とある反則の能力窃盗者   作:林檎

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結構楽しく書けました。

では、どうぞ!


Episode.16 暗闇の中での激戦②

 

 

 

 

 

 

 

学園都市第一学区に存在するとある研究所。

そこで学園都市の闇が激突していた。

 

「―――っく!?」

 

「オラオラ!!どうした!?テメェの力はそんなモンかよ!?」

 

学園都市の暗部、『メロディ』のリーダーは金髪の男が放つ光線を必死に避けていた。

光線はほぼ光の速度と同じと言っても過言ではないだろう。

リーダーは男の手から放たれる光線を男の手の角度や位置などから予測して避けている。

しかし、相手の攻撃速度が速すぎるため完全に避けれる訳ではない。

チッ、と光線がリーダーの服を体を掠る。そのたびにリーダーの身体は光線による火傷が目立つ。

 

「くらえぇ!!」

 

男が放った光線を避けるため、リーダーは何かの機材を遮蔽物にするため後ろ側に回り込む。

しかし、機材は少しずつ赤く発光したと思いきや、機材を溶かしリーダーの身体を掠める。

 

「なッ!?」

 

「すげぇだろ?威力は『原子崩し(メルトダウナー)』や『超電磁砲(レールガン)』には届かないが、スピードはそれ以上って自負してるからな。」

 

「ははっ。確かにすげーよ。でも、掌に一発ずつしか撃てないんじゃ、俺にクリーンヒットなんて無理だぜ?」

 

「へぇ~。さっきの戦いでもうそこまで把握しちゃったかぁー。『メロディ』で一番厄介なのは実はお前だったりしてな。」

 

金髪の男は短くなった煙草をペッと捨て、ポケットから新しい煙草を取り出し、咥え火をつける。

口から煙を吐き出すと、さらにポケットから球状の物を取り出す。

 

「それは……?」

 

「弱点は誰にだってあるさ……。だけど、それに講じるってのが大人だろ?」

 

球状の物の表面には鏡の様なものが無数に張り付いている。

 

「まさか―――!?」

 

リーダーはあのボールに危険性を感じ、今自分が出せる全力のスピードで走る。

そして、男がボールをリーダーの頭上付近まで投げるとそれめがけて光線を放つ。

すると、ボールに当たった光線は無数に弾け、雨のようにリーダーに襲いかかる。

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

リーダーは全力で飛ぶ。

しかし、光線のスピードは人間の速度を優に超え、リーダーの右腹部を貫通する。

 

「がっ―――!?」

 

着地に失敗し、地面を数回転がり、機材に背中をぶつける。

その瞬間、肺の中の空気がすべて出て、右腹部に激しい痛みが襲う。

 

「ぐがぁ……っ!」

 

リーダーは数回咳き込み、右腹部を両手で押さえる。

幸い、光線の熱で火傷を負い出血は少ない。

 

「良いだろ?これ。特注品だぜ?ま、それでも使い捨てなのが欠点だけどな。」

 

そう言いながら金髪の男は煙草を吸いながらボールを人差し指の先でくるくる回転させる。

先程使ったボールは熱のせいか、光線が当たった場所の鏡はほぼ溶けていた。

 

「そうだな……。」

 

「つーかよ、なんでお前は能力使わないわけ?面白くないし、つまんねぇだろ?もしかしてもう燃料切れか?」

 

リーダーは足に力を入れ、ゆっくり立ち上がる。

右腹部の痛みは治まらず、左手でギュッと強く抑えている。

 

「燃料切れじゃねぇよ。力を温存してるだけだ。現にもうお前の負けは決定だよ。」

 

その言葉を聞いた男は数秒キョトンとした顔をしたのち、大声を上げ笑い出す。

 

「ハハハハハハッ!!おいおい?今の状況見てから言えよ?頭でも狂っちまったか?」

 

「なら、やってみろよ。クソが。」

 

「……後悔するんじゃねーぞ!!!」

 

男が叫んだ瞬間二つのボールを再びリーダーの頭上に投げる。

そのボールに向け、両手から出した光線を放つ。

しかし、光線はボールに当たることはなかった。

何故なら、光線が曲がってるからだ。渦巻きを描きながら先程にはなかったはずの謎のテニスボールほどの小さく、黒い球体に吸い込まれって行った。

光をも吸い込む重力の塊。ブラックホールだ。

 

「ブラックホールってのは極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができないって代物だ。こんな小さいの一つ作るだけで結構な演算が必要なんだぜ?」

 

「ふ、ふざけんな!!こんなもんをこんな所で出したらどうなるくらいテメェも分かんだろ!?」

 

男が叫び終わった瞬間、男の足元が揺れ始める。

 

「―――な!?」

 

男が地面を見た瞬間、床が持ち上がり浮き始める。

 

「わりぃな。そこはもう『事象の地平面』を超えてんだ。お前の負けだよ。」

 

「クッソォォォォォォォォ!!!」

 

男は叫びながら床と共にブラックホールに吸い込まれ消えていく。

男が消えたのを確認して、リーダーはブラックホールを消す。

力が抜けたのか、傷が響くのかはわからないがリーダーは地面に仰向けで倒れる。

 

「はぁ、あのミラーボールみたいのは予想外だったなー。」

 

すべては計算通りだったのだ。

相手が光線系を使う能力者だと知った瞬間からすでにこのシナリオは完成していたのだ。

 

「てか、イテェなー。腹に穴空いてんだから当然か……。あとで……涼音に、治してもら……お……。」

 

リーダーは意識を手放した。

能力者特有の能力を使い過ぎで起きる頭痛が止まらなかったのもあるし、とりあえず、腹部の痛みを誤魔化すためでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……。」

 

「この程度か?綾崎涼音?」

 

涼音と飯沼も激戦を繰り広げていた。

しかし、涼音は息が上がっていた。押されているのだ。涼音が。

 

「音、聞こえてないの?」

 

「そうだ。ここに来る前、ここの研究所が作った完璧な防音装置を耳につけてきた。」

 

飯沼の耳には耳栓のようなものが詰まっていた。

 

「私としゃべってるじゃん。」

 

「俺はお前の口の動きを読んでいるだけだ。」

 

「……無愛想。」

 

「そう言う性質なのでな。」

 

涼音は笛を咥える。

そして、一回吹き男の後ろに音速移動する。

もう一度吹き、一発の音の衝撃(サウンドインパクト)を右拳にチャージする。

そして、その拳で飯沼めがけて右ストレートを放つ。

 

「無駄だ。」

 

その一言ともに飯沼は最小限の動きでその攻撃を避ける。

そして、右肘を涼音の顔面にめり込ませる。

 

「――ぐぁっ!!」

 

涼音は数回転がり、壁にぶつかる。

 

「いつつ……。普通、女の子の顔面に肘をめり込ませるかなぁ?鼻が折れちゃったよ……。」

 

鼻から血を出しながら涼音は呟く。

鼻はよからぬ方向に曲がっている。

涼音は立ち上がりながら一回笛を吹く。すると、鼻や体にあった擦り傷でさえみるみる内に治っていく。

涼音の技の一つ。『治癒の音』

 

「ほぉ、それが噂の超高速回復能力か……。」

 

「言い方を変えればそうだね……。でも、殴られたら痛いものは痛いんだよ?」

 

「ふっ。では、次は俺から行かせてもらうぞ。」

 

そう言うと、男の姿は一瞬消え、涼音の前に姿を現せる。

 

「―――ッ!」

 

涼音はもう一度右ストレートを放つがひらりと躱される。

そして、飯沼の右膝が涼音の鳩尾にめり込む。

 

「―――かはっ!」

 

涼音がうずくまるのを確認すると、五メートルほど後ろに下がり涼音と間合いを取る。

 

「ゴホッゴホッ……!なんで、当たらないのかなぁ……。」

 

涼音がそう呟くと飯沼は呟くように言う。

 

「……貴様の能力は確かに強い。しかし、貴様には俺の様な武術の嗜みがないことだ。それがお前の弱点と言ってもいいだろう。」

 

確かに涼音は攻撃をするのは音での共振による破壊現象に共振を拳から放つという音の衝撃(サウンドインパクト)だ。

両方とも扱いが難しいため条件は限られている。

共振は全方位攻撃だが残念ながら直径1メートル以内と言う狭い範囲だけだ。

音の衝撃(サウンドインパクト)は発動までに数秒タイムラグがあるうえ、拳にしか攻撃範囲がないと言う弱点がある。

しかし、拳を当てれば確実に殺せるという利点もある。

だが、どれだけ技が優れていてもそれは当てれればの話だ。

飯沼は幼少のころから自ら鍛え、武術を学んできた。しかし、ある日に闇に落ちてしまったがそれでも鍛えた体は役に立つ。

そんな本物の兵士より強い飯沼が素人のましてや女子高生の拳などが当たるはずがないのだ。

 

「……じゃぁ、ちょっと本気出すか……。」

 

涼音はそう言いながら目をゆっくり閉じる。

 

「……視界の情報を切断し、音に集中すると言う事か?」

 

「……まぁ、間違いではないよ。」

 

「まぁ、何をするのかはわからないが貴様が俺に勝つなど……不可能だろう。」

 

そう言った瞬間、飯沼は涼音の背後に一瞬で移動する。

そして、飯沼は右ストレートを涼音に当てる……と思った瞬間、涼音の姿が消える。

 

「―――!?」

 

飯沼は慌てて移動しようとするが背中に激しい衝撃を受け、数メートル飛ぶ。

内臓が破裂したのか口からゴボッと血が出てくる。

 

「―――ッかはっごはっ!」

 

「ふぅ……、成功するかは危うかったけど何とかできたや。」

 

「はぁ……はぁ……き、貴様、何をやった?」

 

涼音はそっと呟くように言った。

 

「……あなたの能力って空間移動能力(テレポート)でしょ?」

 

「あぁ、そうだ。レベル4の空間移動能力(テレポート)だ。」

 

「……じゃぁ、テレポートした時に小さいけど空間にノイズがでるのはわかるよね?」

 

「あぁ。だが、それは特殊な機器がないと計測できないはずだろう……。」

 

「うん。私以外はね。」

 

「ふ、ふざけてるな……。あんな音を人間の聴覚器官で感知するなど……。それにどうやって移動した?貴様は『元となる音』を出してはいなかったではないか?」

 

「そうだね。でも、あるよ。元となる音。」

 

飯沼は数秒考えると言う。

 

「まさか……空間ノイズを……?」

 

「その通り。あなたは私がなんで笛を使うか知ってる?」

 

「……知るわけないだろう。」

 

「ま、そうだろうね。これはね、私が一番『能力を出しやすい音』を出すために特注で作った笛なんだよ。」

 

「では、その笛を使わなくても能力は使えると……?」

 

「うん。実際、暗部に入る前や入ってすぐの時は手を叩いて音を出してたし。」

 

涼音が音を出すのを笛にしたのは『手で叩いて攻撃するのなんかかっこ悪い』と言う理由もある。

 

「だが、空間ノイズだけでは能力など使えるはずが……。」

 

「いい勘してるね。確かにそれだけじゃ能力は使えない。でも、私にもあなたにも常に音を出し続けてるものがあるよ?」

 

「……心音に呼吸音か。」

 

「その通り、他にも私が聞こえる範囲の音は使えるの。でも、自分から出した音じゃないから扱いが難しいってのもあるけどね。」

 

「本当にふざけてる……。お前はホントに人間か?」

 

「化け物だよ。」

 

そう言いながら涼音は首にかけている笛を咥える。

 

「じゃぁ、私の本当の必殺技見せてあげるよ。いや、聞かせてあげるよ。」

 

そう言い、涼音が笛を吹くと飯沼が頭を押さえし始める。

 

「な、なんで聞こえるんだ!?俺には最先端科学の――――」

 

パンッ!

大きな破裂音と共に飯沼の頭が弾け飛ぶ。

 

「科学も超能力も関係ない。それが私の本当の能力。」

 

そう涼音だが、目の前にあるのは血の池だ。

涼音は大きく深呼吸すると大きくため息をする。

 

「はぁー。疲れちゃったよ。リーダー大丈夫かな?なんか、痛いって言ってたけど……。」

 

涼音はリーダーが入っていった穴へと行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、メロディの構成員の一人千秋は呼吸も瞬きすら止まっていた。

それもそのはずだ。目の前には4年以上前に死んだと思われる妹の姿があるのだから。

もう何年もあっていない。成長もしているので普通は見てはわからない。だが、千秋は直感的に悟ったのだ。

 

「……千春。」

 

千春と呼ばれた少女には表情はない。

少女はポケットから小型のトランシーバーを取り出す。

 

「博士。目標を発見しました。」

 

『そうか。では、速やかに排除してくれ。まだ、データの整理が整ってないのだよ。彼女を撃破すれば十分な時間稼ぎができる。』

 

「了解です。」

 

そう短く答えると、少女は小型のトランシーバーをポケットにしまう。

千秋は涼音ほどではないが耳はいい方なのだ。先程の会話が聞こえないはずではないだろう。

しかし、今の千秋の頭には入ってこなかったのは確かだ。

 

「千春、生きてたのよね……?」

 

「……。」

 

少女は答えない。

しかし、確実に一歩一歩千秋に歩み寄る。

 

「なんで言わなかったのよ……。死んだって言うから……。」

 

千秋の目にはほんのり涙が見える。

今の千秋の胸には感動の様な感情が溢れていた。

そして、千春が千秋の目の前まで歩み寄り、目を見合わせる。

しかし、その瞬間、千秋の腹部に刺されたような激痛が走る。いや、様なではない。刺されたのだ。

千春が先程まで持っていなかった鋭利な刃渡り6センチから10センチほどのナイフが千秋の腹部に突き刺さってるのだ。

 

「―――え?」

 

千秋は何が起こっているのかを把握することができなかった。

分かっていたのは何もない空間からナイフを出し、自分に刺してきた千春の姿。

それだけだった。

千秋はとっさに後ろに飛び、5メールほど間合いを取る。

その時に千春が持っていたナイフが千秋の腹部から抜ける。

そのせいか、千秋の腹部からダクダクと血が垂れる。

千秋は右手で穴が開いた腹部を強く押さえる。

 

「ち……はる……?」

 

「……うるさい。」

 

千春の声が廊下に響く。

すると、千春が持っていたナイフが砕け散る。

 

「……え?能力……?」

 

千秋が驚くのも無理はなかった。

何故なら千春はレベル1なのだ。あのようなことができるのはレベル3か4は必要なのだ。

 

物質作成(マテリアルクリエイター)。それが私の能力。物質を変化し、固め、思い通りに物を作ることができる能力。」

 

千秋はその能力についてはもちろん知っていた。

だが、千秋の知っているだけでは千春は爪楊枝ほどの小さなものしか作成できないかったのだ。

それがサバイバルナイフほどの大きなものを作るなど昔では不可能だった。

 

「あなた、オリジナルのお姉さん?」

 

「……オリジナル?」

 

千秋は千春が言っていることがわからなかった。

千春はゆっくりと話し始めた。

 

「……5年前、私は第一学区超能力総合研究所で生まれた。」

 

千秋は再び呼吸が止まった。

 

「……5年前、生まれた……?」

 

(おかしい……。千春は私と3歳差だった……。5年前ってどういうこと……?)

 

千秋は脳の処理が間に合わず硬直した。

余談だが、千秋は捨てられた時は6歳だった。3歳だった千春の手を引きながら研究所の前で倒れていた所を保護されたのだ。

運悪く、その研究所は置き去り(チャイルドエラー)を使った非人道的実験を行っていたのだ。

そこが超能力総合研究所。

 

「わからないあなたに教えてあげる。」

 

「……。」

 

千秋は傷口を押さえながら息をのむ。

 

超電磁砲(レールガン)量産計画。」

 

「……え?」

 

超電磁砲(レールガン)

学園都市が誇る超能力者の頂点、レベル5第3位御坂美琴。

千秋はそれくらいの知識は頭の中にはあった。しかし、千春が口に出した単語は聞いたことがなかった。

 

「簡単に言うとレベル5をクローンで大量生産しようって計画。結局、失敗して今は別の計画として動いてる。」

 

「で、それがあなたとどんな関係があるの?」

 

「最初からクローンを作るのは技術的には大丈夫だった。でも、確証がほしかった科学者たちはとある実験体を使ってクローンを三体作った。」

 

「……まさか―――」

 

「そう、私はオリジナル……つまり、あなたの妹のクローン。」

 

千秋は動きを止めた。荒い息も止まった。

 

「私はクローンの三人目。二人は作成途中で不備が発見されて死んだ。そして、あなたの妹も別の実験で死んだ。」

 

「………。」

 

今、千秋の目の前に居る妹はクローン。そして、本当の妹は死んだ。

だが、千秋はその事実を知ってなお、言った。

 

「……関係ないわよ。」

 

「……え?」

 

「関係ないって言ってるでしょ!確かに私の妹の千春はもういないかもしれない……。でも、それでもあなたが私の妹ってことは変わらない!!」

 

「……諦めが悪い。私はあなたの妹じゃない。」

 

―――なら、あなたは私の妹!

 

「違う!!あなたは私の妹よ!!」

 

―――私はあなたのお姉ちゃんだよ。

 

「……うるさい。」

 

千春は脳裏を駆け巡る記憶を無理やり抑え込んで千秋に向かって走る。

 

「―――ッ!!」

 

まるで昔の因縁を払う様に手元に刃渡り30センチほどの西洋風の片手剣を生成し、千秋に切り込む。

 

「千春!!」

 

叫んだ千秋だが千春は止まらず、千秋に剣を振り下ろす。

剣は千秋の肩を抉り、胸を削いだ。傷口からは血があふれ出る。

千秋は傷口を抑えることもせず、その場に倒れこむ。傷口から出る血で水たまりができる。

千春が剣を離すと、剣は砕けて空気に溶けて消える。

 

「……。」

 

黙り込む千春。

すると、後ろからズシン、ズシン、と地響きが聞こえる。

ふと、後ろを振り返ると駆動鎧(パワードスーツ)がこちらに向かってくる。

 

「よくやった。千春君。」

 

「……はい。」

 

ここの研究所の最高責任者の東博士だ。

データの整理が終わり、これから逃げ出すところなのだろう。

 

「ん?何をしている。さっさと止めをさしなさい。」

 

「……はい。」

 

千春は再び先程と同じ剣を生成する。

そして、俯けになっている千秋の首元に剣を添える。

 

「……。」

 

千春は振り下ろさない。

脳裏にあの一年だけの姉の姿が映っているからだ。

もう居るはずのないたった一人の家族。

 

―――初めての妹だよ……。えへへっ……。

 

(なんで、なんで、邪魔するの……?)

 

そんな苦痛を耐えようと剣を振り上げるが振り下ろせない。

簡単な作業なのに。ここ数年いつもやってきた事なのに。

 

―――私にもお姉ちゃんが居るの。つまり、あなたのお姉ちゃんでもあるの。名前は千秋、千秋お姉ちゃん。

 

(……なんで―――)

 

すると、東博士が言う。

 

「何をしている?早くしろ!!!」

 

その方向さえも千春の耳には届かない。

いや、届いていても反応できない。

 

「ッチ!もういい!!」

 

痺れを切らした東博士は駆動鎧(パワードスーツ)を使い、千春を薙ぎ払う。

 

「―――くっ!?」

 

千春は吹き飛び、二メートルほど先にある壁に激突する。

 

「しねぇ!!!」

 

駆動鎧(パワードスーツ)の鋼鉄の拳は千秋に振り下ろされ、千秋に触れた瞬間。

 

「―――なっ?!」

 

鋼鉄の拳が砕け散ったのだ。

東博士は数歩後ろに下がり、よろめく。

駆動鎧(パワードスーツ)の腕からは火花がバチバチ散る。

そして、もう立てるはずのない千秋がゆっくり、ゆっくり立ち上がる。

 

「なんだと……!?そんな身体で立てる訳が……!?」

 

「………る。」

 

小さな声だった。

しかし、声は次第に強くなる。

 

「ちは……を……る。」

 

千秋の出血はまだ止まってない。

死ぬかもしれない。だが、止まるわけにはいかない。

 

「千春を守る……!!!」

 

それが、姉の意地(・・・・)だ。

千春は千秋のその姿を見て、思い出していた。

 

『……あなた誰?』

 

鎖につながれた少女。

本物の千春。自分とは違う本物。

 

『……あなたのクローン。』

 

『くろーん?……ははっ、ごめんね。私、バカだからわかんないや……。』

 

『簡単に言うとあなたから生まれたの。』

 

『じゃぁ、私が親?それじゃ、齢が近すぎるな……。なら、あなたは私の妹!』

 

『妹?』

 

『そう。私はあなたのお姉ちゃんだよ。……初めての妹だよ……。えへへっ……。』

 

『お姉ちゃん?』

 

『そう。姉妹だよ。私たちは三姉妹。』

 

『3?私とあなたしかいないのに?』

 

『私にもお姉ちゃんが居るの。つまり、あなたのお姉ちゃんでもあるの。名前は千秋、千秋お姉ちゃん。』

 

『千秋……お姉ちゃん……。』

 

そのあと色々話した。

一年間。鎖につながれた姉と。

職員の隙を見ては千春が居る部屋にいつも行った。

 

『怖いことされたりした?』

 

『全然。どちらかと言うと優遇されてるかも。』

 

『ん~。やっぱり、あなたの方が頭いいかも……。妹にも負けるって……流石にショックかも……。』

 

落ち込む千春に彼女は何も言えなかった。

 

『でも、大丈夫だから!あなたは私が守る。』

 

『守る?』

 

『そう。だって私は―――――』

 

千春は前を見据えて行った。

彼女はその言葉を思い出し、小さく呟いた。

 

「なんで……。なんで、あなたたち姉妹は私を守ろうとするの……。」

 

大粒の涙。

悔し涙でもある。

あの時、あの言葉を聞いたあと、ホントに自分は守られたのだから。

 

「……当たり前よ。だって私は―――」

 

千秋もまた、あの時と同じように言った。

 

「―――お姉ちゃんだもん。」

 

千春はその場でうずくまった。

千秋は傷だらけの身体を無理やり動かし、ズボンに挟んでしまっておいた拳銃を取り出し、東博士の額に標準を合わせる。

 

「はぁ……はぁ……。」

 

「お前、馬鹿か?駆動鎧(パワードスーツ)の装甲にそんなちんけな銃が効くとでも?」

 

「……。」

 

千秋は無言で東博士の額に向け銃弾を放った。

パァン!と言う乾いた音とともに、駆動鎧(パワードスーツ)の頭部の防弾ガラスに当たる。

しかし、銃弾は防弾ガラスに弾かれることはなく、そのままガラスを貫通し、東博士の額に命中する。

 

「効く訳ない?そんなのは私の能力をちゃんと調べてからいい……なさ…い。」

 

千秋は体力が尽きたのか、その場に倒れこむ。

千春はそれを見て涙を手の甲で拭い、走って近寄る。

 

「……ねぇ。なんで、なんで、あなたたち姉妹はそんなバカばっかりするの?なんで妹をそんなに守ろうとするの?」

 

千春の目にはまた大きな涙が浮かぶ。

 

「……いや、なんで私みたいなクローンの偽物を本気で助けようとするの!?」

 

千秋は薄れゆく意識で言う。

 

「………お姉ちゃんだからよ。」

 

そう言うと千秋の身体から力が抜ける。

 

「……答えになってないよ。」

 

千春の目からは涙が溢れていた。

 

―――また、守られた。

 

「死なせるわけないじゃん。バカちーちゃん。」

 

「そーだぜ。お前はうちの大事なコックだ。」

 

そんな声が聞こえ、千春は声の聞こえる方に向く。

そこには千秋の仲間。涼音とリーダーがそこにいた。

涼音がそっと笛を口に咥え、一回吹く。

すると、千秋の痛々しい傷がどんどんふさがり、なくなっていく。

 

「ちーちゃん。いっつもちーちゃんは家族のことになると無茶するよね。」

 

あの時みたいに。と涼音は呟く。

あの時とは千秋と涼音とリーダーが初めて会った日。

千秋は妹を殺されたと村上博士に殴りかかった。その日みたいに。

 

「ま、千秋のいい所だけどな。」

 

「うん。」

 

そんな会話をしているうちに千秋の傷はもう治っていた。

しかし、血を失いすぎたか、千秋は気を失ったままだ。

安堵の表情を浮かべる千春にリーダーは言う。

 

「どうする嬢ちゃん?もうすぐここを爆発させるけど、このまま巻き込まれちゃうか?それとも一緒に来るか?」

 

考えるまでもなかった。

 

「……一緒に行かせて。」

 

「……待ってたぜ。その答え。」

 

「よろしくね。千春ちゃん。」

 

この日、メロディに新しい仲間が加わった。

 

 

 

 




一応今回のテーマは『姉妹の絆』って感じです。

最初は涼音メインの話にしようかなーって思ってたんですけど

「あれ?千秋が空気に……」って感じになったんでリーダーには悪いですけど千秋メインのお話にしました。

そのうち、リーダーメインのお話もすると思います。

そして、今回ので「……ん?え?はぁ?」みたいなのがありましたら気軽に言ってください。

誤字脱字がありましたら言ってください。

ではでは。
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