先の見えない展開に彼女はワクワクしていた。
「やっぱりこれよね!これがアクションデュエルよっ!!」
自分だけでなく相手もまたカードを取り利用する。この実体のある架空の大地を踏みしめて歩きまわれることが最大の魅力。
「ただ突っ立てるのなんて、勿体無いもの」
血が熱くなる。この状況が自分自身を燃え上がらせているのがわかった。
「わたしのターン、ドロォーーッ!」
足を動かした。相手よりもさらに先を行けるように。
「手札から『犠牲の置き土産』発動!この効果で墓地の『呉』と名のつくモンスターをデッキに戻し……」
彼女の墓地にあるモンスターカードは『呉国の騎馬兵』、『呉国の暗躍兵』、『呉国の憲兵』、『呉国の追撃兵』、『無名の橋越馬』。
「カードを二枚ドロォーーーッ!!」
《来た!》
引いたカードを見て確信を得る。この状況を打破する手を。
「わたしは手札から『高等儀式術』を発動。この効果でデッキの『呉国の見習い兵士』と『呉国の防人兵』を生け贄に捧げる」
「これにより、 手札の『恋姫-呉王・孫策』の儀式償還を執り行う!」
『民は思いを託し、兵は忠誠を捧げよ!そして国を統べし王は全ての願いを背負い、戦え!!敵を打ち砕けっ!!!』
『儀式召喚』
「天下万民こそ、我望み『恋姫-呉王・孫策』」
過去、桃色の髪を持ちその美貌は人々を魅了したと言われる。しかし、それ以上に剣を扱うその力こそが皆を震え上がらせた。ここにシェレンの切り札が出現する。
「攻撃力2800……!だが、それでも僕のモンスターは…」
「さらに、手札から『丘陵の疲弊陽動』発動」
丘陵の疲弊陽動
速攻魔法
自分フィールド上の『呉』と名のつく戦士族モンスター一体を選択する。このターン、選択されたモンスターは戦闘した相手モンスターをその効果に関わらず破壊する。
「何だとっ!?」
「まだよ!」
手を動かそうとも走るのは止めない。目的のモノへの距離はもうすぐそこだ。
「…掴んだ!アクションマジック『ウッドソード』」
ウッドソード
このターン、自分フィールド上のモンスター一体の攻撃力は300ポイントアップする。
森の加護を受けた剣が彼女のモンスターにより強力な力を与える。
「バトル!呉王・孫策でナチュル・ドラゴンフライを攻撃!」
トンボ型のモンスターとの攻撃力の差は700。よって、二回攻撃を食らえば彼のライフはゼロになるが…………。
「させるかぁぁァァっ!」
ジュウもまたずっと走り続けていた。デュエルに敗けたくない想いがそうさせる。彼女に感化された心が彼のデュエリストとしての実力をさらに高めていた。
「アクションマジックッ!『ワイルドパワー』発動」
「よって!攻撃力は2900にアップだっ!!」
王の一閃により彼のモンスターは切りさかれる。
ジュウ
LP3300
「さらにっ、ダイレクトアタックっ!!」
「ぐうぁぁぁっ!」
今度は、叫び声を上げて吹き飛ばされる。
ジュウ
LP200
「…………まだだっ」
その闘志はまだ消えてはいない。希望は残されている。
「ターンエンドしろっ!」
「いいわっ!わたしはこれでターンエンドよ」
この瞬間、シェレンのモンスターの攻撃力は元に戻った。
ジュウの場にカードはない。なけなしの二枚の手札があるだけだ。
「絶対に勝ってやるっ!」
しかし、その欲求だけは今までの中で一番強くなっていると感じた。彼はこのデュエルにだけは敗けたくないと。
「僕のターンっ!ドロォォーーッ!!」
ジュウは手札を見て、相手に目を向ける。
「アンタの言うとおりだ。確かに今までのデュエルは自分勝手だったかもしれない……」
「…けどっ、アンタは全力で戦ってくれる。なら、僕もそれに全力で応えてやるよっ!」
「来なさい!わたしはアクションマジック『ワイルドパワー』を発動」
この効果でシェレンのモンスターの攻撃力が3300に上がった。
「僕は手札から『ナチュル・マロン』を召喚!そして、効果でデッキから『ナチュル・レディバグ』を墓地に送る」
栗に似た姿を持つ精霊がフィールドに出現した。
「さらに、墓地の『ナチュル・クリフ』と『ナチュル・ドラゴンフライ』をデッキに戻すことでカードを一枚ドロー」
「フィールドの『ナチュル・マロン』の効果が発動したことにより手札から『ナチュル・ハイドランジー』を特殊召喚する」
色鮮やかな花をその身に咲かす可憐なるモンスターも生誕した。
「それで終わりかしら?」
「まだあるさっ!僕は魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動。手札から『ナチュル・パイナポー』を墓地に送り……」
「デッキから、『ナチュル・チェリー』を特殊召喚する」
これによりフィールドには三体のモンスターが揃う。そして、それが意味するのは……。
「僕はレベル5の『ナチュル・ハイドランジー』とレベル3の『ナチュル・マロン』にレベル1の『ナチュル・チェリー』を『チューニング』ッ!!」
『森の血を継ぐ獣よ大地を響かせ、今覚醒しろ勇猛なるパワー!咆哮せよ!』
『シンクロ召喚』
「大自然の力、レベル9『ナチュル・ガオドレイク』」
タテガミは植物で出来ており、身体は獅子のそのもの。森の頂点に立つ両者の長が今、フィールドに君臨した。
「まだだ、僕は墓地の『ナチュル・レディバグ』を特殊召喚する」
「そしてっ!このカードをリリースして『ナチュル・ガオドレイク』の攻撃力は4000にアップする」
「ウソッ!」
仲間の力を借りることで体躯がより大きさを増したようだ。
「バトルだっ!ナチュル・ガオドレイクで呉王・孫策を攻撃ッ!!」
大自然の王者がシェレンへと迫る。しかし、彼女も準備して無かった訳ではない。
「アクションマジック『マッドエリア』。これで攻撃力は出来ないわっ!」
「…………それはどうかなっ!!」
ジュウは足を動かす。そして、木と木の間に挟まっているアクションカードを掴んだ。
「そう来ると思っていた!アクションマジック『薮蛇』を発動」
そう、先程も用いたカードが再び彼を救う。
「これによって効果を無効にする。切り裂けえっ!!」
野獣の爪が敵を襲いモンスターを打ち砕いた。ここで二体の王による戦いは森の王者が人の王者を下して決着する。
シェレン
LP150
「僕はこれでっ、ターンエンドだッ!!」
この瞬間、ナチュル・ガオドレイクの攻撃力は元の数値に戻った。
「さあ、オマエも持てる全てをぶつけてこいっ!それを真っ向から受けて立ってやる!!」
ジュウがシェレンに向かってそう宣言する。
「…………ふふ」
自分の場にはモンスターも伏せカードもない。手札もゼロだ。
「……困っちゃうわね~」
相手の場には攻撃力3000のモンスターがいる。
「このドローが全て……ね」
デッキにはこの状況を打破するカード見つからない。次は耐えられたとしてもそれは所詮一時しのぎだろう。
「……けど、ワクワクしてしょうがない!わたしのターン……」
例え不利だとしても諦めることはない。何故なら、彼女にとってその選択肢はあり得ない。それがどれだけ詰まらないコトかを知っているから……!
「ドロォォォーーーー!……諦めることなんて、何時でも出来るわ!!」
その手だけが運命を切り開く。渾身のドローにより引いたカードは……。
「手札から『死者蘇生』を発動っ!」
「わたしは、墓地の『恋姫-呉王・孫策』を攻撃表示で特殊召喚よ!」
「なに!守備表示じゃないのかっ!?」
動揺したような声が耳に入った。確かに自分でも理解不能な行動だ。けど、意味はある。
「最後の一瞬まで『ソン シェレン』は戦い続ける!何人が相手であろうと敗走の上倒されるのは許されないっ!!」
これこそが私自身のプライド。いかに下らないと思われようとも。
「バカかオマエはっ!?」
呆れたように怒鳴り声を上げるジュウ。
「無謀は承知…………でも」
《もし仮に、死に場所があるならソレは戦場。わたしはデュエルの中で死にたい!》
それこそが戦いを一番の楽しみにする彼女の存在意義。だからこそ…………。
ーーーを掴みし王の降臨
--儀式魔法
このカードは、自分フィールド上のモンスターのレベルの合計が10以上になるように生け贄を捧げ、発動される。--------から、『真恋姫-覇王・孫策』一体を--儀式召喚する。このカードの生け贄素材の一体は、必ず『恋姫-呉王・孫策』でなければならない。このカードは、『恋姫-呉王・孫策』が儀式召喚されたターンには、発動できない。
奇跡は必然となりその姿を現すのだ。
「え」
「……ちょ…………何なの!?このカードはっ!」
見知らぬカードがフィールドに出現してわたしは思わず二度見してしまう。
《……確か…スイゴもこんなカードを使っていたわね……》
「…………ま、いっか!自分フィールド上に『恋姫-呉王・孫策』が存在する時、デッキから『無名の橋越馬』を攻撃力を0にして特殊召喚するわ」
道なきデュエルのロードを乗り越える為。再び王の僕がフィールドに出現した。
「そして、わたしはフィールド上の『恋姫-呉王・孫策』と『無名の橋越馬』を生け贄に捧げる!」
「これにより『真恋姫-覇王・孫策』の儀式償還を執り行う!!」
『民の命を背負い、兵の誇りに報いよ!さらば亡き戦士の無念も抱え、王は道を切り開かん!!天をも掴めっ!!!』
『--儀式召喚』
「天下万民の願い、今こそその手に『真恋姫-覇王・孫策』」
桜を思わせる髪の色は変わらない。その美貌はさらに美しさを増した。とある大陸の礎を築きし小国の姫君は今ここに真に女王として覚醒を果たした。
真恋姫-覇王・孫策
レベル10
戦士族/--儀式/ 効果
このモンスターは儀式召喚された場合、このカードのコントロールは召喚された元々の場から別のプレイヤーにコントロールが移る効果を無効に出来る。
このカードはゲーム上、『呉王』と名のつくモンスターカードとしても扱う。
一ターンに一度、フィールドにいるこのカードはカード効果を無効にできる。その効果を無効にした時このターンの間このモンスターの元々の攻撃力は二倍になる。AT3200/DF2600
「バトルよ、覇王・孫策でナチュル・ガオドレイクに攻撃」
黄金の剣を片手にシェレンのモンスターが敵へと迫る。
「ちっ!僕はアクションマジック『回避』を発動」
《かかった!》
「それを待っていたわっ!」
「何だとっ!?」
その足を休みはしない。敵を見逃すことなど有り得ず。己が覇道を阻む者は何人も赦さないと言うかのように地を駆けた。
「このカードは一ターンに一度、自分のターンに発動したカード効果を無効にできる」
「さらにっ、その攻撃力を二倍にするわっ!!」
覇王の威光が全てを怯ませる。彼女のモンスターは自らが認めた敵に容赦しない。
「……攻撃力6400だとっ!?」
「天上天下、唯我独尊なる覇王の一閃!その記憶に永久に留めて置きなさい!!」
雌雄を決する刃は今降り下ろされ……。
ジュウ
LP0
同時にこのデュエルの勝者が決まった。
観客たちは皆彼女に声援と拍手を送っている。限界越えたデュエリストのぶつかりあいによる勝負の決着は誰しもを興奮させた。
『《…怒濤の攻撃により、デュエルを制したのは『ソン シェレン選手』!》』
『《よって、三回戦進出だぁーーーっ!!》』
アナウンサーにより賛辞が綴られる中で目の前の男はわたしを見ている。
「……ちっ、これじゃおれがピエロじゃないか」
ふて腐れたようにそう喋るとジュウは視線をそらした。そのまま入り口へと帰っていく。
「………………ろよ」
『ボソッ』とした声で最後にシェレンへの言葉を残しながら。
「……ふふっ、素直じゃないわね♪」
できるならばもっと直接言って欲しいものだ。けど、あれが彼なりの最大限のエールなのだろう。
「それじゃ、帰りましょうかっ!」
見守ってくれた観客たちに手を振った。そして、スイゴのいる場所へ向かうべくデュエルフィールドを後にする。
《『優勝しろよ』て……そう簡単な話じゃ無いけどね》
敗者の想いも背負いこれからも進んでいく。シェレンはこのことを心に深く刻み込んだ。