OF THE XILLIA (仮)   作:koopa

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リーゼマクシア編
1話:「イル・ファン研究所」


「・・・・」

 意識を集中し、体内の霊力野(ゲート)を少しだけ解放させる。

 手をかざし、先ほど行った問診、触診の結果判明した患部へとじっくりと治療術をかけていく。

 それまで赤く晴れ上がっていたそれは、瞬く間に健康的な肌の色へと戻り、やがて完全に跡もなくなった。

「はい、終わりましたよ」

 こうなれば、もう問題もあるまい。私はかざしていた片手を退かし、カルテに結果を記すべく椅子に腰掛ける。

 患者が身支度を整える頃を見計らって、それまで用紙に書き込んでいた手を止め、患者の方へと向き直った。

「怪我を負ってから早めに来られたのが幸いしましたね。跡もなく、完全に治療することができましたよ」

 私の言葉に、患者は「おお」と嬉しげに顔を綻ばせる。

「ですが・・・いくら精霊術とはいえ、万能ではありません。今日のあなたがそう感じたように、ね。跡も残らず、動かせるからといって無理をなさっては痛みを再発させる恐れもありますから。くれぐれも、今日は安静に過ごすよう心がけてください」

「ええ、そうします。ありがとう。いや、流石の腕だ」

「お大事に」

 診察室の扉から出て行く患者の後ろ姿を見送り、私は一息つく。

 立ち上がり、付近で控えていた女医に視線を向ける。

「今日の診察は、これで最後だ。後は、別の者にやらせろとハウス教授が仰っていた」

「では、ジュード先生がいらっしゃるので?」

「そういうことになる」

 診察室奥にあるカーテンの仕切り、その裏に向かう。

「これから、ハウス教授とお出かけなさるのですよね? お食事ですか?」

「ま、概ねその通りだ」

 ハンガーに掛けておいた私服に着替えた私は、カーテンの向こう側から聞こえてきた言葉に、生返事で答える。

 そもそも、この一件に関しては教授本人からあまり他人には話さないようにと言われている。

 勝手に勘違いされることは迷惑極まりない事柄であるが、自分から嘘を考えるよりも楽だ。よって、この女医の推理は利用させてもらうことにする。

「では、行ってくる。彼が来るまで無理をさせるが、」

「いいえ、お構いなく。私だって、これでも伊達に女医をやっていませんよ?」

「ああ、そうだったな。任せたよ、プラン」

 女医――プランにそう告げた後、私は診察室から退室した。

 私が先ほどまで患者を看ていた場所である5号診察室は、医学院の名教授であるハウス教授その人が担当する日ということで、特別患者の数が多い。

 私は彼の手伝いのようなことをやらせてもらっているのだが、寄りにもよって、午後から今さっきにかけての患者を全て代わりに診る羽目になろうとは思いもしなかった。

 まあ、これも私の我侭の条件として呑んだ事柄でもあるので、私がとやかく言う資格もないか。

 ともかく、と私はロビーを見渡す。そして、目的の人物を発見した。

 長年の馴染みの男性の後ろ姿に、私は迷わず近づき声をかけた。

「教授」

「? ああ、君か」

 かけた声に気がついたのか、振り向いた男性――ハウス教授は、私の姿を視認すると途端に朗らかな笑みを見せる。

「お待たせしました。・・・おや、お話の途中でしたか?」

 見れば、研究生の衣服を着用した少年が、傍らに立っている。って、

「なんだ、ジュード少年。君だったか」

「なんだとはないでしょう、エイダさん・・・あと、少年ってやめてくださいってば」

「気に病むな、少年。ハゲるぞ」

「あのですね・・・」

「こらこら。アスカ君、そのへんにしておいてあげなさい。それにもう時間がないんだ、置いていってしまうよ?」

「むぅ」

 気がつけば、既にハウス教授は出口の扉前まで歩いており、私は急いで後を追うことになってしまった。

 中央広場を抜け、学術研究地区へと向かう。

 道中、私は今回の行き先《イル・ファン研究所》のことについて質問してみることにした。

「質問なのですが・・・」

「なにかね?」

 気軽に応える声音。なにやら若干のテンションの上がり様を確認できるな。

「やはり、研究所で行う極秘の仕事については、私にも教えてくださることはできませんか?」

「うん、なにせオルダ宮直々の仕事だからね。他言は禁じられているんだ」

「ですが、」

「わかっているさ。私から、君のように優秀な助手ならば同行に問題はないだろうと申し出てみるよ。仕事の内容については、それが受け入れられてからだね」

「ありがとうございます」

「いいさ」

 話しているうちに、研究所の目の前までやってきた。

 早速教授は衛兵の前まで行き、先ほど交わしてくれた約束を果たそうとしてくれた。

 しばらくの後、教授は申し訳なさそうな表情をこちらに向けながらやって来る。その顔で、大体は想像できた。やはり、というべきか。

「すまない・・・やはり、私のみの入場しか許されなかった。どうする、先に戻っておくかい?」

「いいえ、そうやって行動してくださるだけでも・・・。取り敢えずは戻ります。ついでに、教授が戻ってきた時のために飲み物でも用意しておきましょう。良いパレンジ酒が手に入ったのですよ。ご自宅でどうぞ。きっと仕事の疲れも吹き飛ぶはずです」

「そうかい? ありがとう。気が利くね」

 その後、教授は研究所内部へと入っていった。

 ひとり残された私は、早々に立ち去らずに、道の手すりに背をあずけて空を見上げる。

 いつまでも暗いままの空の闇色は、私の意識を思考の海へと落とすのにそう時間はかからなかった。

(今日は、妙な点が幾つかあった)

 第一に、霊力野がうまく機能しない人間が多く続出していたこと。

 あまり慣れていない一般人がそうなることならば、単に不調ということで納得できていたかもしれない。しかし、ベテランの職人や兵士達までもが揃いも揃って、だ。それも一人や二人ではなく、何人もが一斉に。これはおかしい。

 第二に、ハウス教授への急な呼び出し。話しぶりからして、教授には極秘のものと伝えられている。

 まさかのアポ無しという話であった。本人が推薦する助手すら通さぬ徹底ぶりもあった。

第三に、研究所周辺に衛兵まで配置して徹底的に監視するほどの、異常とも言える警戒度。

これは、何か機密にしなければならないことを、研究所内部で行っていると考えるべきか?

(・・・やはり情報が足らん。確証もなにもあったものではないが、どうする? 内緒で潜入してみるか?)

 思い立ったならば、実行するのが吉。私は日頃から常備している愛用のステッキを、持ってきた革トランクとは別に用意していた麻袋から取り出した。

 バジリスクの頭部を模した飾りがついているそれは、およそ日常的に持ち歩くようなシロモノでなく、それもそのはず・・・これは、戦闘用の物だからだ。

 ちなみに、私のオリジナルの作品でもある。自信作で、その性能も最高のものであると自負できる。

(さて、潜入するとなれば・・・やはり、排水道からが王道かな)

 私はチラと橋の下にある水面から、研究所方面にある排水道の出口の柵を見やる。

 フィクション小説の中の主人公のような気分、なんだか無駄に気分が高揚していくのがわかる。

 周囲に人影が居ないことを確認した後、ステッキを振り上げた。

 思い描くのは氷。使う属性は水と地。用途はありとあらゆる物の刻を永久に止まらせる牢獄。こ度は水面を閉ざし、架け橋と成す。本来は空気中の水分を一瞬にして凍らせて落下させ、対象を氷塊の中へ閉じ込める大技の類であるが、

「なんちゃって、インブレイスエンド」

 こうやって、水面一帯を氷漬けにしてみた。

 これで、水に濡れることもなく進める。

 氷に降り立った私は、排水道の前で邪魔をする柵を見やる。これを何とかしなければ先へ進めない。

「プチ・ネガティブゲイト」

 よって、空間の歪に柵を引きずり込み、強引な形で退けることにした。柵を中心に発生した闇属性の小さな球体は、その大きさとは裏腹に容赦のない勢いで周辺のものを引き込んでいく。

 うまくいった。音も出なかったことだし、気づかれたということはなかろう。

 一見すると魔物の突進でも受けたのではないかと思う程の惨状を見せる、かつて柵があった大穴に、私は悠々とした足取りで足を踏み入れた。

 

 

 

 

「おい、君。ここは立ち入り禁止――がっ!?」

「うるさいぞ」

 鬱陶しい衛兵をファイヤーボール(弱)で吹き飛ばし、私はとうとう建物内部へと続く梯子を見つけることができた。

「よしよし。順調、順調と」

 梯子を登り終え、予想通りに研究所内部へとたどり着いた。

 とてつもなく広い場所だ。流石は首都イル・ファンが誇る最大の研究施設と言ったところか。内装も豪勢で、庶民派な私は少し圧倒されてしまう。

(教授は、どこにいるんだ? やれやれ。しらみつぶしに、ということになるのだろうな)

 随分大掛かりな、それでいて巨大な施設。だが、まあ。適当に探していけば何れ見つかるか。

(リリアルオーブもある。そろそろ使っていかなければならなかったし、ちょうどいいか)

 そう思った私は、発見されること承知で嬉々として兵士に精霊術をぶつけ、偶にステッキでぶん殴りながら進んでいった。

 その後、少し薄暗い部屋へとやって来た。私は直ぐ様、音を立てぬよう慎重に歩きながら、周囲を隈なく見渡す。

 照明の類は完全に死んでいるようだが、周囲にある妙な円柱の発光体が、視界をシャットアウト仕切らないので助かった。

 ――カン、カンカンカン・・・・

(誰か、くる・・・!)

 その場から、身近にあった円柱の機材の影に移動し、しゃがんで息を潜めた。

 しばらく後に、私が入ってきた扉がシャッと開き、何者かがやって来た。

 一体、どのような人物がこのように気味の悪い場所へと用があってきたのか。気になった私は、足音が通り過ぎるのを待って、円柱の機材の影から少し顔を覗かせた。

(・・・!? あの、後ろ姿は!?)

 見覚えがある。なぜだかは分からないが、直感的にそう感じることができた。

 イル・ファンにいる知り合いで、あのように目立った容姿の知人などそういない、はずだ。銀の髪を持っている者は、私の知りうる中で、記憶の奥底にしまったままの、すれ違いの結果関係が決裂してしまった少女のただ一人・・・彼女だけ。

(まさか、そうなのか・・・? 確かに、あの時とは容姿も似通っているが・・・)

 だが、気配が尋常ではない。

 当時の、私の記憶の中にあった彼女に、あのように物騒極まりない気配を滲ませるようなことは一度たりとてなかった。凶暴な面を覗かせたあの時、あれはあれで、また異質のもの。しかも幼く、私からすればまだ弱く脆かった。

 今、同じ空間に立っているアレは、あんなものでは済まされない。アレは、触れるどころか、近づけばその身を黒焦げにさせる、それほどまでに危険な狂気を周囲に振りまいている。

(まさか、あのあとからここまでに至ったとでも言うのか・・・・いや、)

 思考すればするほど悪い方向へと持っていくそれを振り払い、私は少女の気配を追うことに集中した。

 しばらくして、少女は少し上にあるところで、なにやら機械のパネルを操作し始めた。

「あん? ・・・侵入者だって? へぇー、兵士どもってば、全滅してるじゃん! ちっとはやるやつなのかな? 増援呼び出しとこ」

 どうやら、パネルの操作は研究所内部の状況を知らせる物であったらしい。勿論、あの大きさの物に限ってそれだけではないと思うが・・・、しかしまずいな。

(私の姿も、当然写っているだろうし・・・急いで帰って、国外に亡命する準備が必要かもなあ・・・・)

 一応、必要な物を揃えてきてはいるが、それでもこの物騒な世を遠出をするにはやはり足りん。だが、まあいいか。

 持ってきた革トランクと、麻袋に入っているもの以外で貴重な品々は、私が秘密に持っている隠し工房に置いてある。それに、そうそう見つかることのない場所であるため、慌てて場所を移すことはないだろう。

 それに、今はそんなことを考えている暇はなさそうだからな。

 この場所に、また一人何者かが近づいてきている。

 なんとも自信のない、ブレのある歩みだろうか。無用心に音も聞こえてきているので、ここの関係者か、それとも・・・といったところか。果たして、

「アハー」

 決まりだ。

 どこか、新しいおもちゃを見つけたような子供のような、そんな反応を伺える声音。

 火に飛んでいる夏の虫が現れたと思っていいだろう。ないと思うが、私が見つかったということも恐れられるため、すぐには行動を起こさずにその場に留まって様子を見ることにする。

 何かアクションが私に対して起こされた場合に、こちらも対処していけばいいさ。

「さっきの女性(ひと)・・・?」

 間も無く入ってきた、少年のような声音の人物。って、聞き覚えがすごくあるぞ!?

 チラリ、と確認。

(ジュード少年。君だったか・・・あちゃあ)

 我が恩師であるハウス教授が将来助手にと期待をかけている少年医師、ジュード・マティス。

 ここまで来られたのには驚きだが、そういえばかのロランド殿から師事を受けていたことを聞いたことがあった。実戦未経験者とは言え、私の取りこぼしくらいしか衛兵も居なかったろうし、まあ当然と言えばそうなるか。

 というか、まずいことになった。

 なにやら驚きの声を上げたジュードが、件の少女に見つかった。

「おいおい、侵入者ってあんたなの?」

 直前に驚愕の声を上げてしまったのがやはりいけなかった。原因は、離れたところで身を潜めていた私にはよく見えない。しかし、まあ十中八九――

(この装置につながれた、人々のせいだろうな。クソ・・・!)

 まあ、事態は心の中でこのような惨たらしいことを実行した何者かを罵倒する暇を与えてはくれない。

 突然鋏みのような仕込み杖を取り出した少女。手すりに登り、ジュードを明らかに獲物認定した瞳で見つめる。仕掛けるつもりだ。

(させんさ)

 ――集中。

 体内のマナを霊力野(ゲート)から通じて精霊術に変換。使用する属性は風と火。二つを合せ、雷と成す。

 ステッキを腰だめに構え、さらに意識を精霊術の行使に向ける。思い描くのは剣。手に持つステッキの先端から、帯電する光剣が顕現する。

 私は物陰から飛び出し、今にもジュードへ飛びかかろうとする少女へ向けて雷の剣を振るった。

「サンダーブレード――!」

「な!? ――クソッタレええ!!」

 光剣が迫り来るのを視認した少女は、恐るべき反応速度で術式を展開。瞬時に起こった爆炎が、私の放った雷を相殺してのけた。

(やはり・・・)

 私の自慢の精霊術を相殺してみせた。しかしその事実よりも、今私は目の前の少女の素性の心当たりが最早確信となったことのほうが重要であった。

「あんたは・・・へぇ、そっか。そういやぁ、あんとき殺しそこねていた奴が一人だけいたっけ? ねぇ・・・」

 着地し、ゆらりと幽鬼のように顔を上げる少女。

 気にかける、それどころか度々行方を探し、ついに断念して久しい私の、嫌っていた一族の中で唯一とも言っていい、愛しく思っていた腹違いの妹・・・。

「ナディア、なのか・・・?」

「その名前で呼ばないでくれる、姉さん。今のあたしは無影のアグリア。随分久しぶりじゃんか? いや、あんたのほうから来てくれるとは思っていなかったんだけどさぁ・・・」

 途端、手に持った仕込み杖を振り上げ、精霊術を行使し始める。

(まずい・・・!)

 驚愕して集中が遅れた私よりも遥かに早く、未だ幼げが残るそれを殺意に歪ませるアグリア――ナディアが精霊術を発動した。

「グランドファイア!!」

「――守護氷槍陣ッ!」

「う、わぁあああ――!」

 互の放った精霊術と武身技がぶつかり合い、その余剰効果で周囲に水蒸気が充満する。

 私の後ろに立っていたジュードは、その余波を受けて後方へと飛ばされてしまったようだ。少し呻いて、それきりアクションが無い。死んではいないようだが、気を失ってしまったらしい。

(威力が、でかい――!)

「侵入者って姉さんだったとはね。にしても、技に切れがないなあ? あたしに会って驚きでもしたのかよ?」

 そら、驚きもするさ。本当に、探して・・・探して、その結果断念はしたが心のどこかで引っかかったままだった。それが、

「ああ、いや、全く情けない無様を晒してしまった。許せ、ナディア。にしても意外だったな、まさかこのようなところで再開するなどと、誰が予想しただろうな?」

「あたしは、会いたいと思っていたぜ・・・? だって、ようやく・・・あんたを殺れる。あんたはどう思っているかしらないけどさ、あたしにはもうちゃんとした居場所があるんだ・・・あんたはもう――要らないんだよォ!」

(――来る)

 それまで不穏な動きを見せていたナディアのマナが突然膨張し始める。

 同時に、周囲の温度が変わった。膨大な熱量を操作しているのだ。

 拒絶の言葉は結構堪えたが、今はとにかく目の前のことだ。私もナディアのそれに同じて、精霊術を行使するために集中する。

対精霊術師との一対一(サシ)の闘いでは、精霊術の行使を僅かでも遅れた者が敗北する。そして、常に先手を取るには――

(事前に、どれだけの詠唱を“貯めて”こられるか、それが勝利への鍵だ!)

 精霊術師が最も求められるものであり理想形、それが無詠唱ながらも強力な精霊術の行使だ。フル詠唱での精霊術の行使は、どうしても時間がかかるため、単独での戦闘は常に危険がつきまとう。よって、殆どの精霊術師がこれを習得し実行することができる。

 しかし、無詠唱では詠唱有りの精霊術の威力に及ぶことはまずあり得ない。どれほど強力な精霊術も以てしても、どれだけ霊力野(ゲート)が優れていようとも、だ。それが常識。

 ――ならば、常識(それ)という枠に何時までも嵌ったままでいていいものか? 少なくとも私はそのままで居たくはない。

そして、不可能と言われていたそれをとっぱらったからこそ、鬼子とまで言われた私の本領。

トリガーワードのみで発動する完全詠唱クラスの精霊術の瞬間行使――!

「ピコピコハンマー!」

「が――ッ」

 ピコッという可愛らしい効果音を立てて、上空から現れ飛来した巨大な玩具のような外見をしたそれが、ナディアの脳天を直撃する。

 殺傷力は皆無。相手を無力化することにのみ特化した効果を持つ精霊術だ。

 いや、ここまで自分の中で盛り上げておいてなんだが、相手は最愛の妹であって、憎き怨敵というわけではない。妹に凶悪な精霊術をぶっぱなす非道さは、持ち合わせていないつもりだ。うん? さんだーぶれーど? 知らんな。

「――ふう、すまない。許せよ、ナディア・・・」

 取り出した煙草に火を点け、紫煙を静かに吹かしながらキメる私。罪悪感やらいろいろなものを無かった事にする私の人生の奥義である。

 とは言っても、迂闊に近づいてあの尖った杖で刺されでもしたら敵わんので、ひとまずナディアは置いておいて、先にジュードの方へ向く。

「先程は守りきれなくて済まないね、ジュード少年。痛むところはないか? よかったら治療してやらんこともないが」

「いえ・・・あの、ありがとうございます―――ぁ」

「うん? ――――む?」

 手を取ってやり立たせようと腰を床につけたジュードへ近づくも、少年はなにやら私の後方を見て固まる。もしや、もう増援が? と思い振り返ってみれば、そこには予想を180°反して見事なプロポーションの金髪美女が。

 美女はまず倒れたナディアを見て、次に床に腰を着けたジュード、そして手に未だ精霊術の行使の余韻が残るステッキを持つ私。やがて美女は、ゆっくりと納得するように頷き、瞬時に抜き放った剣の切っ先を“私”へ向けた。

「・・・・敵か」

「違うぞ」

 

 

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