スイゴは現在第一会場のデュエルスタジアムで対戦相手が来るのを待っていた。彼の試合は本日最後のデュエルであり、プレッシャーも大いにかかる。多少早く来すぎた性もあるのか観客席にはまだ人が少ない。
《てか、おれが人気無いだけかもな》
最後までは観られなかったがシェレンたちのデュエルは大変盛り上がっていた。
《アイツと同じように……は無理》
彼女は自分が思っていた以上にアクションデュエルに適正があった。スイゴには観客たちを焚き付けてデュエルに望むなど出来っこない。
《……それに今日の相手はそんなことが出来そうにない》
そこまで考えて、スイゴは試合前のユウとの会話を思い出した。
シェレンのデュエルが終わりおれ逹はノウンの試合を観戦しにいった。二人が観客席に着いた時、彼女は苦戦しているように見えた。
『《しっかりしなさいっ、ノウン!わたしと戦うんじゃなかったの!!》』
けど、横でシェレンがデュエルの最中アイツに応援を送った。それが効いたのかは知らないが……。
『《『シンクロ召喚』出でよ、高貴なる僕『氷結界の竜 トリシェーラッ!!』》』
『《うわあァァ~~っ!!》』
レン
LP0
最終的には敵を圧倒して勝利を治めていた。応援を力に変えたというのか。どうやら、存外彼女はメンタルが弱いらしい。
『《どうです?見ましたか!ワタクシの華麗なデュエルをっ!!》』
デュエルフィールドでドヤ顔を披露しつつひたすら高笑いもしていたノウン。それにはおれ逹も思わず苦笑いしてしまう。
「……やっぱり、スイゴも観ていたんだね」
ふと、隣から声をかけられたので振り向くとそこには『桜樹 ユウ』がいた。
「ユウか!久しぶりだな」
とは言っても、二人がデュエルして一ヶ月も経っていない。
「うん!一回戦の様子は観ていたよ」
「おれもお前が勝ったのは聴いている」
互いに初戦を突破したことを喜び会う。試合ではもちろんライバルだがこうして話す分には友人の感覚に近い。
「ユウの次のデュエルは確か明後日じゃないか?」
「やっぱり、ノウンの試合を観戦しに来たのか」
「それも有るんだけどね。……ちょうどよかった」
そう言うと、おれ逹は人目のつかない廊下に移動する。その行動が少し変だとは感じていた。
「スイゴの次の相手……それは梁山泊塾じゃないか?」
「ああ、そうだが。それがどうした」
彼は眉間にシワを寄せている。おれの発言が原因に違いない。
「……去年の俺の決勝の対戦相手。ソイツも梁山泊塾だった」
「確かジュニアユースの時の話だったか」
「そう。彼らは特に乱暴なデュエルを仕掛けてくると有名」
「キミも戦うなら気をつけたほうが良い」
コイツがわざわざ忠告してくれるとはそれほど面倒くさい相手なのだろう。
「彼らは直接的には攻撃しない。ルールにも引っ掛かるからね」
舞網チャンピオンシップの規約の一つにこうある。『デュエリストのデュエル中に対戦相手に対する過剰な妨害行為を禁止する』というモノが。
「だが、アクションカードを取る際はそうじゃない。多少の無茶も許される」
「そう言うことか」
つまり、その塾の生徒たちはアクションデュエルなのを利用してリアルファイトを繰り出してくるということだ。
「つーか、もうそれ半分デュエルじゃないだろ」
「……そうなんだよ。その行動の性でライフが0になる前にリタイアした選手も数多い」
「……ひどいな」
アクションデュエルとは本来身体も動かすことでよりデュエル中のかけ引きを増やす事が目的。勝利を理由に暴力に走る行為は非常識極まりない。
「なら、去年ユウはどう勝ったんだよ」
「…………梁山泊塾相手には一枚もアクションカードを使わなかった」
「それどころか、近くにカードが無いかどうか常に警戒していたよ」
「よく勝てたな……」
「もちろん苦戦はしたよ。だが、俺自身そんなヤツラ相手には敗けたくなかった」
それでも紙一重だったけどね、と彼は言う。
「だから、スイゴもデュエル中はそこら辺に気をつけた方がいい」
「ありがとう。わざわざこのことを言いに?」
「キミとは決勝で戦いたいからね。そう簡単に敗けて欲しくないんだ!」
「ああ、リベンジなら受けてたつ!」
二人はあの時のように握手をする。お互いにまた再戦する約束を交わして。
「じゃあ、俺はこれで。デッキの準備もあるしね」
「また会おうぜ」
「「デュエルフィールドで!!」」
そう言って二人は別れた。
「余計なことも思い出した気がするが…」
今回の相手『炎勝 シズル』は女だが、悪名高い梁山泊塾出身。
「おれも気を引き締めないとな」
観客席にはシェレンや塾長たちもいる。不甲斐ないデュエルは出来ない。そう呟くと目の前の彼女を見た。
「お前が私の相手だな」
問いかけるのは、胴着に似た着物を着る女。自らの腰にかかるほどの長い髪を紐で後ろに縛っている。
「ああ、おれは遊勝塾のギユウ スイゴ」
「……梁山泊塾の炎勝 シズル」
普通に挨拶をし返してくれた。もしかしたら、塾生の中にも穏健な奴はいるのかもしれない。
「よろし……」
「さっさとデュエルをしよう」
スイゴの会話を遮り彼女はデュエルディスクを構える。その態度に先程の自身の感想を即否定した。
《……ユウの言ったことはウソじゃなさそうだな》
どのみちもう始めるつもりだ。おれは腕にデュエルディスクを装着させる。
まず気づくのは目前のたくさんの竹で覆われた場所。次に足場だがまるで岩が浮いているかのように数十個点在しており、それを繋ぐ橋のようにかかった細長い道が特徴的。ここはまさにどこぞの秘境を思わせる。
『戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が』
『モンスターと共にッ!』
『地を蹴り』
『宙を舞いッ!!』
『『フィールド内を駆け巡る』』
『《見よォッ!これぞデュエルの最強進化形っ!!》』
『『《アクショォォォォーーンッ!!!》』』
『『デュエル!』』
スイゴvsシズル
LP4000/LP4000
「先行はおれがもらうッ!」
手札を見て作戦を練る。
《まずは、アクションカードを取らずに様子を見るか》
「おれは手札からモンスターカードを一枚セット」
「さらに、カードを二枚伏せてターンエンドだッ!」
「私のターン、ドロー」
シズルは特に動くわけでもなく自然体で今いる場所に立っていた。
「手札から『炎舞-「天璣」』を発動。この効果で、デッキからレベル四以下の『炎星』モンスター一枚手札に加えることができる」
「私は『暗炎星-ユウシ』を手札に加える」
「さらに、自分フィールドに『炎舞』が存在しモンスターがいない場合このカードを特殊召喚できる。現れろ!『機炎星-ゴヨウテ』」
彼の者はその手にある鎖分銅を用いて戦う名策士。草原の狼の魂を宿した軍師がシズルの場に姿を見せた。
「先程手札に加えた『暗炎星-ユウシ』も召喚する」
人々に「青面獣」と呼ばれた放浪の剣士。大和では山の神と称えられし獣の強さを持つ男も出現する。
「『炎舞』と名のつく永続魔法の共通効果。私の場の獣戦士族モンスターの攻撃力は100ずつアップする」
「そして、『炎舞-「揺光」』を発動。手札の『英炎星-ホークエイ』を墓地に送りお前の場の魔法・罠カード一枚を破壊する」
「何ッ!?」
スイゴの場の二枚の伏せカード内、片方が爆砕した。
「くそッ……!」
「ユウシはフィールドの『炎舞』一枚を墓地に送ることでモンスターを破壊できる」
「これでお前の場にモンスターはいない。バトル、ゴヨウテでダイレクトアタックだ」
スイゴ
LP1900
「ユウシでダイレクトアタックっ!」
その手に持つ剣を抜き去り、モンスターは彼へと向かう。
「今度は通さないッ!おれは伏せカード『見返りなき緊急要請』発動」
「デッキから『無名の医師』を守備表示で特殊召喚する」
「ちっ」
防御力2000の強固な守りが敵の攻撃をはね返す。
シズル
L3700
「…………そちらのカードを破壊するべきだったか。私はカードを一枚伏せてターンエンド」
表情を変えること無く彼女は悠然とそう注げた。