魔法少女まどか☆マギカ EDEN(完結)   作:ファルメール

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第15話

 

 その日、未明。ほむらの”統計”により割り出されたワルプルギスの夜の出現予測地点には勿論彼女、そしてマミ、杏子、風華、イブの4人。現在見滝原市にいる全ての魔法少女が集合していた。それと何故だか、まどかにさやかの姿も見える。ほむらは大反対したが、彼女が強く希望したのだ。みんなの戦いを、見届けたいと。

 

 最後までほむらは反対派であったが、風華がこう言って最終的には折れる事となった。

 

「いいじゃない。傍にまどか達が居れば、私達はどうあっても負ける訳には行かなくなるから……絶対に勝つという”お守り”みたいな意味合いで一緒にいても良いんじゃない?」

 

 さやかはまどかに付いてくる形で一緒にいる事になった。ただし、二人とも最後衛の風華からは離れないようにという条件は当然の如く付いたが。

 

「ところでイブ……お前の言う15人の魔法少女ってのはまだ付かないのか? ワルプルギスの夜はもういつ来てもおかしくないのに」

 

 このままでは計算していた戦力バランスが狂ってしまう。それを危惧した杏子が尋ねるが、イブは「良く聞いてくれましたです」とドヤ顔を浮かべるといつも通りナイフを手に走らせて、エリクシルを発動させる。ただし今回は周囲に血の霧を発生させるのではなく、足下に大量の血溜まりを作り出した。思わず杏子とマミが、血の池を踏まないように後ずさった。

 

「じゃあ、皆さん……出番なのですよ」

 

 そう、彼女が呟くのを合図として血の池から光の筋が伸び、蛍のような光が浮かび上がってくる。よく目を凝らすと、その光はソウルジェムの輝きであると分かった。

 

 と、同時に大量のエリクシルがさざ波立つように動くと、かつてさやかの肉体を再構築した時のように、集まった血の流れは人型を成して集まっていく。

 

 数秒の間を置いて、あの時の再現のようにそこには十名を超える魔法少女が並んでいた。彼女達の人種や衣装には統一性がまるでない。西洋甲冑風のコスチュームを纏った魔法少女もいれば、チャイナドレスのような格好の者もいる。

 

 クラッシックな魔法使いというイメージよろしくローブを羽織って杖を持った魔法少女もいた。彼女は何故だかT.H.ホワイト著の「永遠の王」を読んでいた。

 

 その隣には巴紋が刻まれた鎧を着て、かつてイブが杏子に対して使ったのと同じ、身の丈よりも巨大な刃を持つ薙刀を手にした魔法少女もいた。

 

 伝承にある吸血鬼のように、蝙蝠の羽を想起させる形状のマントを纏った魔法少女もいた。戦国甲冑のようなコスチュームの上に、背中の部分に「毘」の一文字が大きく書かれた陣羽織を着た魔法少女もいる。

 

 そして一同の中では最も現代風のコスチュームを着た魔法少女は、チーズをぱくりと囓っていた。

 

 総勢16名の魔法少女が、一瞬にしてこの場所に集結した。これには風華とイブ以外の全員が、言葉もないと言った様子である。まだドヤ顔のイブは、「驚いたようなのです」と前置きして、説明に入る。

 

「彼女達はほぼ全員が、かつて僕達が訪れた時空で僕達に賛同し、協力を約束してくれた魔法少女なのですよ。でも全員を連れて時空流を移動するには風華の負担が半端無いんで、みんなは普段はエリクシルの中に住んでもらっているのですよ」

 

「……?」

 

 イブの説明に全員が感心するしかないという表情を見せる中で、ほむらだけが怪訝な顔をしていた。ここに集まったほぼ全員と言ったが、すると一人か二人かは、別の経緯で集められた魔法少女も居るという事か?

 

 もう少し詳しく聞こうと思ったが、その時この場にいる全員に聞き覚えのある声が掛けられて、四十六の瞳が全てその声の主に集まった。同一個体ではないにせよ、この場にいる全ての魔法少女が魔法少女となるきっかけとなった存在、インキュベーターに。

 

「まさかこんな手段で魔法少女を集めるなんてね。流石の僕もこれには恐れ入ったよ」

 

 そのインキュベーター、キュゥべえの言葉は嘘ではないだろう。そもそも嘘を吐くという概念自体、彼等の種族が持っているかどうかも怪しいものだ。ただし、都合の悪い事は黙っているとか、知られたくない事は小さな文字で書くとかいう概念は間違いなく持っているだろう。

 

「確かにこれだけの魔法少女がいれば、ワルプルギスの夜を乗り切る事が出来るかも知れないね。僕としては残念だよ」

 

 と、キュゥべえ。彼の視線はこの場ではただ二人だけの普通少女の内の一人、まどかへと注がれ、次にほむらに移った。

 

「暁美ほむら。君がまどかを救う為に何度も繰り返した時間逆行によって数多の平行世界は束ねられた。まどかを中心にね。それによって因果の特異点となったまどかは、理論上有り得ないレベルの素質を持つに至ったんだ。それこそ、魔法少女という言葉で括る事、他の魔法少女と同列で考える事すらおこがましいほどの」

 

 それほどの力を持った魔法少女が魔女となる時に発生させるエネルギーの総量たるやどれほどのものか。インキュベーターにしてみればさぞや魅力的に映るだろう。

 

「それを回収できなくなるかも知れないのは残念だけど、仕方ないね。君達に関して直接干渉するのはルール違反だし」

 

 インキュベーターは巧みな話術で少女達を契約させる事はするが、定められたルールには従順だ。尋ねられた事に嘘を吐かないというのもそのルールの一つかも知れない。

 

「ま、確かにこの数の魔法少女ならワルプルギスの夜を倒せる可能性はかなり高いけど、それでも苦戦する事もあるかも知れない。その時みんなを救いたいと思ったのなら、僕を呼ぶ事だね、まどか」

 

「させると思っているの?」

 

 そう言ったほむらが、銃弾をキュゥべえの足下へと着弾させる。次は当てるぞと言う意思表示だ。それを受けてキュゥべえもこれ以上は何も言わない事に決めたらしい。ふらりといずこかへ消えていった。

 

「あの……」

 

 居並ぶ魔法少女達の内の一人、ローブを纏って「永遠の王」を読んでいる彼女にまどかが話しかけようとして、彼女はいきなり本を勢い良く閉じた。重々しい音が響いて、思わず体を竦ませるまどか。助けを求めるようにほむらを見やるが、彼女は厳しい表情で辺りを見回していた。彼女だけではない。マミも、杏子も、イブも、風華も、そしてこの場に集まった全ての魔法少女達が警戒心を露わにしていた。

 

「これは……」

 

 いつの間にか辺りには、何か異様な霧が立ちこめている。先程までは出ていなかったものが。その霧は自然の理に逆らって、風とは逆方向に流れていく。

 

 見ると、アクセサリーを付けた象のような使い魔達がずしんずしんと地を揺らしながら進み、そして道化師を思わせる姿の使い魔が旗を引いて歩いている。まるで、サーカス団がやって来たかのように。

 

 彼等はまだ自分達に敵意を持たないようだが、集まった魔法少女達の警戒レベルはマックスへと跳ね上がった。全員が戦闘態勢に入る。それぞれ杖や刀といった魔法武器を構えていく。

 

 マミ達も皆、ソウルジェムの力を解放してコスチュームを装着した。

 

 いつの間にか、彼女達はサーカス団の中心にいた。ふと、マミが口にする。

 

「あと二時間で日が昇るわね」

 

「日が昇ると、どうなンだ?」

 

「知らないの?」

 

 尋ねる杏子に、先程のイブにも劣らないドヤ顔で、マミが説明する。

 

「夜が明けるのよ」

 

 そうして彼女が軽口を叩くのと、その魔女が出現するのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 空中に、ドレスを着た巨人が逆さまになったかのような魔女が具現する。ただし本来足があるべき部位には巨大な歯車がその属性である舞台装置のように、回転し続けていた。奴こそが現時点で最強の魔女、ワルプルギスの夜。

 

「じゃあ、行くわよ」

 

 ほむらがこの場にいる全員を代表するように、進み出る。

 

「作戦はエリクシルを通じて、僕の中にいた皆さんにも伝わっているのですよ」

 

 イブの説明を受けてほむらは頷くと、彼女の魔法武器である左手の盾から、多数の無反動砲を出現させた。と、思いきや時間を止めたのだろう。数十はあろうかという火砲からは残らず弾頭が吐き出され、一個小隊並の火力が空中の魔女へと殺到した。

 

 並の魔女であればダース単位での粉砕が可能であろう火力だが、ワルプルギスの夜はびくともせず、笑い声を上げながら浮揚を続けている。

 

 だがこれはまだ予想の範疇。ほむらは素早く移動すると、あらかじめ設置していた対空砲を次々と撃ち出していく。その攻撃も全て命中したが、ワルプルギスの夜は小揺るぎもしなかった。

 

 これが今回の作戦であった。まずはほむらが保有している全ての火力を叩き込む。勿論それでワルプルギスの夜を倒す事は出来ないだろうから、ほむらはその後は皆のサポートに回る。風華とイブは回復要員だ。イブはエリクシルが持つ癒しの力によるダメージ回復、風華はエリクシルが対応できない即死などを時空を遡る事によって回避する。

 

 ほむらの攻撃はまだ続いていた。

 

 魔力によって操作したタンクローリーの直撃、更に水中に待機させてあった対艦ミサイルの一斉射撃。これでもダメージは通らなかったようだが、流石の最強の魔女も爆圧までは殺せず、吹き飛ばされる。そして吹き飛んだのは、まさにほむらが想定していた通りのベストポジションだった。そこは爆薬の巣。やはり事前に設置していた大量のTNT爆薬を一斉起爆させる。

 

 テロか何かと錯覚するような大爆発が起こり、魔女の巨体も煙と炎に隠されてすっかり見えなくなる。

 

 流石に、少しばかりのダメージは与えたか……?

 

 ほむらがそう考えて爆炎の中を見ようとしたその時だった。煙を切り裂いて、人間の反応を超える速さで触手が伸びてくる。咄嗟に避けようとしたほむらだったが魔女の攻撃は速く、刃のように研ぎ澄まされた触手に触れて右腕が千切れ飛んだ。

 

「ほむらちゃん!!」

 

 親友の腕が飛ぶ。14歳の少女が見るにはあまりにもショッキングな光景を目の当たりにして、まどかが悲鳴を上げる。さやかはそんな親友の肩を、「大丈夫だ」と言うようにしっかりと抱いていた。そう、大丈夫だ。

 

「イブ!!」

 

「はいなのですよ!!」

 

 風華の指示を受けて彼女の相方が、エリクシルの紅い霧を操作する。全てを殺す毒としてではなく、命を救う万能薬として。

 

 紅い霧がほむらの欠けた右腕に集まっていき、瞬く間に失った部位を復元していく。ほんの数秒で彼女の右腕は再構築された。

 

 ほむらは新しい右腕の感覚を確かめるように、ぐっぱぐっぱと指を動かす。違和感は全く無い。むしろさっきまでより体に馴染んでしっくりくるほどだ。猛毒にして万能薬と言っていたが、確かにそのフレーズに偽りは無いらしい。全く大した魔法だ。

 

 そうして彼女が主力武器を撃ち尽くして後退すると同時に、集まっていた残り全ての魔法少女が前に出た。

 

「この戦いに毘沙門天の加護ぞあり!! 皆、恐れるな!! 己の持ちうる限りを尽くせ!!」

 

 背中に「毘」が刻まれた陣羽織を羽織った魔法少女が、腰に差していた刀を抜き、切っ先を空中の魔女へ向けて吼えた。

 

「何であんたが仕切るのよ、謙信!!」

 

 軽口を叩きつつ、吸血鬼風のマントを羽織った魔法少女が翼のようにそれを広げ、飛び立つ。空を飛べない他の魔法少女達も、それぞれ散開してワルプルギスの夜を取り囲むように動いていった。

 

 直接戦闘には参加しない風華もまた、自分の周囲に無数の分身を出現させる。この分身の数だけ、彼女は過去に干渉して今を変える事が出来る。例えこの中の誰がやられたとしても、その過去を無かった事に出来るのだ。

 

「その代わり……私への負荷も滅茶苦茶掛かるけどね……」

 

 誰にも聞こえないように、風華がそう呟いた。そんな小さな声を掻き消すように、第二ラウンドが始まる。

 

「まずは……私から行くわよ!!」

 

「行くアルよ!! メアリーアン!!」

 

 「永遠の王」を読んでいた魔法少女、メアリーアンと呼ばれた彼女が杖を頭上で旋回させると、その先端から黄金に輝く光条がビームのように発射され、ワルプルギスの夜を直撃した。

 

 この一撃は僅かではあるが、魔女にダメージを刻んだらしい。ドレスの一部が削り取れる。

 

「メアリーアンって……」

 

「あん? どうした、マミ?」

 

 コンビを組んで動く事にしていたマミの驚愕を見て取って、杏子が尋ねた。

 

「メアリーアンっていったらあれよ!! 魔術師マーリンよ!! ケルト神話の!! アーサー王の後見人の!!」

 

 本当にいたなんてと、戦闘中にも関わらずマミは興奮気味だ。そう言えば彼女はそういう小説とかが好きだったのを、杏子は思い出した。

 

「この時代にも私やアルトリアのファンが居てくれるみたいで嬉しいわ!! 次は玉環!! あなたの番よ!!」

 

「はいアルよ!!」

 

 先程メアリーアンに声を掛けた、チャイナドレスの魔法少女が信じられない跳躍力を見せると、一直線にワルプルギスの顔面めがけて突進していく。

 

「中国四千年の神秘を見せてやるアルよ!! 四川省楊家龍王拳奥義!! 必殺!! 千歩気功拳!!」

 

 メアリーアンに玉環と呼ばれたその魔法少女、楊貴妃が気合いを入れた拳を前に突き出すと、拳に一点集中された魔力は巨大な拳の形を模した砲弾となって、魔女に襲いかかった。しかも先程メアリーアンの攻撃によって、ダメージの刻まれた所を狙って。

 

 脆くなった傷の部位に攻撃を受けて、更に強いダメージが通ったのだろう。傷が大きくなる。

 

 だが、ここまでダメージを受けて戯曲の魔女もようやくここに集まった魔法少女達を明確な”敵”として認識したらしい。ワルプルギスの夜の周囲に虹色の炎が顕現する。それは一斉に、楊貴妃へと襲いかかった。

 

「やばっ……!!」

 

 楊貴妃は空中では体勢が変えられず、避けられない。駄目だ、まともに喰らう。誰もがそう思った時、最初に一同を仕切った謙信という魔法少女に軽口を叩いた、黒いマントを背中に広げた魔法少女が急加速して飛来すると、空中で楊貴妃を拾ってそのまま虹色の炎を回避した。

 

「全く……!! アンタは迂闊なのよ、いつも!!」

 

「謝謝(シェイシェイ)、ミナ……」

 

 返す言葉もないという風にその吸血鬼のような魔法少女、ミナ・ハーカーを見る楊貴妃。ミナはお荷物を適当な空中で放り出すと、空を埋め尽くすほどのコウモリ達を操ってワルプルギスの夜に殺到させた。魔女の体は硬く群がるコウモリ達では文字通り”歯が立たない”。

 

「今よ!!」

 

 ミナが叫ぶ。だがこれで、動きは止まった。

 

 ワルプルギスの夜の全身に、リボンが巻き付く。そのリボンは地上の、最も現代風の衣装を着た魔法少女が手にする魔法武器。キャンディーのスティックに巻かれていた物だった。

 

「で、え、やぁっ!!」

 

 その魔法少女、かつてシャルロッテと呼ばれた魔女だった彼女は思いきりリボンを引っ張ると、細腕からは信じられないような怪力で魔女を地表に叩き付けた。

 

 地面へと引きずり下ろされたワルプルギスの夜へ向かって、巴紋の鎧を着て薙刀を持った魔法少女、巴御前と最初に一同に号令した魔法少女、上杉謙信が突進する。二人は薙刀と刀によってすれ違い様に、巨大な魔女の胸に十字の傷を付けた。彼女達に続くようにして、他の魔法少女の攻撃も激化していく。

 

 その様を、巨大化した槍の穂先に乗りながら杏子とマミは見下ろしていた。

 

「ったく……壮観だねぇ、マミ……これだけの魔法少女が、それも神話や伝記の登場人物が一同に集まるなんて」

 

 そう言いつつ、最後の突進の構えを取る杏子。マミも頷く。

 

「佐倉さん、キュゥべえは言っていたわよね」

 

「あ?」

 

「私達の使う魔法は、熱力学の第二法則に縛られない感情のエネルギーだって」

 

「ああ……」

 

 赤髪の魔法少女は頷く。その真髄は希望が絶望に、ソウルジェムがグリーフシードへ変化する時の相転移だが、魔法少女の使う魔法も基本は同質の物だ。

 

「なら、素質の大小による上がり幅に差はあっても、魔法(ティロ・フィナーレ)の出力(パワー)はその時の感情、精神力に比例する筈」

 

「??? 良く分からないが、兎に角突っ込むよ!!」

 

 下の魔法少女達が全員攻撃を終えたのを確認すると、杏子の念によって操作された巨大な槍が動き、一直線にワルプルギスへと向けて突き出される。当然、その上に乗っている二人も一緒に。

 

「今日は最高潮なのよ!!」

 

 先輩として。友人として。鹿目さんも、暁美さんも、美樹さんも守ってみせる。

 

 ひとりぼっちで戦っていた時の私じゃない。後輩の為、友達の為。背負うべきものがある今は、私の精神力は不可能を、超える。

 

「惑星だって砕いてみせるわーーーっ!!」

 

 巨槍が勝るとも劣らぬ巨体に突き立てられると同時に、マミも巨砲と化した銃の引き金を、彼女の念によって引く。

 

「ティロ・フィナーレ零距離射撃!!!!」

 

 臨界点に達した魔力が光の奔流となって、魔女の巨体を覆い隠していく。そして、大爆発。先程のほむらが起こしたTNT爆薬の一斉起爆が線香花火に思えるような光と衝撃が走り、思わず風華に守れているまどかとさやかは悲鳴を上げた。

 

 そんな二人のすぐ傍に、ほむらとマミが着地する。

 

「流石に効いたかしら……?」

 

「ええ、手応えはあったわ……」

 

 膨大なエネルギーを放出した為、まだ湯気を立てている銃身を見詰めながら、マミが言う。

 

「まだトドメは刺せていないと思うけど……」

 

「油断しないで、ここからよ」

 

 ほむらがそう言ったのとほぼ同じタイミングで、煙と炎が吹き飛ばされて巨大な魔女が姿を見せた。流石にあちこち傷付いてはいたが、それでも致命的なダメージはまだ無かった。

 

 しかし巨大な魔女には、これまでには見られなかった動きがあった。これまでは逆さまになっていた体が縦に回転し始め頭が上に、歯車が下に。逆位置から正位置へと戻りつつある。

 

「来るわよ」

 

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