル4
戦士族/ 効果
このカードが自分の墓地に存在し戦闘ダメージが発生した時に発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚して、このターンのバトルフェイズを終了する。特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れた時、ゲームから除外される。
AT1000/DF2000
彼女の前には盾を持った一体のモンスターが控えていた。
「……………だが。いつの間に…」
【 「さらに、わたしは手札を一枚捨てて『水面下の人質取引』を発動」】
「あの時に墓地に送っていたのはアクションカードじゃなかったのかっ!」
「確かにそれも出来たけど、……いつもそうする必要はないわよ?」
ムツミの疑問に対して、わたしは不敵に答える。
「してやられたわっ!……だがっ、まだ状況はこっちに有利」
「あらん、諸刃の活人剣術の効果を忘れてるわ。それによりキザンは破壊されて2100のダメージよ」
「……ハッハッハ、甘いわっ!拙者は手札より『六武衆の理』を発動、フィールドの『真六武衆-キザン』をリリースして墓地の『六武衆-カゲキ』を攻撃表示で特殊召喚」
これにより、キザンは場に存在せず。自壊によるダメージも食らわない。
「ハーハッハッハ、拙者はこれでターンエンド!」
「なーるほど、上手くかわされたわね」
「言っておくが勝ち目はないぞ!『シエン・カイ』の効果は相手の魔法・罠カードを一ターンに一度無効に出来る」
「そして『紫炎』はお主が魔法・罠カードが発動するのを一ターンに一度に制限する。まさにっ、これぞ拙者の完璧なコンボ!」
おまけにムツミのフィールドにはモンスターが四体。
《……いよいよ絶望的ね》
思わず顔をしかめてしまう。彼女のフィールドには『エニシ』もある。相手ターンにも使えるとしたら、墓地のモンスターを除外してわたしの召喚した強力なモンスターも手札に戻されてしまう。
《あれ、想像以上にヤバくない?》
観客席を見ると、スイゴが真剣な様子でこちらを見ている。他の皆もそうだ。『柚子ちゃん』や『遊矢くん』、『子供たち』、『権現坂くん』や『素良くん』も苦々しい表情でこちらを見ている。
この状況を前に勝つ手段などないのかもしれない。
「……けど、悔しいじゃない」
何もせずに諦めることが。ここで敗けることが。スイゴと戦えないことが。……なによりもまだ彼らを楽しませられてない事実が。
「無理かどうかなんて、わたしらしく無いわね」
思ったことを口に出してみる。よく考えていなかったからこそ、シンプルな答えが出た。
「スイゴのマネしてみようかしら♪どうせ、色々考えてもキリがないもの」
自身のデッキに手をかける。デュエルの答えはこれで決めるしかない。
「『さあ、ムツミも観客の皆もその目に焼きつけなさい!これが『ソン シェレン』の一斉一代をかけたドローよっ!!』」
会場中に聞こえんばかりの声をあげる。それは自身ではなく周囲を鼓舞し奮え上がらせる為に。それこそがわたしだけの『アクションデュエル』。
「いくわよっ!ドロォォォォーーーァ!!」
誰しもが目を離すことは出来ない。それほどまでに彼女は強く光輝いていたから。自らを揺るがすような存在を無視することは何者にも許されない。
…………それゆえその姿はまるで『王』のようだった。
「ふふふっ、それじゃ行こうかしら」
シェレンは自身の引いたカードを見て、そう呟く。その手に握られるは……。
「わたしは、手札から『呉国の暗躍兵』を召喚」
呉国の暗躍兵
レベル1
戦士族/効果
このカードが召喚に成功した時に発動出来る。相手フィールド上のモンスター一体を裏側守備表示に出来る。
AT100/DF100
「この効果で、わたしは『大将軍-紫炎』を選択するわ!」
「うぬぅ……だがそんなモンスターでは…」
しかし、彼女の笑みは崩れない。
「まだまだ終わりじゃないわ。伏せカード 『月の書』を発動…」
「させぬわぁっ!!シエンの効果発動っ、その発動は無効でござる!」
「それを待っていたわよ♪」
「………何と!?」
「手札から、速効魔法『連環の火計工作』発動」
連環の火計工作
速効魔法
自分の魔法・罠カードの効果発動を無効にされた時に発動できる。このターン、このカードは相手の効果で無効にされたその自分のカードと同じ効果を得る。また、自分フィールド上に『呉』と名のつくモンスターが一体以上いる時、その内の一体を選択し相手フィールド上に特殊召喚出来る。
「これによってこのターン、 連環の火計工作は月の書の効果を得るわ。……そして、わたしは効果によりエニシを選択よ!」
「しまったっ、これではエニシの効果を使えん」
「さらに、効果でわたしのフィールドの呉国の暗躍兵を貴女のフィールドに攻撃表示で特殊召喚」
「何を!?」
自分のフィールドに召喚されたモンスターを見て、ムツミは戸惑うような表情を浮かべる。
「自分フィールド上に『呉』と名のつくモンスターが存在することにより、手札から呉国の特殊兵を特殊召喚するわ。これでわたしの場のモンスターが二体!」
「…………まさか」
「そのまさかよ。わたしは自分フィールド上の『呉国の特殊兵』と『呉国の抑止兵』を生け贄に捧げ、手札から『呉国の戦女将軍』を特殊召喚っ!」
軽装に身を包んだ美しき兵達の長が馬に跨がり、再びフィールドという戦場に参上した。シェレンもまた馬に乗りモンスターと共に大地を駆ける。
「呉国の戦女将軍の攻撃力は2700。よって、この攻撃によって呉国の暗躍兵を攻撃すれば……」
「拙者のライフは0に……」
ムツミは周囲を見渡し、とある一点の方向へと走る。しかし、そうする間もシェレンと彼女の距離はどんどんと縮んでゆく。
《まだよ、まだ驚かせるわ》
「バトルよ、呉国の戦女将軍で呉国の暗躍兵を攻撃っ!」
女将軍がその手に握る剣を振り上げる。そして、目前のモンスターへと向けて振り下ろす…………ことは出来なかった。
「まだだ、拙者は敗けんっ!アクションマジック『奇跡』発動」
ムツミ
LP1150
不可思議な力がモンスターを護り、その威力を半減させる。中途半端なうち下ろしに終わった剣が遥か空中へと弾き飛ばされた。
……シェレンはただ、ムツミの横を通りすぎる。
「ええ、貴女ならきっとそうすると分かってたわ♪」
「!?」
彼女の目は死んでいない。
「だからこそっ、わたしは全力で倒すわ!アクションマジック『波紋』発動」
宙を舞っていた剣は……再びモンスターの手に握られる。己の得物を手にした女将軍は再度、敵へと攻撃を仕掛けた。
「いつの間にっ!」
「これはアクションデュエルなんだから、最後はこう決まらないと!バトルよ、呉国の戦女将軍で再び攻撃っ」
神速の斬り下ろしが今度こそ、デュエリストへと引導を渡した。
「………………無念っ!」
ムツミ
LP0
会場の大観衆が驚く中、シェレンはただ一人フィールドでその存在をより一層強く輝かせていた。