GATE×オリ主&オリ国家   作:オシドリ

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第23話

 この日の昼間。

 ロゥリィは何時もの様に捕まえた小悪党の処理をミューティに押し付けると、気分転換にPXに立ち寄った。

 

「あ、聖下。こんにちは」

「こんにちわぁ」

 

 入店したロゥリィは受付の猫耳メイド、メイアの挨拶に軽く答えると、店の奥にある本棚にレレイが本を立ち読みしているのに気付いた。

 

「あらぁ、レレイ。お買い物かしらぁ?」

「ん、注文していた本を取りに来た」

「ふぅん」

 

 レレイは小さく頷くと、手に持っていた本を掲げて見せた。表題を見ると「符術の基本」と素っ気なく書かれた和とじ本だった。どうやら扶桑国の魔術について書かれた本であるらしい。

 

「この本に書かれているフジュツはファルマートの魔法と違い詠唱では無く、予め小さな紙に記入された魔術を一節で発生させる事ができる。大変興味深い」

 

 説明するレレイは相変わらずの無表情である。だが、説明する声だけはほんの僅かであるが、弾んでいた。相当楽しみにしていたようだ。

 

「あれ、二人とも買い物?」

「こんにちは、皆さん」

 

 声を掛けてきたのは、テュカとユノの二人だった。生活用品を買い足しに来たようだ。お互いに軽く挨拶する。

 テュカとユノの二人はそのまま店内の商品を物色していき、手に取ってあれこれと楽しそうに会話をしていた。

 その様子を見て、ロゥリィは安堵した。 

 エルフ達がアルヌスの丘に来た当初は酷いものだった。襲撃してきた炎龍から避難させられた女子供だけの僅か十名しか生き残れず、全てを失い、絶望していた。

 その中でも最も立ち直りが早かったとされるのが、テュカであった。彼女自身、アルヌスに来た際は炎龍の眼に突き刺さっていた父ホドリューの矢を眺めていただけだった。

 だがある日、彼女は全く動こうとしない仲間を叱り飛ばし、仕事を割り振り、率先して動く事で周りを引っ張り始めた。これに亡羊としていたエルフ達も、難民キャンプでの慣れない生活と日々の忙しさで悲しみが少しづつ薄れ、立ち直っていった。今ではもう大分持ち直しており、自然な笑顔も出る様になっていた。

 買い物が終わると皆でアイスを買い、店先で暫くおしゃべりを楽しむ。

 

「あ、そうだ」

 

 アイスを食べながらテュカが思い出した。

 

「ねぇ、さっき大通りが騒がしかったけど、何かあったの?」

「ああ、あれねぇ。ほら、またあのダークエルフの女が絡まれてたのよぉ」 

「あー……」

 

 その一言で察した。

 ダークエルフの女、ヤオは到着した初日の事(酒場でロゥリィに喧嘩売る&ダークエルフ謹製の護符付き特大の金剛石を見せびらかす)と、自身が肉感的な美女である事もあり街中の小悪党から狙われていた。

 本物の悪党ならまず剣歯虎(サーベルタイガー)に翼竜、そして死神ロゥリィが警務に当たっているアルヌスには近寄らないので、粗野で腕も大した事無い小物しか居ないのだ。そんな奴らがヤオの事を聞きつけ、金剛石だけでも手に入れれば領地付きで爵位が買えると夢想してあの手この手でつけ回しているのだ。

 まあ、小物なので腕も手順も稚拙で、直ぐに捕まるような連中なのだがいかんせん数が多い。お陰で小物ばっかり相手にさせられるロゥリィは、非常にストレスが溜まっていた。

 

「もっと歯応えのある奴、居ないかしらぁ」と、ロゥリィが呟いた瞬間、街中に警報が鳴り響いた。

 

 即座に非番だった自衛官や扶桑国兵が車に飛び乗り、駐屯地に走り去っていく。それ以外の大通りに居た者達は驚いて立ち止まり、空を見上げた。避難訓練や地震の時にも鳴ったが、今日は特に何も無い筈だ。

 

「何だろう?」

「警報?」

「……みんな、避難した方が良いわぁ」

 

 ロゥリィが言った。何とも言えない妖艶な笑みを浮かべている。赤い瞳を爛々と輝かせ、犬歯を覗かせる唇の色が薄紅から暗い深紅に変化していた。

 

「えっ、何が起きるの?」

 

 テュカの問いに対し、ロゥリィは何とも言えない妖艶な笑みを浮かべて答えた。

 

「戦いよぉ……!」

 

 ロゥリィは残ったアイスを一気に食べると、ハルバードを担いで脱兎の如く駆け出した。

 そして、防災無線のスピーカーからは「緊急事態発生。誘導に従い、直ちに避難してください」との知らせが入った……

 

 

  ***

 

 

 ファルマート大陸において新生龍という存在は、災害と同義語である。先の炎龍には劣るものの、人の手で討伐できるような存在では無く、一頭で小国一つが滅ぶとされる。それが、二頭。

 これに加え、空を埋め尽くさんばかりの翼竜や飛竜などの竜種。

 

 有り得ない光景である。

 本来、竜は群れを成さない。縄張り意識が強いため、出来ても番とその子らによる数頭程度が限界である。

 しかし現実に、数百、数千になりそうな竜が群れを成し、お行儀良くアルヌスの丘に真っ直ぐ襲来してくるのだ。群れでいる分、新生龍より厄介な存在であった。

 二頭の新生龍を合わせれば、都市どころか<帝国>を滅ぼしかねない戦力であるが、相手が悪かった。

 まず新生龍と竜の群れを最初に出迎えたのは、蛇に似た軌跡を描く四条の筋であった。

 

「神子田、無茶はするなよ! 俺達はあくまで攪乱だからなッ!」後席の久里浜が叫ぶ。

「分かってらー!」

 

 二頭の新生龍にサイドワインダーが直撃。爆炎に包まれる。だがやはり龍種の鱗は第三世代MBTの装甲に匹敵すると言われるだけあって効果は薄い。

 

「吶喊!」

 

 緊急出撃した空自のF4ファントムはそのまま周囲の竜に目掛けて機首の20ミリ機関砲を発射。毎分六千発もの鉛玉の嵐が竜の群れを削り取っていく。

 追従してくる竜種を引き付けて駆け上り、インメルマンターン。すれ違いに機関砲で撃墜する。

 そしてあらゆる機動を駆使して敵の注意を引き付け、一頭ずつ撃墜していく。

 

「久里浜、デカいドラゴンはどうだ!?」神子田が叫んだ。

「待て。ああ、それはあちらさんが相手するようだ」

 

 二頭の新生龍に向かって吶喊する二つの武者。

 その内の一騎、正宗が二基の合当理を吹かして突進する。

 

<DAAIEDARAAAAAAHH!!>

 

 何の変哲もない、武者上段からの打ち下ろし。硬い金属音と火花を撒き散らし、黒龍の首筋を強引に斬り裂いた。

 

「■■■■■■――ッッ!!??」

 

 痛みを認識した黒龍が咆哮を上げる。そして矮小な存在を睨みつけるや、怒りのままに前腕を振るう。

 しかし、正宗は勢いのまま下に横転(ロール)して避ける。抜けたところで兜首(ピッチ)を上げ、高度を取るべく上昇を始める。

 

<御堂、前から来るぞッ!>

 

 そこにはもう一頭、赤龍が待ち構えていた。空中で巨体を大きく構え、僅かに開いた口から赤い炎が零れる。ブレスだ。

 

「綾弥ちゃん、そのまま突っ込んでください」

 

 大鳥からの金打声《メタルエコー》に従い、正宗は愚直に突進する。

 大鳥が纏うウィリアム・バロウズは西洋騎士の様な外観をしていた。全身を覆う輝彩甲鉄(オリハルコン)の装甲が陽の光を受けて輝いている。

 左腕に装着する盾と一体化した大型の石弓(クロスボウ)を突き出す。

 

分散射撃(ディスパーション・ショット)……」

 

 石弓(クロスボウ)を展開し、矢を複数同時に撃ち出す。

 大鳥が狙った通り、赤龍の顔面と胴体に命中。甲鉄をも穿つ矢は深々と刺さり、赤龍は態勢を崩す。更に正宗の一撃が胸部へ入り、赤龍は血を撒き散らしながら苦悶の咆哮を上げた。

 

「流石、綾弥ちゃん。良い一撃でしたわ」

「そうかよッ! あと苗字をちゃん付けで呼ぶんじゃねぇッ!」

 

 二騎の劔冑を強者と見た黒龍と赤龍が再び咆哮をあげる。これを受けて、後方で控えていた竜種達は一斉に動き出した。武者を新生龍が、F4を数十頭の飛竜が抑えに入る。

 残った竜の群れはそのままアルヌスの丘へと突撃を始めた。

 

「ようこそ、ドラゴン共。歓迎しよう、盛大にな」

 

 それを、35㎜連装高射機関砲L90や一部でガンタンクとも呼ばれる87式自走高射機関砲(スカイシューター)など、自衛隊の対空火器が濃密な弾幕を張って出迎えた。

 竜種たちは自衛隊が形成する火箭の壁に正面から無造作にぶつかったのだ。結果、多くの竜が穴だらけにされ、血煙を残して墜落していく。

 前衛の竜種が溶けたのを見て、群れが散開する。一斉に降下し、地表に近い低空飛行で一気に差を詰めようとする。

 

「撃てぇ!」

 

 加茂一佐率いる74式戦車が待ち構えていた。ここから僅かな数が弾幕から逃れたとしても、更に扶桑国の劔冑と自衛隊の重機関銃やLAMが出迎えた。

 

 弾幕によって翼をもがれ、また衝撃で墜落した竜種は地上にて臨時で編成された者達によって次々に討ち取られていく。

 

「無理に接近するではない! 弓と魔法を射掛け、槍で弱らせるのだ!」

「我らも負けるな! 騎士団の強さを竜共にも見せつけてやれ!」

 

 義腕義足、眼帯を付けた妙に威厳のある老人が病人服のまま借りたてばさきに騎乗し、剣を振るいながら指示を出す。そこには傭兵のウォルフやミューティ、普段は給仕として働くデリラも混じっていた。

 ボーゼスやパナシュなど、アルヌスに研修に来ていた薔薇騎士団も抜刀し、武装を煌めかせる。

 連携し、ヒト種や導士が弓と魔法で動きを止め、長槍を持ったワーウルフがわき腹を突いて弱らせ、ドワーフがその怪力でもって首の斧を振り落として確実に仕留めていく。

 女性と老人が多い騎士団ではあるが、負けじと槍で突き、剣で手傷を負わせて着実に竜を討伐していく。

 

「銃撃は絶やすな! LAMで止めを刺せ!」

「脚の腱を狙え! そうすれば奴らは立つこともできん!」

 

 自衛隊は間断なく銃撃を加えて動きを止めさせるとLAMで仕留めていく。また扶桑国兵も負けじと剣歯虎(サーベルタイガー)と共に突撃。兵が急所である脚の腱を狙って一太刀をいれるか、剣歯虎が竜種の首や脚に噛みついて討伐数を稼いでいた。

 ただ、中には変わった部隊もあった。

 

「ちぇすとぉー!!」

「ちぇちぇちぇーい!!」

「キィエエェェ!!」

 

 怪鳥のような奇声を上げ、蜻蛉の構えで突進する侍の集団。全員が歴戦の兵の証として、古ぼけて塗りの剥げた具足を身に纏っている。

 正面にいる飛竜に突撃して脚を一刀で斬り飛ばし、止めに首を落としてしまう。反撃を受けて怪我しようが返り血で汚れようが全く気にせず、再び蜻蛉の構えで次の標的へと突進を始める。

 

「なんだ、ありゃ」

 

 近くにいた自衛隊員が思わず零す。鮮やかな手際なのだが、あまりの光景に皆ドン引きしていた。これに近くの扶桑国兵が渇いた笑みを浮かべて説明した。

 

「あー、あの人達は扶桑国の中でも精鋭の部隊です。鬼の血を引く者で、筑紫、えと、日本でいう薩摩みたいなとこ出身です」

「…………へー」

 

 隊員の脳裏に殺魔人の言葉が浮かんだ。

 あと、怖いからあんまり近寄らないでおこう。そう思いつつ、隊員は付近の負傷者を後方へ運び、応急処置を施していった。

 

 

 ロゥリィ、テュカ、レレイの三人娘、そして伊丹らの第三偵察隊は臨時でパーティを組んでいた。

 

「とにかく撃ち続けろッ! 勝本は次のLAMを用意!」

 

 伊丹が矢継ぎ早に号令を出し、コンパウンド・ボウや六四式小銃で牽制し続ける。

 

「abru-main」

 

 そんな中、レレイは喉歌とも呼ばれる独特の一人和声で『起動式』を立てる。そして空気中の水分を凝固させて生成した氷柱の後ろに連環円錐を纏わせる。

 

「duge-main!」

 

 発射された氷柱は翼竜にぶつかる瞬間、爆発によって加速。強固な竜の鱗を貫通する。着弾の衝撃で翼竜は仰向けに倒れて絶命した。

 

「レレイちゃん、すっげぇ……」

「こりゃ負けてられんな」

 

 隊員達は自分達よりも年下の少女が奮戦しているのを見て気合を入れ直し、小銃を握り締める。

 

「はあッ!」

 

 呼気を一つ。ロゥリィはフリルの多い黒のスカートを翻しながらハルバードを振るい、翼をもがれて地に堕ちた翼竜の首を斬り落とす。

 

「もぅ、数多すぎッ!」

 

 こんなの絶対ハーディの仕業だわ、とロゥリィは続けて言った。

 

「あー、もう何でこんなんばっかなんだ……」

 

 小銃の弾倉を交換しながら伊丹はぼやく。

 こっちに来てからは炎龍と交戦するわ、帝都では馬鹿皇子と戦闘するわ、戻ってきたら馬鹿みたいな数のドラゴンと戦闘になるわ、散々である。

 

 しかも、状況は少しずつアルヌス側が悪くなり始めていた。

 誰もが奮戦しているが、いかんせん竜の数が多すぎる。そして、自衛隊の弾薬が無くなりつつあったのだ。また誰もが作業の様に竜種を狩り続けており、流石に兵の疲労が溜まってきており、撃ち漏らしが多くなっていた。

 

「腕がッ!?」

 

 もう何匹目になるか分からない飛竜を相手にしている時、突如近くで起きた叫びに思わず伊丹は振り返った。悲鳴を上げた兵は近くにいた同僚に当身をされ、そのまま後方へ引き摺られていった。

 

「クソッ!」 

 

 伊丹はすぐさま飛竜の眼に向かって銃撃し、竜の動きを止める。その隙に後ろから飛び掛った剣歯虎が脚に噛みつき、強靭な鱗ごと引きちぎっていった。

 飛竜は咆哮を上げ、辺り構わず暴れ回る。口からは太刀を握ったままの腕がぼとり、と放り出された。

 

「LAM! 早く!」

 

 その怒声の直後、飛竜が上から両断された。正宗だった。そして素早く納刀すると腕を前へ伸ばし、鋭く尖った指先を拡げる。

 

「やれッ、正宗!」

 

 正宗・七機巧(ななつのからくり)(ひとつ)

 

<無弦・十征矢!>

 

 十の鏃が放たれ、正面にいた複数の竜の鱗を貫通し、肉を穿つ。そのまま全身を震わせ、地に倒れ伏した。

 自衛官らが感謝の言葉を言う前に正宗は合当理から爆音を起こし、そのまま正面に突撃していく。

 入れ替わる様に、伊丹達の元にやってくる集団があった。太刀や薙刀、槍で武装した神官と巫女達だった。息を切らしており、酷く焦った表情を浮かべていた。

 

「守人さんがいない? どゆこと?」

 

 曰く、単身突撃して竜種を狩っていたはずの守人が何処にもいないという。だから戦場を駆けまわりながら探しているという。

 見かけていない、と伊丹が答えると神官は短く礼を言う。そして足早に、進行方向に立ち塞がる竜種は鏖殺していきながら次の場所へと走っていった。

 伊丹は「扶桑国の人はみな戦闘民族なんだな」と達観した表情でそれを見送ると、それに気付いた。

 伊丹は叫んだ。

 

「ロゥリィ、後ろだ!」

「えっ?」

 

 ロゥリィは、突如現れた黒い穴から避ける事ができなかった。

 

「ロゥリィ!?」

 

 伊丹が救援に向かう。互いに手を伸ばす。届かない。

 

「あっ」

 

 荒れ地に足を取られ、伊丹は黒い穴へと飛び込んでしまった。そして黒い穴は閉じてしまった。

 

「た、隊長が」

 

 残された面々は、ただ黒い穴があった場所を呆然と見る事しかできなかった。

 

 

 戦場で変化が起きた。

 突如、空に複数の黒い穴が出現する。すると先程まで果敢に突撃していた竜達が一斉に黒い穴へと群がり、消えていく。

 

「うん? 逃げていくぞ」久里浜が呟く。

「追撃は、無理か」

 

 既に弾薬が心許ない。神子田らF4は警戒しながら、敵が去っていくのを見ていた。

 

『■■■■■■――ッ!!』

 

 少しでも多くの竜を逃がす為なのか、二頭の新生龍は最後まで戦い続けた。満身創痍であった。全身に矢を穿たれ、裂傷だらけであり、腕を失い、翼が半ばから斬り落とされても戦い続けた。

 そして生き残った竜種の撤退が終わり、黒い穴が塞がると最後の一撃を貰い、そのまま力尽きて墜落していった。

 

 新生龍と無数の竜種の死骸を残し、戦闘が終わった。

 ほっと一安心して倒れ込む者が多く、そのまま勝利の歓声をあげた。

 戦場となったのは街の外であったため、街自体に被害は少なかった。また重軽症者は多いものの、奇跡的に自衛隊、扶桑国兵、そしてアルヌスの街に死者はいなかった。

 

 だが、黒い穴に吸い込まれていったロゥリィと伊丹、そして守人は、戦闘後も行方が分からないままだった。

 




2017/1/25 文章の加筆・修正を行いました。

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