OF THE XILLIA (仮)   作:koopa

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3話:「イラート海停にて」

 アルヴィンと名乗った優男風の青年と契約を果たした私は、色々と手はずを共に練った後にア・ジュール行きの船に乗り込んでいた。

 甲板の後ろの方で待つ私。手持ち無沙汰になったので、煙草を吹かせながら眺めさせてもらうことにする。

しばらくそうしていると、手はず通りに動いてジュードやミラを救出してくれたアルヴィンが余裕綽々といった表情を見せながら港から海の方へと突き出ていた荷物へ駆け上って軽々と跳躍し、私の頭上を超えて樽や木箱が複数置いてある場所へと突っ込んできた。

それまでせっせと己の仕事に没頭していた船員たちは驚き、何事かと集まってくる。その際に私が近くにいることを確かめると、納得した顔で自分たちの持ち場へと戻っていった。

「あれ・・・・?」

 自分たちが怪しく思わなかったのか?――そう思ったのだろう。ジュードはその顔に疑問を浮かべた。甲板にぶつかった拍子に打ち付けてしまったか心配だったが、受身をとっていたらしい。無事な様子だった。

「事前に私が話を通しておいた。君たちは正当な理由で遅れたということになっているよ。保証も、私の証明書があったので効いた」

 後半は嘘である。その時の交渉はうまく進んだのだが、ダメ押しで高級品と評された我が作品(ステッキ)のひとつをヒゲの船長に無償で、と差し出してみたらしばしの沈黙の後にオーケーを貰った。どうやらカタログを見たことがあったらしい。どうせ使わないからと売り飛ばされそうだが。それにしても、賄賂はいいね。

「なるほど。助かった」

 ジュードとは違い、受身を取れず全く以て無様に転げてしまったミラが、その失態を感じさせないほどの自信のある声音で礼を言ってきた。

 一方、二人を両脇に抱えて跳躍するという離れ業をやってのけたアルヴィン。さすが傭兵、というべきか。あのような運動の後だというのに、息一つ切らさず自然体でこちら全体の様子を伺っていた。

「ご苦労だった、アルヴィン」

 私は、労いの言葉をかけながらアルヴィンに寄った。彼は、両の手が塞がっていたためか派手に甲板とキスしていたのだ。今でこそなんのことはないと無傷を装っているが、もし何かあっては、いくら私の雇った傭兵(パシリ)という身分であったとしても申し訳ない。

 対してアルヴィンは、平気だと言わんばかりに手を振って見せた。痛みによる変な脂汗も見受けられない、嘘は言っていないようだった。

「そろそろ船室へ行って、休むぞ。私とアルヴィンは平気だが、ジュードとミラの二人は消耗の色を感じるからね」

 

 

 

 

 私たちがやって来たア・ジュールという国だが、ここは元々私が住んでいた国だ。港の様子もさほど変化した様子は見られないし、しばらく進んでもこれならば案内役を買って出ても問題無さそうだ。

 中々に長い船旅だったので、取り敢えず食事にしよう、と私は提案した。すると何故か、盛大に腹を鳴らせながら「食事とは何か?」とミラが問うて来た。彼女の様から、えらい矛盾したことを・・・・と私が思っていると、ジュードが訳を話してくれた。彼女は腹に飯を入れたことがなかったそうだ。なんでも精霊のウンディーネとシルフの力で、水の生命子と大気の生命子を摂取していたと・・・・

「なあ、エイダ。彼女、何言ってんの?」

 そんなの、私が知りたいよ。全く。

「栄養を精霊の力で摂っていたってことらしいよ。なにせ、マクスウェルだから」

「え・・・・?」

 ああ、もう。変なふうに言うから、アルヴィンがだらし無い顔から真顔に変わってしまった。

 下手に聞かせても混乱するだけだろうから、折角流しておこうとしていたというのにね。

「空気が読めないね、君は」

「なんで!?」

 とにかく食事だ。

 港に有る船員用の宿を借りることができることを知っていたので、そこに四人で二部屋ずつ泊まらせてもらうことに。当然ながら、男女それぞれが分かれて二人ずつだ。

「では、早速食事をしたいのだが・・・・」

「あー、すまんね。決まった時間にしか出してないから、今すぐには出来ないんだ」

 ・・・・そうだった。まずいな・・・・後ろの半死人の美女が、今にもぶっ倒れそうなのに。

「あのっ」

 そのとき、ジュードが不意に声を上げた。

「厨房を貸して頂けませんか?」

 こうして、小さきコックが腕を振るうことが確定した。

「うん、うまい」

「ほんとだよ。医学校ってのは、調理実習とかもやるのかい?」

卓の上に並べられた料理を口に運びながら、アルヴィンが私の感想に同調した後に疑問を口にした。

 アルヴィンの疑問は残念ながらはずれだ。私は医学校に通っていたため、その手の講義や実習は無かったと断じる。にしても、この腕前は見事。――いいなあ、毎日こんなに食の進む飯が食えるなんて。うらやましいなあ。

「医学校に入ってからずっと学生寮で自炊していたから。これぐらいは誰にだって・・・・それに、エイダさんの方がうまく出来ると思う」

「私は無理だ。自炊はやらんからな。――それよりどうだ。いっそ私専属の料理長となってみる気は?」

「遠慮させてもらいます」

 私の言葉を冗談だと思ったのか、ジュードは苦笑しながらも提案を断った。

 なぜだー。

 毎日がおいしい、あったかいご飯計画が潰えてしまった。

そして彼は、視線をミラに向けていた。なにか言ってくれないだろうか、という期待が見て取れる。

視線の先にいるミラだが、彼女はそんなジュードの気持ちを無視して目の前のご馳走に没頭していた。

フォークやスプーンを持つ、というよりも掴むといった使い方で食を進めるミラは、さながら幼い子供のようで可愛らしい。

まるでリスのように口いっぱいに料理を頬張り、彼女はとても満足そうな表情を見せていた。

やがて、ゴックンと音が鳴るくらいの勢いで頬張った料理を飲み込むと、

「ふむ。食事というものは、なかなか楽しいな。こう、色々な味を楽しめるのがいい」

「喜んでくれてなにより。僕も、作った甲斐があるよ」

「私はなかなか味わえない、貴重な体験なことだしね」

「それはいけないぞ、エイダ。人は、こういったものこそ大切にするべきなのだ」

「はは、肝に命じるよ」

 裏で、クルスニクの槍だとかいう危険物なんぞを作るなと言っているのか。定かではないが、生活感のなさ故に多少の心当たりがある私の耳には痛かったことは確か。

 クルスニクの槍で思い出したが、あれに巻き込まれた――自業自得だったが――ナディアは、大丈夫なのだろうか。元気にしているといいが、再開したらまた殺しかかってきそうだなあ。

 彼女、一体全体あんなところで何をやっていたのだろう? 今、あの娘は独り身という身分の筈なのだし・・・・もしや、今はどこかの組織に身を置いていて、そこのトップの指示を受けていたとか? ありえそうな話だ。

それにしても、身寄りのなかったナディアを引き取ってくれるなんて、いい人もいたものだ。もし合うことがあったら、是非ともお礼を直接言いたいな。身なりも、派手ではあったが綺麗だったしね。あの娘の綺麗な髪が煤けていたら、お姉さん悲しいです。

 

 

れっつ、おとめ談議。

現在、我々女子一堂(二名)は予め宛てがわれた“広め”の部屋で、各々自由にくつろいでいる。どうせならミラと二人でもいいんだぜ、とジュードに対してアルヴィンと共にからかっていたが猛反対され、結局この組み合わせに。

まあ、せっかくの二人だけの世界。弟分だし、どうせだからジュード君の青々しい恋路を応援したいと考えている私は、早速ミラにアプローチをかけてみることにしたのだ。

聞きたい質問の事項は・・・・まず、今日の料理について。

「すばらしかった。あのように心を満たしてくれるものを体感できるとは・・・・人間の文化も馬鹿にできない、むしろいい!」

うん、よくわからん。相変わらず、常人には効かせられない回答である。そういえば精霊の主だったか。ようし納得できたぞ。

それで、そんなすばらしい料理を、腹を空かせた“ミラに”振舞ってくれたジュード君に思うところは何かあるかね?

「うむ。今後もその腕を研磨していって欲しいと思う。そしてもっと上達した暁には、フルコースという感じで食べてみたい」

おお、いい反応だ。それで、それで・・・・ところで君、精霊の主と言っても女性だよね?

「む、なんだいきなり。まあ、そうなるな。私は便利上この姿をとっているだけだが」

ああ、ハイ。じゃ、さ。女性って、自分の好みの男性とか有るわけだが、君はどうだ?ちなみに私は、便利な男性だ。使い魔替わりになってくれれば尚良い。

「本で読んだことがあるが、あいにく私はそのような考えを持ったことはないな」

あらら。それはよくない。

「もちろん、興味はある。いずれ理解してみたいとも思ってはいるが、今は・・・・使命が先決だ」

そうか。いや、ありがとう。参考になったよ。

「そう、なのか? お前が納得したのならいいが。説明が足らなかったら、言ってくれて構わないぞ」

十分さ。さあ、もう寝よう。明日も出立は早くするのだろう?

「ああ。早くニ・アケリアに戻り、試したいことがある」

明日の朝に残りの男ども含めて説明してくれ。では、おやすみ。

「おやすみ・・・・こうして一言いってから眠るというのも、いいな」

ミラはそれきり、すやすやと静かな寝息を立てるだけだった。熟睡に入ったらしい。

・・・・いやいや、最後までおもしろいものを見せてくれるよ。

それはそうと、ジュード。君の恋路とやらは、大分時間が必要かもしれないよ。

アルヴィンにそれとなくジュードの後押しを頼まなくて正解だったかもしれないね。

 

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