オラリオで再スタートするのは間違っているだろうか 作:抹茶ミルクプリン
目を覚ますといつもの自分の部屋だった。殺風景な部屋。テレビとゲーム機、俺のいるベッドしかない。
ぼんやりした頭を醒ます為に、洗面台へ急ぐ。
「……いてぇ」
少し頭痛がする。昨日はそんなに飲んでないんだけど。
「変な夢だったな……」
いつもなら夢なんてすぐに忘れてしまうけど、今でもはっきり思い出せる。
ベルベットルームか……。なんかまた夢に出てきそうな気がした。
「そういえば、今何時だっけ?」
ベッドまで戻り、スマホを手に取る。そして、時計を確認……
「ヤバい!8時30分じゃねーか!?遅刻する!」
大急ぎでスーツに着替え、部屋を出た。
ヤバい、このままだと間に合わない。遅刻したら上司に怒られる。まずい。
アパートの階段を降りると丁度タクシーが停まっていた。
「タクシーなら間に合うな」
急いでタクシーまで走り、乗り込んだ。
「⚪︎⚪︎駅の近くの⚪︎⚪︎ビルってわかります?そこまで急いで欲しいんですけど」
少し息を切らしながら、勢いよく話した。
「わかりますよ、それじゃあ出発しますね」
「お願いします!遅刻すると、まずいんで急いで下さい!」
「わかりました、急ぎますね。シートベルトだけはお願いします」
間に合うか?ギリギリいけそうだ。
間に合うと思ったら、気が抜けて少し眠くなってきた。
「すみません、着いたら起こしてもらってもいいですか?」
「わかりました、お休みになって下さい」
「ありがとうございます」
すぐに意識は遠くなっていった。
「……さん、……たよ、お客……、…ま…よ」
「んん?」
眠ってたみたいだ。疲れが溜まってるな、これは。
タクシーの運ちゃんに起こされなかったらずっと寝てる自信がある。
「お客さん、着きましたよ」
「ああ、すみません。完全に眠ってました。いくらでした?」
「お疲れみたいですね。3700円になります」
「はい、4000円で。お釣りはとっといて下さい」
「ありがとうございます。行ってらっしゃい、お気をつけて」
タクシーから出て時間を確認してみる。8時55分。何とか間に合った。
「って、何処だ?ここは?」
周りを見渡すと草原にいた。ビルなど見当たらなく、1面草だらけ。
さっきのタクシーも見当たらない。影も形もない。俺はまだ夢を見ているのか?
ありきたりだが、ほっぺたを抓ってみる。
「痛い、夢じゃない。なん…だと…!?じゃあ、ここは何処だよ!?明らかに日本じゃないだろ!?」
昨日から俺はおかしい。変な夢も見るし、訳が分からない。
とりあえず落ち着け、俺!まずは状況確認だ。
今、持っている物は、カバンに財布、スマホだけか……
スマホは当然……圏外ですよねー?カバンの中には、会社の資料のみ。
「どうすりゃいいんだよ……」
もう1度周りを見渡してみる。
すると、かなり遠い所に“塔“の様な物が見えた。
「……あれは?……人がいるかも」
このままここに居ても何も変わらない。とりあえず、俺はそれに向かって歩き出した。
しかし、歩けども歩けども全然近付いている感じはしない。
ワイシャツが身体に張り付いて気持ちが悪い。
ふとスマホの時計を見てみると、16時を過ぎていた。
足が棒の様になっている。ここまで歩くことなんていつ以来だ?
やっと目的地に近付いて、安堵の思いで歩く。
それにしてもでかい街だな。周りに何も無いせいか余計にそう思える。
門が見えてきた。門番らしき人が2人。他にも街に入ろうとする人がチラホラ見えた。
なんかゲームの中に入ったみたいだな。
そういえば、俺ってこの街に入れるのか?言葉って通じるのか?
明らかに周りの人達と格好が違って浮いている気がするし……
まずは列の最後尾に並んでみた。
目の前には白髪の少年。この少年は出稼ぎだろうか?
少年が後ろを向き、俺と目が合い笑顔を向ける。
「お兄さんも冒険者になりに来たんですか?」
真っ赤な目が純粋に好意を向けてくる。
冒険者?ますますゲームみたいじゃないか。
でも、冒険者か?なかなか心に響く言葉だ。
このままこの少年に色々聞いてみるか。
「ああ、そうなんだよ。田舎から出て来てね。冒険者になってお金を稼ごうと思ってね」
とっさに思いついた言葉を並べる。ゲーム好きの経験がここで生きてきた気がする。
「ただ、あまり当てもないからどうしようかと思ってね。君も冒険者に?」
「はい、そうなんです!」
凄く良い笑顔だ。お兄さんには眩しすぎるよ……
白髪で赤い眼をした少年は、なんだか兎みたいに思えた。
「えっと、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「はい、なんです?」
キョトンとした顔で首を傾げる少年。
本当に兎みたいだな。
「冒険者になるにはどうしたらいいか知ってる?何も分からずに出てきたからどうすればいいか困ってたんだ……」
「僕もあんまり詳しく無いんですけど、ギルドに冒険者登録をして、神様に眷族にしてもらうみたいです。」
「神様?」
「ここには神様がたくさんいらっしゃるみたいで、神様に神の恩恵《ファルナ》を与えてもらってダンジョンに潜るみたいです。僕も田舎から来たんで神様はみたこと無いんですけどね。」
そういいながら、少年は戯けた。
「そっか、ありがとう。助かったよ」
完全に異世界確定だ!
日本に戻れるのか?そもそも戻りたいのか?
戻った所で、社畜人生が待ってるだけだし、このままここで冒険者としてやっていこうかな。
なんて思いながらいると、ふと昨日の夢を思い出した。
(貴方は、これから新たな地にて新たな出会いが訪れるようだ)
これのことかよ、イゴールさん!
仕事の出張じゃなくて、まさかの展開。
「あの……」
少年がモジモジと何か言いたそうにしている。
「あの……僕、ベル・クラネルって言います。……お兄さんの名前は?」
「ああ……ごめん、俺は……」
なんて名乗ればいいんだ?ニシカド・ショウ?ショウ・ニシカド?
西門だからサイモンでもいいな。
「ショウ・サイモン。ショウって呼んでくれ」
「ショウさんですね!僕もベルでいいです」
「よろしく、ベル。呼び捨てでいいぞ。それに敬語じゃなくていい。冒険者の同期になるわけだしな」
「そうですね……、いや、そうだね。ショウ!よろしく!」
なんだか凄く嬉しそうだ。こっちまで笑顔になってくる。
「そういえば、ショウって何歳?僕とそんなに変わらない様に見えるけど……」
んん?ベルって13〜15歳くらいだろ?流石に日本人が童顔に見えるからって変わらない訳ないだろう。
ちょっと、鏡を取り出し顔を見てみるか。
「……っ!?」
え?どういうこと?高校生位の時の顔が写し出された。
若返ってる。明らかに15.16歳位だ。
「どうしたの?」
ベルが少し小さめな声で話しかけてきた。
「……ごめん。なんでもないよ。俺は16歳だ。ベルは?」
「そうなんだ!僕は14歳だよ。でも、ショウって大人っぽいよね。お兄さんって感じがする」
そりゃそうだ……、中身は25歳だからな。
ベルは14歳か。見た目通りだ。
「ベルはまだまだ子供っぽいな」
「そんなことないよ!」
「そうやってムキになるのが子供ってことだよ」
「……うう。あっ!もう順番が回って来たね!」
話を逸らしたな……。
確かにもう順番みたいだ。門番の人が話しかけてくる。
「ようこそ!オラリオへ!冒険者になりにきたのか?」
へえ、この街はオラリオっていうのか。覚えておこう。
「はい!そうです!」
ベルが勢いよく答えた。
「そうですね、その為に来ました」
俺も続けて答える。
「そうかそうか!頑張れよ!ギルドはあのでかい塔《バベル》にあるからな。君達に幸あらんことを」
門番の人が笑顔で教えてくれた。
まずは早速バベルに行ってみるか。
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
ベルは相変わらずハイテンションだ。よっぽど嬉しいんだろうな。
俺もこれからのことを考えるとテンションが上がってくる。
あっ!お金がない。どうしよう。
門を潜ると、オラリオの街並が見えてきた。
異世界だからか、色んな人種がいる。凄く活気が溢れている。
これだけ人がいるのを見るのは久しぶりだ。
「よし!ベル!一緒にギルドに行こうか!」
「うん!」
こうして、俺達はバベルへと足を向けた。
やっと、オラリオに到着。そしてベル君登場。
小説書くのは難しいですね。