遊戯王 ARC-Vs 儀式次元追加版   作:崖っぷち

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デュエルしろよ


揺るがぬ意思

本選の一回戦を終えて、スイゴは観客席へと向かった。そこでは、彼の試合を観ていた彼女が待っているため。

 

「良い試合だったわ」

 

シェレンは開口一番にそう言った。

 

「ありがとう。まあ、ギリギリだったけどな」

 

「スイゴのデュエルはいつもそうだから気にしちゃだめよ」

 

「おい、どういう意味だ」

 

互いに軽口を言い合う。これで、二人とも一回戦を通過出来たのだから多少は浮かれているのだ。

 

「……で、さっきのモンスターをもう一度見せてくれないかしら♪」

 

「それはいいが…………後にしないか?」

 

おれはデュエルディスクで時間を確かめる。今、スタジアムの第二会場では素良の試合が行われている。一応『遊勝塾』の一員として観戦する義務はある気がした。

 

 

 

しかし、この提案に彼女はあまり乗り気ではない。

 

「えー、行くの」

 

「どうしたんだ、お前らしくない」

 

スイゴはそんな様子に頭を傾げる。いつもなら真っ先に食いついてる筈のシェレンがデュエルを観たがらないのが不思議な為だ。

 

「ん~……ちょーとイヤな予感がするのよ」

 

「まさか…………」

 

何時もの陽気な姿とは違い、今の彼女はどこか思い詰めたような顔をしている。

 

「…………」

 

「シェレン?」

 

何か考え事をしているのかスイゴの言葉も耳には入ってない。

 

 

 

……数分経ち、漸く彼女の表情は何かを決心したようなものに変わった。

 

「…………取り合えず歩きながら説明するから」

 

おれは会場へ移動しつつ、シェレンの話を聞く事にした。

 

「わたしね。二人のことが気になっていたのよ」

 

「二人…………素良と『黒咲』のことかッ!」

 

黒いコートを着こなす謎の少年。おれ達の世界にいた時は『オベリスク・フォース』と対立していた。

 

「そうよ。そして、その対戦相手は素良くん」

 

「…ねえ、スイゴ。これは偶然なのかしら?」

 

「……どういう意味だよ」

 

彼女の言う意味が解らない。少なくとも、あの二人に因縁関係がある噂など遊矢達からは聞かなかった。

 

「もしも仮にこの大会が赤馬の言っていた『ランサーズ』の選別の為の……」

 

「おいッ、待てよ!それは飛躍しすぎだ。一般の大会でそんな大切な事を決めて良い筈がないだろッ!?」

 

声が震える。シェレンの言う内容はただの一般人を『対アカデミア』の兵士にするというものだ。はっきり言って、マトモな考えじゃないし暴論だ。

 

「……そうよね。きっと、素良くんも…」

 

「素良?…アイツがどうしたのか」

 

「!見えたわよ。まだ試合は続いているようね」

 

おれ達はいつの間にか観客席へと着いていた。シェレンに促され、素良と黒咲の戦うデュエルフィールドを見る…………が。

 

「何だよ……これは」

 

元は綺麗にビルが建ち並んでいたとおぼしき町の外見は酷い惨状だった。建物は倒れ、地面は所々砕けており、燃え盛る炎と舞い上がる粉塵がフィールド全体を覆っている。その光景はまるで……。

 

「『戦場』みたいじゃないか……」

 

「観客達も大人しいわね……」

 

「いったい、ここで何が…」

 

スイゴがそこまで言いかけた所で、二人の視線はとあるモノへと向いた。

 

 

『《どうした?少しは…………者の気持ちがわかったか》』

 

 

フィールド上にいる鳥の様な姿をしたモンスター。その全身は紅く金属的な身体を持っていた。そして、それを従えている一人の男の姿。

 

「……『狩られる』?」

 

 

『《キサマたちはいつも…………ら俺の仲間たち……い続けたっ!》』

 

 

「『襲う』……何の事かしら」

 

その男『黒咲』は、素良と向かい合うように相対しながら何かを語っている。

 

 

『《だがっ………打ち…れ…………ではないっ!》』

 

 

話がよく聞こえないおれ達は観客を掻き分けて前の席へと移動する。だが、そうしている間にも会話は進んだ。

 

 

『《遊びさぁ。本気で……………いじゃん》』

 

 

『《だってぇ!キミたちは僕らにとっての『ハンティングゲーム』の獲物なんだからァッ!!》』

 

 

「「っ!」」

 

素良が言ったコトに一瞬思考が停止する。いや、言葉だけではなくその振る舞いも表情でさえおれ達は目を離せない。その姿はまるで『彼ら』の様で……。

 

「まさかっ………………だがッ!!」

 

「そう言う……ことなのっ!!」

 

スイゴとシェレンは彼の様にナニカを感じとった。しかし、未だに確信とはいかない。二人が考えに耽る間も試合はさらに進んだ。

 

 

『《『融合召喚ッ!!』現れ出でよ…………『デス・トーイ・マッド・キマイラ』ァッ!!》』

 

 

素良がグロテスクな人形の集合体のような於曾ましいモンスターを召喚した。ソイツは、まるで楽しむかのように黒咲のモンスターを破壊する。

 

「ふざけるなッ」

 

思わず口から出た。これでは本当に『アイツ』らソックリではないか。それに対する苛立ちが、怒りで腕を震えさせる。

 

 

『《俺たちレジスタンスは……》』

 

 

突如、顔を狂喜に歪める素良に男が言葉を発する。

 

 

『《……ともに戦ってきた仲間を敵に連れさられることも考えながら》』

 

 

黒咲は語った。自らの仲間を必ず奪い返すことを……!その瞳には、邪魔する者は何人であろうと排除するという『鉄の意思』が宿っていた。

 

 

『《『ランクアップエクシーズ・チェンジ』》』

 

 

『《現れろぉぉォ、ランク6『RR レヴォリューション・ファルコン』!!!》』

 

 

黒咲は未知なる召喚法『ランク・アップ・マジック』を駆使して、彼の僕をより強力なモンスターへと変化させる。黒い鎧で身を覆ったその姿はどこか黒咲に似ている気もした。

 

 

『《革命の火に焼かれて、散れっ!!》』

 

 

反旗の意思を宿した『ソレ』は、爆発で町諸とも全てを凪ぎ払っていく。ソレが発する声は、おれ達には酷く悲しく聴こえた。素良は最後に何かをしようとしていたが、結局、デュエルに敗北した。

 

「……終わったわね」

 

「…………ああ」

 

二人は同時に頷く。それは、彼らが覚悟を決めた証。目前では素良が黒咲に向かって何かを言ってるようだがおれ達にはどうでもいい事だ。

 

「素良ァァァーーっ!!」

 

遊矢の悲鳴が聞こえた。きっと、傷ついたアイツのことを心配をしているのだろう。遊勝塾の皆も同じ様な反応だ。

 

 

…………だが

 

 

「アイツはおれ達の『敵』だ」

 

「ええ、そうね」

 

スイゴとシェレンの意思は揺らがない。彼ら二人にとって『紫雲院 素良』という存在に最早それ以外の感情を持ち合わせることはない。

 

「確か、LDS直轄の医務室に運ばれるらしいわ」

 

「なら見張ってるとするか。逃げないように」

 

そう言い残して、彼らはその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

覚悟を決めた二人の背中は、奇しくもデュエルで素良を倒した『黒咲 隼』のそれによく似ていた。




ゲス顔の頃が懐かしい……
というか、いきなり良いヤツになって大丈夫なんですか。
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