ここに閉じ込められていったい何日になるだろう。
もう叫ぶ力も残っていないし、逃げる気力もない。
見張りとして交替で王の公吏がそばにいるが例えいなかったとしても私はここから逃げ出すことなど不可能でしょうね。
私が幽閉されているこの塔を警備するあの女、断罪者ミラルダがいる限り逃れることができないのだから。
……最初の頃は私も逃げようとは思ったわ。
幼少期から魔女としてあらゆる迫害を受け、時には顔の形が変わるほど殴られたこともあったからね。
痛みにはなれていたし似たような経験もあったからそのうち隙を見て逃げることもできると思ってた。
だけどそんな経験は何の役にも立たなかった。
私を助けてくれる人が訪れる気配もなく。
このまま私はここで死ぬまで嬲られるのだろう。
すでに何度も死にかけてきたがここの警備と拷問はまさに地獄なのだからすでに生きてここを出るなんて妄想は捨てていた。
さて、今日もミラルダが来たら拷問が始まるのでしょうね。
今日こそ死ねるといいんだけど……
「やぁ魔女ユーリア♪
ご機嫌いかが?
あなたの教えてくれた魔女の魔法のおかげで王の公吏達は数少ない生き残った民衆を焼き殺してソウルを奪い、また一段と太ったみたいだよ♪」
断罪者ミラルダ。
このボーレタリア王国で罪人の処刑を担当する処刑人の狂った女。
顔は頭巾で隠されているので分からないが空いている穴から覗くその目には嗜虐的な殺意と狂気にあふれていた。
いま私の目の前にいるのは断罪者ミラルダのみ。
いつもなら王の公吏も加わるのだが、それが今日はミラルダ一人だけだ。
捕まった直後の私なら逃げる算段をしていただろうが、すでにこれまでの間に私の心は折られてしまっているので、この女を前にしては逃げることはおろか、体の震えを抑えることすらできないのだ。
ただ今日こそ殺してくれることを祈るばかり……
「今日は私だけだが、ちょっと趣向を変えようと思ってね。
これまでみたいに『回復』の奇跡は使わない。
そろそろあなたにも新しい世界へと向かう段階だと思ってね」
私はそれを聞いてようやく殺してくれるのかと思ったがそうではなかった。
これまでに拷問を受ける中、私は何度も自分の死を懇願したが、いつも死ぬ直前で止められてしまい傷の手当をされて生かさず殺さずの日々だった。
だがこの日の拷問はそれまでの地獄が生ぬるく感じるくらいに酷い地獄だった。
最初は彼女にとっての挨拶代わりのつもりなのだろう焼鏝(ヤキゴテ)を押し付けられ、自分の体の焼ける匂いが部屋に充満する。
これまでも何度経験したが、その痛みに私は声を抑えることができなかった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!!」
「あっははははは♪
いい声でな鳴いてくれるねぇ♪
肉の焼けるいぃ~い匂いがするよ♪」
ミラルダが私に掛けたのは『再生』の奇跡。
『回復』の奇跡と違って徐々に体を治癒していくもので、私の体は焼け死にそうになりながらも、体は回復を続けるために死ねないという地獄を繰り返していた。
「も、もう死なせて下さい!!
死なせて下さい死なせて下さい!!!」
せめてもの安息としての死を必死に懇願するがミラルダは笑う。
その頭巾に隠された顔は見えないがおそらく心底愉快に感じているのだろう。
狂った人間しかできないという罪人を処刑する断罪者という職業。
ミラルダは殺しが好きでこの職業についたらしく殺すまでの過程として私を嬲ることで悦に浸っている。
その妖精のように美しい声は今の私には悪魔の声にしか聞こえないひどく醜い声だった。
「あっははははは♪
ユーリア~、君は本当にきれいな声で鳴くね~。
そんな声を聞くとついつい殺してしまいたくなっちゃうよ♪」
次に待っていたのは確実な死。
だがそれは終わることのない死だった。
ザクンザクンザクンザクンザクン
ミラルダが次に行ったのは私の手足を指先から徐々に切断していくという拷問だった。
斬る度に焼きごてで傷を焼いて塞ぐというのを繰り返す。
それでも死にたい一心で耐えていたのだが、私をあざ笑うかのような仕打ちとしてミラルダは『一度きりの復活』の奇跡を使った。
死ぬたびに生き帰り、そして殺される。
これまでは死を願っていたがまさか死んでも死ねないとは。
「あ~愉快愉快♪
ユーリアは実に面白い玩具だ♪
これまでもこうして処刑が決まった罪人を遊びで拷問したこともあったけど、大抵は処刑する前に拷問の段階でショック死しちゃってたからユーリアの精神力は本当に嬉しいよ♪
魔女ってのは強いんだね感心しちゃうね♪」
そうして彼女の拷問はエスカレートしていき、その日はそこで終わったがそれからしばらくは彼女一人による拷問の日々が続いた。
翌日は腹を裂かれ、臓物を一つ残らず切り刻まれた。
その次の日は私の眼球を抉り、舌を切り、耳と鼻も削ぎ、全身の皮膚を引き剥がすという拷問だった。
だがいつからだろうか、彼女が来なくなった。
王の公吏は相変わらず見張りをしている。
私はすでに心を折られているというのに。
最後の拷問を受けた際に両手足の腱を切られていたためにすでに満足に動くことのできない体となっていた。
見張りの王の公吏からの拷問もなくなったのでそろそろ処刑する算段でもしているのかと思ったのだが、舌を失い、顎も砕かれている私に公吏達は無理矢理口の中に押し込み食事を摂らせる。
何が何でも死なせるつもりはないようだ。
ああ、私はいつ死ねるのだろうか……
こんな生きているとも言えない体でボロ雑巾のようになってもまだ生き続けている私は何のために生きているというのだ。
そんな事を考えながらさらに何日かしたある日、その生活は唐突に終わりを迎える。
「おい、大丈夫か?俺は助けにきた者だ」
幻覚でも見ているのだろうか。私に声をかけてくれる男性がそこにはいた。
「貴方は……解放してくれた……のか…そうか……
ありがとう私は魔女のユーリア。
私なら大丈夫だ貴方は先に行ってくれ。
今の私では足手まといだ」
舌を失いまさに文字通り舌ッ足らずな口調で感謝と別れを告げる。
どの道私はこんな手足では助からない。
この優しい男に出会えたことで最後は人としてこの塔から這ってでも飛び降り自殺をしようと思ったのだ。
「そんなこと言われてあんたを置いていけるわけないだろ。
ほら、おぶってやるからとりあえず楔の神殿に行こう。
あそこなら安心だ」
男性は私に優しくしてくれた。
長い間この塔に閉じ込められていたため人の優しさに弱くなってしまったみたい。
私は思わず涙を流してしまった。
「え!その、私は……長いことここに閉じ込められていたから風呂にも入ってないし、拷問を受けていたから汚れてしまう」
体の体は王の公吏どもの欲望の吐け口として使われていたので血や汚物などで散々に汚れている。
「いいからいいから、俺は人助けがしたくてこの世界に来たんだからここは俺にあんたを救わせてくれ」
その男性はそんなことも気にせず私を背負って神殿まで運んでくれた。
優しい、本当に優しい人だ。
それが私とルウソさんの出会いだった。
たとえ助かっても完治を諦めていた斬られた両手足の腱や失った舌もルウソさんが暗月草という市場には滅多に出回らない高価な薬草を大量に使い、治してくれた。
何度も死を望んでいたが死ぬこともできず、今日まで生きてきた。
だがこうして人並みの幸せを取り戻したら本当に生きてて良かったと思えるよ。
ルウソさん。私に何ができるかはわからないけどこの恩はいつか必ず返すよ。
おまけ
ミラルダside
ユーリアってのは実にいじめがいがあって楽しいねぇ~♪
私の拷問に耐え続けるなんて精神的にタフみたいだけど反応も鈍くなっちゃったしそろそろ完全に壊そうかねぇ。
おっと、説明しておくと私が今いるのは処刑場だ。
ここで死体処理をしていたんだが死体が多すぎて忙しいったらないね。
デーモン化した陛下もこういった始末は全て私に一任してくれるのはうれしいんだけど、ユーリアをいじめに行けないのが寂しいよ。
「さて、仕事も終わったしそろそろユーリアを今度こそ完全に壊してやろうかな」
そうして処刑場を出ようとしたんだが、なんと出入り口に格子戸がはめられて鍵までかかってたんだよ。
「おい、誰だい。
まだ私が残ってるんだよ!」
だが誰も来る気配はなく、格子戸は開くことができない。
こうなったら誰かが開けてくれるまで待つしかないのかねぇ。
…………だが、物語の主人公ルウソはボーレタリア王城1の要石で入ってすぐ左手側にあるこの格子戸の存在にはまったく気付かずに進み、ちょうどこの時には既にユーリアを救出していたのでミラルダがこの処刑場にいることに気づく者は誰一人としていなかった。
原作無視してユーリア無双させても良かったんですけど、グロさとミラルダは出したかったのでw
それとミラルダは美声の持ち主とか言われてますが、私には、かぼたんの方が美しい声をしていると思います。
最後のミラルダのギャグっぽさで後味の悪さは払拭されたのが自分らしさを出せたと思っています。
やはりグロもいいけどギャグもね♪ってノリが肝心なのですよ。