臨海咲SS置き場   作:タコピー

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麻雀描写は適当(コピー元サイトでの補足)

※原作設定と食い違う部分が多々あります。(12/7)


中学編 咲「中学……麻雀部に入ろうかな」
中学編一話 12/7補足追加しました


 明日から私も中学生。 新しい門出を前に憂鬱な気分が少し晴れ、いつになく昂揚していた。

 

 お気に入りのチェストの前に立ち、握り拳を一つ。角に掛けた明日から着る事になる制服を眺めて一人ごちる。

 

咲「いつまでもうじうじしてたってしょうがないよね。……私も、変わらないと」

 

咲「中学には部活動っていうのがあるんだよね。入ってみようかな」

 

 

 

モブ「ソフトテニス部、部員募集中でーす! 見学からでもどうぞー」

 

モブ「バスケ部入りたい人こっちにおいでー!」

 

咲「うわ凄い熱気。用紙に希望書いてクラスで出すのかと思ったけど、勧誘が立つんだ」

 

咲「部活……文芸部かなぁ。あるといいんだけど」

 

 目当ては決まっていた。大にぎわいの人込みの中きょろきょろと頼り無さげに視線を流す。

 そうしていると、勧誘する部員に用意されたスペースで椅子に腰かける少女が目に入った。

 

 『文芸部募集中』。簡素な宣伝文句だけ書かれた看板を持って無言で佇む女の子。

 

咲「な、何か物静かっていうか暗い……私も周りからああ見えるのかな?」

 

咲「それよりこの用紙を持ってあそこに行けばいいんだよね」

 

咲「見つかってよかったぁ……」

 

モブ「麻雀部、メンバー募集中! 体験もオッケー!」

 

咲「麻雀……あったんだ、ってあるよね。国民的な競技だし」

 

咲「……」

 

咲「やっぱり入るなら文芸部、かな」

 

 

 

教室

 

クラスメイト「ねえねえ、宮永さんは麻雀部入らないの?」

 

咲「え? うん、私は文芸部に入るつもりで……」

 

クラスメイト「えー! 文芸部とか超つまんなそうじゃん」

 

クラスメイト「今皆で麻雀部見学行ってみようって話してたんだ。よかったら宮永さんも来なよ」

 

咲「……私、麻雀って苦手で。文芸部にしとくよ」

 

咲「誘ってくれてありが……」

 

クラスメイト「え、経験者なの!」

 

クラスメイト「だったらわたし達に教えてよー」

 

咲「でも文芸部の人にもう用紙出しちゃったし」

 

クラスメイト「体験だけ! 体験についてきてくれるだけでいいから!」

 

 

 

麻雀部 部室前

 

クラスメイト「楽しみだねー」

 

咲「結局断りきれなかった……」

 

先輩「あなた達体験の子よね。もうすぐ始めるから入ってきて」

 

 

 

 

先輩「試しに打ってみましょうか。それぞれの卓に上級生がつくから空いてるところに自由に。分からない事があったら教えるから気楽にやってね」

 

クラスメイト「お、早速だ。楽しみ」

 

クラスメイト「宮永さんどこ入る?」

 

咲「うん、まあ適当に……」

 

 

 

咲「ツモ。800、1600です」

 

部員「はい。これで半荘終わりだね。もう一回打つ?」

 

咲「いえ、今日はここまでにしときます。ありがとうございました」

 

クラスメイト「お疲れ様ー宮永さん、こっちも終わったよ」

 

咲「お疲れ様。どうだった?」

 

クラスメイト「もーボコボコ。役とか分かんないし覚えられる気しない」

 

咲「役覚えるの大変だよね」

 

別の部員「部長、どうです? いい子いました?」

 

部長「これといって。これからに期待かな」

 

部員「ざっと牌譜見た感じそうですね」

 

部員「あ、さっきの子収支ちょうどプラマイゼロだ」

 

部長「ある意味運がいいな」

 

クラスメイト「あれ宮永さんの事じゃない?」

 

咲「あはは、そうかも……」

 

クラスメイト「でも残念、文芸部に入るんだよね」

 

咲「そうだね。失礼かもしれないけど、最初から体験だけのつもりだったし」

 

クラスメイト「決意は固いかー。まあ違う部活でも同じクラスのよしみでよろしくね」

 

別のクラスメイト「うわわわ、倍満とかいうの上がった! ちょっと来て来て!」

 

クラスメイト「え! よく分かんないけど凄いじゃん、見せて見せて!」

 

クラスメイト「それじゃ、また」

 

咲「……」

 

(固い決意、かぁ……本当にそうなのかな)

 

 

 

文芸部

 

部員「えーと、宮永咲ちゃんでいいんだよね。よろしく」

 

咲「はい。これからよろしくお願いします」

 

部長「まあそんなに本格的じゃないから肩肘張らずに。本好きが集まって、自由に雑談する感じで」

 

部員「本当に何もしてないとお咎め喰らっちゃうからたまに共同で文集作ったりするけどね」

 

部員「あ、宮永さんは好きな本とかある?」

 

咲「はっ、はい……そうですね、ーーーーをよく読みます」

 

部員「ああ! その本書いた人の作品幾つか読んだ事ある」

 

咲「あまり一般受けしない作風なんですが……何処か親しみ深くて」

 

部長「不思議な雰囲気の話が多いね」

 

咲「はい、特に心が移り変わる過程を繊細に描き出す力に惹き込まれてしまいます」

 

部長「話以前に技術の高さか。それにーーーー」

 

部員「あとーーーー」

 

 

 

 

 

咲「ふう、楽しかったぁ。こんな風に本の事で話せる人今までいなかったから新鮮だなぁ」

 

(他の人と意見を交わして、新しい解釈を見つける事が、楽しい)

 

(新しい自分を見つけた様な気がして、世界が広がっていくみたいな)

 

(……お姉ちゃんも、そんな楽しさを見つけてたのかな)

 

 

 

クラスメイト「宮永さん、文芸部の方はどう?」

 

 放課後。今さっき授業が終わって、自席で帰る支度をしていた咲に声がかかる。

 鞄に教科書を詰める手を止め顔を上げてみると、右隣に少女が立っていた。確かクラスメイト。

 おぼろ気な記憶が呼び覚まされる。麻雀部体験に付き合ったあの日、一緒にいたクラスメイトの一人だ。

 

咲「楽しいよ。まだ三ヶ月くらいだけど、先輩達がフレンドリーで話も合うし」

 

クラスメイト「そっかー……」

 

 奇妙な反応だった。

 溶け込めてよかったね、と言外に嬉しそうにする反面、残念そうな。

 何か当てが外れたみたいだ。

 クラスメイトの変調を、咲は耳聡く聞きつけていた。

 

咲「何かあった?」

 

クラスメイト「えっ、と……実はね、練習で打つ相手に困ってて」

 

咲「打つ相手に困る、って……あれだけ入る人がいて、先輩もいるんだよね?」

 

クラスメイト「……先輩の人数が少ない事、気づいてた?」

 

咲「え? ……そういえば」

 

クラスメイト「先輩達が一年の時もわたしらと同じくらいは新入部員がいたんだって。……うちの麻雀部って、割と強豪みたいでさ」

 

咲「それって……」

 

クラスメイト「ま、まあ、そんな訳で、宮永さんが文芸部にあまり溶け込めてないんだったら、引き抜きに、ね?」

 

咲「……」

 

クラスメイト「気にしないで! 望んで入った皆だって嫌になってやめちゃったし! 軽々しく誘っちゃってごめんね?」

 

 よく考えてみると彼女は一人だった。

 あのとき麻雀部に入ったクラスメイトは他に何人もいたのに。その人達と目の前の彼女が接しているのを、咲はあまり見かけていない。

 

 その人達とは縁が切れちゃったんだ。それでもこの子は麻雀を続けてる。

 目の前で話すクラスメイトが咲には少しまぶしく思えた。

 

咲「麻雀って、楽しい……?」

 

クラスメイト「え?」

 

咲「あっ、ご、ごめん変な事聞いて。あのっ……忘れて!」

 

クラスメイト「……楽しいよ」

 

クラスメイト「人それぞれ違うだろうし、嫌になっちゃう事もあるんだろうけど」

 

クラスメイト「先輩達にボコボコにやられて……あ、体験のときはかなり手加減してくれてたみたいでね?」

 

クラスメイト「最初とは比にならないくらいボッコボコになって、やめたくなっちゃう事もあったけど……」

 

クラスメイト「やっぱりわたし、麻雀が好き。もっともっと上手くなりたいって思うんだ!」

 

 今度こそ咲は衝撃を受けた。電撃が走り、呼吸を忘れていた。

 

咲「れ……」

 

 我に返り、彼女の屈託のない笑顔とその言葉の意味を噛みしめたとき、咲の口は自然と動いていた。

 

咲「練習で打つ相手って……数合わせみたいなのでもいいの?」

 

クラスメイト「へ?」

 

咲「うちの学校って、部の掛け持ちは一応認められてるんだよね。それぞれの部の承諾があれば」

 

クラスメイト「宮永、さん……それって」

 

咲「部の人達が認めてくれるか分からないけど、練習相手の穴埋め要員って事でお願いすれば認めてくれないかなぁ?」

 

クラスメイト「分からないけど……掛け合ってみる!」

 

クラスメイト「宮永さん……ありがとう!」

 

 

 

麻雀部

 

 

部長「練習相手の穴埋め?」

 

咲「はい。クラスメイトちゃんの実力に見合った練習相手が必要だと思うんです」

 

部長「……確かに一年で残った部員は現時点で三人、また減るかもしれないし、上級生も一年のためだけにあまり人は割けない」

 

部長「となると、比較的実力の近い上級生を宛がう事になるが……そいつ自身も実力を磨くために別の相手を必要とする事もある」

 

部長「お前の申し出は正直ありがたいな。今はまだ一年の練習相手にはお前の方が適任だろう」

 

咲「クラスメイトちゃんの腕が上がっていけば、いずれは用済みになりますけど。それまでは」

 

咲「どうかお願いします」

 

 頭を下げる咲に、しかし部長は難しい表情を崩さない。

 

部長「数合わせ、で入るとはいえ、部員は部員」

 

部長「うちの部員である以上、最低限の練習メニューはこなしてもらわなければならない」

 

 頭を下げたまま咲は答えた。

 

咲「はい。分かってます」

 

部長「うちの練習は新入りの大半が音を上げて逃げ出すものだぞ。分かっているのか?」

 

 押し黙る。自分には文芸部での活動もある。時間的な制約も、練習そのものに対する不安も、ある。

 

咲「……はい。全力で当たらせてもらいます」

 

 しかし。咲の中には淡いながらも定まった気持ちがあった。

 クラスメイトのーーあの子の力になりたい。麻雀をきっかけに人との縁が切れて、それでもひた向きに麻雀に向かい合おうとするあの子を。

 応援したいと、思ってしまっていた。

 

部員「部長、いいんじゃないですか? この子本気ですよ」

 

部長「うむ……まあ、規則に反しているわけじゃない。やらせてみるさ」

 

咲「っ、ありがとうございますっ!」

 

 

 

 

文芸部

 

 

部長「麻雀部と掛け持ちしたい?」

 

咲「はい……その、失礼な話かもしれませ」

 

部長「いいよー。いってらっしゃい」

 

部員「部長……軽すぎじゃないですか?」

 

部長「いいのいいの。うちの活動なんてあってないようなもんだからね。運動部と運動部ならともかく、うちとなら問題なし。そうでしょ?」

 

部員「うーん、それは……まあ」

 

部長「まっ、麻雀部の練習やるってなら運動部二つ分くらいのきつさかもしれないけどねー」

 

部員「咲ちゃん、頑張ってね。大変だったらすぐ戻っておいで」

 

咲「皆さん……」

 

 暖かく送り出してくれる部員たちに咲の目は潤んでいた。最初に勧誘で見かけたあの日、ひどい事を思った自分を殴り飛ばしてやりたい。

 いっぱいの嬉しさを胸に、咲はクラスメイトに報告するため、部室を飛び出した。

 

麻雀部

 

クラスメイト「咲ちゃん、今日からよろしくね」

 

咲「うんっ、いっぱい楽しもうよ!」

 

クラスメイト「ありがとう……」

 

咲「えへへ」

 

 

 

 

 

咲「ツモ、1800、3600」

 

クラスメイト「ロン、11600」

 

部員「ツモ、1300オール」

 

咲「ロン、7700」

 

部員「ツモ、1500オール」

 

 

 

クラスメイト「ふう、今日もいっぱい打ったね」

 

咲「うん。連日こんなに打つのは久々かな」

 

クラスメイト「昔はよく打ってたの?」

 

咲「家族麻雀だけどね」

 

クラスメイト「へえー、点数計算とかも自分で?」

 

咲「……うん。きっちりしようって牌譜もとってたくらい」

 

クラスメイト「だから点数計算とか完璧なんだねー」

 

咲「点数計算はできるようになってきた?」

 

クラスメイト「アハハ……た、多少は」

 

咲「こつこつやっていけばすぐ慣れるよ。一緒に頑張ろう?」

 

クラスメイト「うん!」

 

部長「宮永、ちょっといいか?」

 

咲「あ、部長……何でしょう?」

 

部長「話がある。こっちに来てくれ」

 

クラスメイト「なんだろね? いってらっしゃーい」

 

咲「うん、いってくるね」

 

 

別室

 

部長「宮永……わざとやっているだろう」

 

 そう言って部長は牌譜の束を手渡してきた。

 何が言いたいのかは、分かっていた。

 

 別室に入って向こう厳めしい表情を和らげず、じっと咲を見つめる部長。

 その目は嘘は許さないと言っていた。

 

部長「お前が入って一月、一月だ。毎日のように打って、その全てをプラマイゼロに収める。本気でそれを狙ってやっているというのか?」

 

咲「私が打つとこうなっちゃうんです」

 

部長「……信じがたいな」

 

 眉間を押さえて呟く部長はどこか疲れた様子だった。

 

部長「牌譜をみて、お前と打たせてほしいという部員が多くいる。やってみてほしい」

 

咲「えっ、クラスメイトちゃんの練習相手は……」

 

部長「それはこちらで何とかする。頼めないか」

 

咲「……わかりました」

 

明くる日

 

部員「プラマイゼロ!?」

 

咲「……」

 

明くる日

 

部員「プラマイゼロ……本当に……」

 

咲「……」

 

明くる日

 

部員「プラマイ、ゼロ……こんなことが」

 

咲「……」

 

 

 

部長「これは本物だな……」

 

部員「これは凄い武器ですよ部長! 彼女を団体戦のメンバーに加えれば、どんな相手にも失点をなくせるのでは?」

 

部長「……恐ろしい話だ」

 

部員「あの子がいれば、あの大阪の愛宕や江口といったエースを擁する学校にも、やり方次第で勝てますよ!」

 

部長「……」

 

部長「インターミドルの予選が近づいてきた。レギュラーの発表をする」

 

部長「先鋒ーー、次鋒ーー。中堅ーー。副将ーーーー」

 

部長「大将、宮永」

 

咲「……」

 

部長「宮永。うちは実力主義だ。エースのひしめくポジションだが、宮永以上に相応しい者を私は知らない」

 

部長「我々三年生も最後のインターミドルになる。やれることはやりたい。この選出を受け入れてくれ」

 

咲「……わかり、ました」

 

 

 

クラスメイト「咲ちゃん、レギュラーなんて凄いよ! しかも大将!」

 

 咲は曖昧に笑った。

 

咲「特殊な打ち方が関心引いちゃったみたいだね」

 

クラスメイト「プラマイゼロかぁ……わたしにはどれくらい凄いか想像もつかないよ」

 

クラスメイト「でも……手加減してくれてたんだよね。ごめんね、やりにくいことさせちゃって」

 

咲「違うの。私にはこれが自然な打ち方だから……一番楽なの」

 

クラスメイト「そうなんだ……?」

 

クラスメイト「とにかく大会頑張ってね、精一杯応援するよ!」

 

『頑張りなさい咲。あなたの才能は素晴らしいものなのよ』

 

咲「うん。……頑張るね」

 

 

 

 

 

部長「特打ちだ。大会に向けて調整していくぞ」

 

部員一同『はいっ!』

 

咲「私はいつも通りプラマイゼロでいいんですか?」

 

部長「ああ。相手はレギュラークラスの部員に限るが、やってみてくれ」

 

 

 

 

 

部員「ロン、11600です」

 

部員「ツモ、2600オール」

 

部員「ツモ、3200オール」

 

咲(……ちょっと、厳しいかな)

 

咲「カン。もいっこカン。嶺山開花」

 

部員「嶺山開花!?」

 

部員「珍しい役が出たわね」

 

咲(カンしないと厳しくなってきた。あんまりやりすぎるとまた悪目立ちしちゃう)

 

部員「……プラマイゼロ。一年でこれか。末恐ろしいわね」

 

 

 

部長「宮永。変則的だが、今日は私と二人で頼む」

 

咲「三人じゃなくて……? わかりました、頑張ります」

 

 

 

 

咲「カン、ツモ。嶺山開花」

 

部長「ノミ手か。……宮永。今カンする前に高目をツモっていなかったか」

 

咲「え?」

 

部長「私もある程度は打てる方だ。今のは、高い手をツモられた気配がした」

 

部長「……見逃したのか?」

 

咲「そうしないとプラマイゼロにならない気がしたので」

 

 部長がため息をつく。

 喉の奥から絞り出す様な、重たいものだった。

 

部長「なぜそうまでしてプラマイゼロにこだわる? 勝とうと思えば勝てただろう」

 

咲「……勝ったり負けたりするのって、好きじゃないんです」

 

 昔から。

 昔から、咲には勝って達成感を覚えたり、負けて悔しいといった気持ちを抱く事がなかった。

 

部長「お前が勝つ気になれば負ける事はそうないだろう。と私は考えている。僅かな敗北も我慢ならない、のか?」

 

咲「負けるのはどうという事もありません」

 

 かといってわざとマイナス収支になれば手を抜く事になる。

 全力で勝ったとしたら他家が割りを食う。

 相手と自分がそこそこに上がって、結果自分の点数を平らにするのが一番いいのだ。

 プラマイゼロを目指す点に関して手抜きなんてなく、持てる力を注いでいるのだから。

 

 そう思っていた。もっと小さかった頃は。

 

咲「波を荒立てないように隠れていても、プラマイゼロを狙ってしていると知れたら、不快な思いをする人も出てくる」

 

咲「勝ったら睨まれる、負ければ手を抜いたと指摘される、プラマイゼロにしても……やっぱり誰かを不快にさせちゃうんだと思います」

 

咲「私は、どうしたらいいんでしょうか」

 

部長「人の事ばかりだな。自分がどうしたいとかはないのか」

 

咲「私は……」

 

『咲……あなたはまだ知らないだけなのよ』

 

『本当の勝利というものを。その味を』

 

咲「……わかりません。ただ、こんな調子でも麻雀を打っていたら少しは楽しいんです」

 

部長「宮永……」

 

 沈黙のとばりが落ちる。

 部長も、咲も、暫くのあいだ言葉を口にする事はなかった。

 

部長「私にはその悩みに対する答えはあげられそうにない。だが」

 

 そこまで言って、躊躇う様に部長の唇が歪む。

 

部長「本当に打つのが辛くなったら、無理をして打たなくていい。と私は思う」

 

部長「ここは他の部員の目がない別室だ。思う事があるならまた呼んでくれ」

 

 憂い顔の咲を残して部長は別室から出ていった。

 

咲「お姉ちゃん……」

 

 

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