side涼音
「ここに入っとけ!」
「きゃっ!!」
私は手足を拘束された状態で部屋の中に投げ入れられる。
そのあと、入れた人たちの方を向くと突然扉を閉められる。
「……ここどこ?真っ暗だし……怖いよ……助けてしゅうくん………。」
気が付いたら私はここの施設にいた。
博士は死んでたし……しゅうくんは吹っ飛ばされてたし……もう、いやだ………怖いよ………。
「………誰??」
「――ひっ!?」
突然、暗闇の中から声がした。私はつい驚いてしまった。
「ご、ごめん……。脅かすつもりじゃなかったんだけど……。」
「ふぇ?こ、こわい人じゃないの………?」
「怖い人って……私はそんなに怖い性格じゃないと思うけど……。」
こわい人じゃない……?なら、大丈夫かな……?
私は声のする方向へ近づいて行った。
暗闇の中からうっすらと人影が見えてきた。
私と変わらない身長で女の子。髪は長い黒髪。
その子は私と同じように手足が縛られているらしい。
「わ、私、綾崎!綾崎涼音!あなたの名前は……?」
しゅうくんには相手に名前を聞くときには自分の名前を答えるって教えてもらったからね!
「名前か……3387号かな……。」
「さんぜんさんびゃく……?」
「うん。検体ナンバーってやつね。」
けんたいなんばー???なんだか難しい言葉ばっかりだよ。
「なんだかわかってなさそうね?」
「ふぇ!?わ、私の感情が読めるの!?ま、まさかちょうのうりょくしゃ!?」
「……超能力者には間違いないけどそういう能力じゃないわ。」
むむむ……。外には超能力者でもないのに人の感情が読めるなんてなかなかすごいよ!しゅうくん!
「まぁ、簡単に言うとここの施設の実験体よ。」
「じっけんたい?」
「そう。でも、能力が希少だから生かされているだけ……。レベル0だったり、レベル1だったらすぐに実験で殺されちゃうわ。」
「そ、そんなぁ……。」
「でも、こんな苦しい実験が毎日のように続くなら死んだ方がましね。」
わ、私も……殺されちゃうのかな……?
いやだよぉ……しゅうくん……。
「じ、じゃぁ!逃げ出そうよ!苦しいことからは逃げることがせんけつだ!ってしゅうくんが言ってたよ!」
「逃げ出したいのも山々だけど、こんな拘束具がついててこの音が鳴ってたら無理かな……?てか、しゅうくんって誰よ?」
「音??」
音って………?
よく耳を澄ましてみるとキィィィンと音が鳴っていた。
「何……?この音??」
「私の質問は無視か………。まぁ、この音は確か『キャパシティダウン』って言ってたわ。」
「きゃぱしてぃだうん?」
「そ、音を使って私たち、つまり能力者の演算能力を阻害する装置らしいわ。まだ開発途中だけど個人の脳の情報に合わせた音は作り出せるらしいけど……。」
「えんざんのうりょく?そがい??そうち???」
「……ま、とりあえず。能力が使えないってことよ。」
「ほへぇ?。」
ん?でも……。
「それで体とかは大丈夫なの??」
「ううん。今は普通にしてるように見せてるけど頭はすっごい痛いの。」
「えぇ!?大丈夫なの??」
「大丈夫よ。もう、我慢できるようになったから。」
……もうって、どれくらいつらいことしてきたのかな……?
「あ、あの!」
「なに??」
「名前ないと呼びづらいから名前つけてもいい??」
「急に話が変わったね……。」
「えーっとね……。」
「人の話聞いてる?」
どんなのがいいかなぁ?……。
んー……。
「そうだ!しゃぶ太郎ってどう!?」
「却下。」
「え!?なんで!?しゃぶしゃぶおいしいじゃん!?」
「まったく関係なくない?いいわよ。名前くらい自分で考えさせて。」
ぇ?……。いい名前だと思ったのになぁ……。
「そうね。千の秋って書いて
「ちあき……?じゃぁ、ちーちゃんだね!」
「なんで?」
「こっちの方が可愛いから!」
「私が名前考えた意味は何よ………。」
「じゃぁ、ちーちゃん!ここから逃げよ!!」
「だから、音があるから無理よ……。それともあなたに何かできるの?」
「うん!見てて!」
私は音に集中する。
そして、私が手を一回叩くと音が消える。
「え……?音が……?」
「えっとね、音に同じ音をぶつけて消す方法なんだけど……。一回は音の根源が必要だから手を叩いたの!」
「いや、それはわかるけど……。あの音はどう考えてもキャパシティダウンとは全く違う音じゃない……。」
「ん?。そういう難しいことはわかんないけど……。これが私の能力だよ!」
「能力……?」
「うん!えっと、
「アポロ………?確か、ギリシャ神話の音を司る女神だっけ??」
「そう!しゅうくんがつけてくれたの!」
「へぇー……って、レベルはどれくらいなの??」
「えっと……たしか……ふぁいぶってしゅうくんが言ってたよ。」
「5ぅぅ!?」
「うん!」
「だから捕まったのね……。納得したわ。」
「ちーちゃんはどんな能力なの!?」
すると、ちーちゃんは少し黙り言う。
「……
「………まて……?」
「簡単に言うと、物質を分解する能力よ。原子、分子、素粒子までにもできるわ。」
?????
ちーちゃんが別の国の言葉使ってるみたいだよ……。
「わかってなさそうね。そうね。逃げるがてらにこの拘束具も外しましょ。」
「へ!?そんなことできるの!?」
「見ときなさい。」
そういうと、ちーちゃんの拘束具がバラバラになった!
「な、なんだとぉ?!?」
「やめてそのリアクションウザい。」
そ、そんな!?
すると、ちーちゃんが私の拘束具に触れると同じようにバラバラになった。
「じゃ、逃げましょうか……。」
「うん!」
ん?そういえば……。
「ねぇねぇ!ちーちゃん!」
「なに?」
「私のことは涼音って呼んでね!」
「え?なんで?」
「私もちーちゃんのことちーちゃんって呼んでるから!」
すると、ちーちゃんは大きくため息をついた。
「え!?なにかいけないこと言った!?」
「いえ、なんでも無いわ。じゃぁ、行きますか?涼音。」
「うん!」
私たちが外に出ようとすると、突然ドアが開く。
「!?しまった!?」
すると、大勢の武装した人たちが入ってきた。
大勢の人たちが道を開くようにどけると、白衣を着た人が出てきた。
「こまるねぇ。音の女神に3387号……。君たちに逃げられるととっても困る。僕が大金を払ってやってきた実験を水の泡になっちゃうじゃないか。」
「くっ……。」
「おい。早く捕まえろ。生け捕りだぞ?貴重なモルモットだ。」
……このおじさん……。
「ねぇ!おじさん!」
「……なんだね?モルモット如きが僕に喋りかけないでくれないか?」
「おじさんは知らないから言えるんだよ!ちーちゃんがどれだけつらい思いをしてきたか……!」
「ちょ……涼音……。」
「ちーちゃん……?あぁ、検体番号3387号のことか……。それがどうした?お前らは学園都市のモルモットだろ?我々の懐を肥やすための犠牲だろ?」
「な……!?」
何この人……目が……私たちをゴミとしか見てない目だ……。
「ぃ………は……ど………?」
ちーちゃんが小さな声でつぶやく。
「ちーちゃん……?」
「妹はどこにやった!?」
部屋にちーちゃんの怒鳴り声が響き渡る。
いもうと……?
「ん……?妹……?はて……?あぁ!あの役立たずのクソモルモットか!はははっ!あんな欠陥品実験の結果も出さず死んでいったよ!」
な………!?
「おじさん!あなたって人は――――」
私が怒鳴ろうとした瞬間私の前にいたちーちゃんが飛び出す。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ちーちゃんはおじさんに飛び掛かろうとするが周りの人に体を押さえつけられる。
「貴様だけは許さない!!殺してやる!!私の家族を!!奪いやがって!!」
「……黙らせろ。」
流石に私もカチンと来たよ……。
私は一回手を叩く。
すると、ちーちゃんを抑えてた人が吹き飛ぶ。
「ほぉ。音の爆発で人をも飛ばせるのか……。しかも、3387号を音で傷つけないようにするとは……その能力は何でもアリだな……。」
「ふざけないで。私、ホントに怒ってるんだからね。」
しゅうくんが言ってたの。力はむやみやたらと使うなって。でも……。
自分の信念を、自分の守りたい人を守るときには使っていい。これが、その時だよね。
「す、ずね……。」
「ちーちゃん!待ってて!今すぐ助けるから!」
「ほう?じゃぁ、やってみろ。」
パァン!!
部屋に銃声が響き渡った。
「なっ………?」
「ちーちゃん!?」
銃弾はちーちゃんの脇腹に命中していた。
「はははっ!急所に当たったよ!これじゃぁ、もうすぐ死ぬな!」
「は、博士!?3387号は希少な能力では!?」
武装した人の中がおじさんに言う。
「君は馬鹿かね?」
「え……?」
「我々の目的は『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』つまりレベル6だろ?あのモルモットにはその価値がない。」
「モルモットじゃない。」
「ん?」
「ちーちゃんはモルモットじゃない!ちゃんとした人間だよ!」
「親に捨てられ、未来もない子供がモルモット以外の価値があるといいたいのか?貴様は?はははっ!笑わせるな!貴様らには我々の実験体以外の価値はない!」
「そんなことはない!」
「大体!この学園都市にはそういう為の人間しかいないのだよ!超能力という餌を使っておびき寄せたに過ぎない!!」
「……うるさい。」
私がその一言を言うと、おじさんが吹き飛ぶ。
「―――なっ!?」
「は、博士!?」
私は急いでちーちゃんのところへ近寄る。
「ちーちゃん!大丈夫……?」
「……涼音?」
「ちーちゃん……。」
「早く逃げなさい……。涼音だけでも……光の方に……。」
「ちーちゃん!」
すると、ちーちゃんは体をぐったりとして倒れる。
「ははは!ついに死んだか!そのモルモットもいらなくなったしな!」
しんだ?しぬ?
はかせみたいに?
「……ははは!さっさと死ねばよかったものの妹は大丈夫か妹はどうしたなど実験のたびに言われ正直鬱陶しかったのだよね……!」
「まだ死なないよ。ちーちゃんは。」
「ふははっ!貴様なら聞こえるだろ?小さくなっていく鼓動が!少なくなっていく呼吸が!それが死なんだよ!」
私はちーちゃんの傷に手を添える。
死なせない。何があっても。絶対に。
「……治癒の音。」
この音はしゅうくんと遊んでた時に見つけた音。
しゅうくんがこけて怪我をしたときに初めて使った。
詳しい原理はわからない。けど、簡単に言えば傷が治る音。
私がそういうとちーちゃんの傷はみるみる治っていく。
この音は怪我をした本人にしか聞こえないようにしてる。
じゃないと、怪我も病気もしてない健康な人がこれを聞くと過回復で腐っちゃったりするから……。
「……傷が治っていくだと……!?」
「そ、そんなことがあっていいのでしょうか……?」
「医学的には音楽で鬱病が治るなどというのは聞いたことがある……。傷が治る、ましてはあんなに傷が早く治るなど聞いたことがない……。」
……ホントに怒ったよ。
私はゆっくり立ち上がる。
「絶対に許さない。」
「何をだ?そこのモルモットを傷つけたことか?それとも、自分のことを侮辱されたからか?」
「両方だよ。」
私の能力は応用がかなり効く。
音が主体の能力だけど、私は原石。常識は通用しない。
私は足に力を込める。そして、一回手を叩くと一瞬でおじさんの前に移動する。
「な……!?」
「くらえええええええ!!」
そのスピードのままおじさんのお腹にパンチを喰らわせる。
「ぐっ……!?」
……案外鍛えてたみたいでちょっと痛い。
「なんだ……さっきのは……。」
「瞬時音化だよ。自分の体を一瞬だけ音にして音速で移動する方法だよ……。」
「忘れていたよ……。君が原石だということを……。」
隙あり!
私はまた手を叩き一瞬でおじさんの後ろに回る。
「わっ!!!!!!!」
「なっ!?」
「博士!?」
これで気絶は確実だね。
音での攻撃は一番耳に来るから。
おじさんは私の大声を聞いた後倒れる。
私は後ろを向き、ほかの人たちを睨む。睨んだら少し後ろに下がったので私はちーちゃんの方に近寄る。
「ちーちゃん!大丈夫?」
「……うん。涼音は?」
「私も大丈夫だよ……。」
私は安堵してしまった。
油断していた。
パァン!
その銃声は私の右肩を的確に射抜いていた。
しまった。
私は反動で地面に倒れこむ。
「案外、いい演技するだろ?僕は……。」
「なんで………?」
「当たり前だ!君のデータはあるんだから何の対策もしてこないと思ったかね?まぁ、あの移動と治癒の能力は正直脅かされたけどね……。」
くそぉ……。
「じゃぁ、もうこんな気を起こさないように3387号には死んでもらおう。」
私のせいだ。
私がもっとちゃんとしてれば……。
もっと、警戒しとけば……。
「妹と同じ場所に逝けて満足だろ?」
私が弱いから?
私が不甲斐ないから?
「死ね。」
シヌ?マタ?タイセツナヒトガ?
シヌ?
side涼音end
その時だった。
村上博士が千秋に向けて銃口を向け時。
涼音の体から光が出てきた。
「な、なんだ!?これは!?」
「博士!早くこちらに!!」
「……涼音??」
涼音の傷はみるみる癒えていく。
「死なせない……。もう、大切なものを失うのはいやなんだああああああああああああああ!!!」
その瞬間。
建物は崩れ落ちた。
ここは涼音がいた部屋とは少しずれた場所に位置する実験体の収容施設。
そこには一人の男が収容されていた。
「なんか騒がしいな……。」
そんなことをつぶやいた瞬間。壁が崩れ、天井が崩れる。
「な!?」
数分後
「ごほっ!ごほっ!!」
瓦礫を押しのけ瓦礫の中から出てくる。
男はあたりを見渡す。
「何があったんだ……?」
男の前に広がる現状は、瓦礫の山。
しかし、その瓦礫の山の中に光り輝く場所が一つだけあった。
「なんだありゃ………?」
男は能力を使い瓦礫を吹き飛ばし、光の方に歩いて行く。
途中には血が飛び散り、赤く染まった瓦礫もあった。
だが、男はそれには目もくれず光の方に虫のようによっていく。
「こりゃぁ……すげぇ……!」
男が見た景色には想像を超えるものが広がっていた。
光の中心には少女が二人。
そこだけは瓦礫も、血も、なにもついていない元の地面が広がっていた。
しばらく男が見入ってると光は消え、光を放っている少女。つまり、涼音は倒れこむ。
千秋は涼音に近づき体を揺らす。
「涼音!?涼音!?」
呼びかけるが返事がない。
すると、男は二人に近寄っていく。
「おいおい。こりゃーすげぇな。こいつがやったのか?」
「誰!?」
「おいおい。そんなビビることはねーだろ。俺もここの検体者だ。」
千秋は男に警戒をする。
「お前らはこの先どうすんだ?」
男が急に聞いた質問は千秋にはよくわからなかった。
「俺たちはこんなところにいたんだ。いつ殺されるかわかんないだろ?だからお前たちはどうすんだって聞いてんだ。」
「……この子と逃げ続ける。」
男はその答えに少し笑いながら意見を言う。
「ははっ。学園都市の暗部にはレベル5の第2位、第4位がいるらしいぜ?それでも逃げ続けれるのかよ?」
「じゃぁ……、あなたはどうするの……?」
男は少し考えて答えた。
「そうだな……。俺は暗部に就こうと思ってる。」
「暗部……?」
「そう、学園都市にある汚い仕事を受け取る組織だ。」
「なんでその組織に?」
「そんなの簡単だ。俺たちは命を狙われるかもしれない。なら、俺たちが価値のある人間になればいい。」
「価値のある人間……?」
「そうだ。この学園都市で価値があるのはレベル5くらいだ。じゃぁ、レベル5以下で俺たちみたいな輩はどうすればいいかというと……。学園都市にとって利用価値がある存在になればいい。汚い仕事も受け取り、迅速にかつ正確に。そんな組織があれば誰もが必要としてくれる。ま、雑用だけどな。」
その話を聞いた千秋は少し考えた。
もちろん。暗部に行かず逃げ続ければ学校生活なども送れるがいつ死んでもおかしくない。
「どうだ?俺と一緒に来るか?」
千秋は答えることができなかった。
自分はもともとここにいた人間。表に出ることは難しいだろう。
だが、涼音は表にいた人間だ。ホントにここで勝手に決めていいのだろうか。
そんな考えが千秋の判断を鈍らしていた。
「ねぇ……。」
「す、涼音!?」
どうやら、涼音が目を覚ましたようだ。
涼音は力を振り絞り、男を見つめる。
「あなたについて行ったら、強くなれるの……?」
「……どうだろうな。それはお前次第だが、戦闘はよくあることかもな。」
「涼音……?」
涼音はわかってる。
この道に進むともう戻ることができないと。
「行くよ……。強くなるのなら。大切なものが守れるのなら……。」
「その言葉待ってたぜ………!!」
もう、戻ることができない闇に踏み込む。
力を手に入れるために。
そして、いずれ二人は交差する。
それが敵同士だろうが。
涼音の性格がこの辺で変わります。