ボーレタリア王城で最初のデーモンを倒した俺は楔の神殿に戻ってきた。
「さて、今日はこの辺にしといてどこか寝る場所を確保しないとな」
俺は確かに強いが一応人間なので睡眠も必要なのだった。
「あ、あの……」
不意に声をかけられた。誰かと思って振り向くとそこには一人の女性がいた。
「お待ちしておりました。
この上で要の人の話を聞き、楔の意味を知ってください……」
それは儚く、それでいて美しい女性だった。
そしてその外見は火の点いた杖を持ち、両目は黒い蝋でつぶされ、身に纏うのも黒のボロボロの布だけで素足であった。
「美しい……」
「ひはっ!?」
しまったつい思ったことを口にしてしまった。初対面の女性に対して失礼だっただろうか。
「あー、すまない。貴方がとても美しかったもので思わず見蕩れてしまったんだ。
よければ名前を教えてもらえるかな?」
「えっと、その、ありがとうございます……
私の名前は……ないです。神殿にいるみんなからは黒衣の火防女と呼ばれてますけど」
消えてしまいそうなほど小さな声で返事をしたこの女性は赤くなって俯いてしまった。
「そうか。ならば俺はこれから君のことを『かぼたん』と呼ばせてもらうよ。どうかな?」
「あの、あのあのあの、その、よろしくお願いします。……それと上で要の人が待ってる……んですが」
恥ずかしがってる様も非常に可愛い。この娘のためならデーモン退治も楽しめるかもな。
「ああ、ありがとう。ここの管理人みたいなものかな?とりあえず会ってみるよ」
そうして俺は階段を登り、要の人とやらに会いにいくことにした。
かぼたんside
不思議な人だった。私なんかこんなボロキレの服しか着てないし、靴だって持ってないし目なんかつぶされてるのに……私を美しいだなんて。
とっても優しい人。もしかしたらあの人なら私を……この世界を救ってくれるかもしれない。
そんな事はありえないだろうけど。でも、そんな妄想に浸るくらい私なんかでも許されるよね……