かぼたんside
「昨日はあの人と一緒に寝ちゃった……」
今更だけど私ってば大胆なことしちゃったのかしら。
顔から火がでそうなこの恥ずかしさをどうやって押さえればいいのかしら。
失礼じゃなかったかな?
「でも……暖かかった」
決して後悔しているわけではない。
男女の間になったというわけでもないが、誰かと一緒の布団で寝るというのは今までにない幸福な時間だった。
今までずっと一人だったから。
「ルウソさん……どうか無事に帰ってきてください」
そのあとルウソさんが帰って来るまで時間がかかりそうだったので大袋のトマスさんに相談してみた。
「そりゃ火防の娘っ子。
あんた恋してるんだよ。
彼はいい人だからな。
俺も応援するよ」
なんてことでしょう!私が恋!?
でもそう考えるとこの胸の高鳴りも説明がつく。
私は彼に恋している。
その事実が私の心をさらに温かくしてくれるがそれと同時にこの恋の結果が決して報われないことを私は理解していた。
「でも……私は人間じゃないんです。
トマスさん。
私はどうすればいいんでしょう?」
「気にしないことだよ。
彼なら何を言ったところで驚きはしないはずさ。
あんたのありのままを受け入れてくれるだろうしね。
信じるのも恋愛なんだよ」
トマスさんったら無責任なことを。
……でも私が告白して、受け入れてもらえたらどれだけ幸せなんだろう。
そう考えるとそんな未来もいいかもしれないと思う。
でももし断られたら……。
それに私は火防女としてこの神殿の灯りをまもっていかなければならない存在。
この悩みはもっと考えてから打ち明けるべきでしょう。
私はそこで考えるのをやめてルウソさんが戻ってくるのをひたすら待つことにした。
ルウソside
「大丈夫かユーリア?」
「ありがとうございました。
貴方のおかげであの薄暗い塔から出られただけで満足だ。
もう一人でも歩けますから下ろしてください」
「まぁ待て、使ってない三日月草がたくさんあるからそれで治療してやるからちょっと待ってな」
俺は囚われていたユーリアをおんぶして楔の神殿へと戻ってきたわけだが、そこで俺を見つめる視線に気づき振り向いた。
俺を見ていたのはかぼたんだった。
どこか寂しそうな表情をしているのは気のせいだろうか。
「やぁただいま、かぼたん。
この人は魔女のユーリアっていうんだ。
王の公吏に捕まっていたのを助けたんだが怪我がひどいから俺が直接連れて帰ってきたんだよ」
「そうですか……
ではユーリアさんこちらへどうぞ……」
なにかあったのかな?
あとで話を聞いてみるか。
ユーリア治療中
「……すまない、私ではまともな礼のしようもない。
デモンズソウルがあれば貴方に魔術を提供できるのだが魔女の魔術は忌み嫌われる堕ちた術ばかりだ。
貴方はフレーキ様の魔術を学ぶべきだろう」
最高神に聞いた話ではこの世界には『魔術』と『奇跡』の二種類のソウルの業があるそうだがフレーキというのはその内の魔術を学問として体系づけた人物だったな。
「いや、俺は魔術や奇跡の類を覚えられないんだ。
ユーリアならわかると思うけど俺は神すら凌駕するほど肉体的に強いから魔法は発動させることができないんだ」
「そうですか。
すまない、余計なことを聞いてしまったな。
貴方と話しているとどうにも安心できるのでつい口が滑ったのだ。」
「気にするな。
話し相手にならいくらでもなってやるから何でも話してみろ」
「そうだな。
……では話すがかつて私もデモンズソウルを欲していた。
裂け目からボーレタリアに入り、この神殿から出られなくなったのだが断罪者ミラルダによってあの塔に囚われたのだ。
だが……今はもう、デモンズソウルの力に惹かれることもなく、その力が失われることを望んでいるんだ」
ユーリアにも辛い過去があったのだろう。
俺はそのあともいろいろと話し相手になってあげたあと、再びボーレタリア王城へと向かった。
ユーリアをこんなに傷つけた王の公吏を許してはおけないしな。