シドニアの似非騎士   作:駄作製造工場長

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第3話

「シドニア艦長の小林だ」

 

仮面を被った女が刃の様な鋭い口調で簡潔に告げる。それ以上は何も言わない。次はお前が自己紹介しろと言う事なのだろう。

 

「ジオン公国軍特殊遊撃部隊所属、クルド・ナカザト中尉です」

 

自身の正体について上手く説明出来そうになかったので、残党でもテロリストでもない正式に認められた所属名を明かした。下手に詳しい説明すると心象が悪くなりそうな気がしたからだ。

 

「聞いた事ない組織名だ。証拠はあるのか?」

「私が乗っていた機体に証拠があります」

 

俺が乗っていたモビルスーツは謎兵器で撃沈、この場に残っているのはコックピットブロックのみだが多数のデーターは残っている。俺の話が真実に近いと気が付いたのか、小林が「まさかな…」と、呆れ気味の声を小さく発した。明らかな面倒事だもんな。

 

「少ない情報からではあるが、貴様に陥った状況に一つの推測が導き出されたのだが…聞きたいか?」

「聞くまでもないでしょう」

 

既に気が付いている事を他人に指摘されるのは苛つくので遠慮する。

 

「お互いの歴史の違いについては後でじっくりと話せば良い。それよりも先にシドニアと貴様の関係をハッキリさせないといけない…そうだろ?」

 

早速本題か、腹の探り合いは苦手だが好き好みは言ってられない。後ろ盾のない交渉で下手をすれば自身の持っている知識を吸い出された挙句に使い捨てが落ちた。最悪の結果を想定していると、小林が自身の仮面に手を付けた。

 

「不愉快だ…駆け引きはなしにしよう」

 

小林が仮面を外した。素顔は良くも悪くも普通だ。好みのタイプだけど。仮面を外したという事は…腹の探り合いは止めろという意思表示なのだろう。不愉快にさせた気などなかったのだが…

 

「どこら辺が不愉快だった?」

 

小林の言う通りに自然体で話す。やれと言われて、躊躇なくやってしまう自分の単純さに笑いたくなるがそういう性格なので仕方がない。

 

「私に媚を売ろうという気持ちに溢れていた。気が付いていないのなら教えてやるが、私は救助部隊と貴様との会話を聞いていた」

 

素の俺がバレていたのか。

よく考えればモニタリングされてるのが当然だ。

指摘されるまで気が付かないとか終わってるな。

 

「あ~演じるなら徹底的って訳か」

 

半ば自分に言い聞かせる様に呟く。

 

「私は素直な人間は好きだぞ。それと、もう一つ言わせて貰うと貴様は考えている事が顔にそのまま出ている。察するに世渡りが下手だったのだろう?」

 

小林が笑う。

小馬鹿にされた気分だが否定出来ない。

それにしても不信感が顔に出ていたのか…

昔の俺にも伝えて欲しかった。

 

「下手じゃなくて壊滅的だな。

指揮官の不信を買って死地に飛ばされた経験もある。まぁ…その指揮官の方が先に死んだけど」

 

小林に昔話をする。昔話をペラペラと話す性格ではないのだが、此方の目をじっくりと目詰めてくる小林に圧倒されて話す気になってしまった。

 

宇宙世紀0079年にジオンは連邦と戦争をしていたが、俺から言わせればジオンはもう一つの争いを繰り広げていたと言える。権力争いだ。ギレン派、キシリア派、ダイクン派などといった派閥が連邦を屈した戦後を見据えて静かに戦力を蓄えていた。生還率の低い作戦を派閥間で押し付けあった。そうでなくても自国民の死を避けたいのが国家としての性質だ。そうして行き着いた先がジオン公国への永住権を求めた外人部隊だ。その中でも特殊遊撃部隊は最悪の部類だったと言える。名前は格好良いが、要するに体の良い便利屋だ。史実に残る様な戦場には必ず参加したし、全滅が前提の作戦にも参加した。あの戦争で生き残れたのは奇跡以外の何モノでもないだろう。全てを聞いた小林は一瞬だけ哀れんだ表情を浮かべたが、すぐに艦長に相応しいキリッとした表情に戻った。

 

「腕は確かな様だな」

「どうかな?味方を盾に生き残ったクズかもよ」

 

小林から多大な評価を貰うが喜べない。昔を思い出して落ち込んでいるからだ。心の中では整理をしていた筈だったのだが、こんな気持ちになるとは我ながら驚きだ。俺の心中を察してくれたのか小林が「話を戻そう」と告げた。話題を逸らしてくれたのだ。丁度いいタイミングなので、サマリに聞けなかった事を聞こうとする。「ガウナ」についてだ。察するに敵部隊の呼称だろうが…

 

「サマリから聞いたがシドニアはガウナと戦って…いや、ガウナから逃げているのだろ?そのガウナとは一体何なんだ?」

 

小林が「流石だな」と呟く。ガウナとシドニアの関係を当てたからだろう。買い被り過ぎだ。普通に考えて移動式のコロニーで戦地に向かう馬鹿はいない、加えて帰還限界線ギリギリでの救助活動をモビルスーツ(?)で行い、シドニアの格納庫を観察した際にモビルスーツ(?)を輸送可能な戦艦の類がなかったのでシドニアはアクシズと違って移動要塞の機能を有していない。そうなるとシドニアは移民船の類なのだろうって話だ。

 

俺の質問を受けて小林がガウナについての説明を始める。人類が初めてガウナを観測したのは共通紀元2109年。突然現れたガウナは当初は人類に危害を加えなかったが、 2371年にはガウナの集合体である衆合船が地球に多数降下、人類の検討虚しく地球を真っ二つに破壊した。シドニアとは地球が破壊された際に脱出に成功した播種船の一つだそうだ。播種船は500隻近くあったそうだが、散り散りになっているそうで別の播種船と交信したのは8世紀近く昔との話だ。その播種船も最後に交信した内容が別れの言葉に近かったので沈没したらしいとの事だ。

 

地球を真っ二つに割られて、地球を脱出した播種船も半ば各個撃破。終盤のジオン公国も吃驚の敗戦一方だ。その理由はガウナの特性にあるとの事だ。星の数程あると言われているガウナに対して、有効的な武器はカビのみ、しかもカビはシドニアに28本しかない超貴重武装。ちなみにそれ以外の兵器では僅かな時間稼ぎしか期待出来ない。そんな出鱈目生物が相手では勝ち負けすら馬鹿らしい。もしも俺が居た世界に現れたとしても結果は似たようなものだろう。初めて「ガウナ」という単語を聞いた際に単なる(当然人間が所属する)敵部隊の呼称かと思ったが、地球外生命体とは予想してなかった。それ相手に俺が役に立てるとは思えない。

 

「そうでもないさ。先程も言ったが私達が最後にガウナと戦ったのは100年も昔の話だ。自分の目でガウナを見た者でさえシドニアには少数しかいない」

 

他の奴よりマシだ理論か。それにしても100年前の出来事なのに少数の人間が目撃した事があるのか。俺達の世界よりも医療が発達しているみたいだな。もしかすると不老不死が可能なのかも知れない。

 

「貴様の様な実戦経験者は貴重な戦力だ。

クルド・ナカザト、私にお前の力を貸してくれ

当然、可能な限りの対価は支払おう」

 

随分な高待遇だ。戦力に難があるデラーズ・フリートやネオ・ジオンでさえ、これだけの待遇は得られなかった。降って湧いてでた待遇に驚く。こういう場合どうすればいいのか分からない。お前が欲しいとか言っていいのか?…流石にボコられるか。そもそも突然求婚するとか我ながら意味が分からない、相当焦っているのか?

 

悩んだ挙句に人として最低ライン、衣食住を対価として求める事にした。俺の返答が面白くなかったのか小林に「つまらない男だな」と言われて鼻で笑われた。酷い言われようだ。俺の衣食住を充実させる大変さを知らないようなので教える。

 

「言っておくがシドニアの人間が1週間に一度しか食事をしない事をサマリから聞いている。そして俺は人の三倍は食う、どうだ?」

 

「…それは大変だな」

 

小林が呟く。

シドニアの食料について心配しているのだろう。

 

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