GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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 2016/9/1

 唐突過ぎる展開だったため、全文書き直ししました。
 ご迷惑をおかけしますが、どうかご理解のほど、宜しくお願いします。


第14話

 扶桑国使節団の日本滞在、二日目。

 

 今日から、使節団による日本の文物視察と調査が始まる。

 滞在中は主に閣僚や関係者たちとの会談や、工場や研究所などの視察が予定され、神隠しにあった者たちは故郷や関わりのあった地に赴くことになっている。

 

 あとは神隠しにあった者達の遺品を彼らの故郷へ持っていき、その子孫や出身地の長らに引き渡すことだが、これは難航していた。

 武将の、例えば織田や楠木らしき人物が遺した品は誰が管理するべきなのか、また農民や地侍のものは良品では無いが、当時の事を知る史料になるため何処が管理するべきなのか。それで揉めているのである。

 

 また日本にいる間、守人は各地を回る間に一度くらいは己の人間だった頃の故郷へ行ってみようと考えていたが、それが何処なのか全く思い出せないでいた。よくある田舎のひとつ、と記憶しているが、その名前や場所までは分からないままである。

 まあ、時間は腐るほどあるし、そのうち分かるだろうと考えているので切羽詰まった問題という訳でもなく。

 遺品の引き渡しの問題が片付くまで、迎賓館の庭で太郎や不破と一緒にのんびりと囲碁でも打ちながら過ごしていた。

 

 また色々と振り回されていた伊丹たちは今日が日本滞在の最終日であり、最後は休暇らしく過ごしたいとの事で買い物などに行き、昼過ぎに特地に戻ることになっていた。

 

 

 一方、日本政府が用意した会議室にて。

 

 日本国からは、本位首相と首相補佐官の白百合、そして嘉納大臣らが。

 扶桑国からは、大使である菊池と補佐官、それと数名の学者が出席し、会談を行っていた。

 

 昨日に日本国と扶桑国の間で結ばれた<友好交流協定>の内容は、簡単に言えば二国間の人材を相互に派遣し、交流を図るというものである。

 事前会談の時にはこの中に二国間の貿易を盛り込もうとする話も出たが、問題もあって一部のみとなった。

 

 扶桑国はファルマート大陸から遠く離れた島国である為、物資の輸送手段が飛空船か帆船によるピストン輸送しか無い。前者は数が三隻しかいないうえに、そもそもの積載量が少ない。後者は危険な海域を通らなければならない為、沈没の恐れや輸送に時間が掛かってしまう。

 太郎ら天龍による輸送という手段もあるが、幾らなんでも天龍に雑用させるのは失礼に当たるし、こんな事を言えるのは守人ぐらいである。

 

 また日本も<門>があるのが首都のど真ん中であり、現在は特地派遣部隊で消費する物資輸送で一杯なのだ。

 ここに貿易品の輸送も加われば間違いなく周囲の道路事情が麻痺するのが目に見えていた。

 

 だから人材交流程度の話しか進められなかった、という面もあった。

 

 さて。

 この人材交流に当たり、扶桑国側からは主に文化や技術の交流と歴史調査を。日本側からは、特地における資源調査や文化交流の協力を要請していた。

 

 扶桑国は自国の源流となった日本の文化に興味を持っている。かつて神隠しによってやって来た人々は今もなお尊敬されており、そんな彼らの故郷である国を詳しく知りたいと考えていた。

 また、日本がどのような歴史を辿り、どのような教訓を残したのか。それを得ようとしていた。

 

 例えば、近代工業である。

 

 日本では幕末から明治にかけて西洋に追いつこうと様々な文化や技術を吸収していった。ただ真似するだけでなく、自国の風土に合うように改良していき、自国の文化の一つとしていった。

 その一方で、急激な鉱山開発や工場建設による鉱毒病や公害が発生したのも事実である。

 

 扶桑国では重工業は発達しておらず、工業と言えば職人が一つ一つ手作業で行うものである。今後、扶桑国が日本の技術や文化を取り入れた際に、日本の歴史と同じような事が起きかねないのだ。

 それに自国と日本との技術格差を分かっている為、まずどの様な技術や文化なら自分達でも扱えるか、また受け入れられるかを確かめなければならなかった。

 

 この日の会談はこれらの微調整を行っており、議論がひと段落した所で日本側から一つの提案がなされた。

 

「アルヌスの丘の開発、ですか」菊池は訊ね返した。

「はい。我が国は現在、帝国と戦争中であります。ですが、我々にとっては全く未知の存在です。その為、アルヌスの丘を拠点にし、周辺地域の住民らと接触を図りながら情報収集を進めていました」

 

 本位は続けて説明する。

 

「ですが、貴国と国交を結ぶ事ができ、また先日に帝国の第三皇女殿下と会談し、講和という可能性も出てきました。そこで貴国との交流の為の拠点、及び帝国の講和派の支援としてアルヌスの丘に街を造ろうと考えております」

 

 菊池は思案する。悪くない、むしろ良い話だと思える。だからこそ引っかかった。

 

「一つ、よろしいですか?」菊池が訊ねた。「何故、<門>の事を知ってなお、アルヌスの丘に街を造ろうと考えたのですか?」

 

 守人が行った<門>の解析結果は、直ぐに両国の関係者らに知らされていた。

 その内容は、認めがたいものだった。

 

 <門>を繋いだままにして置くと、地震や生命の壊死といった異変が相次いで発生し、そしていつか世界が崩壊してしまうというもの。

 しかも、ただ<門>を破壊すれば即座に揺り戻しによる災害が発生。一年以内には安全な方法で<門>は閉じなければならない。

 そして<門>の再接続には冥府の神ハーディの力が必要であるが、招待状が無ければ会うことすら出来ない。

 守人曰く「時間をかければハーディの力が無くても<門>の再開通は可能」と言っていたが、それが何時なのか全く分からないのだ。

 現状では、<門>を閉じたら二度と開通する事は出来ないのである。

 

 この調査結果を信じるとなれば、日本、いやこの世界からすれば<門>、そして特地の価値が大きく下がってしまったのである。

 

 特地の資源を得るには、最低でも数年の歳月をかけて開発しなければならない。一年以内に<門>が閉まり、再開通出来るか分からないとなれば、投資しても見返りが無いのだ。

 

 だからこそ、菊池には無駄だと思われる特地の開発に日本政府が本腰を入れて行うのが分からないのである。

 

「勿論、私どもも<門>の事は聞いております」嘉納が言った。「だからこそ、どの様な事になっても良い様にアルヌスの丘に街が必要なのだと考えました」

 

 日本政府は<門>についての報告を聞かされ、直ぐに首脳陣と有識者を集めて対策を考える事になった。

 

 その結論が、アルヌスの丘に自衛隊が自活出来る拠点を造り出す事だったのだ。

 

 勿論、直ぐに自衛隊の撤退させ、門を封鎖するべきという意見もあった。

 だが、ハーディなる冥府の神をどうにかしない限り<門>は事実上何処にでも繋げられる為、帝国が再び侵攻して来る可能性がある。

 

 それに、<門>の封鎖となると国内のみならず諸外国の反発が大きいと予想できるのだ。 

 現在の日本は、<門>が現れた影響で世界各国からの投資が盛んになっており、景気も上向きに転じていたのだ。これを考えてしまうと、調査結果を馬鹿正直に信じて<門>について政府の公式見解として発表もしづらい。

 

 また公表しても「日本は特地の利益を独占しようとしている」「日本は時勢が悪くなったから門を破壊した」というような批判が出るのがオチだ。

 そうなれば、国際社会から孤立し、経済も悪化して日本の将来は真っ暗となる。それは避けなければならない。

 

 まあ、本当かどうか分からない未来の事より、目の前の問題(特地の権益や経済。そして予想される野党、諸外国からの批判などを躱したい、等々)の方が重要に思う者が多いのもあった。

 

 結局、今直ぐに結論を出すべきでは無い。つまり一旦先延ばしして現状維持に務め、情勢を見極めようという事になった。

 それでも何もしないのは拙い為、万が一自衛隊が特地に取り残された場合を考え、再開通まで自活出来る街を造ろう、という事になったのだ。

 

「それと何ですが……」

 

 嘉納は口ごもった。言いづらい内容だった。

 

「嘉納さん、それは私が」意を決した表情で、本位が言った。そして、菊池に顔を向ける。

「誠に無様な話ですが、我が国では扶桑国の方々の身は安全とは言い難いのでして……」

 

 非常に情けない話ではあるが、それが実情であった。

 

 日本に<門>が出現してからは、世界情勢が一変した。

 表向きは平穏と言えたが、裏を見れば米中露、そしてEUから露骨な圧力をかけられている。中には官僚達が工作員によるハニートラップに引っかかり、また行ってきた不正の証拠を突き付けられ、情報を横流ししている者も少なくないのだ。

 そこに扶桑国という存在が現れ、しかも日本と国交を結んだとなれば面白い筈がない。

 警備の為に公安や自衛隊を動かしていたが、各国の動きが複雑化してきており、どう動くのか、全く予想がつかなくなっていたのだ。

 

 その事を聞かされた菊池は「此方に来てからの妙な視線はこういう事だったのか」と内心納得する。

 他の武者からも似た報告が相次いでおり、特に大鳥大尉からは「団員の安全確保の為、殺して来てもいいですか?」と言い寄られていたのだ。

 

「そして<門>の事を考えますと、大使館はアルヌスの丘に建てるのが適切だと判断しました。アルヌスの丘でも日本の情報を集められるようにしますので、これが一番だと思います」

「成程……」

 

 確かに、アルヌスの丘でも情報が収集できるなら有り難い話である。

 

 元々、日本政府は銀座の<門>の先は未確認だった日本国内という解釈で進めて来た為、アルヌスの丘に大使館を建てても問題無い。

 現代の地球社会はネット社会である為、電源と回線、それとパソコンさえあれば離れた場所でも情報収集なら可能である。

 

 また近場の資源、特に石油の所在地は判明している為、今から小型でも掘削機械と精製設備を運び込めばある程度の消費は賄えるようになる。こういった設備の建築作業や稼働中の様子を見ることも出来る。

 何か日本に用事があったとしも、<門>を通れば直ぐに行ける。そして、諸外国も邪魔しづらい。

 

 それと帝国対策として、特地では珍しい品物、例えば紙や文房具、酒や食器類など。また女性向けに色鮮やかな布や下着、化粧品や装飾品などを売りつけようと考えていた。

 これらと交換して食糧を手に入れたり、帝国の貴族や議員らを講和派にさせようという狙いがあった。

 

 これは協力するべきだろう。菊池は判断した。

 

「それでしたら、我が国も微力ながら協力しましょう」

「有難うございます、菊池大使」

 

 こうして、両国の手によって、アルヌスの丘に一つの街が造られることになった。

 

 

 しかし、その後の話である。

 

 街の建設がひと段落した頃、扶桑国の面々から「日本から一方的に利益を享受しているだけだ。何かお返しをしなければならない」と言う様な論調が高まり。

 

 友好の証としててばさきや剣歯虎の番が日本政府に寄贈されたり、劔冑に使用される様々な甲鉄のサンプルや日本では失伝した技術の解説書が送られたり。

 また正宗が刀工として太刀と脇差を打ち上げて銘を切り、守人が精緻な細工を施したものが<やんごとなき御方>に献上されたりして日本側の胃を散々に痛めつける事になったのだが、この時はまだ誰にも分からなかった。

 


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