今、おれはデュエルフィールドの第一会場にいる。観客席の大観衆が見守る中で彼は一人静かに相手見据えた。
「アンタが俺の相手?」
目の前の男はそう尋ねてきた。
「ああ」
スイゴもそれに答える。声からは気迫が感じられ、彼がどれだけその試合に意気込んでいるかを表しているようだった。しかし、それに引き換え……。
「ふーん、俺は『斬桐 ソウジ』」
「おれは『遊勝塾』の『ギユウ スイゴ』だ」
目の前の男『ソウジ』は気だるげな声でそう名乗った。白い髪を持ち、眠たげな目をしている少年。フィールドに立つその姿はクールというよりも斜に構えている印象を与えた。
「…………」
しかし、スイゴはそんな男よりも後ろにいるモノの方が気になった。ソウジの後ろに見える観客席に座る女子達の姿。彼らの手には『LOVE』と書かれた大型のプラカードが握れている。
「どうした?」
ソウジは何も知らないかのように聞いてくる。あるいは、本当に彼自身は気づいていないのかもしれない。
「……別に、それよりもデュエルだ」
スイゴはその光景を敢えて視界に入れないようにする。これ以上そのことに意識をとられていると、デュエル所ではない気がしたからだ。
《…………いるんだなぁ、どの世界にもこういう奴》
どこか嫉妬のような呆れのような思いを感じつつ、彼はデュエルディスクをセットする。ソウジもまたデュエルディスクを構える。
《《アクションフィールドオン、『浮遊する大草原』》》
足元の大地がみな細長い草へと変わっていく。奇妙なことに、草が集まったかのようなそのフィールドは空中へ浮かんでいた。二人のデュエリストも当然そこに立っている。それはどこか非現実的さを感じさせる光景だった。
『行くよ、戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が』
『モンスターと共に地を蹴りッ!』
『宙を舞い』
『『フィールド内を駆け巡る』』
『見よッ!』
『『これぞデュエルの最強進化形、アクション!!』』
『『デュエル』』
ソウジvsスイゴ
LP4000/LP4000
先行はソウジがとった。彼とスイゴは同時にフィールド内を走り始める。
「俺の先行、レベル7の『疾走の暗黒騎士ガイア』はリリースなしで召喚することが出来る」
青い鎧で全身を覆ったモンスターが馬に跨がりフィールドに出現する。
「この効果で召喚したこのカードの攻撃力は1900になる」
ソウジは淀みない仕草でカードを操りながらも足元に落ちていたアクションカードを拾う。
「俺はこれでターンエンド」
しかし、デュエルする彼はどこか遠くに視線を向けてしまっている。
「次はおれのターンだ、ドローッ!」
おれは目の前の対戦相手がどこか気に入らなかった。デュエルに集中していないのかスイゴのことなど眼中に無さそうな視線が勘に障る。
《……もしかして、嘗められてないか》
表情にこそ出さないが、おれは内心すごくイライラしていた。
「なら、気づかせるまでだ」
足を動かし、目を自分の周囲に向ける。すると、草の上に落ちているアクションカードを見つけた。
「よっしッ、おれは手札からアクションカードを一枚墓地に送り『知られざる生誕』を発動」
「手札の『無名の医師』と『無名の賢者』を生け贄に捧げ、『無名の剣将』の儀式償還を執り行うッ」
『その真実は何者にも気づかれず、その英断は何者も知ることはない!しかし、その勇気のみは男の仲間を奮い立たす!!未来を掴めっ!!!』
『儀式召喚』
「仲間と共に、戦場を駆けろ『無名の剣将』」
『《おおーっと、スイゴ選手。いきなり儀式召喚を決めてきたぁー!!》』
デュエルを進行するナレーターの声が聞こえ、スイゴの召喚に観客達がわいた。
「まだまだ、おれは手札から『無銘の剣 剛』を発動ッ!このカードを無名の剣将に装備する」
強力な剣の力を得て、彼のモンスターはその攻撃力を3000に上げる。
「バトルだ、無名の剣将でガイアを攻撃ッ!」
スイゴのモンスターの一撃を受け、草原をかけていた青き戦士は破壊された。
「……くっ!」
ソウジ
LP2900
おれは相手の伏せカードを見る。そこにはまだ使われずに残ったままだ。ソウジの手にはアクションカードも握られている。
「……おれは、カードを一枚伏せてターンエンドだ」
フィールドを足で駆け回りつつ再びアクションカードを探す。相手の出方がわからない以上、打てる手は全て打つようにしたい……。
「…じゃあ俺のターンか、ドロー」
「俺は手札から、『超戦士の儀式』を発動」
「儀式魔法、使えたのかッ!?」
ソウジの言った内容にスイゴは驚愕を隠せない。彼がこの世界で戦うことのは初めての為だ。
「手札のレベル4『宵闇の騎士』とレベル4『開闢の騎士』をリリース、これで『超戦士カオス・ソルジャー』の儀式償還を執り行える」
『白き従者と黒き従者、光と闇は惹かれあう!やがて二つの魂は混じり合い、一人の超戦士を生み出さん!!時を越え覚醒せよ!!!』
『儀式召喚』
「混沌の力、今ここに示せ『超戦士カオス・ソルジャー』」
その戦士の肌は蒼く、その身にはガイアと同じく全身を包むほどの鎧を纏っている。しかし、その鎧には白と黒の模様が全体に浮き出ている。一対の剣と盾を持つ超戦士はここに誕生した。
「『カオス・ソルジャー』……」
スイゴはその言葉に聞き覚えがある。かつて伝説のデュエリストもその名前を持つモンスターを使っていた。彼自身、儀式召喚の練習の時に使っていたカードなので思い入れもある。
「まさか、こんな遠い場所でまた見られるなんてなッ!」
「?……俺は『開闢の騎士』の効果発動」
ソウジがモンスターの効果を使ったその瞬間、無名の剣将はフィールドからその姿を消した。
「ッ!?……何が起きたッ!」
「開闢の騎士をリリースして召喚されたこのモンスターは、一ターンに一度相手モンスターをゲームから除外できる」
「……しまったッ」
これでスイゴのフィールドにはモンスターが居なくなってしまった。カオス・ソルジャーの攻撃力は3000。当たれば一撃でライフの大半を削られる
「まだ、『宵闇の騎士』をリリースしたことによる効果発動。この効果で、相手の手札のカードをランダムに一枚次の相手のエンドフェイズまでゲームから除外する」
「おい待てッ」
これにより、スイゴの手札にあった『無名の傭兵長』がゲームから除外される。
「バトルだ、超戦士カオス・ソルジャーでダイレクトアタック!」
「させるかッ、伏せカード『見返りなき緊急要請』発動。この効果で、デッキから『無名の商人』を守備表示で特殊召喚」
混沌の騎士の放った一撃が、スイゴのモンスターを切り裂いた。
「おれは無名の商人の効果で一枚ドローする」
「だが、超戦士カオス・ソルジャーは戦闘で相手モンスター破壊した時にその攻撃力分のダメージを与える!」
「げッ!?」
破壊されたモンスターのダメージの余波が彼に襲いかかった。
スイゴ
LP3000
「まだだ、『宵闇の騎士』の効果で戦闘でモンスターを破壊した超戦士カオス・ソルジャーはもう一度攻撃できる」
「……ウソだろ。流石にもう通さないアクションマジック『草結』発動」
草結
相手フィールド上のモンスター一体を選択して守備表示にする。この効果で守備表示になったモンスターは、ターンエンド時に攻撃表示に戻る。
「あっ、…………アクションマジック『草解』発動」
草解
『草結』の発動を無効にする。
「何ーッ!?」
ソウジのモンスターの足に絡み付こうとしていた草が、力を失ったようにスルスルとほどけていく。つまり、攻撃は静止せず騎士の剣が容赦なくスイゴに一閃を加え……。
「させるかーーッ!墓地の『無名の賢者』の効果発動」
無名の賢者
レベル4
戦士族/効果
このカードがリリースして召喚されたモンスターは攻撃力が1000ポイントアップする。一ターンに一度、墓地のこのカードをゲームから除外することで自分のライフを
500ポイント回復する。
AT500/DF2000
スイゴ
LP500
「ちぇっ、残ったか。おれはこれで、ターンエンド」
そう言って、ソウジは再び走り出した。
敵モンスターによる攻撃をなんとか持ちこたえたスイゴだが、状況は依然として良くない。彼はアクションカードを探しつつ、作成を考える。
「まさか、無名の剣将を除外されるとはな……」
スイゴの目的である『儀式召喚の先』は、以前は無名の剣将によって成功した。そのモンスターが除外されたとなると、彼がやりたかった事は出来ない。
「チッ、仕方ないか。ドローー!」
《取りあえず、あのモンスターを破壊しないと……》
「おれは手札から『無名の剣客』を召喚。さらに、この効果でお前のフィールドのカオス・ソルジャーを裏守備表示にする」
《これで、あのカードと組み合わせればカオス・ソルジャーを破壊できる……!》
剣客が効果を使おうと相手モンスターに迫る。それを見た、ソウジとモンスターは逃走し出す。
「それは困る……あっ」
彼は足元に偶々落ちているアクションカードを見つけた。
「アクションマジック『幸運』発動」
幸運
自分フィールド上のモンスター一体は、このターン相手のカード効果を受けない。
剣客は見えないなにかに操られるように転ばされてしまう。よって、カオス・ソルジャーには何ともない。
「くそ、なら俺は手札から『帰路なき戦闘』発動。これにより、無名の剣客の攻撃力を2000アップさせる」
「攻撃力3300だって!?……不味い」
「今度は逃がさないッ!バトル、無名の剣客でカオス・ソルジャーを攻撃ッ」
慌ててソウジはまたモンスターを連れて逃げる。しかし、一度獲物を逃した剣客の足運びは速くその距離を瞬く間に縮めた。そして、武士による剣の一撃が彼のモンスターを捉え……。
「あっ、有った。アクションマジック『回避』」
またもや落ちているアクションカードを見つけた彼は、ギリギリで発動させる。
「またかよッ、…………よしッ!アクションカードだッ!!」
おれは草の上にある『それ』を手に取り躊躇わずに発動させる。
「アクションマジック『奇跡』!」
不可思議な力がモンスターを包み、敵の攻撃からその身を守る…………。
「…………って、ふざけんなッ」
思わずそう口に出してしまう。スイゴが余計なことをしている間に、モンスターは攻撃に失敗したのかまたもその場で転倒してしまった。
「くそ、なんか納得いかねえ。……おれはカードを一枚伏せてターンエンドだ」
この瞬間、無名の剣客の攻撃力は効果で0に下がり除外されていたカードは手札に戻った。
スイゴは自身の限界を越えるべく舞網チャンピオンシップ一回戦に挑むが…………こんな調子でいったい大丈夫だろうか。
またメンテ。イライラするな。
ムシャクシャしたからあげました。