神殿で かぼたんのおめでたを祝った翌日。
セレンは食べ過ぎと飲み過ぎで動けなくなってしまったのでそのまま寝かせておいて俺は一人で腐れ谷3に向かうこととなった。
かぼたんの代わりにルカとタカノが一緒に行きたがっていたがこの先はさらにひどい疫病菌が蔓延しているようなので少し大変だったが『かぼたんの側についてやってくれ』と言ってなんとか置いて行くことには成功した。
本音を言えば俺だってこの暗くて汚い環境で一人でいるのは精神的にきついから二人にはついてきてほしかったが、かぼたんのためにも神殿に残ってもらった方がいいからな。
「それにしても腐れ谷も『不潔な巨像』の要石から先はすぐにデーモンの部屋なんだな」
梯子がかかっていたのでそこを伝って下りていくとほんの少し歩いた所にいつもの霧の壁があった。
この中にデーモンがいるのだろう。
セレンはあとから追ってくると言っていたがあの様子では当分無理だろう。
これならセレンが来る前に終わってしまうかもな。
しかしセレンの弟とアストラエアって人達には会わなかったけどやっぱり噂通りこのエリアのデーモンの長になってるのかもしれないな……
そんな事を考えながら霧の壁の中に入っていくとエリア全体に響くような不思議な声が聞こえてきた。
「入ってこないでー!
帰ってくださーい!
私達は何も悪いことしてないんですよー!」
とても可愛らしく、それでいて美しい女性の声が聞こえてくる。
そしてそのあとに男の声も。
「アストラエア様。
どうかそのようなはしたない真似はしないでください。
まずは私がいつものように様子見に行ってきますから」
どうやらアストラエアとガルはここにいると見て間違いないだろう。
エリアに入ってすぐの左手側の道を進むとイカのような兜の騎士がいた。
「私はガル・ヴィンランド。
聖女アストラエア様に仕える騎士だ。
デーモンを殺す者よ、ここから立ち去ってはくれないか?
救われぬ者に救いの手を差し伸べているアストラエア様のためにもここを通すわけにはいかないのだ。
どうしても引いてもらえないのなら我が名が最強である理由をここに証明することになるぞ」
冷たい印象を与える暗銀の鎧を着てはいるが、その様はまるで炎のように激しく感情をたぎらせる男だった。
このイカ頭の騎士がセレンの言っていた弟なのだろう。
「まぁ、待て。
俺は別にお前らを殺しにきたわけではないし、話し合いで解決できるならそれに越したことはないと思っている。
あんたは騎士ガル・ヴィンランドで、奥にいるのが聖女アストラエアで間違いないか?
あんたの姉のセレンから話を聞いて二人を連れ戻しに来たんだ」
「なに!?
姉上がこの国にまで来ているのか!?
うわー、どうしよう。
アストラエア様をこんな場所に居させてるなんて知られたら叱られてしまう……」
頭を抱えて考え込むガル。
俺はその様子をしばらく見ていたが話が進まないのでこちらから話かけてみることにした。
「ところで聖女アストラエアがここのデーモンの長で間違いないのか?」
「……あぁ、アストラエア様はここ腐れ谷の腐敗した場所とデーモンにソウルを奪われて苦しむ者たちを助けるためにこの地に留まっているのだ。
本来あまり体の丈夫な方ではなかったためにこの谷の環境に耐えるためにデーモンへとなってしまったがな。
私はヴィンランド家の騎士として疫病や毒なんかは平気だから代わって差し上げることができればよいのだが……」
どうやらアストラエアはこの谷のすべてを救おうとしてデーモンとなったのだろう。
だがデーモンとなり、死から外れた存在になってしまったことでソウルを全て奪うやり方以外の救済の方法気づかないのかもしれないな。
そこで俺はひとつの案を出して見る。
「よしわかった。
俺だってあんたらみたいな本当に他人の事を考える心優しい奴らを殺すのは忍びないし、あんたら二人にもっといいやり方ででこの谷の連中を救う方法を教えよう。
そうすれば誰もが幸せになるだろうしな」
ガルは兜で表情が読めないが俺はしっかりと彼の顔を見て言う。
「そんな与太話が信じられるか……と言いたいところだが、お前の眼を見ていると信じたくなってしまうな。
ついてきてくれ。
この奥にアストラエア様がいるからその話を詳しく聞かせてもらいたい」
ガルに案内され、俺はエリアの奥へと進んでいく。
「アストラエア様。
この者が話があるそうです」
案内された場所には多くの積み上げられた死体とその傍に座り込む一人の女性がいた。
「まずははじめまして。
俺はルウソ・ズンモデという者だ。
ガルの姉セレンと楔の神殿にいる俺の妻の かぼたん……黒衣の火防女から話を聞いてあんたら二人を救いにきた」
それを聞いたアストラエアは嬉しそうに、
「まぁまぁ、火防女さんったら結婚したんですか。
うらやましいですわ。
私の方はいつまで待ってもガルは告白してくれませんので黒衣の火防女さん……今は かぼたんさんと言うのですね。
彼女の幸せは同じ女として私も嬉しく思います」
と言う。
どうやら かぼたんの言ってた通りアストラエアとガルはかなりラブラブなのだな。
ガルは少し固い気がするが。
「ちょっ!
アストラエア様!
私はアストラエア様のことを第一に考えてですね」
「ふーんだ。
私のことなんかどうでもいいんでしょ。
ガルったら滅多に表情を作らないのにセレン義姉さんのことを語る時は嬉しそうにしてるのに私は気づいてるんですからね!
あんまりにもシスコンだと私もいい加減貴方を捨ててしまいますよ」
「そんなぁ~、私は姉上よりもアストラエア様を常に一番に考えてますってば」
「そんなの私知らないもーん。
だったらもっと体でその気持ちを表現してくれればいいのに!」
あー、なんだろこの感じ。
最後のデーモンだというのにこの二人を見てるとこのまま放置してさっさと神殿へ帰ってもいいんじゃないかという気持ちになってくるな。
俺も早く神殿に帰って かぼたんとイチャイチャしたいな~。
「と、ところでルウソ殿と言ったな。
貴殿はどうやってこの谷を救うと言うんだ?」
アストラエアにやり込められて明らかに話題を変えようとしたのが丸わかりのガルが言ってきた。
「アストラエアは腐れ谷を救うためにこの腐った環境に耐えるためにデーモンとなったんだろ?
だったらそのデーモンとしての身体能力とその美しさを利用しようと思うのさ」
アストアエアは俺が美しいと言うと顔を赤くし、それからガルを見る。
どうやらガルが俺に対して嫉妬するんじゃないかと考えてるんだろうが、ガルはじっと立ったまま特に変わりない様子だった。
そしてその様子に落胆しながらも再び俺の話に耳を傾ける。
「まず、あんたはこの谷の住民が差し出したソウルをデーモンの長の仕事として『古い獣』に渡してるらしいけどそれをやめてくれ。
そうすればアストラエア以外のデーモンはすでに俺が倒したから『古い獣』は存在していくために必要なソウルを手に入れようと自分から俺の前に出てくるだろう。
そしてそこで俺が『古い獣』を倒せばこの世界を覆う色のない霧も消える。
この世界からデーモンの脅威は消え去り、腐れ谷の連中も少しはマシになるだろう。
そこでそこからがアストラエアの仕事なんだが、アストラエアには『貧者の長』になってほしいんだ」
そう、俺の考えとは『古い獣』を俺が殺す。
アストラエアはこの腐れ谷の長となる。
で、その後は腐れ谷をアストラエアが女王となって国としてしまおうと考えているのだ。
「そのアイデアには驚きですがそれ以上にあなたがすでに他のデーモンを全て倒していたことに驚きましたね。
私達ではすべてのデーモンを倒す事はできないと思っていたので私がデーモンとなることでこの谷の人たちを死によって救おうと考えていましたがそれでは根本的な解決にはなりませんしね。
確かに『古い獣』さえいなくなればこの世界は救われ、ソウルの問題もなくなり、多くの人を救えるでしょう」
「私もアストラエア様にずっと仕えてきたがアストラエア様には人の上に立つ素質があると思われますし、この腐れ谷の女王となるのは十分に可能だと思います!!」
どうやら二人ともこの作戦に乗ってくれるようだな。
じゃああとは具体的な話し合いと行動あるのみだ。
俺が『古い獣』を倒せばこの世界は救われる。
デーモンとなってしまったアストラエアでもこの谷の女王として上手くやっていけるだろう。
どうせ『古い獣』なんてすぐに倒せるだろうしここはさっそくこの谷の改革に協力しなければいかんな。
実はこの腐れ谷3の話ですが、アストラエアとガルのセリフをメモした紙を失くしてしまったのでノリで動かしていたら原作とは違う感じになってしまいましたねw
ちょっと強引ですが、彼女は死による救いを与えるためにソウルの亡者となった腐敗人からソウルを奪い尽くすことでソウルの業から解放しているっぽいので「古い獣を倒す」という正攻法によるソウルの業からの救済が可能だと提示してみれば仲間に出来るんじゃないかと思い、こうしてみました。
でもそれならガルが最初からデーモンを倒して古い獣を倒すやり方をしてればよかったのにとも思います。
周回するとガルのパワーは半端ないですしww
パリィしても時間かかりますし、魔法は論外ですからねぇ~。おまけに隙を見せると回復されますし。