「…ふん、運が良かったな」
「よっしッ!」
相手がモンスターを引けなかった為に、なんとか首の皮一枚つながった。
「私はビシャモンテンでモンスターに攻撃だ」
「やらせるかよッ!!」
フィールドにはまだ使われていないアクショカードも多い。それを見つければ、勝機は十分にある。
「……あった!アクションカード!」
森の奥深い場所の竹にソレが張りついていた。
「取らせんっ!」
音が聞こえると同時に、おれは上へジャンプした。足下には数本竹が突き刺さっているが無視して走る。
「同じ手には……」
もう目と鼻の距離にソレがある。後一歩で手が届く。
「甘いっ!!」
指先が触れる寸前、おれの腕を竹が掠めた。
「痛ッ…………しまったッ!」
巻き起こった風によりアクションカードが吹き飛ぶ。しかも、目指す先は足場のない空中。
「バトルは継続している」
「チッ、わかってるッ!」
今、文句を言う暇はない。ただ全力でその足を動かした。
「よし、アクショ……」
「……ハアッ!」
突如、投げられた竹によってアクションカードが弾き跳ぶ。しかも、今度はあの女の手に納まった。
「私は手札から『魔星剣』をビシャモンテンに装備する」
「そして、このカードは手札に加えた魔法カードを墓地に送ることで装備モンスターの攻撃力を100ポイント上げる」
「なッ!?」
ビシャモンテンの攻撃力が3100に上昇。
「これで、もうすぐ一分」
おれは逃走を止める。スピードが緩んだことで敵の攻撃は追いつき、モンスターが破壊された。
「無名の軍師が破壊されたことにより、デッキから『無名の神子』を手札に加える」
「ビシャモンテンの効果発動」
スイゴ
LP300
シズル
LP3150
「私はこれでターンエンドだ」
「まだだッ、おれのターンッ!」
掛け声と共にデッキからドローする。こうして自分自身を強く鼓舞した。
「モンスターカードを一枚を伏せる」
目は休めずに周囲を組まなく探す。ふと、笹の葉の上にのっているアクションカードを見つ…………。
「とらせんっ!!」
考えようとした瞬間、上体を押し飛ばされる。横から何かがぶつかった為にだ。
《このッ…………ヤロウ》
今度は身体ごとタックルをくらった。どうやら、こちらを邪魔する為には手段を選ばないらしい。
「アクションカードを墓地に送り、攻撃力をアップさせる」
ビシャモンテンの攻撃力が3200に上昇。
「また一分」
「チッ……カードを一枚伏せてターンエンドだッ!!」
再び立ち上がる。例え、相手がどう来てもこの足を休ませる気はない。止まるのはおれ自身が諦めたときだ。
「私のターン、ドロー」
《どうだ…………!?》
「…永続魔法『炎舞-「玉衝」』を発動」
「この効果でお前のセットした魔法・罠カード一枚は発動できなくなる」
「くそッ!」
これにより、おれの場の『意図なき終戦宣言』は使用出来ない。
「どうした、アクションカードは拾わないのか?」
「…探すに決まってんだろッ!!」
聞かせるようにそう怒鳴りつける。最初に比べ、彼女も随分と饒舌になったものだ。
「バトル、ビシャモンテンでお前のモンスターに攻撃」
細い道の先、アクションカードを発見した。
「…うおぉぉーーッ!」
今度こそは取られまい。スイゴは身体ごとソレに跳びかかる。
「ビシャモンテン!道ごと攻撃しろ」
「な…………!?」
並みのことならびくともしないであろう道。それがモンスターの重い一撃により一部崩れ落ちた。足を滑らせ、スイゴの身体は空中へ投げ出される。後はそのまま落ちるのみ……。
「ナメるなァッ!!」
道が崩されたのは一部。おれは片腕を伸ばして残っていた場所をつかむことでなんとかぶら下がった。落ちてゆくアクションカードを見過ごしながら。
シズル
LP3450
スイゴ
LP300
「……どうして、ライフが0になっていない」
僅かに呆然とした様子を見せる。彼女がこの試合で初めて見せた人間らしい反応だ。
「『無名の神子』は効果ダメージを受けたときに手札から特殊召喚でき」
「そして、その効果を無効にする!」
無名の神子
レベル2
魔法使い族/効果
自分が相手のカード効果でダメージを受けた時に発動できる。手札のこのモンスターを自分フィールドに特殊召喚しそのダメージを無効にする。このカードが自分フィールド上表側表示で存在する場合このカードと『無名の巫女』のレベルは2上がる。
AT500/DF500
「私はこれで」
「……まてよ」
途中が崩れ墜ちてしまった道に下から両腕でしがみつく。身体は持ち上げつつ、相手の話を遮って質問する。
「もしも、今おれが下へ落ちていたら……お前はどうするつもりだ」
「どうもしない」
シズルは躊躇無く答えた。
「ケガしたら……とかは?」
「フィールドにもそれくらいの対策あるだろう」
確かにそうかもしれない。開会式の斉に『アクションデュエル中危険な事故が起きないよう対策は施されている』、と説明はされた。
「……でも、絶対じゃない」
アカデミアのアイツが負傷したように万が一の可能性は十分に起こりうる。
「最後に、お前が『アクションデュエル』に求めるものは……何だ」
「勝つこと。私はこれで、ターンエンド」
見下ろしていたおれから視線を外す。そして、シズルは来た道を引き返して行った。
《そうかよ…………》
腕を使って自分の身体をいっきに道の上に登らせる。その心中には暗雲とした気持ちが立ち込めていた。
「おれのターンッ…… ドロォォォーーッ!!」
持てる全ての気持ちを込めた気迫のドロー。おれは引いたカードを見る。
「……手札から『無名の巫女』を召喚」
無名の巫女
レベル2
魔法使い族/ 効果
自分が相手のモンスターにより戦闘ダメージを受けた時に発動できる。手札のこのモンスターを自分フィールドに特殊召喚しそのダメージを半分にする。このカードは一ターンに一度、自分のメインフェイズにこのカードと自分フィールドのモンスターをリリースしてその合計のレベル以下の『無名』と名のつく儀式モンスター一体を手札から儀式召喚出来る。
AT500/ DF500
「……おれはフィールドの無名の巫女の効果発動。無名の神子の効果でレベル4になった『無名の巫女』と『無名の神子』を生け贄に捧げ、『無名の剣将』の儀式償還を執り行う」
『その真実は何者にも気づかれず、その英断は何者も知ることはない。しかし、その勇気のみは男の仲間を奮い立たす。未来を掴め』
『儀式召喚』
「仲間と共に、戦場を駆けろ『無名の剣将』」
スイゴは守備表示でそのモンスターを召喚した。
「これでターンエンドだ」
「私のターン、ドロー」
「……一つだけ言う」
被せるように話しかけた
「……トドメならこのターンにさせ」
これは彼女への宣戦布告。
「世迷い言を」
「ビシャモンテンで無名の剣将に攻撃」
一言で切り捨てて、女の僕が敵へ襲いかかる。
「二度と這い出得ぬ『闇』の底へと落ちるがいい…………っ!!」
「…………ああ、そうかよ」
デュエルディスクに手をかける。
「無名の使者の効果発動」
《闇の底……か》
あの日、妹を失ったこと。
あの時、シェレンを泣かせたこと。
あの瞬間、目の前でユートとユーゴを止められなかったこと。
その全てに後悔をした。
「…無名の剣将を生け贄にバトルフェイズを終了させる」
「そしてこのカードを特殊召喚」
「ちっ、しつこい」
しかし、相手の自身は揺らがない。彼女は自らの戦況が絶対的優位だと思っていた。
「次のターンで終わらせてやる」
対するスイゴの場には下級モンスターが一体、手札もない。おれが不利に見えるのは至極当然の話。
「………………知っているさ」
「何のことだ」
「一人だけツラいってのは……思い上がりだろ」
あの女の瞳に暗い影を見た。それは泥のように粘着質な何か…。
「……オマエなんかにっ!」
「分からないな。何も」
相手が言うことを待つ気はない。きっと、コイツには何十回言葉を重ねても無駄だと思っていた。
「…私はこれでターンエンド」