オラリオで再スタートするのは間違っているだろうか 作:抹茶ミルクプリン
「お疲れ様でしたー!お先に失礼します!」
「お疲れ様でしたー!」
ふう、やっと仕事が終わった。もう時刻は22時を過ぎていた。同僚はまだ残っていくらしい。
帰ったらビールでも飲んですぐ寝るかな……
社畜人生は辛い。朝から晩までずっとずっと働き詰め。この身が擦り切れていくのを感じる今日この頃。
最近は趣味だったゲームも全然出来てないし、積みゲーが増えていくばかりだ。
もう、家には寝に帰っているだけの様な気がする。
「あー、人生ってこんなもんなのかな……」
電車に乗り、駅から10分ほど歩きやっと帰宅。もう23時を越えようとしていた。
さっさと風呂入ってビール飲みたい。
「……ふう、美味い!美味すぎる!これだけの為に生きてるな!」
キンキンに冷えたビールが喉を潤してくれる。明日も仕事だからあんまり飲み過ぎない様にしないとな……
「でも、もう1本だけ……もう1本飲んだら絶対に寝る……」
良い感じに酔っ払ってきたのでもう寝ることにする。
「どっか違う所行きたいなー、仕事なんてほっぽり出してちゃんと生きてるって事を実感したい」
酔いでまぶたが重くなってきた。段々と意識が遠くなっていく……。
「ここは……?」
目を開けると知らない場所にいた。俺は確か、自分の部屋で寝たはずだった。
「そうか、夢か……」
こんな夢は初めてだ。周りを見渡すとどこかの部屋のようだ。しかも、蒼い。
もっと観察すると、ここは車の中の様だった。そして、人影が2つ。
「ようこそ、ベルベットルームへ……」
ベルベット……?聞いたことがあるような、無いような。
言葉を発した人物は普通の人ではあり得ない容姿をしていた。
まず目に着いたのは鼻。長い。とにかく長い。まるでピノキオのような長さの鼻。そんなに可愛らしくはないけど…。
そして、目。ぎょろっとした目が俺を観察するように見ていた。
普通じゃない見た目の老人なのに、不思議と恐怖感は湧かなかった。
「ほう……これはまた、変わった定めをお持ちの方がいらしたようだ……フフ」
奇怪な顔の老人が俺に話しかけてきた。
「私の名は、イゴール。……お初にお目にかかります。」
「……初めまして、ここはどこですか?」
イゴールと名乗った老人。イゴールさんと呼ばせてもらおう。
「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所……
本来は、何かの形で“契約“を果たされた方のみが訪れる部屋……
貴方には、近くそうした未来が待ち受けているのやも知れませんな」
変な夢だと思いながらも、不思議と頭に言葉が入ってくる。
しかし、契約とはなんだ?俺はまだ中二病が終わってなかったのか……?
もう25歳になるというのに恥ずかしい……。
「どれ……まずは、お名前をうかがっておくと致しましょうか…」
名前か?名前を聞かれるなんて本当に変な夢だ。
「……西門、西門翔です」
「……ふむ、なるほど。では、貴方の未来について、少し覗いてみると致しましょう……」
イゴールさんがテーブルに手をかざすとタロットカードが現れた。
「“占い“は、信用されますかな?」
「どうでしょう?あんまり信じて無いかもしれませんね」
「そうですか……占いとは不思議なもので、常に同じにカードを操っておるはずが、まみえる結果は、その都度変わる…」
イゴールさんが手を振っただけでカードが勝手に動き始めた。
「フフ、まさに人生のようでございますな」
やばい、なんかカッコいい。イゴールさん変な顔なのに言うことがかっこいいな。
カードが1枚めくれると、死神が逆さまになっている様な絵が出てきた。
「ほう……近い未来を示すのは“死神“の逆位置。“再スタート“や“新展開“といった意味を持っておりますな」
死神だから悪い事だと思っていたのに意外と良いかも。
「それ以外には“死後の再生“ですかな。」
え、やっぱり良くない!俺死ぬの?まだ若いのに……
「そして、その先の未来を示しますのは……」
もう1枚めくれると、ダーツの的みたいな絵が出てきた。
「“運命“の正位置。“変化“そして“出会い“を示すカード……実に興味深い」
なんか変な結果だな、良いのか悪いのかよくわからない。
「貴方は、これから新たな地にて新たな出会いが訪れるようだ」
ええ!?社畜の身分であるこの俺が何処に行く事になるんだ?
もしかして、仕事で大失敗して何処かに飛ばされるのか?
「近く、貴方は何らか“契約“を果たされ、再びこちらへおいでになることでしょう。私の役目はお客人の手助けをさせて頂く事でございます」
うーむ、話がわからなくなってきたぞ。夢にしてはやけにリアルだし、本当に何か良くない事が起こるのかもな……
それと、イゴールさんの隣にいる美人さんは誰なんだ?占いの結果よりもそっちの方が気になる。
「……そうですか。肝に銘じておきます。それと……、お隣にいる方は?」
「おっと、ご紹介が遅れましたな。こちらはマーガレット。同じくここの住人でございます。」
「お客様の旅のお供を務めさせて参ります。マーガレットと申します」
マーガレットさんって言うのか。金髪美人ってこの事を言うんだな。
「詳しくは追々に致しましょう……。ではその時まで、ごきげんよう」
せっかくマーガレットさんと話が出来ると思ったのに……。
意識が覚醒していく……。