しかしそれっぽいので違和感はないかも。
これまで荒事とはかかわり合いがなかったためにあまり知られていないがボールドウィンの実力はかなりのものがあった。
そして鍛冶屋として鍛えたボールドウィンの膂力(りょりょく)と迫力に押され、フレーキは防戦一方となる。
「くっ、まさかこんな老いぼれがここまでやるとは思わなかった。
最初の『神の嵐』で魔女の邪魔が入らずに仕留めていればここまで苦労しなかっただろうがな……」
だが避け続けるのも限界となったのかフレーキは足を滑らせ転倒してしまう。
「貴様のような人の道を踏み外した外道はワシがこの手で地獄に叩き落としてやるわい!」
ボールドウィンはトドメを刺すべく大きく振りかぶった。
この状況でフレーキに打つ手などないと思ったからだ。
だが、
シュシュシュシュシュン
「ぐぉぉぉ!」
まったく警戒していなかった背後からの攻撃にボールドウィンは吹き飛ばされてしまった。
「私の『浮遊するソウルの矢』はどうだ?老いぼれ。
フレーキ様、お気をつけください。
あの者はただの鍛冶屋ではなくストーンファング坑道に住む竜殺し一族の末裔です」
「おぉ、我が弟子よ、助かったぞ。
しかし老人にしては強いと思ったがまさか竜殺しの血族が生きているとは思いもしなかったぞ。
だがそれも、デーモン『竜の神』の元となったドラゴンを倒したビッグMの子孫だというなら納得の強さだ」
感心したようにつぶやくフレーキは、自分を手こずらせたボールドウィンの攻撃も自分がデモンズソウルを手に入れて無敵になったあとなら味わえない感覚だと思い、このピンチを楽しんでいた節もある。
そのためにフレーキの弟子は柱の影に隠れてもしものために備えていたのだ。
そして吹き飛ばされたボールドウィンは再び立ち上がろうとしているがその体は動かず、そこで意識を失った。
「さて、残りはお前ら三人だけだ」
「……あんたらはどうしてこんなひどい事をするんだ。
ボールドウィンさんやユーリアさんを傷つけて。
そうまでしてこの子達からソウルを奪う必要なんてどこにあるっていうんだ!?」
もちろん一般人ならトマスの言うことが正しいと言うだろうがフレーキとその弟子はすでにソウルの業にとらわれているのだ。
「……これでも私もかつては聖職者であったから命の大切さは十分承知している。
しかし悪人を裁くべき『神』というのはこの世界を破滅に導く『獣』と同義だと知った日に私は全てを捨てたのだからそのような説得はなんの役にも立たんぞ」
フレーキはそう言うとトマスを無視してルカとタカノに向かっていった。
いつでも殺せるトマスなんて最初から路傍の石程度にしか見ていなかったのだろう。
「ひぃ、やめてぇ!
こないでよ!」
「お願い、殺さないで!
死にたくないよぉ」
魔法で動きを拘束されてしまっているルカとタカノは何もできずに迫りくる死の恐怖に震え、泣きながら命乞いをする。
その様子を見ているしかできないトマス。
「俺は……俺は何をやってるんだ!
あの時誓ったじゃないか……
妻と子を見捨ててデーモンから一人だけ逃げ出したことを後悔し続け、苦しみを背負って生きてきたというのに俺はまたもこの小さな命を救うこともできずにこんな下種に殺されなくてはならないのか!?
ルウソさんは全てを信頼して俺に荷物番の仕事を任せてくれた。
俺はその友人である彼の一番大切な子ども達が殺されようとしているのに何もできないというのか!?」
トマスは考える。この状況を打開する策を。
そして……打開しうる策を思いついた。
「……これを使えば俺はどうなるかはわからないが少なくともあの子たちを救えるだろう。
ユーリアさん、ボールドウィンさん。
それにルウソさんに かぼたんさん。
皆さんに会えて俺は幸せでした……」
トマスがとった方法とはルウソが自分に預けていた『デモンズソウル』を自身に取り込むというものだった。
しかしそれは自分という存在の消滅につながることなのだ。
本来ソウルの吸収というのは黒衣の火防女にしか使えない唯一の能力。
トマスはソウルの扱いが一切出来ない上に使うのがデモンズソウルとなれば自身に取り込むというのは不可能なことなのだ。
つまり一般人のトマスがその不可能なことを無理矢理行うというのだから強大なデーモンのソウルに取り込まれ、自我を保つことすらできなくなってしまいただのデーモンとなってしまう。
だがそれを承知でトマスは化物となる道を選んだ。
友が信頼して自分に預けた子ども達を救い、自分を好きだと言ってくれたユーリアのためにも。
かつての犯した過ちを繰り返さないためにも、トマスは人間であることをやめる決意をしたのだ。
「ウォォォォォォォォォォォォォォー!」
莫大な量のソウルが膨れ上がっていることに気がついたフレーキとその弟子は慌てて振り返り、変わり果てたトマスの姿を見た。
鎧のように硬質化した皮膚、膨れ上がった筋肉、そして背中から飛び出した多くのデーモンの武器。
「「……化物だ」」
はからずともフレーキとその弟子は同じ感想を抱いた。
ルウソは手に入れたデモンズソウルをほとんど使うことがなかったのでほぼすべてのデモンズソウルをトマスに預けていた。
そしてその預けられていた全てのデモンズソウルをその身にとりこんだトマスはまさに化物となったのだ。
「誰も殺させはしない!」
トマスはまだ意識があるうちに自分とルカとタカノを拘束していた魔法を『嵐の祭祀場』のデーモンの長『嵐の王』の力を用いて解いた。
そしてトマスは、フレーキが憧れ、手に入れようとしていたデーモンのソウルによる圧倒的で無慈悲でただただ暴力的な一撃をフレーキと弟子に向けて最大の攻撃を放った。
「「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁー!」」
フレーキと弟子は神殿中央の穴の底に落ちて行ったがルウソと違って火防女の加護がなければ普通に落ちても転落死することとなるだろう。
その一撃に持てる力のすべてを出し切ったトマスはその場にしゃがみ込む。
「トマスおじさん……」
「ごめんなさい……私たちのせいで」
ルカとタカノが泣きながらトマスに近寄る。
トマスはそんな泣きじゃくる二人に優しく微笑むとその頭を撫でてやる。
「二人のせいじゃない。
これは俺が望んで行動した結果にすぎないんだ。
それにユーリアさんとボールドウィンさんも助けないとね」
トマスは精神をデモンズソウルに侵食される苦痛を堪えながらもユーリアとボールドウィンに『大回復』の奇跡を使う。
これで二人に命の危機はなくなっただろう。
「それじゃあ二人ともお別れだ。
ルウソさんと かぼたんさんにもよろしく言っといてくれよ」
段々とトマスの体は自分の意思では動かなくなってきた。
完全に自我を失い破壊しかできない怪物になる前に、自分の意志では動きにくくなってきた身体を無理やり動かし、トマスは自分の首を刎ねようと腕を振り上げる。
「ちょっと待ったー!」
だがそれを止めたのは聖女アストラエアだった。
そのあとに騎士ガル・ヴィンランドが付き添いながら。
「アストラエアさんもガルさんも離れてください!
俺はもうすぐデモンズソウルにのみ込まれて自我を失ってしまい、みんなを傷つけてしまいます!!」
だが構わず近寄ってくるアストラエアとガル。
「まぁ、任せなさいって♪」
アストラエアはそう言うとトマスの体の中に手を差し込んでトマスの魂と融合していたデモンズソウルを次々と抜き取っていった。
あまりにも自然で慣れた手つきなのでトマスの方が驚いてしまうくらいだった。
「何を驚いた顔してるんですか。
私はこれでもデーモンの長として腐れ谷では多くの貧者たちからソウルを戴いていたからソウルの扱いに関しては かぼたんちゃんに次ぐと自負してるんですよ」
そして最後のデモンズソウルを抜き終わるとトマスの体は疲労感は残るものの五体満足のまま元の人間の姿に戻る事が出来た。
「ははは、やはり本当のデーモンのあなたには敵いませんね」
「うわ、ひっどーい。
私はさっきまでのあなたと違って中身はデーモンでも外見は普通の女なんですからそんな風に言われると傷つくんだからね!」
どうやら自分が助かったという事実に気づき、気が抜けるトマス。
「ルウソさん。
俺は無事にあなたの大切なものを守りました。
あなたもこの世界をしっかりと救ってきてくださいね」
そうして体力の限界だったトマスは眠りについた。
ボールドウィンとエドはビッグMの子孫だからゴッドハンドを持っているのだと思います。
実はビッグMも双子の兄弟で、ビッグMは竜殺しの時に死んでしまい、その死を悼み、坑道にその愛用の武器とともに死体を埋葬し、もう一人の生き残った兄弟からエドとボールドウィンはゴッドハンドを受け継いだのだと思います。一人一つ。
となるとビッグMの弟の名前はLとかでしょうかね?w
そしてトマスはやはり助けなくちゃダメでしょう!