偶然にもかつての知り合いにして父親の友人の騎士ビヨールと遭遇したルカとタカノの二人はそのままビヨールの案内の元にラトリアの中央に位置する塔に向かうこととなったのだった。
「ついたぞ二人とも。
ここが王の広間だからついでにいま私が仕えている女王陛下に会っていくか?」
その発言に少しばかり驚いたタカノ。
てっきりビヨール個人の客として空いている部屋を貸してくれるだけだと思っていたら一国の女王に会うことになるのだから。
ルカはそれほど驚いたようではないがそれは人生経験からなのだろうか。
そうこうしている内に広い部屋の奥から身なりの整った美しい女性が現れた。
「お帰りなさい我が騎士ビヨール。
そちらの可愛らしいお嬢さん達はどなたですか?」
その声はまるで歌声のように静かに響き渡り、聞く者全てを魅了するかのように澄んだ声。
部屋の隅にいたこの国の要職についているだろう人たちもその美しい声に聞き惚れているようだった。
「ただいま戻りました陛下。
こちらの二人は私の友にしてデーモンを倒し、世界を救った英雄ルウソ・ズンモデ殿の娘さんです。
カクカクシカジカで連れてきました」
ここでもカクカクシカジカの説明。
だがビヨールのその説明で女王は分かったようだ。
「ようこそいらっしゃいました可愛らしいお嬢さんたち。
私はかつてはただの貴族の妻だっただけの女王ですがビヨールの知り合いにしてあのルウソ殿の娘さんだというのなら精一杯の歓迎をさせていただきます」
まるで芸術品のような美しい笑顔で微笑まれたことにはさすがにルカも面喰ったが、本当に驚いたのは女王のかつての身分の方だったのだが。
その後にビヨールに詳しい話を聞いたところ、貴族だった頃の金品を売り払って国の立て直しのためにお金を出したことと、まだ『塔のラトリア』がデーモンに支配されていた時に囚人として捕まっていた多くの人たちの心を歌声で救っていたことで満場一致で女王に選ばれたのだそうだ。
「それではお二人とも長旅でお疲れでしょう。
ビヨール、あなたが部屋に案内してあげてくださいね
私もお二人に話がありますのが詳しい話は夕食の席にでもしましょう」
「了解しました陛下」
二人のやり取りも慣れたもので女王の前に跪(ひざまず)くビヨールは幸せそうにも見えた。
ビヨールの幸せそうな顔を見たルカは、ロリとして目覚めてしまったアリオナに仕えていてはビヨールのこの笑顔は見れなかっただろうと思い、豪放磊落にして実直な騎士である父の友人の幸せそうな様子に自分まで幸せに感じるのだった。
そして部屋に案内された二人は夕食の時間にやってきたビヨールの案内の元、再び女王と会うことになるのだった。
「楽にしてください二人とも。
さて、いきなりですけど、お二人は人助けの旅をしているとお聞きしたのですが?」
食事をしながら聞いてくる女王。
「そうですよ。
ルカとタカノちゃんはデーモンの脅威がなくなった後の世界のごたごたを解決するために色々な場所を回ってるんです」
「塔に泊めてもらっちゃいましたし、その上こんな御馳走まで用意してもらったんですから私たちに出来ることなら何でも仰ってください」
こちらも雰囲気に慣れてきたのか気楽な感じに女王に話しかける。
「……そうですか。
確かに貴方方に頼みたいことはあります。
実は私の友人が「陛下! 可愛らしい客人が来ていると聞きましたがここですかっ!?」……なんですか騒々しいですね」
女王の話を中断したのは真っ黒な鎧にウサギの耳のような飾りの付いたフルフェイスの兜を被った細見の男だった。
否、それもルカとタカノがビヨールと比べたからであってその男自身はかなりのソウルの強さを持ち、雰囲気からして戦闘を生業とする者特有の気配を有する者だった。
「おおぅ、これはこれは噂に聞いていたビヨール殿の客人というのはお嬢さんたちですな。
確かにお美しい。
私はこの国の宰相をしている元暗殺者のユルトと申します。
どうか以後お見知り置きを」
兜をかぶっているために表情は分からないが声から察するに相当に嬉しそうだった。
そして口では『お嬢さんたち』と言っているが、その視線はタカノには向かず、ルカ一人に注がれていた。
「おいユルト。
その二人はルウソ殿の娘さんたちだから不埒な真似はするなよ」
ビヨールは釘を刺す意味で割と本気の殺意をぶつけていたがそんな事で怯むような男でないからこそ、この状況で飄々としていられるのだろう。
「ふぅ、これは悲しい運命だね。
昔私を吊り籠ごと落下させて殺そうとした男の娘さんと私が恋に落ちるなんて。
あぁ、この狂おしい感情を君に届けるにはあまりにも大きな障害があるが私は君への愛をささやくためならどんな困難にでも立ち向かってみせるよ」
実はユルトは塔のラトリアでルウソに突き落とされたが運よく助かったのは良かったが、その後愛するメフィストフェレスに見捨てられて傷心していたところをいまのラトリア女王に拾われて、一応優秀ということで国のナンバー2、宰相という地位に抜擢された意外と出来る男なのだ。
ただしそのロリコンという隠しようのない本性は時間の経過とともにますますひどくなっているのが女王やビヨールの心配の種でもあったのだが。
「ユルト、ルカさんを口説くのはその辺にしておきなさい。
これは女王としての命令です」
「私の愛を邪魔する障害はここにもいたのか……
だが女王といえども私の愛の邪魔をすることはできません!
そう、これはかつて私が初めての恋をしたあの日にさかのぼるのですが……「すいませんお二人とも、この馬鹿だけど優秀な宰相は無視して私の頼みを聞いてほしいのです」……ウンタラカンタラであるからして……」
ベラベラと話を進めるユルトを放っといて女王が話を再開した。
「実は私の友人のことなんですが、その友人は最近この国に越して来たばかりなんですけど故郷に置いてきた妹さんからの手紙が途絶えたことが心配で夜も眠れないと言っているのです。
もしよろしければその友人の妹さんのところに様子を見に行ってもらえないでしょうか?」
女王の表情から察するによほど大切な友人なのだろう。
依頼自体は簡単なものだが失敗するわけにはいかない。
ここまで歓迎してくれた女王の願いを断るつもりもなかったルカとタカノはすぐに了承した。
「もちろん受けるわ、その依頼。
タカノちゃんもいいでしょ?」
「ええ、もちろんよ。
それで女王陛下、その依頼人の妹さんはどちらに住んでいらっしゃるのですか?」
これが騒動の始まりになるとも知らずに軽く考えた二人は女王からの依頼を引き受けてしまった。
「はい、『腐れ谷』にいるそうです。
向こうのアストラエア王国の城仕えのメイドとして働いているそうです」
さてさて、ラトリアに来たばかりの二人が早速引き受けた依頼と言うのは他国、それも腐れ谷へと出向くものだった。
これもまた、二人の両親と親しい間柄にある腐れ谷の女王アストラエアとその騎士(夫)ガル・ヴィンランドまでも巻き込む騒動となるのだった。
ユルトはしぶとく生き残っていた!
&女王に就任したのがラトリアで商人をしていた貴族の妻という設定を思いついて書き始めた話ですがこれはこれで悪くないかも♪
というかあの人名前がないww
私としてはあの人の性格は普段は物静かですけどスイッチが入ると「私の歌を聴けー!」な性格に豹変するに違いない!
ビヨールはMっぽいですしw