シドニアの似非騎士   作:駄作製造工場長

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第2話

自機を撃破されて宇宙漂流した先が別世界っぽい。あまりにもぶっ飛んだ展開だ。ジオンも連邦もない世界なので今までの行いを処罰される心配はない。常日頃からジオン残党の意義について疑問を抱き、いつかは普通の生活に戻れたらな、と心の中で不平不満とささやかな願いを述べていた。自由になりたいと願う俺に対して粋な神様が願いを叶えてくれたのだが、こういう叶え方は予想外であった。喜ぶべきか非常に悩む。家族恋人は居ないので未練はないが即座に切り替えは出来ない。頭を抱えて唸っていると、サマリから「もうすぐシドニアに到着するぞ」と言われた。モニターの方に視線を動かすと、漆黒の空に灰色の柱が浮いていた。目測で判断するにかなり大きい。似た様な大きさのモノを挙げるとなるとコロニーぐらいしかなさそうだ、それぐらいデカい。

 

「驚いたか?」

 

 

俺の様子を察したサマリが誇らしげに言う。

 

「戦艦級だと思っていたから、この大きさは驚きだ…ん、もしかして移動してないか?」

 

俺達の進行方向とは別方向にシドニアが僅かに移動しているのが確認出来た。すぐ様サマリに質問をすると「そうだ」と帰ってきた。先程言っていた「帰還限界線」とはそういう意味だったのか。アクシズという移動要塞に住んどいてあれだが、移動型のコロニーとは相当にぶっ飛んだシロモノだ。重力制御とか大丈夫なのか?

 

シドニアについてサマリに矢継ぎ早に質問をしていると、いつの間にかシドニアの内部のモビルスーツ格納庫と思われる場所に到着していた。

 

「一応聞くけど俺って歓迎されてる?」

 

現時点で一番仲の良いサマリに質問をする。

わざわざ救助をしてくれたのでそうだと思いたい

 

「ガウナでなければ歓迎してくれるだろう。何せ八世紀ぶりにシドニア以外で人間の生存が確認出来たんだからな」

 

サマリのトンデモナイ発言に思わず顔をしかめる。八世紀ぶりとはスケールがデカい。八世紀前に人間が宇宙で生活していたなんて話を聞いた事がないので、俺が生きていた頃より少なくとも八世紀は未来なのだと推測出来る。別世界に漂流していたと思っていたが、もしかしたら未来なのかも知れない。別世界よりも現実的だ、八世紀以上寝てたと考えれば納得出来る……うん、無理だ、納得出来ない。

 

「滅茶苦茶頭が痛い、感応部分は強化してない筈だぞ…」

 

意味不明な状況に再び頭を抱える。今までの人生で感じた事がないぐらい頭が痛い。まるで万力で締められているみたいだ。究極のエースパイロットを目指して自身の体を強化して貰った筈だったのだが、いつの間にか危ない方の強化をされていたみたいだ。あっち系はヤバイ奴しか居ないから嫌だ。俺はあいつ等みたいに大きな失態を犯してないんだぞ…

 

「おい貴様、早く出ろ!!」

 

突然怒鳴られる。サマリの声ではない。男の声だ。ゆっくりと声のする方を向く。既にサマリが機体から出ていたのか、コックピットハッチが開かれている。開かれたハッチの先にはサマリと能面みたいな仮面を被った男が複数人居た。警備兵なのか全員が刀を携えている。軍事施設での発砲は予期せぬ事故を引き起こす可能性がある、だからといって刀を携えている警備兵は初めて見た。

 

「申し訳ない直ぐに出る。一応言っておくが貴方達に対して事を荒立てる気は一切無い、だからもう少し友好的にしてくれないか?」

 

両手を上げてゆっくりとコックピットから出る。

視線だけを動かして格納庫内を見渡す。パッと見では一般的よりやや広めの宇宙船のモビルスーツ格納庫といった感じた。サマリが乗っていた機体がズラリと並んでいる。どうやらシドニアの艦載機は1種類だけらしい、只の救助で4機も使っていたし、かなりの数を揃えているのだろう。

 

「艦長がお待ちだ。付いて来い」

 

仮面を被った男達が俺を取り囲む。付いて来いと言いつつ、俺の両脇を掴んで半ば強制的に誘導をする。俺を救助してくれたサマリ達にお礼を言う間もなく誘導される。友好的な扱いをお願いしたのだがこれでは捕虜だ。仮面男達をぶん殴りたい気分だったが確実に面倒臭い事になるので止めた。

 

 

 

 

 

 

仮面男達に誘導されて20分以上が経過した。

階段やエレベータを使って上へ上へと移動をしている。居住区近くを通っているのか結構な頻度でシドニアに住んでいる人達とすれ違う。すれ違う人達から奇異な目で俺を見ている。被害妄想だと思いたいがサマリが先程言っていた「八世紀ぶり」という単語を聞いてしまっているので、被害妄想では済まないのだろう。これじゃあ市中引き回しか、捉えられた宇宙人みたいだ。思いもよらない待遇に溜息が漏れる。仮面男達の歩みが止まる。

 

「着いたぞ」

 

仮面男の一人が告げる。

だからなに?口には出さずに視線で訴える。

 

「ここから先で艦長がお待ちだ。私達はここから先に行く事を許可されていないから、お前が一人で行け。良からぬ行動は絶対に起こすなよ?」

 

説明を受けた後に仮面男達からの拘束が解かれる。警備兵が先にいけない?艦長は一人で待っているのか?そんな疑問を思い浮かべながら、仮面男の言う通りに目の前の階段を一段ずつゆっくりと上がる。

 

階段で上がった先はドーム状の形をした部屋だった。ドームの素材が透明なのか、ディスプレイなのかは分からないが漆黒の空と数多の星の光が見えた。慣れ親しんだ宇宙だ。外の様子に集中してしまったが、部屋の中央に一人の女性が立っていた。俺を乱暴に誘導した男達同様に仮面を被っている。この女性が艦長なのだろう。なんとなく、おかっぱ頭の指導者を連想してしまったのは何かの危険信号なのだろうか?

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