嵐の祭祀場3
それは『古い勇士』がいた部屋のすぐ隣にある霧の壁を越えればすぐにいけるエリアで、ぶっちゃけデーモン戦しかないエリアだった。
「……あー、勇士はここで待っててくれ。
お前はでかいからここの通路通れないだろ」
「じゃあ勇士さん行ってきますね」
「待ってくださいよぉ~。
僕だって行きたいですよぉ~」
身体がでかすぎる勇士は嵐の祭祀場3への通路を通れなかったのでその場に置いといて俺と かぼたんはデーモンの長の待つエリアへと入って行った。
「クォォォォーン!」
デーモンの鳴き声が聞こえるそこはひどく荒れ果てた場所で周りを海に囲まれていた。
そしてその空を飛ぶのが鳴き声の主、ここのデーモンの長『嵐の王』だ。
奴は空を飛ぶエイの姿をしたデーモンで、体から棘を飛ばして攻撃するという一風変わったやつなのだ。
ここに来る途中にも嵐の王の子どもはちょくちょく目にしていた。
「うーわ、やっぱでっかいなー。
とりあえず嵐を切り裂く剣は後回しにしてあいつ倒そうか。
それともこいつも話し合いで解決できたりしないかな?」
「そうですね。
でもどうしますか?
私もルウソさんも遠距離攻撃できないですし、あんなに空高くにいたら会話も出来ませんし」
さて、どうしたものか。
俺は考えていると空飛ぶエイの子ども達が話しかけてきた。
「あー、お兄さんとお姉さんラブラブだー♪」
「ほんとだー♪
夫婦なのー?」
「キスすゆの?キスすゆの?」
「あちちーだ、あちちーだ♪」
エイの子ども達は俺達のことをからかってくる。
「おいおい、俺達はそんな関係じゃないぞ。
なぁ、かぼたん」
「い、いえ、私はそんな誤解ならいくらでもしてもらって構わないというか……
むしろ望むところだったりとか……」
あれ?もしかして俺達って両想いだったりするのか?
いや、でも かぼたんは可愛いし、俺なんかじゃあ釣り合わないんだよなぁ。
かぼたんside
まったく子どもってのは無遠慮なことばかり言ってきますね。
……でもルウソさんは私のことどう思ってるんだろう。
もしかして両想いなのかな?
……まさかね。
ルウソさんかっこいいですし、私なんかじゃ釣り合わないですよね。
デーモンなんかに好かれても普通の男の人は嬉しくなんかないですよね。
私ったらこんな妄想をするなんておかしくなってしまったのかしら。でもいつかは……
ルウソside
「おーい、俺らはお前らを殺しにきたんだが、その前に出来れば話し合いで解決したいんだ。
『古い獣』ってデーモンを呼びだすためにソウルの供給をやめてもらえればそれでいいんだ」
「わかったー母ちゃんを呼んでくるー」
エイの子どもたちは空高くにいる嵐の王を呼びに行ってくれた。
これで無駄な戦いをしなくてもすめばいいのだが……どうやら俺の考えが甘かったようだ。
「「「「うわー」」」」
かなり上の方を飛んでいた『嵐の王』を呼びに行ったエイの子ども達はミサイルのような爆撃を受けて木端微塵に吹き飛んだ。
「わらわに何ぞ用でもあるのか?
卑しき人間よ」
尊大な態度で現れた嵐の祭祀場のデーモンの長、嵐の王。
その性格は本当に嵐のようで人とは根本的に考え方がちがうのだろう。
自分の子を殺すのに一切のためらいを感じられなかった。
「おいお前!
てめぇの生んだ子どもを殺すたぁ、どういう了見だ!
俺らは話し合いで解決する気もあるんだぞ!」
「ふん、人間ごとき相手に、この嵐の王が同格に話し合いの席を設けるとでも思ったのか!
子どもなんぞいくらでも予備がおるわ」
なんて傲慢なやつだ。
そういやデーモンだし、こういう性格のほうが普通なのかもしれないな。
だがこれまでに戦ってきたどのデーモンよりもねじくれてやがる!
こうなりゃやっぱ当初の予定通り殺してやるさ。
「かぼたん、一旦あそこの廃屋に隠れるぞ。
交渉は決裂だ」
かぼたんの手を引いてとにかく走る。
いつまでも同じ場所にいたらあの爆撃を受けてしまうからな。
「そこからはどうするんですか?」
「考えてない!」
「わらわが逃がすと思うか?」
嵐の王は走り出した俺達に向けて爆撃を開始したが、俺達が廃屋に隠れる方が早かった。
「お!こんな所に矢が落ちてるな。
せっかくだから使わせてもらうか」
弓はないが俺の力で投げればなんとかなるだろう。
「子どもってのは未来を担っていく宝なんだ!
それをないがしろにした貴様には生きる資格がない!」
ビシュシュシュ!
「グギャァァァァァァー!」
力任せに投げまくった矢は全て嵐の王に命中し、ソウルを残して消えた。
「それじゃあ帰りましょうか。
ルカも待ってますし今夜のご飯の用意もありますしね」
今度は かぼたんが俺の手を引き、さて帰ろうかと思ったが俺はここで一つはっきりとさせておきたいことがあった。
嵐の王の子どもに言われたからじゃないんだが、俺の中の かぼたんに対する気持ちがとうとう抑えられなくなってしまったのだ。
「かぼたん……少し話があるんだがいいかい?」
「なんですかルウソさん?」
かぼたんは振り向いて俺を見る。
いつもと変わらず優しげな笑顔を浮かべる かぼたん。
一瞬言うのを躊躇ってなぁなぁの関係に甘んじようとも思っていた考えを吹き飛ばしついに口にする。
「……君の事が好きだ!
突然だし、俺なんかにこんなこと言われても迷惑かもれないけどここで言っておきたかったんだ」
唐突な告白だが正直に言えば振られたら俺は立ち直れないだろう。
だがそれでもここらではっきりさせたかった。
かぼたんが好きなんだ、愛してる。
だからこそ今ここで言っておきたかったのだ。
「私で……いいんですか?
……私だってルウソさんのことが大好きです!
ずっと好きだって言いたかった。
けど私は……デーモンなんです!
人間ではありません。
そんな私なんかじゃルウソさんみたいな素敵な人には相応しくありません!」
かぼたんは目を逸らし悲しい声で言う。
その体は震えていた。
こんなに華奢な体だったのか。
もしかして自分がデーモンだから俺とは釣り合わないとか考えていたのか。
俺としたことがこんなにも俺のことを想ってくれていた かぼたんの気持ちに俺は気づいていなかったんだな。
「俺は君がいいんだ。
君じゃなければ駄目なんだ!
それにそんなことを言うならデーモンよりも神より強い俺はもっと化物じゃないか」
おどけて言うと かぼたんは笑ってくれた。
「これまで要人に楔の神殿に閉じ込められてから死ぬこともできず、ただ生きていただけでしたが今初めて生きていて良かったと思っています。
私もルウソさんが大好きです
こんな私ですがよろしくお願いします」
「ああ、愛してる かぼたん。
誰よりもずっと……」
自然と流れだす涙を拭うこともせずに俺は かぼたんを抱きしめる。
よく見れば かぼたんも涙を流していた。
なんだ、俺達は似た者同士だったんだな。
人として扱われず、常に避けられ、それでも人とのぬくもりを求めて、繋がりを求めていた。
簡単なことだったんだ。
もっと早く言ってれば良かったんだ。
俺はようやく気付いたお互いの愛を感じながら力の限り かぼたんを抱き締める。
そして、ゆっくりと、どちらともなく、唇を重ねあう。
永遠のような一瞬を感じながらこうして俺達は夫婦となった。
ついにやってやったぜー!
もうちょっと盛り上げ方もあったんでしょうけど、これまでのやり取りがギャグっぽかったのでくっつくまでの展開はちょっとあっさりになっちゃいました。
まぁ、くっついた後の方が大事ですしこれはこれでいいかな。
そして嵐の王をあっさり殺しすぎかも。仮にもデーモンの長なのにww
それと明日と明後日はビヨールとユーリアの話になってますのでルウソと かぼたんの話は3日に投稿予定です。